【越美】国境落ち穂拾い 杉谷山から飯盛山へ
Posted: 2013年4月01日(月) 21:05
できないと諦めていたことが、ひょんなきっかけから頭をもたげてくることがある。
越前さんが始めた越美国境稜線踏破。昔から思い描きながらもその困難さは、特に地の利のない
大阪の登山者にとっては気の遠くなるような道のりだった。
完全踏破は無理かもしれないが、少しずつでも繋いで行こう。再びそう思わせてくれたのは越前さ
んのおかげだ。継ぎはぎだらけでも歩いてみよう。
【日 付】2013年3月30日(土)
【山 域】越美国境 杉谷山1281.6m、飯盛山1201.9m
【天 候】晴れ
【メンバー】ふ~さん、山日和
【コース】巣原トンネル先駐車地6:40---7:20熊河---8:35杉ヶ谷出合8:53---11:08杉谷山12:48---
14:18 1226mJP 14:43---15:14飯盛山---16:45熊河---17:39駐車地
この季節の越美国境へのアプローチは除雪の進行状況に大きく左右される。広野ダム付近と違い、
人の常住する集落から遠く離れた登山口へ到達すること自体が非常に困難なのだ。
今年の状況はどうか。3年前の4月初めは巣原トンネルまで入ることができた。最低限そこまで入れ
れば良しとしよう。それでも登山開始までには2時間ばかりの国道歩きが必要だ。
前回、出口で雪の壁に阻まれた巣原トンネルの先まで除雪が進んでいた。この調子なら熊河(く
まのこ)集落跡まで入れるんじゃないかと甘い期待を膨らませたが、1.5キロほどで除雪は終わって
いた。ブルドーザーが3台置いてあり。除雪作業もたけなわというところだ。
ちょうど国道の新しいトンネルを掘っているところで、開通も間近という雰囲気である。
すぐにスノーシューを装着。ビシビシの締まり雪を想像していたが、さほどでもなかった。
20分ほどは短縮できたが長い雪の国道歩き。じっくり歩いて行こう。
[attachment=4]P1120594_1_1.JPG[/attachment]
3年前もある意味感動したのだが、広い完全2車線の国道に1m以上の雪がベッタリと積もり、どこ
までも続いているという光景は新鮮だ。ふ~さんも初めて見る景色に満更でもなさそうである。
熊河の集落跡まで来ると、国道の標識が辛うじて頭を出していた。国道をショートカットして峠
を越える。峠のお地蔵さんにはビールが供えられていた。ビールを忘れた時には借りて行くのもい
いだろう。但し、返しに来るのが大変だが。
峠を越えるとこんな山の奥にと思うような開けた谷間が現われた。温見(ぬくみ)の集落跡である。
数キロに渡って広い河原が続き、夏の間は人が戻って来るのだろう、現役と思しき建物が数軒散在
している。ようやく姿を現した太陽の方向は美濃国への入口、温見峠だ。
国道157号がクランクして温見川を渡るところで国道と別れる。右から入る杉ヶ谷と本流の間の
尾根が目的のルートである。
出合の広い河原でひと息入れた。今日もいい天気だ。多少心配していた渡渉もひざ下程度の水流で、
必殺スノーシュー渡渉で難なく切り抜けた。
北面の尾根にしては雪はまばらで緩み気味である。しかし雪のないところでも明瞭な踏み跡があ
り、スノーシューを履いたまま進む。雪がなくてもヒールリフターを立てて登れば登山靴よりもふ
くらはぎが楽かもしれない。
標高が上がると雪も繋がってきた。1016m標高点あたりでは尾根も広がりを見せていい雰囲気だ。
一度伐採されているのだろう、尾根上には太い木はほとんどなく、若いブナ林が続いた。
振り返った後方にせり上がる山並みがどうしても同定できない。見慣れない角度からの山は知って
いるはずでも位置関係が判然としないのだ。
左側には姥ヶ岳の特徴のないやたら平べったい山稜が横たわっている。
[attachment=3]P1120672_1.JPG[/attachment]
1174m手前の尾根に合流すると、「おおっ」と同時に感嘆の声が上がった。目の前にドーンと現
われたのは能郷白山だ。右に控える三角錐の磯倉と並んで、間近に見るその山体のボリュームに圧
倒される。ここからはその眺めを視界に入れながらの雪尾根漫歩である。
前方の木々に白く光るのは霧氷だろうか。近付いてみると、陽光に照らされた融け始めた霧氷が金
属音を立てながら、ハラハラと雪面に落ちて行く。なんとも言えない美しさだ。
1174m付近からは杉谷山の名前とは裏腹に太いブナも目立ち始めた。そして広大な雪原の中のわ
ずかな高まりが杉谷山、美濃側では杉倉と呼ばれる山頂だった。
5年前、白谷出合から能郷白山、磯倉と歩いてここに到達した時には一面のガスの中で何も見え
なかった。方向さえ定まらぬ状況で、恐らくここが山頂だろうとわずかな時間ザックを降ろしただ
けだった。今は雲ひとつない青空の下、ありったけの視界を欲しいままにしている。時間は早いが
昼メシにしよう。
福井・岐阜の県境はこの杉谷山でUターンするように引かれている。厳密に言うと山頂は県境か
ら少し外れている。足元に落ちる緩く浅い谷だけが岐阜県というわけだ。
あの日はガスの中、越美国境稜線の分岐を確認した後ひたすら北に向かって登って行った。こんな
風になっていたのか。
岐阜県の斜面に腰を降ろす。ふ~さんが不用意に雪の上に置いたペットボトルがするすると滑り
落ちてブナの根穴へ落ちた。「よかった~。」と拾いに行くが、穴の根元は深くて狭く、頭から突
っ込んでも届かない。とりあえずメシを食ってからにしようと一旦作業を中断した。
担ぎ上げたビールを急速冷却して乾杯。先週に続いて最高の天気の中、最高の一杯を楽しむ。
[attachment=2]P1120754_1.JPG[/attachment]
食後、ペットボトル救出作戦を再開。ピッケルで雪穴を広げてやっとの思いで拾い上げることが
できた。かれこれ30分近くはこの作業に費やしたのではないだろうか。やれやれである。
いよいよ待望の越美国境稜線へ踏み出した。5年前にガスの中で見たこの稜線に強く心惹かれた。
抜けるような青空の下、今その稜線を歩いている。
大きなブナが立ち並ぶその稜線は想像通り、いや、想像をはるかに凌ぐ素晴らしい雪の街道だった。
まさに喜色満面。「ええなあ~」「最高ですねえ」と何度口にしただろう。
どこを切り取っても絵になる風景の連続である。
特に素晴らしいのは1167m標高点のあたりだ。幅広の尾根は微妙な起伏を描き、二重山稜風の尾
根に舟窪を配したような地形が連続した。そしてブナ林が切れた雪野原では見事なパノラマが展開
した。
能郷白山に始まり、磯倉、雷倉、花房、小津権現、天狗、黒津、五蛇池、蕎麦粒、烏帽子、高丸が
横一線に並ぶような風景はあまり見たことがない。三周から笹ヶ峰への越美国境。手前には不動、
千回沢。進むべき方向にはいよいよ近くなった若丸の巨体が冠山方面の展望を遮っている。
ここでメシにすればよかったと悔やむほどの展望地は、まさに杉谷・若丸劇場である。
[attachment=1]P1120766_1.JPG[/attachment]
南側斜面には数メートルに及ぶ雪の壁が続いているのに、尾根芯では地肌が覗いているところも
あるのが面白い。
雪面に亀裂が入り始めているのを警戒しながら飯盛山へのジャンクションピークに立った。
飯盛山への尾根にはまだ大きな雪庇が残っている。
少し先の1226mピークへ足を延ばせば若丸山が目の前に現われた。山頂に至る稜線はところどこ
ろヤセて完全にヤブが露出している。3年前少し苦労したことを思い出した。
[attachment=0]P1120793_1.JPG[/attachment]
越美国境からの展望を目に焼き付けて下山にかかる。先週と違って長く緩い下山コースは時間を
食うのだ。件の雪庇に気を付けながら反対側斜面を体を斜めにして通過する。
飯盛山付近は国境稜線の展望地のようなうねりのある雪原が続くが、あれを見てしまうと物足りな
く思えてしまうのは贅沢というものだろう。
進行方向に大きく聳える山々が、朝の登りで見た山だ。ここまで来てようやく部子山(へこさん)
と銀杏峰(げなんぽ)であることに気付いた。その右には荒島岳がわずかに顔を出し、奥には白山が
見える。私の雪山は常に白山の姿を探す山旅のようだ。
この長い尾根の中間部はブナ林が続き、原始の香り漂う太いブナも多い。
ほどよく緩んだ雪にスノーシューをスライドさせながらハイピッチで進むが、なかなか標高を落と
さないのが難点である。
下部では植林混じりのヤセ尾根で半ヤブ漕ぎ状態になり、急坂では滑って七転八倒するなど、すべ
てが気持ち良くというわけにはいかないが、熊河の集落跡までまずまずの雪の繋がりで、問題なく
再び国道157号に下り立った。
国道を歩いて行くと工事中のトンネル出口にブルが止まっていた。朝は雪に覆われていたここま
で除雪が進んでいる。この分なら来週は熊河まで車で入れるかもしれない。
除雪された国道を山の恵みを戴きながら歩けばもう駐車地は近い。
山日和
越前さんが始めた越美国境稜線踏破。昔から思い描きながらもその困難さは、特に地の利のない
大阪の登山者にとっては気の遠くなるような道のりだった。
完全踏破は無理かもしれないが、少しずつでも繋いで行こう。再びそう思わせてくれたのは越前さ
んのおかげだ。継ぎはぎだらけでも歩いてみよう。
【日 付】2013年3月30日(土)
【山 域】越美国境 杉谷山1281.6m、飯盛山1201.9m
【天 候】晴れ
【メンバー】ふ~さん、山日和
【コース】巣原トンネル先駐車地6:40---7:20熊河---8:35杉ヶ谷出合8:53---11:08杉谷山12:48---
14:18 1226mJP 14:43---15:14飯盛山---16:45熊河---17:39駐車地
この季節の越美国境へのアプローチは除雪の進行状況に大きく左右される。広野ダム付近と違い、
人の常住する集落から遠く離れた登山口へ到達すること自体が非常に困難なのだ。
今年の状況はどうか。3年前の4月初めは巣原トンネルまで入ることができた。最低限そこまで入れ
れば良しとしよう。それでも登山開始までには2時間ばかりの国道歩きが必要だ。
前回、出口で雪の壁に阻まれた巣原トンネルの先まで除雪が進んでいた。この調子なら熊河(く
まのこ)集落跡まで入れるんじゃないかと甘い期待を膨らませたが、1.5キロほどで除雪は終わって
いた。ブルドーザーが3台置いてあり。除雪作業もたけなわというところだ。
ちょうど国道の新しいトンネルを掘っているところで、開通も間近という雰囲気である。
すぐにスノーシューを装着。ビシビシの締まり雪を想像していたが、さほどでもなかった。
20分ほどは短縮できたが長い雪の国道歩き。じっくり歩いて行こう。
[attachment=4]P1120594_1_1.JPG[/attachment]
3年前もある意味感動したのだが、広い完全2車線の国道に1m以上の雪がベッタリと積もり、どこ
までも続いているという光景は新鮮だ。ふ~さんも初めて見る景色に満更でもなさそうである。
熊河の集落跡まで来ると、国道の標識が辛うじて頭を出していた。国道をショートカットして峠
を越える。峠のお地蔵さんにはビールが供えられていた。ビールを忘れた時には借りて行くのもい
いだろう。但し、返しに来るのが大変だが。
峠を越えるとこんな山の奥にと思うような開けた谷間が現われた。温見(ぬくみ)の集落跡である。
数キロに渡って広い河原が続き、夏の間は人が戻って来るのだろう、現役と思しき建物が数軒散在
している。ようやく姿を現した太陽の方向は美濃国への入口、温見峠だ。
国道157号がクランクして温見川を渡るところで国道と別れる。右から入る杉ヶ谷と本流の間の
尾根が目的のルートである。
出合の広い河原でひと息入れた。今日もいい天気だ。多少心配していた渡渉もひざ下程度の水流で、
必殺スノーシュー渡渉で難なく切り抜けた。
北面の尾根にしては雪はまばらで緩み気味である。しかし雪のないところでも明瞭な踏み跡があ
り、スノーシューを履いたまま進む。雪がなくてもヒールリフターを立てて登れば登山靴よりもふ
くらはぎが楽かもしれない。
標高が上がると雪も繋がってきた。1016m標高点あたりでは尾根も広がりを見せていい雰囲気だ。
一度伐採されているのだろう、尾根上には太い木はほとんどなく、若いブナ林が続いた。
振り返った後方にせり上がる山並みがどうしても同定できない。見慣れない角度からの山は知って
いるはずでも位置関係が判然としないのだ。
左側には姥ヶ岳の特徴のないやたら平べったい山稜が横たわっている。
[attachment=3]P1120672_1.JPG[/attachment]
1174m手前の尾根に合流すると、「おおっ」と同時に感嘆の声が上がった。目の前にドーンと現
われたのは能郷白山だ。右に控える三角錐の磯倉と並んで、間近に見るその山体のボリュームに圧
倒される。ここからはその眺めを視界に入れながらの雪尾根漫歩である。
前方の木々に白く光るのは霧氷だろうか。近付いてみると、陽光に照らされた融け始めた霧氷が金
属音を立てながら、ハラハラと雪面に落ちて行く。なんとも言えない美しさだ。
1174m付近からは杉谷山の名前とは裏腹に太いブナも目立ち始めた。そして広大な雪原の中のわ
ずかな高まりが杉谷山、美濃側では杉倉と呼ばれる山頂だった。
5年前、白谷出合から能郷白山、磯倉と歩いてここに到達した時には一面のガスの中で何も見え
なかった。方向さえ定まらぬ状況で、恐らくここが山頂だろうとわずかな時間ザックを降ろしただ
けだった。今は雲ひとつない青空の下、ありったけの視界を欲しいままにしている。時間は早いが
昼メシにしよう。
福井・岐阜の県境はこの杉谷山でUターンするように引かれている。厳密に言うと山頂は県境か
ら少し外れている。足元に落ちる緩く浅い谷だけが岐阜県というわけだ。
あの日はガスの中、越美国境稜線の分岐を確認した後ひたすら北に向かって登って行った。こんな
風になっていたのか。
岐阜県の斜面に腰を降ろす。ふ~さんが不用意に雪の上に置いたペットボトルがするすると滑り
落ちてブナの根穴へ落ちた。「よかった~。」と拾いに行くが、穴の根元は深くて狭く、頭から突
っ込んでも届かない。とりあえずメシを食ってからにしようと一旦作業を中断した。
担ぎ上げたビールを急速冷却して乾杯。先週に続いて最高の天気の中、最高の一杯を楽しむ。
[attachment=2]P1120754_1.JPG[/attachment]
食後、ペットボトル救出作戦を再開。ピッケルで雪穴を広げてやっとの思いで拾い上げることが
できた。かれこれ30分近くはこの作業に費やしたのではないだろうか。やれやれである。
いよいよ待望の越美国境稜線へ踏み出した。5年前にガスの中で見たこの稜線に強く心惹かれた。
抜けるような青空の下、今その稜線を歩いている。
大きなブナが立ち並ぶその稜線は想像通り、いや、想像をはるかに凌ぐ素晴らしい雪の街道だった。
まさに喜色満面。「ええなあ~」「最高ですねえ」と何度口にしただろう。
どこを切り取っても絵になる風景の連続である。
特に素晴らしいのは1167m標高点のあたりだ。幅広の尾根は微妙な起伏を描き、二重山稜風の尾
根に舟窪を配したような地形が連続した。そしてブナ林が切れた雪野原では見事なパノラマが展開
した。
能郷白山に始まり、磯倉、雷倉、花房、小津権現、天狗、黒津、五蛇池、蕎麦粒、烏帽子、高丸が
横一線に並ぶような風景はあまり見たことがない。三周から笹ヶ峰への越美国境。手前には不動、
千回沢。進むべき方向にはいよいよ近くなった若丸の巨体が冠山方面の展望を遮っている。
ここでメシにすればよかったと悔やむほどの展望地は、まさに杉谷・若丸劇場である。
[attachment=1]P1120766_1.JPG[/attachment]
南側斜面には数メートルに及ぶ雪の壁が続いているのに、尾根芯では地肌が覗いているところも
あるのが面白い。
雪面に亀裂が入り始めているのを警戒しながら飯盛山へのジャンクションピークに立った。
飯盛山への尾根にはまだ大きな雪庇が残っている。
少し先の1226mピークへ足を延ばせば若丸山が目の前に現われた。山頂に至る稜線はところどこ
ろヤセて完全にヤブが露出している。3年前少し苦労したことを思い出した。
[attachment=0]P1120793_1.JPG[/attachment]
越美国境からの展望を目に焼き付けて下山にかかる。先週と違って長く緩い下山コースは時間を
食うのだ。件の雪庇に気を付けながら反対側斜面を体を斜めにして通過する。
飯盛山付近は国境稜線の展望地のようなうねりのある雪原が続くが、あれを見てしまうと物足りな
く思えてしまうのは贅沢というものだろう。
進行方向に大きく聳える山々が、朝の登りで見た山だ。ここまで来てようやく部子山(へこさん)
と銀杏峰(げなんぽ)であることに気付いた。その右には荒島岳がわずかに顔を出し、奥には白山が
見える。私の雪山は常に白山の姿を探す山旅のようだ。
この長い尾根の中間部はブナ林が続き、原始の香り漂う太いブナも多い。
ほどよく緩んだ雪にスノーシューをスライドさせながらハイピッチで進むが、なかなか標高を落と
さないのが難点である。
下部では植林混じりのヤセ尾根で半ヤブ漕ぎ状態になり、急坂では滑って七転八倒するなど、すべ
てが気持ち良くというわけにはいかないが、熊河の集落跡までまずまずの雪の繋がりで、問題なく
再び国道157号に下り立った。
国道を歩いて行くと工事中のトンネル出口にブルが止まっていた。朝は雪に覆われていたここま
で除雪が進んでいる。この分なら来週は熊河まで車で入れるかもしれない。
除雪された国道を山の恵みを戴きながら歩けばもう駐車地は近い。
山日和
ここまで除雪してあれば上出来という所でしょうか。甘い期待に裏切られるというのは、山日和人生では千古不易の習わし。