【湖北】期待と失望の狭間で 針川左俣から下谷山へ
Posted: 2013年6月10日(月) 23:55
【日 付】2013年6月8日(土)
【山 域】湖北 長浜市余呉町針川周辺
【天 候】晴れ
【コース】大音波橋手前7:22---8:11針川---8:34二俣---12:20国境稜線13:40---13:48下谷山
---15:24大音波---16:10林道---16:20駐車地
長い人生、当たりもあれば大ハズレの時もあるものだ。期待が大きければ大きいほど外れた時
の失望が大きいのが当然である。針川左俣。ずっと心に温めていた谷はまさにそんな谷だった。
中河内から菅並へ抜ける県道は、情報の通り大音波谷の手前でガッチリと施錠されていた。
これは予想通りなので落胆はない。下山口が近いのでまったく問題はないのだ。
まだ涼しい県道を針川に向かう。梅雨入り以来まったく雨が降っていないので、高時川の水量も
ずいぶん控え目だ。
針川集落跡には釣り師のものだろうか、1台の車が止まっていた。菅並からは通れるのだろうか。
[attachment=4]P1140383_1.JPG[/attachment]
ここから針川を上がるのは4年振りだ。草深い踏み跡を辿って二俣へ向かう。二俣手前に架かる
橋は見事に崩壊して見る影もなかった。ちょっとスリッピーで、健在な頃も恐る恐る渡っていた
橋だったが、なければ割り切って渡渉する方が安全だと言える。
右俣に架かっていた橋の残骸は、前回来た時は辛うじて渡れたのだが、最早そこに橋があった
のかという状態で、1.5tという重量制限の標識だけが空しく立つのみである。
満開のシャガの花を見ながら左俣に入った。地形図では「針川」の表記はこの左俣に書かれて
いるが、実質の本流は上谷山へ突き上げる右俣だろう。この左俣は下谷山と呼ばれているピーク
を源流としている。さしずめ、右俣が「上谷」で左俣が「下谷」というところだろうか。
完全に崩壊した橋を二つやり過ごして、左岸に続く道を辿る。この左岸の尾根には江越国境稜
線まで送電線が走り、そこには当然巡視路が伸びている。この巡視路も何回か通ったが、まるで
スキー場のような送電線下の伐採地もあれば、なかなか目を引くブナ林もある評価の難しい尾根
だ。ただ展望には恵まれている。
最終堰堤の手前で巡視路と別れて、堰堤上の河原に着地した。ずっと上流までずいぶん見晴ら
しがいいことに一抹の不安を覚える。
地形図通りの平流が続いた。下部は植林もあるので別に期待はしていない。時折きれいな流れ
を見せてくれればいいという感じだった。ところが行けども行けども両岸は伐採跡の草が茂り、
いつまでも頭上は開けたままだ。たまに自然林に覆われたところが出てくるもすぐに息切れして
しまい5分と続かない。
両岸から支流が合する度に、もうそろそろと思うが、谷は一向に変化を見せず何ごとも起らない。
滝の定義を「2m以上の落差を持つ水流」とするならば、この谷にはたったひとつの滝すらないの
だ。
[attachment=3]P1140410_1.JPG[/attachment]
中盤までの平流は地形図を見て織り込み済みだったが、やや等高線の詰まった源流部には少し
期待していた。もちろん目を瞠るような連瀑帯は期待していないが、トチやサワグルミ、ブナの
樹林の下を気持ち良く遡行できるのではと思っていた。しかし現実は非情である。
滝の姿を目にしない内に水流は痩せ細り、泥の詰まった溝状の流れはやがて消えてしまった。
既知の国境稜線のブナ林からすれば、せめて最源頭部だけでも気持ち良くとの希望も空しく泥溝
は続き、登りらしい登りもなく稜線に辿り着いた。反対側の斜面には素晴らしいブナ林が広がっ
ている。
ここまで来ると腹立たしいのを通り越して苦笑いするしかない。勝手な期待を抱いた自分が悪い
だけなのである。
沢登りを始めて30数年、ここまでガックリきた沢は初めてだ。若狭の滝の少ない谷でも数mの滝
が3つ4つはあるものだ。これだけ何もないというのもかえって感動ものかもしれない。
[attachment=2]P1140429_1.JPG[/attachment]
この3つの谷の源頭が絡み合う江越国境稜線は非常に複雑な地形を見せる。今詰め上げた鞍部を
反対側に少し下るとそのまま栃ノ木峠への国境稜線に続いているのだ。
その左側は滋賀県側の大音波谷へ、右に落ちる谷は福井県側の日野川の支流だ。
今鞍部を越えてきたばかりなのに、目の前にまた鞍部と呼ぶのが憚られるほどの鞍部がある。
いいところには違いないのでここでランチとしよう。
蚊取り線香を点けて沢靴から足を解放してやる。せっかく冷凍室で冷やしたビールを家に忘れ
て来た。生ぬるいビールを飲むのも嫌なので、沢の水切れ寸前にスーパーのポリ袋に水を入れ、
その中にビールを仕込んでザックにぶら下げてきたのだ。冷え具合はと見てみると、まあなんと
か飲めるというレベルだった。
風がそよそよと吹いて涼しく、木漏れ日がうれしいぐらいの気持ちのいいランチタイムだった。
食後、重たくなった体を下谷山まで持ち上げる。よく踏まれた道を10分足らずで山頂に到着。
YTCが設置したトーテムポール状の山名標識があった。
この山頂そのものは潅木帯であまり魅力的ではないが、開けた南側からは遡って来た針川左俣の
向こうに大黒、妙理、安蔵、横山といった湖北の山々の展望が得られた。
[attachment=1]P1140435_1.JPG[/attachment]
下山は地形図に破線路の走る尾根を選んだ。この尾根を歩くのも3回目。ずっとブナ林が続く
尾根だとわかっているので期待を裏切られる心配はない。
ここも余呉トレイルの一環としてYTCによる整備が入っているが、登山道しか歩いたことのない
人にとっては道と呼べるレベルではない。整備以前から踏み跡はあったので、それに少し毛を生
やしたぐらいのものだ。道整備もこの程度が好ましい。
若い木が多いものの、ブナの純林と呼べる森が続き、本日も終盤になってやっと気持ちが盛り上
がって来た。
[attachment=0]P1140460_1.JPG[/attachment]
標高817.6mの三角点が大音波だ。トレイルはここから右に分岐して、大音波谷出合の方向へ向
かっている。登山口の場所は朝確認済みだ。
これまでは巡視路を利用して南東の尾根から登ったことしかなかったので、新しいルートを辿る
のも今日の目的のひとつだった。
南西へ下る尾根は少し進んだところでブナ林が切れ、思いの外雑木主体の細い尾根となった。
無理に付けたような道は急傾斜も多く、下りには不向きかもしれない。何度か滑って転倒してし
まった。最後は道を外してしまい、少し下流側に着地したが、登山口からの傾斜を見れば似たり
寄ったりだったかもしれない。
このYTCのルートより前述した巡視路からの南東尾根の方がはるかに優れていると思う。
尾根に乗るまでの巡視路はジグザクに付けられており、意外に楽に登れるし、何より尾根に乗っ
てからのブナ林の広がりが素晴らしいのだ。
大音波から下谷山、音波、栃ノ木峠の周回を目指すなら、少々遠回りになってもぜひこちらから
のアプローチを試みてほしいものである。
山日和
【山 域】湖北 長浜市余呉町針川周辺
【天 候】晴れ
【コース】大音波橋手前7:22---8:11針川---8:34二俣---12:20国境稜線13:40---13:48下谷山
---15:24大音波---16:10林道---16:20駐車地
長い人生、当たりもあれば大ハズレの時もあるものだ。期待が大きければ大きいほど外れた時
の失望が大きいのが当然である。針川左俣。ずっと心に温めていた谷はまさにそんな谷だった。
中河内から菅並へ抜ける県道は、情報の通り大音波谷の手前でガッチリと施錠されていた。
これは予想通りなので落胆はない。下山口が近いのでまったく問題はないのだ。
まだ涼しい県道を針川に向かう。梅雨入り以来まったく雨が降っていないので、高時川の水量も
ずいぶん控え目だ。
針川集落跡には釣り師のものだろうか、1台の車が止まっていた。菅並からは通れるのだろうか。
[attachment=4]P1140383_1.JPG[/attachment]
ここから針川を上がるのは4年振りだ。草深い踏み跡を辿って二俣へ向かう。二俣手前に架かる
橋は見事に崩壊して見る影もなかった。ちょっとスリッピーで、健在な頃も恐る恐る渡っていた
橋だったが、なければ割り切って渡渉する方が安全だと言える。
右俣に架かっていた橋の残骸は、前回来た時は辛うじて渡れたのだが、最早そこに橋があった
のかという状態で、1.5tという重量制限の標識だけが空しく立つのみである。
満開のシャガの花を見ながら左俣に入った。地形図では「針川」の表記はこの左俣に書かれて
いるが、実質の本流は上谷山へ突き上げる右俣だろう。この左俣は下谷山と呼ばれているピーク
を源流としている。さしずめ、右俣が「上谷」で左俣が「下谷」というところだろうか。
完全に崩壊した橋を二つやり過ごして、左岸に続く道を辿る。この左岸の尾根には江越国境稜
線まで送電線が走り、そこには当然巡視路が伸びている。この巡視路も何回か通ったが、まるで
スキー場のような送電線下の伐採地もあれば、なかなか目を引くブナ林もある評価の難しい尾根
だ。ただ展望には恵まれている。
最終堰堤の手前で巡視路と別れて、堰堤上の河原に着地した。ずっと上流までずいぶん見晴ら
しがいいことに一抹の不安を覚える。
地形図通りの平流が続いた。下部は植林もあるので別に期待はしていない。時折きれいな流れ
を見せてくれればいいという感じだった。ところが行けども行けども両岸は伐採跡の草が茂り、
いつまでも頭上は開けたままだ。たまに自然林に覆われたところが出てくるもすぐに息切れして
しまい5分と続かない。
両岸から支流が合する度に、もうそろそろと思うが、谷は一向に変化を見せず何ごとも起らない。
滝の定義を「2m以上の落差を持つ水流」とするならば、この谷にはたったひとつの滝すらないの
だ。
[attachment=3]P1140410_1.JPG[/attachment]
中盤までの平流は地形図を見て織り込み済みだったが、やや等高線の詰まった源流部には少し
期待していた。もちろん目を瞠るような連瀑帯は期待していないが、トチやサワグルミ、ブナの
樹林の下を気持ち良く遡行できるのではと思っていた。しかし現実は非情である。
滝の姿を目にしない内に水流は痩せ細り、泥の詰まった溝状の流れはやがて消えてしまった。
既知の国境稜線のブナ林からすれば、せめて最源頭部だけでも気持ち良くとの希望も空しく泥溝
は続き、登りらしい登りもなく稜線に辿り着いた。反対側の斜面には素晴らしいブナ林が広がっ
ている。
ここまで来ると腹立たしいのを通り越して苦笑いするしかない。勝手な期待を抱いた自分が悪い
だけなのである。
沢登りを始めて30数年、ここまでガックリきた沢は初めてだ。若狭の滝の少ない谷でも数mの滝
が3つ4つはあるものだ。これだけ何もないというのもかえって感動ものかもしれない。
[attachment=2]P1140429_1.JPG[/attachment]
この3つの谷の源頭が絡み合う江越国境稜線は非常に複雑な地形を見せる。今詰め上げた鞍部を
反対側に少し下るとそのまま栃ノ木峠への国境稜線に続いているのだ。
その左側は滋賀県側の大音波谷へ、右に落ちる谷は福井県側の日野川の支流だ。
今鞍部を越えてきたばかりなのに、目の前にまた鞍部と呼ぶのが憚られるほどの鞍部がある。
いいところには違いないのでここでランチとしよう。
蚊取り線香を点けて沢靴から足を解放してやる。せっかく冷凍室で冷やしたビールを家に忘れ
て来た。生ぬるいビールを飲むのも嫌なので、沢の水切れ寸前にスーパーのポリ袋に水を入れ、
その中にビールを仕込んでザックにぶら下げてきたのだ。冷え具合はと見てみると、まあなんと
か飲めるというレベルだった。
風がそよそよと吹いて涼しく、木漏れ日がうれしいぐらいの気持ちのいいランチタイムだった。
食後、重たくなった体を下谷山まで持ち上げる。よく踏まれた道を10分足らずで山頂に到着。
YTCが設置したトーテムポール状の山名標識があった。
この山頂そのものは潅木帯であまり魅力的ではないが、開けた南側からは遡って来た針川左俣の
向こうに大黒、妙理、安蔵、横山といった湖北の山々の展望が得られた。
[attachment=1]P1140435_1.JPG[/attachment]
下山は地形図に破線路の走る尾根を選んだ。この尾根を歩くのも3回目。ずっとブナ林が続く
尾根だとわかっているので期待を裏切られる心配はない。
ここも余呉トレイルの一環としてYTCによる整備が入っているが、登山道しか歩いたことのない
人にとっては道と呼べるレベルではない。整備以前から踏み跡はあったので、それに少し毛を生
やしたぐらいのものだ。道整備もこの程度が好ましい。
若い木が多いものの、ブナの純林と呼べる森が続き、本日も終盤になってやっと気持ちが盛り上
がって来た。
[attachment=0]P1140460_1.JPG[/attachment]
標高817.6mの三角点が大音波だ。トレイルはここから右に分岐して、大音波谷出合の方向へ向
かっている。登山口の場所は朝確認済みだ。
これまでは巡視路を利用して南東の尾根から登ったことしかなかったので、新しいルートを辿る
のも今日の目的のひとつだった。
南西へ下る尾根は少し進んだところでブナ林が切れ、思いの外雑木主体の細い尾根となった。
無理に付けたような道は急傾斜も多く、下りには不向きかもしれない。何度か滑って転倒してし
まった。最後は道を外してしまい、少し下流側に着地したが、登山口からの傾斜を見れば似たり
寄ったりだったかもしれない。
このYTCのルートより前述した巡視路からの南東尾根の方がはるかに優れていると思う。
尾根に乗るまでの巡視路はジグザクに付けられており、意外に楽に登れるし、何より尾根に乗っ
てからのブナ林の広がりが素晴らしいのだ。
大音波から下谷山、音波、栃ノ木峠の周回を目指すなら、少々遠回りになってもぜひこちらから
のアプローチを試みてほしいものである。
山日和
長い人生、当たりもあれば大ハズレの時もあるものだ。