【奥美濃】石徹白大杉から丸山・芦倉山へ
Posted: 2013年4月22日(月) 00:06
【日 付】2013年4月20日(土)
【山 域】奥美濃 石徹白 丸山1786m・芦倉山1716.7m
【天 候】曇りのち雨
【コース】石徹白中居神社5:57---7:27大杉登山口7:39---9:47神鳩ノ宮避難小屋10:13---11:38丸山11:54---13:41芦倉山14:19
---14:59林道終点---16:53駐車地
石徹白南部の山々もそろそろシーズンオフなのか、中居神社の駐車場に車の影はなかった。どんよりとした空の下、もうひとつ盛り上がらない心に鞭打って大杉林道へ足を踏み出した。来週の末には通行止めが解除されるらしい。この林道を歩くのも10年振りだ。
林道は完全に除雪されており、車の通行に何の支障もないが、入口を簡易バリケードでなく重機で完全に防ぐのが最近の流れのようである。
今日の目的は初河(はっこ)山から丸山、芦倉山への周回。長年温めながら、いつも優先順位が後回しになつて果たせなかった計画だ。しかし石徹白へ入る手前から見た初河山あたりは南面のせいもあるがまっ黒で、もうひとつ食指が動かなかった。
初河谷出合の取付き付近も鬱陶しそうな植林で上がってみようという気が起きない。雪がないなら大杉登山口まで歩いて、笠羽橋から薙刀北東尾根~薙刀山で遊んでみるか。こちらも12年振りだ。
どうするか決めかねているうちに登山口に着いた。途中で用足しした時に地図を落としてしまったらしい。しかしだいたいのことは頭に入っているし、GPSもあるので不安はない。
休憩舎でひと息入れて心を決めた。初志貫徹で行こう。白山南縦走路へ歩き出した。
石徹白大杉に挨拶して、すぐ前の尾根に取り付く。登山道はもう少し谷沿いに進んで上がるのだが忘れていた。おかげよけいなヤブを漕ぐ羽目になってしまった。
登山道と合流するあたりで雪が繋がった。この道は無雪期に歩くことが多く、残雪期でも連休の頃だと登山道が露出しているところも多い。無雪期は林間の道という印象が強いが、雪が多いと右側に雪堤が張り出して展望のルートになる。
つぼ足でも不自由しないが、担いでいるよりはとスノーシューを履いた。今日は新調したライトニングアクシスのデビュー戦である。よく働いてくれた初代アッセントは先週でお役御免となった。
このアクシスのバインディングシステムは秀逸で、装着も実にスムーズだ。ヒールリフターを上げるのにいちいち屈まなくてもいいのも嬉しい。
ずっとブナ林が続く尾根は歩いていても気持がいい。振り返れば野伏、薙刀、日岸といった石徹白川右岸の山々がズラっと並んでいる。場所によって見え隠れする願教寺山。手前に見える薙刀北東尾根もまだまだきれいな雪稜を維持していた。
わずかに日が差して雪面にブナの影が伸びたが、これがこの日最初で最後の太陽の光だった。
[attachment=4]P1130178_1.JPG[/attachment]
おたけり坂の急斜面もヒールリフターのおかげでキックステップ不要の楽々登坂である。足元は少し重くなっても足を置くだけで階段を登るように歩けるというのは楽なものだ。
1612m標高点から広い雪尾根を進む。平坦になったらすぐ小屋というイメージがあったが以外に遠かった。
左に銚子ヶ峰、右に初河山から丸山の尾根。南面から見るのとはえらい違いで、ここから見る初河山の尾根にもしっかり雪が着いている。しかし丸山の山頂あたりはオオシラビソだろうか樹林が目立ち、もうひとつ風采が上がらない。やはり山頂に気の無い山の方が見栄えがいい。
神鳩(かんばと)ノ宮避難小屋に到着。思ったより時間が掛ってしまった。何度も訪れていながら泊まったことがない。ここへ初めて来たのは12年前。ちょうど小屋が建て替えられたばかりでまだ供用開始されておらず、寒空の下、小屋の中に入れず外で震えながらメシを食ったことを思い出す。
[attachment=3]P1130227_1.JPG[/attachment]
小屋でしばし休憩の後、未踏の丸山への稜線に向けて歩きだした。丸山まで1時間半というところだろうか。
昔の越美国境まで上がると三ノ峰、別山から南白山、焼滑、丸山(1900.6m)、日照岳と並ぶ別山東尾根が屏風のように横たわる。あの稜線をいつか歩いてみたいものだ。
尾根の北側、尾上郷川の源流域に広がるブナ林は素晴らしい。日差しがあればどんなに美しい風景だろう。残念ながら今日はモノクロの世界である。
この標高はブナの上限ラインのようで、尾根上にはオオシラビソとダケカンバしか見られない。
坦々と進んで、丸山への最後の登りに掛かる。遠くからのイメージとは違って、山頂直下は広い雪尾根で気持ち良く歩くことができた。
[attachment=2]パノラマ 5_1_1.JPG[/attachment]
雪原を進んで縦長の山頂台地の南端にある三角点(当然見えないが)に到着。まずは第一関門突破というところだ。
ここから見る芦倉山は意外に近く感じた。2時間、ひょっとしたら1時間半でも行けるかもしれない。未知のルートを考えればここでゆっくりランチというわけにもいかず、先を急ぐ。
右に分岐する初河山への尾根は実に見事なラインを描いて魅力的だ。もう少し早い時期に上がってみたいと思う。
少し下ったところで雪尾根がササに分断された。左右を窺うも雪が繋がっている様子はない。大抵どちらかに活路があるものだが、あきらめてスノーシューを脱いでササに突入。
後ろ向きのササ懸垂で下れば何ということもない。逆目のササは登りでは拷問を受けているようだが、順目の下りは体を被せて行けば楽勝だ。但しササを持つ手を離せばササの上を滑り落ちてしまうが。
[attachment=1]P1130294_1.JPG[/attachment]
ササ地帯も30mほどで終了。そこからはまた雪尾根が繋がる。
丸山山頂から見た芦倉山への尾根の途中に気になるポイントがあった。頂稜にモナカのような雪を乗せて、その側面は雪が滑り落ちて地肌が見えている場所と、それに続く痩せ尾根でヤブが完全に露出している場所だ。そこを除けばほぼ問題なさそうな雪尾根が続いているようだ。
Ca1670mピークで右折すると問題の箇所が正面に迫った。そこは1669mのピークである。
ヤブの出ている西側を避けて、東斜面の雪を繋いでトラバースして接近。割れた雪を飛び越えて最後の登りにかかれば3mほどの雪壁に阻まれる。オオシラビソの立ち木を利用して強引にずり上がって無事モナカの上に立った。
続く下りが第2ポイントである。尾根は幅30センチほどしかなく、潅木が密生している。
雪に覆われていればもっと恐いところかもしれない。ヤブを回避するために右手の谷を少し下りて派生する尾根にトラバース。その尾根を少し登ってルートに復帰した。
谷を滑落するリスクを考えればここは強引に尾根芯を下りてもよかったかもしれない。
突っ込まなかったのは新調したレインウェアを傷だらけにするのが忍びなかっただけである。
しばらくはのんびりと雪尾根を歩いた先に、本日最後の関門が控えていた。芦倉山への最後の登りは短いものの、雪壁状になって立ち上がっている。かなりの傾斜である。
ここでストックをピッケルに、スノーシューをアイゼンに換装した。ピッケルを手にするのは初登りの鎌ヶ岳以来だ。
極端に短くしたストックを左手に二丁拳銃で雪壁に取り付いた。壁のど真ん中には雪割れのU字溝みたいなものができて面白い眺めだ。
3点確保しながら一歩一歩高度を上げる。アイゼンが小気味良く決まった。傾斜が緩んでU字溝の先端に立つと、溝の中は軽いブッシュで傾斜も弱い。ここを上がれば良かった。
後から写真を見てみたら何のことはない、一番斜度のきついところを登っていたのだ。
[attachment=0]P1130334_1_1.JPG[/attachment]
緩斜面の雪原を行けば見覚えのある芦倉山の頂上に到着だ。やった。正面には大日岳がまだはるか彼方だ。
間近の小白山を始めとする石徹白川右岸の山並みの向こうには、赤兎、大長、経、荒島といった奥越の山々が控えている。
遠く眺める越美国境は毘沙門から滝波、平家のあたり。国境稜線上はほとんど未踏の地帯である。
天気は下り坂の予報だが、まだすぐに降り始めそうな気配ではない。短時間でもここまで我慢したビールとランチを楽しもう。
雪の上に顔を出したグニャリと曲がったオオシラビソの枝に腰を降ろして乾杯。山のビールの美味さは歩いてきた行程の中身の濃さに比例する。その仮説を実証するような一杯だ。
しかしあんまりのんびりしてはいられない。下りも未知のルートなのだ。14年前に登った南西尾根はヤブの露出が多くて快適とは言えなかった。特に魅力的な樹林があるわけでもない。
そこで某山スキーヤーのHPで見て忘れられなかった保川源流の谷を下りようと思っていた。そこで見た写真は青空と相まって素晴らしい雪渓が山頂に延びていたのだ。
そんな景色に憧れて谷へ飛び込む。さすがにこの時期は雪も汚く雪面はガタガタで、大規模なデブリも出ている。雪崩でなぎ倒されたオオシラビソがあっちこっちに顔を出して、お世辞にも美しい風景とは言えない。
それでも雪渓の下りは仕事が速く、地図上の林道終点まで40分ほどで下りることができた。
と思ったらしばらくで林道の形が消え、谷の二俣に突き当たる。左手の谷を渡渉すると今度は本物の現役の林道が現われた。後はのんびり林道を歩くだけだ。
しかし地図がないとGPSの画面だけでは全体像が捉えにくい。この林道歩きはいったいどれぐらいあるんだろう。そのうち予定通り雨が降り始めた。しとしと程度なのが救いだ。
なんと今回は腕時計も忘れて来たので、時間を確認するのにいちいちカメラの電源を入れなければならない。現在地を確認したところで早く着くわけではないのでひたすら歩いた。
朝日添(わさびそ)川に架かる橋までくれば石徹白上在所の集落はもう目の前だ。
しかし舗装路に変わった道をポクポク歩いていると、目の前に現われたのは集落ではなかった。
100mほど先を悠然と横切る巨大な茶色の塊。思わず目を疑ってしまった。あのー、そっちへ行きたいんですけど。
ストックを打ち鳴らして存在を知らせ、じわじわとその場所に近付いた。いない。レインウェアのフードを脱いで、後ろを振り返りながら足早に立ち去る。集落までわずか5分足らずの場所だった。
少し勢いを増した雨も最後となれば気にならない。駐車場へ戻ると数台の車が増えていた。
この時間まで止まっているということは登山者ではないのだろう。
もうひとつ好天には恵まれなかったが、未踏の丸山~芦倉山の稜線を歩くことができ、前後の林道歩きも含めて満腹の一日だった。
今日は久し振りに白鳥の美人の湯ですべすべになって帰ろう。
山日和
【山 域】奥美濃 石徹白 丸山1786m・芦倉山1716.7m
【天 候】曇りのち雨
【コース】石徹白中居神社5:57---7:27大杉登山口7:39---9:47神鳩ノ宮避難小屋10:13---11:38丸山11:54---13:41芦倉山14:19
---14:59林道終点---16:53駐車地
石徹白南部の山々もそろそろシーズンオフなのか、中居神社の駐車場に車の影はなかった。どんよりとした空の下、もうひとつ盛り上がらない心に鞭打って大杉林道へ足を踏み出した。来週の末には通行止めが解除されるらしい。この林道を歩くのも10年振りだ。
林道は完全に除雪されており、車の通行に何の支障もないが、入口を簡易バリケードでなく重機で完全に防ぐのが最近の流れのようである。
今日の目的は初河(はっこ)山から丸山、芦倉山への周回。長年温めながら、いつも優先順位が後回しになつて果たせなかった計画だ。しかし石徹白へ入る手前から見た初河山あたりは南面のせいもあるがまっ黒で、もうひとつ食指が動かなかった。
初河谷出合の取付き付近も鬱陶しそうな植林で上がってみようという気が起きない。雪がないなら大杉登山口まで歩いて、笠羽橋から薙刀北東尾根~薙刀山で遊んでみるか。こちらも12年振りだ。
どうするか決めかねているうちに登山口に着いた。途中で用足しした時に地図を落としてしまったらしい。しかしだいたいのことは頭に入っているし、GPSもあるので不安はない。
休憩舎でひと息入れて心を決めた。初志貫徹で行こう。白山南縦走路へ歩き出した。
石徹白大杉に挨拶して、すぐ前の尾根に取り付く。登山道はもう少し谷沿いに進んで上がるのだが忘れていた。おかげよけいなヤブを漕ぐ羽目になってしまった。
登山道と合流するあたりで雪が繋がった。この道は無雪期に歩くことが多く、残雪期でも連休の頃だと登山道が露出しているところも多い。無雪期は林間の道という印象が強いが、雪が多いと右側に雪堤が張り出して展望のルートになる。
つぼ足でも不自由しないが、担いでいるよりはとスノーシューを履いた。今日は新調したライトニングアクシスのデビュー戦である。よく働いてくれた初代アッセントは先週でお役御免となった。
このアクシスのバインディングシステムは秀逸で、装着も実にスムーズだ。ヒールリフターを上げるのにいちいち屈まなくてもいいのも嬉しい。
ずっとブナ林が続く尾根は歩いていても気持がいい。振り返れば野伏、薙刀、日岸といった石徹白川右岸の山々がズラっと並んでいる。場所によって見え隠れする願教寺山。手前に見える薙刀北東尾根もまだまだきれいな雪稜を維持していた。
わずかに日が差して雪面にブナの影が伸びたが、これがこの日最初で最後の太陽の光だった。
[attachment=4]P1130178_1.JPG[/attachment]
おたけり坂の急斜面もヒールリフターのおかげでキックステップ不要の楽々登坂である。足元は少し重くなっても足を置くだけで階段を登るように歩けるというのは楽なものだ。
1612m標高点から広い雪尾根を進む。平坦になったらすぐ小屋というイメージがあったが以外に遠かった。
左に銚子ヶ峰、右に初河山から丸山の尾根。南面から見るのとはえらい違いで、ここから見る初河山の尾根にもしっかり雪が着いている。しかし丸山の山頂あたりはオオシラビソだろうか樹林が目立ち、もうひとつ風采が上がらない。やはり山頂に気の無い山の方が見栄えがいい。
神鳩(かんばと)ノ宮避難小屋に到着。思ったより時間が掛ってしまった。何度も訪れていながら泊まったことがない。ここへ初めて来たのは12年前。ちょうど小屋が建て替えられたばかりでまだ供用開始されておらず、寒空の下、小屋の中に入れず外で震えながらメシを食ったことを思い出す。
[attachment=3]P1130227_1.JPG[/attachment]
小屋でしばし休憩の後、未踏の丸山への稜線に向けて歩きだした。丸山まで1時間半というところだろうか。
昔の越美国境まで上がると三ノ峰、別山から南白山、焼滑、丸山(1900.6m)、日照岳と並ぶ別山東尾根が屏風のように横たわる。あの稜線をいつか歩いてみたいものだ。
尾根の北側、尾上郷川の源流域に広がるブナ林は素晴らしい。日差しがあればどんなに美しい風景だろう。残念ながら今日はモノクロの世界である。
この標高はブナの上限ラインのようで、尾根上にはオオシラビソとダケカンバしか見られない。
坦々と進んで、丸山への最後の登りに掛かる。遠くからのイメージとは違って、山頂直下は広い雪尾根で気持ち良く歩くことができた。
[attachment=2]パノラマ 5_1_1.JPG[/attachment]
雪原を進んで縦長の山頂台地の南端にある三角点(当然見えないが)に到着。まずは第一関門突破というところだ。
ここから見る芦倉山は意外に近く感じた。2時間、ひょっとしたら1時間半でも行けるかもしれない。未知のルートを考えればここでゆっくりランチというわけにもいかず、先を急ぐ。
右に分岐する初河山への尾根は実に見事なラインを描いて魅力的だ。もう少し早い時期に上がってみたいと思う。
少し下ったところで雪尾根がササに分断された。左右を窺うも雪が繋がっている様子はない。大抵どちらかに活路があるものだが、あきらめてスノーシューを脱いでササに突入。
後ろ向きのササ懸垂で下れば何ということもない。逆目のササは登りでは拷問を受けているようだが、順目の下りは体を被せて行けば楽勝だ。但しササを持つ手を離せばササの上を滑り落ちてしまうが。
[attachment=1]P1130294_1.JPG[/attachment]
ササ地帯も30mほどで終了。そこからはまた雪尾根が繋がる。
丸山山頂から見た芦倉山への尾根の途中に気になるポイントがあった。頂稜にモナカのような雪を乗せて、その側面は雪が滑り落ちて地肌が見えている場所と、それに続く痩せ尾根でヤブが完全に露出している場所だ。そこを除けばほぼ問題なさそうな雪尾根が続いているようだ。
Ca1670mピークで右折すると問題の箇所が正面に迫った。そこは1669mのピークである。
ヤブの出ている西側を避けて、東斜面の雪を繋いでトラバースして接近。割れた雪を飛び越えて最後の登りにかかれば3mほどの雪壁に阻まれる。オオシラビソの立ち木を利用して強引にずり上がって無事モナカの上に立った。
続く下りが第2ポイントである。尾根は幅30センチほどしかなく、潅木が密生している。
雪に覆われていればもっと恐いところかもしれない。ヤブを回避するために右手の谷を少し下りて派生する尾根にトラバース。その尾根を少し登ってルートに復帰した。
谷を滑落するリスクを考えればここは強引に尾根芯を下りてもよかったかもしれない。
突っ込まなかったのは新調したレインウェアを傷だらけにするのが忍びなかっただけである。
しばらくはのんびりと雪尾根を歩いた先に、本日最後の関門が控えていた。芦倉山への最後の登りは短いものの、雪壁状になって立ち上がっている。かなりの傾斜である。
ここでストックをピッケルに、スノーシューをアイゼンに換装した。ピッケルを手にするのは初登りの鎌ヶ岳以来だ。
極端に短くしたストックを左手に二丁拳銃で雪壁に取り付いた。壁のど真ん中には雪割れのU字溝みたいなものができて面白い眺めだ。
3点確保しながら一歩一歩高度を上げる。アイゼンが小気味良く決まった。傾斜が緩んでU字溝の先端に立つと、溝の中は軽いブッシュで傾斜も弱い。ここを上がれば良かった。
後から写真を見てみたら何のことはない、一番斜度のきついところを登っていたのだ。
[attachment=0]P1130334_1_1.JPG[/attachment]
緩斜面の雪原を行けば見覚えのある芦倉山の頂上に到着だ。やった。正面には大日岳がまだはるか彼方だ。
間近の小白山を始めとする石徹白川右岸の山並みの向こうには、赤兎、大長、経、荒島といった奥越の山々が控えている。
遠く眺める越美国境は毘沙門から滝波、平家のあたり。国境稜線上はほとんど未踏の地帯である。
天気は下り坂の予報だが、まだすぐに降り始めそうな気配ではない。短時間でもここまで我慢したビールとランチを楽しもう。
雪の上に顔を出したグニャリと曲がったオオシラビソの枝に腰を降ろして乾杯。山のビールの美味さは歩いてきた行程の中身の濃さに比例する。その仮説を実証するような一杯だ。
しかしあんまりのんびりしてはいられない。下りも未知のルートなのだ。14年前に登った南西尾根はヤブの露出が多くて快適とは言えなかった。特に魅力的な樹林があるわけでもない。
そこで某山スキーヤーのHPで見て忘れられなかった保川源流の谷を下りようと思っていた。そこで見た写真は青空と相まって素晴らしい雪渓が山頂に延びていたのだ。
そんな景色に憧れて谷へ飛び込む。さすがにこの時期は雪も汚く雪面はガタガタで、大規模なデブリも出ている。雪崩でなぎ倒されたオオシラビソがあっちこっちに顔を出して、お世辞にも美しい風景とは言えない。
それでも雪渓の下りは仕事が速く、地図上の林道終点まで40分ほどで下りることができた。
と思ったらしばらくで林道の形が消え、谷の二俣に突き当たる。左手の谷を渡渉すると今度は本物の現役の林道が現われた。後はのんびり林道を歩くだけだ。
しかし地図がないとGPSの画面だけでは全体像が捉えにくい。この林道歩きはいったいどれぐらいあるんだろう。そのうち予定通り雨が降り始めた。しとしと程度なのが救いだ。
なんと今回は腕時計も忘れて来たので、時間を確認するのにいちいちカメラの電源を入れなければならない。現在地を確認したところで早く着くわけではないのでひたすら歩いた。
朝日添(わさびそ)川に架かる橋までくれば石徹白上在所の集落はもう目の前だ。
しかし舗装路に変わった道をポクポク歩いていると、目の前に現われたのは集落ではなかった。
100mほど先を悠然と横切る巨大な茶色の塊。思わず目を疑ってしまった。あのー、そっちへ行きたいんですけど。
ストックを打ち鳴らして存在を知らせ、じわじわとその場所に近付いた。いない。レインウェアのフードを脱いで、後ろを振り返りながら足早に立ち去る。集落までわずか5分足らずの場所だった。
少し勢いを増した雨も最後となれば気にならない。駐車場へ戻ると数台の車が増えていた。
この時間まで止まっているということは登山者ではないのだろう。
もうひとつ好天には恵まれなかったが、未踏の丸山~芦倉山の稜線を歩くことができ、前後の林道歩きも含めて満腹の一日だった。
今日は久し振りに白鳥の美人の湯ですべすべになって帰ろう。
山日和
石徹白南部の山々もそろそろシーズンオフなのか、中居神社の駐車場に車の影はなかった。