【奥越】熊河川・アラクラ谷遡行

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兔夢
記事: 624
登録日時: 2011年2月24日(木) 23:12

【奥越】熊河川・アラクラ谷遡行

投稿記事 by 兔夢 »

2013年9月21日(土) 晴れ 
奥越 熊河川・アラクラ谷~アラクラ~西日谷 単独
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DSCN0925.JPG (61.34 KiB) 閲覧された回数 929 回
7:45 熊河川林道駐車地 → 8:30 入渓 → 9:10 アラクラ谷出合 → 10:30 瀑流帯突入 → 11:45 40m大滝 → 13:00~20 アラクラ(P1229m) → 14:00 西日谷本流 → 15:30 熊河川本流 → 15:45 アラクラ谷出合 → 17:10 駐車地

 久し振りに週末の天候が良さそうだ。こうなったらこうなったで行き先に迷う。散々考えた挙げ句、奥越、熊河川支流・アラクラ谷を訪れる事にした。「百山百渓」を見て行きたいと思っていたが難しそうで迷っていた沢だ。40mの大滝があるらしい。
 当初は土曜日にアラクラ谷出合付近にテン泊して翌日遡行しようと考えていた。しかし事前に見た予報では日曜日より土曜日の空模様が断然いい。急遽土曜日の遡行に変えて現地に向かった。
 R157を走り温見峠から福井県に入り熊河に至る。熊河川沿いの林道は荒れており車の底を激しく打った。しかも途中で土砂が道を塞ぎそこから歩く羽目となった。先はずいぶん長い。
 以前は熊河川堰堤まで車で入れた。それ以前、中日新聞社刊の「名古屋周辺 山旅徹底ガイド」では更に奥の橋まで、つまり入渓地点まで入れたようだ。林道が時間とともに荒れていくのはここでも同じらしい。
 歩き始めて45分、やっと入渓。穏やかな流れを遡っていく。仰ぎ見れば澄んだ青空が広がり期待に胸が膨らむ。数年前、若丸を目指した真夏の遡行では黒だかりの虻に辟易したが今日はそれもなく気分よく歩いていける。
 滝か?と目をこらすとそれは崩れた古い堰堤だった。それを越えるとアラクラ谷の出合に出た。
 ゴルジュっぽい出合はすぐに樹林が覆う穏やかな渓相になった。流れの中に時折巨岩が現れて目を引く。
 ようやく現れた滝は3m二条。直登するのは難しそうで右から巻いた。しかし沢に下りる時ロープ代わりに掴んだ木の寸法が足らず少し危うかった。その上の3mも右から巻く。
 再び穏やかな渓相となる。わずかだが滑もあって目を楽しませてくれる。
 と前方の樹間から目を見張る岩峰がこちらを見下ろしていた。ごつごつとした岩肌を青空の下に晒して聳えている。男性的なその姿は続く谷の険しさを予感させた。
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 4mほどの滝が現れた。その落口から岩を切り裂いたようなゴルジュが顔をのぞかせている。果して遡行する事ができるのか。
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 右ルンゼ側から巻いていく。上には4m程の斜瀑が見えついでに巻こうかと思ったがよく見ればシャワーで登れそうで沢に下りた。
 斜瀑を登ったところに2m程の滝。ステミングで越えていく。先には立った岩肌が続いている。
 1mにも満たない滝を越えて3mチョックストーン滝。左手を行けそうな気もするが微妙なバランスがいりそうだ。ここはひとつ戻って左岸急斜面の灌木を掴んで巻いていく。
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DSCN0885.JPG (61.36 KiB) 閲覧された回数 929 回
 小尾根を越えて少し下ったところで沢に下りるかどうか迷った。下りたところで前方に8mの直登できなさそうな滝がある。右岸を巻くのも難しそうに見える。でそのまま続けて左岸を進む事にした。
 どんどん上へ突き上げられていく。何とか灌木の立つバンドに乗ったもののその先は岩壁に草付きのバンドが続くのみ。フリーでは自殺行為だ。かと言って30mのロープで確保できる距離でもない。ここは前進を諦めるしかなさそうだ。
 自分の力が及ぶ沢ではなかったという事か。準備が足りなかったという事か。いつかリベンジができるだろうか。様々な思いを巡らせながら登ってきた急崖を下っていった。
 流れが近づいたところで折角だから越せなかった滝を見ておこうと沢に下りた。意外と簡単に下りられ右岸を見ると、ジェジェジェ!なんと樹木は左岸の倍返しほどあり、それなら何時巻くのか?今でしょ!状態だった。取り付き部分の足下がズルズルだったが比較的容易に登る事ができ沢への復帰も問題なかった。左岸での格闘は何だったのだろう。
 ちょっと拍子抜けしてしまった巻きの後は穏やかな雰囲気の渓相となる。岩肌から流れに向かって伸びている竜胆の可憐な花に心が癒される。
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 現れた3m程の滝は階段状で気持ちよく登れその後も特に問題となる滝もなくこのまま終息していくかのように思われた。しかしそうはならなかった。
 陽光を受けて輝く4mの滑滝を越えた辺りから再び両岸が立ってきた。これは、と思った時、前方左手に瀑流の影が見えた。40m大滝に違いない。
 少し水量が少ないが裾が広く高さのある見応え十分の滝だ。多段で上部にも滝が見える。それをいれれば40mはあながち誇張ではない。すばらしい。これだけは見ておきたいと思っていたので感無量だ。
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 ネット上に登攀用具をフル活用して直登したレポがあったが単独でしかも30mのロープしかないのではそれは無理。巻くしかない。
 「百山百渓」には巻きに時間がかかると書かれていた。右岸をとっても左岸をとっても確かに時間はかかりそうだ。
 左岸は取付きから比較的登りやすく見える。しかし沢に復帰するのにかなり迂回しなければならない。右岸は草付きの急斜面で難しそうだが巻けばすぐに沢復帰できる。ここは右岸を巻いていこう。
 下部の草付き急斜面を慎重に登って中腹辺りから灌木を手がかりに身体を持ち上げていく。適当なところで落口方向にトラバースするつもりだったが良いところが見当たらずそのまま尾根上にあがる。尾根を乗っ越して灌木帯を下ると明瞭な獣道があった。それを辿って落口より少し上流に下りた。意外とあっさりと巻けてしまった。
 落口から滝を覗き込む。上の滝は5m程か。下部にいくほど巾を広げていく滝は落口に立ってもあまり高度感を感じさせない。
 大滝の上は地形図を見ても分かる通り穏やかな渓相が続く。両岸の立ったゴルジュを通過してきた事を思うと劇的な変化だ。このように表情の変わる沢の遡渓は実に楽しい。
 すぐに現れた二俣はアラクラのピークを目指して左に入っていく。4mの滝があり緊張がほぐれた中で楽しみながら直登。その後も小滝が幾つか現れるが難しいものはない。
 予定ではピーク南の鞍部に出てそこから登頂するつもりだったが知らず知らずのうちに沢筋を離れ直接ピークに向かっていた。山頂周辺の薮はそれほど濃くなく労せずしてピークに出た。
 山頂は腰辺りの低い灌木が茂っているのみで視界を妨げるようなものがなく展望はほぼ360°。青空の下に連なる峰々がすばらしい。今回山頂には全く期待していなかったのだが嬉しい誤算だ。
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 東に姥ケ岳の稜線、ボリュームのある能郷白山、それに続くイソクラ、手前に来てなだらかなスギクラ、そして顕著なピークは若丸。西に目を移せば間近に冠山、その向こうには金草岳。北には銀杏峰、部子山のなだらかな稜線。その他にも墨絵のように影を重ねる奥美濃の峰々。何時までも見飽きない風景が広がる。
 冠山に人影が見えたので「ヤッホー!」と叫んでみる。しばらくしてから向こうからも「ヤッホー!」の声が聞こえてきた。声は伝わっているみたいだ。
 休憩後、西日谷に向けて灌木をかき分け下っていく。わずかで沢筋に出た。水流が出てくると小滝が現れたが問題となるものはなかった。
 西日谷本流に合流するわずか手前で10mの滝が現れた。これは右手の小尾根をわずかに下り更に右の沢筋に下りて巻いた。
 本流はしばらくゴーロが続く。振り向けばアラクラのピークを仰ぎ見る事ができた。
 やがて両岸が立ってきて不図左岸の岩場を見るとカモシカがこちらの様子を伺っていた。思いっきり手を振って応えてやるとのっそりとした動作ながらしっかりと崖を登っていった。何時もながらあの登力には感心する。
 この辺りから沢はゴルジュの様相を呈してきて3mの滝が現れる。ここは右岸を簡単に越えられた。
 次に現れた4mは簡単にはいかない。両岸ともかなり立っていて巻くのに苦労しそうだ。比較的巻きやすそうに見える左岸の小尾根に取り付くと支点になりそうな樹木があった。苦労して巻くよりは懸垂が早いだろうとロープを出し下り始める。
 何となく嫌な予感はあったが下る先は調度滝芯だった。なんとか避けて下ろうとしても重力には逆らえず結局滝の真下に下りた。かなり深そうな滝壺の中で滝に打たれながらしばらくもがいてやっと脱出。本日の核心と言っても過言でない状態だった。
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DSCN1012.JPG (58.88 KiB) 閲覧された回数 929 回
 その後は地形図でも見て取れるようになかなかのゴルジュが続く。深い淵がありへつりが求められるところもあるがそんなところにはフィックスロープがあった。釣り人のものだろう。彼らはこんなところも遡上していくのだ。
 ゴルジュが終わり川幅が広くなってくるとすぐに熊河川本流に合流。後は穏やかな渓流を下っていく。
 林道に出ると左右の草むらからコロコロと秋の虫の音が聞こえてきた。ススキが揺れて秋の訪れを告げている。猛暑だった今年の夏が遠ざかっていく。
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山日和
記事: 3585
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【奥越】熊河川・アラクラ谷遡行

投稿記事 by 山日和 »

兔夢さん、こんばんは。亀レスでゴメン。

しかしアラクラ谷から夕日谷、しかも単独とは恐れ入りました。

私も百山百渓を読んで興味はありましたが、とても行けないだろうと思ってました。

アラクラのピークは年に何人が踏むんやろねえ。うらやましいです。

目的完遂おめでとうさんです。でも、くれぐれも気を付けて下さいよ。

            山日和

若丸山からのアラクラ(右端のピーク)
若丸山からのアラクラ(右端のピーク)
兔夢
記事: 624
登録日時: 2011年2月24日(木) 23:12

Re: 【奥越】熊河川・アラクラ谷遡行

投稿記事 by 兔夢 »

山日和さん、こんばんは。

毎度ありがとうございます。山日和さんを想定して投稿しているところがあるのでレス、ありがたいです。


しかしアラクラ谷から夕日谷、しかも単独とは恐れ入りました。

私も百山百渓を読んで興味はありましたが、とても行けないだろうと思ってました。



山日和さんから百山百渓をいただいてからずっと気になっていた沢でした。

難しいとは思いながらもその渓相を見てみたい、その一心でのぞみました。

でも不思議な事にこの数日前から行けると思ってたんですよね。なんでだろ?

[attachment=0]DSCN0878.JPG[/attachment]


アラクラのピークは年に何人が踏むんやろねえ。うらやましいです。


アラクラ谷を遡行する人は何人かいるんでしょうけど三角点でもないこのピークを訪れる人はいないでしょうね。

いいピークでした。

[attachment=1]DSCN1093-1.jpg[/attachment]

目的完遂おめでとうさんです。でも、くれぐれも気を付けて下さいよ。


ありがとうございます。今シーズンは、口三周谷、日河原洞、そしてアラクラ谷を訪れる事ができ大満足です。

三つとも昨年まで躊躇していた沢でした。

     兔夢



添付ファイル
瀑流帯、二つ目の滝
瀑流帯、二つ目の滝
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能郷白山からアラクラ
能郷白山からアラクラ
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