【鈴鹿】レクイエム 又川谷よさらば
Posted: 2013年6月17日(月) 20:37
【日 付】2013年6月16日(日)
【山 域】鈴鹿 静ヶ岳周辺
【天 候】晴れ
【コース】茶屋川橋8:20---9:02白谷出合---11:15県境稜線---11:29セキオノコバ12:48
---13:01静ヶ岳---13:19鞍部---13:44銚子岳14:00---14:51林道---15:20駐車地
前週の口直しにスッキリした谷へ行きたい。そう思って選んだのが茶屋川の支流の又川谷だ。
平流部分も長く、目を瞠るような連瀑帯やゴルジュがあるわけではないが、二次林に包まれた渓相
は穏やかで美しい・・・・はずだった。
前日の雨で多少は増水しているかと思われた茶屋川本流は、平水以下の水量で登山靴でも渡渉
できるほどで拍子抜けだった。雨の影響は林道の水溜りがやたら増えて、車が汚れただけである。
又川谷へ入るとちょっとした廊下風のところが続き、両岸の二次林の緑が美しい。ただし足元の
流れはまったくの平流で、水の中をちゃぷちゃぷと歩くだけである。しかしちょっと土砂が多いよ
うな気がする。もう少し岩が出ていたような記憶もある。
ここを訪れるのは5回目だが、前回は7年前、第1回ヤブオフのアプローチとして選んだのだ。会場
はなんと、今では考えられない竜ヶ岳の山頂だった。あの頃は何人集まるか想像もできず、多くて
も十数人で車座になって顔合わせできればいいなと思っていた。
早いものであれからもう7年。メンバーもずいぶん増えたものだ。
廊下を抜けると底抜けに明るい広大な河原(自分では広河原と呼んでいる)に出るが、何か様子が
おかしい。全景を見渡して自分の目を疑った。河原の真ん中が土砂で盛り上がり、最後は夥しい流
倒木が立ち木に引っ掛かって堆積していた。まるで材木の鉄砲流しのようだ。
この谷もご多分に漏れず水害の影響を大きく受けたようだ。しばらく我慢して遡行するしかない。
上流へ進めばいずれ渓相も元に戻るだろう。
[attachment=4]P1140489_1.JPG[/attachment]
どこかで見たような気がする風景の場所に来た。右から土石流で埋まる谷が合流し、左にも支流
があるようだ。ここはひょっとして白谷の出合か。
白谷の穏やかな流れとゴルジュを形成して流れ込む右岸支流の交差点を十字峡と呼んでいた。
必ずここでひと息入れた心落ち着く出合の姿はどこにもなかった。「白谷」と赤ペンキで大書された
岩もない。上流を見るとここから先は元に戻るだろうと思っていた本流は水の流れすらない荒れ河原
が続くのみ。呆然とその場に立ち尽くした。
一体これはなんなのだろう。悪い夢でも見ているようだ。
[attachment=3]P1140497_1.JPG[/attachment]
上流の大井谷へ入ってまず最初に歓迎してくれる又川大滝(実際は3mほどの小滝だがそう呼んで
いた)は影も形も無くなっていた。正確に言えば滝があった場所を通り過ぎたことすらわからなかっ
た。川床が2~3m上がってしまったようである。それでもしばらく進むと荒れ気味ながらも小滝
がいくつか現われ、いよいよかなという期待に胸が膨らんだ。
しかしそれも束の間、再び谷は土砂に埋め尽くされた。
[attachment=2]P1140531_1.JPG[/attachment]
この河原はどこまで続くのか。この土砂はどこから来たのか。その答えは静ヶ岳への直登谷出合
にあった。
これまでの荒れ河原とは異次元の空間が目の前に現われた。土砂は両岸に3~5mもの堤防を形作
っている。まるで賽ノ河原のような谷を進むと目に飛び込んだのは、右手の支流上部斜面の大崩壊
だった。斜面の崩壊と言うよりむしろ山が崩れていると言った方が当たっている。これが又川谷を埋
め尽くす土石流の供給源だったのか。
何もかもを破壊し尽くされた目の前の現実をにわかに受け入れることができない自分がいる。ここ
は又川谷の中でも最良の区間だったのである。
これが供給源ならここより上流は無傷かもしれない。その甘い期待も儚く打ち砕かれる。
滝を二つ三つ越えると岩と倒木で谷が塞がれている。我慢もそろそろ限界に近付いて来たがとにか
く稜線へ抜けるしかない。
[attachment=1]P1140545_1.JPG[/attachment]
竜ヶ岳への直登支流を過ぎてやっと渓相が落ち着いた。8mほどの滝を直登すると谷は源流のやさ
しい表情を見せる。県境稜線を歩いている登山者が見えた。
ほどなく稜線に到達してセキオノコバへ向かう。手前の池でランチのつもりだったが、あまりにも
雨が少ないせいで池の水の色がまるで重油のようだ。
あまり気分もよろしくないので静ヶ岳の分岐付近の樹林に腰を降ろした。いいところだ。
[attachment=0]P1140566_1.JPG[/attachment]
寄るつもりのなかった静ヶ岳だがついつい足が向いてしまった。何度も登っているし、別に好き
な山頂でもないのに、ここまで来たら登っておこうと思ってしまうのは悲しい性だろうか。
その代わりというわけでもないが、山頂からは登山道を戻らず、県境ライン沿いに銚子岳との鞍部
を目指す。この区間の県境縦走路は県境を通っていないのだ。正確に言うと、県境も主稜線を外れ
ている。地図をちゃんと読めば、県境沿いに下ると茶屋川支流の太夫谷の源頭二俣へ下りることが
わかる。ちゃんと読んでいなかったのでアレっと思ってしまったが、対岸の急斜面をトラバースし
て少し登ると登山道に復帰した。
銚子谷の源頭にあたるここからは、青川の銚子谷を埋めた土石流の供給源となった両岸の崩落個
所がよくわかる。銚子谷を遡行したのはもう20年以上前の話である。今では20mの銚子大滝も埋ま
ってしまったと聞く。
山も谷も人も、いつまでも変わらずにはいられないのだろう。変わってしまう前の姿を知っている
だけでも幸せと言うべきだろうか。
銚子岳を訪れるのはその銚子谷遡行以来だ。半分植林のあまり落ち着かない山頂ではある。
ここから茶屋川まで西尾根を一本道。迷うところはないだろう。
尾根の様子はと言うと、大半が植林の面白みのないルートだ。踏み跡はしっかりしており仕事は
速い。622mピーク手前で林道を横切るが、ピーク方向にも林道ができていた。
ピークの林道終点からうっかり尾根を直進しそうになったが、ここは左だ。明瞭な杣道を進んで最
後は右手の浅い谷へ下りると目の前が茶屋川沿いの林道だった。
茨川林道は太夫谷の先(上流から見て)で大きく崩落しており車では通れない。入口にあった通行
止めの表示はこれのことか。重機が河原に降ろされ、復旧工事の真っ最中というところである。
30分弱の林道歩きで駐車地に帰着。先週の口直しのつもりが新たな絶望を生み出した一日だった。
さらば又川谷。そしてありがとう。もう訪れることはないだろう。悲しいけれど。
山日和
【山 域】鈴鹿 静ヶ岳周辺
【天 候】晴れ
【コース】茶屋川橋8:20---9:02白谷出合---11:15県境稜線---11:29セキオノコバ12:48
---13:01静ヶ岳---13:19鞍部---13:44銚子岳14:00---14:51林道---15:20駐車地
前週の口直しにスッキリした谷へ行きたい。そう思って選んだのが茶屋川の支流の又川谷だ。
平流部分も長く、目を瞠るような連瀑帯やゴルジュがあるわけではないが、二次林に包まれた渓相
は穏やかで美しい・・・・はずだった。
前日の雨で多少は増水しているかと思われた茶屋川本流は、平水以下の水量で登山靴でも渡渉
できるほどで拍子抜けだった。雨の影響は林道の水溜りがやたら増えて、車が汚れただけである。
又川谷へ入るとちょっとした廊下風のところが続き、両岸の二次林の緑が美しい。ただし足元の
流れはまったくの平流で、水の中をちゃぷちゃぷと歩くだけである。しかしちょっと土砂が多いよ
うな気がする。もう少し岩が出ていたような記憶もある。
ここを訪れるのは5回目だが、前回は7年前、第1回ヤブオフのアプローチとして選んだのだ。会場
はなんと、今では考えられない竜ヶ岳の山頂だった。あの頃は何人集まるか想像もできず、多くて
も十数人で車座になって顔合わせできればいいなと思っていた。
早いものであれからもう7年。メンバーもずいぶん増えたものだ。
廊下を抜けると底抜けに明るい広大な河原(自分では広河原と呼んでいる)に出るが、何か様子が
おかしい。全景を見渡して自分の目を疑った。河原の真ん中が土砂で盛り上がり、最後は夥しい流
倒木が立ち木に引っ掛かって堆積していた。まるで材木の鉄砲流しのようだ。
この谷もご多分に漏れず水害の影響を大きく受けたようだ。しばらく我慢して遡行するしかない。
上流へ進めばいずれ渓相も元に戻るだろう。
[attachment=4]P1140489_1.JPG[/attachment]
どこかで見たような気がする風景の場所に来た。右から土石流で埋まる谷が合流し、左にも支流
があるようだ。ここはひょっとして白谷の出合か。
白谷の穏やかな流れとゴルジュを形成して流れ込む右岸支流の交差点を十字峡と呼んでいた。
必ずここでひと息入れた心落ち着く出合の姿はどこにもなかった。「白谷」と赤ペンキで大書された
岩もない。上流を見るとここから先は元に戻るだろうと思っていた本流は水の流れすらない荒れ河原
が続くのみ。呆然とその場に立ち尽くした。
一体これはなんなのだろう。悪い夢でも見ているようだ。
[attachment=3]P1140497_1.JPG[/attachment]
上流の大井谷へ入ってまず最初に歓迎してくれる又川大滝(実際は3mほどの小滝だがそう呼んで
いた)は影も形も無くなっていた。正確に言えば滝があった場所を通り過ぎたことすらわからなかっ
た。川床が2~3m上がってしまったようである。それでもしばらく進むと荒れ気味ながらも小滝
がいくつか現われ、いよいよかなという期待に胸が膨らんだ。
しかしそれも束の間、再び谷は土砂に埋め尽くされた。
[attachment=2]P1140531_1.JPG[/attachment]
この河原はどこまで続くのか。この土砂はどこから来たのか。その答えは静ヶ岳への直登谷出合
にあった。
これまでの荒れ河原とは異次元の空間が目の前に現われた。土砂は両岸に3~5mもの堤防を形作
っている。まるで賽ノ河原のような谷を進むと目に飛び込んだのは、右手の支流上部斜面の大崩壊
だった。斜面の崩壊と言うよりむしろ山が崩れていると言った方が当たっている。これが又川谷を埋
め尽くす土石流の供給源だったのか。
何もかもを破壊し尽くされた目の前の現実をにわかに受け入れることができない自分がいる。ここ
は又川谷の中でも最良の区間だったのである。
これが供給源ならここより上流は無傷かもしれない。その甘い期待も儚く打ち砕かれる。
滝を二つ三つ越えると岩と倒木で谷が塞がれている。我慢もそろそろ限界に近付いて来たがとにか
く稜線へ抜けるしかない。
[attachment=1]P1140545_1.JPG[/attachment]
竜ヶ岳への直登支流を過ぎてやっと渓相が落ち着いた。8mほどの滝を直登すると谷は源流のやさ
しい表情を見せる。県境稜線を歩いている登山者が見えた。
ほどなく稜線に到達してセキオノコバへ向かう。手前の池でランチのつもりだったが、あまりにも
雨が少ないせいで池の水の色がまるで重油のようだ。
あまり気分もよろしくないので静ヶ岳の分岐付近の樹林に腰を降ろした。いいところだ。
[attachment=0]P1140566_1.JPG[/attachment]
寄るつもりのなかった静ヶ岳だがついつい足が向いてしまった。何度も登っているし、別に好き
な山頂でもないのに、ここまで来たら登っておこうと思ってしまうのは悲しい性だろうか。
その代わりというわけでもないが、山頂からは登山道を戻らず、県境ライン沿いに銚子岳との鞍部
を目指す。この区間の県境縦走路は県境を通っていないのだ。正確に言うと、県境も主稜線を外れ
ている。地図をちゃんと読めば、県境沿いに下ると茶屋川支流の太夫谷の源頭二俣へ下りることが
わかる。ちゃんと読んでいなかったのでアレっと思ってしまったが、対岸の急斜面をトラバースし
て少し登ると登山道に復帰した。
銚子谷の源頭にあたるここからは、青川の銚子谷を埋めた土石流の供給源となった両岸の崩落個
所がよくわかる。銚子谷を遡行したのはもう20年以上前の話である。今では20mの銚子大滝も埋ま
ってしまったと聞く。
山も谷も人も、いつまでも変わらずにはいられないのだろう。変わってしまう前の姿を知っている
だけでも幸せと言うべきだろうか。
銚子岳を訪れるのはその銚子谷遡行以来だ。半分植林のあまり落ち着かない山頂ではある。
ここから茶屋川まで西尾根を一本道。迷うところはないだろう。
尾根の様子はと言うと、大半が植林の面白みのないルートだ。踏み跡はしっかりしており仕事は
速い。622mピーク手前で林道を横切るが、ピーク方向にも林道ができていた。
ピークの林道終点からうっかり尾根を直進しそうになったが、ここは左だ。明瞭な杣道を進んで最
後は右手の浅い谷へ下りると目の前が茶屋川沿いの林道だった。
茨川林道は太夫谷の先(上流から見て)で大きく崩落しており車では通れない。入口にあった通行
止めの表示はこれのことか。重機が河原に降ろされ、復旧工事の真っ最中というところである。
30分弱の林道歩きで駐車地に帰着。先週の口直しのつもりが新たな絶望を生み出した一日だった。
さらば又川谷。そしてありがとう。もう訪れることはないだろう。悲しいけれど。
山日和
どこかで見たような気がする風景の場所に来た。