【飛騨】もうひとつの日照岳 歓喜の雪稜を行く
Posted: 2013年3月24日(日) 23:11
あるHPで、御母衣湖周辺の最高峰である1869.5mピークへスキーで登った記録を
見つけた。そこでは地図に名前のないこのピークを「御母衣山」と名付けていた。
気になって国土地理院の基準点成果等閲覧サービスを見てみると、驚くべき事実を目にした。
1869.5mピークの点名はなんと「日照岳」。ならば地図上の日照岳はと調べれば「尾神岳」とい
う名前だった。
これはどういうことだ。自分が踏んだ日照岳は日照岳ではないのか。それとも国土地理院の間違
いか。いずれにせよ、もうひとつの日照岳を知ってしまった以上行くしかあるまい。
【日 付】2013年3月23日(土)
【山 域】飛騨 白山東方 日照岳
【天 候】晴れ
【メンバー】ふ~さん、山日和
【コース】福島第3トンネル6:35---10:07 P1746.1m 10:25---11:50 三角点日照岳13:10---
14:06 JP 14:20---16:00日照岳16:15---17:40福島保木トンネル
荘川の道の駅でふ~さんと待ち合わせ、下山地の福島保木トンネル南口にふ~さん号をデポして
福島第3トンネルへ向かう。このあたりの国道158号はトンネルとスノーシェッドだらけだ。
うまい具合にトンネル脇の林道入口が除雪されていて車を止めた。
林道を上がって右手へトラバース、牧谷の右岸尾根に乗った。小広い台地でスノーシューを履く。
夜明けから曇りがちだった空に少しずつ青みが差してきた。予報ではピーカンのはずだ。
植林を予想していた尾根の下部も自然林が続き、なかなかいい尾根だと喜ぶ。
気温は低いが汗だくになりながら順調に高度を稼いだ。
ヤセ尾根の部分では雪が切れ、ヒノキが尾根芯で通せんぼしている。それをかわしながら登ると
急な雪壁が現われた。10mほどの高さだが、少し奈良岳東尾根の仙人岩のようなイメージだ。
本来ならピッケルにアイゼンというところだろうが、委細構わずスノーシューとストックで這い上
がった。
ヤセ尾根をキレット状のところへ下ると目の前にパラダイスの入口が広がった。地形図で見ると、
1520m標高点手前の斜面の広がりにブナの森が予想された。
現われたのは想像通りのブナ林の広がり。思わず顔がほころぶ。これまでの尾根にもポツポツとブ
ナがあったのだが、この森は巨木も多く、実に素晴らしい。右手には三方崩山と奥三方岳の迫力満
点の姿が望まれた。
[attachment=4]P1120355_1_1.JPG[/attachment]
尾根上はずっとブナ林が続いた。すっきり感に欠けていた空はいつしか真っ青に変わっている。
下から白く見えていたのは小さな霧氷だった。枝の先にわずかにこびりついた水滴がプチ霧氷とな
って光っていた。
標高が上がるとブナに代わってダケカンバとオオシラビソが優勢となる。これはこの山域の特徴
的な林相である。
本日最初のピークである1746.1m峰は、山スキーヤーの間では「がおろピーク」と呼ばれている。
これは有名な「がおろ亭」というブログの主から来ているのだが、我々はスキーヤーではない。
ここは三角点名「福島」と呼ばせてもらおう。
山頂に到達してまずはふ~さんと本日1回目のハイタッチ。まあまあ予定通りの時間だ。
1869.5mピークへ向かう。ふ~さんとの間では、このピークを「リアル日照岳」と呼んでいた。
別に地図上の日照岳がニセモノというわけではないのだが、そう呼びたい気分だったのだ。
この尾根は痩せたところもありそうで、ヤブの処理も危惧していたのだがまったくの杞憂だった。
概ね広い尾根が続き、オオシラビソの森を進む。取り立てて面白い尾根というわけではないが、目
的地へのアプローチとしては悪くない。
[attachment=3]P1120468_1.JPG[/attachment]
着いた。1869.5m。三角点名「日照岳」。恐らくほとんどの人が知らないもうひとつの「日照岳」
だ。本日2回目のハイタッチとがっちり握手。
下から見ると樹林に覆われもっさりした山頂の印象だったがなかなかどうして。三角点の付近はち
ょうど樹林が切れ、素晴らしい展望が開けていた。
西面には真正面に白山の剣ヶ峰と御前峰が肩を並べ、その手前には東面台地が。東を見ると本来
の日照岳(ふ~さんとの間では「ニセ日照岳」になっていた。)に続く長い尾根と、御母衣湖の向こ
うに猿ヶ馬場山、御前岳の山塊がどっしりと横たわっている。
白山の文字通り「真っ白」な姿は神々しいと言うより他ない。
言葉にならない喜びを無理やり言葉にして笑顔がはじけた。まったく言うことなしのシチュエー
ションである。東側の一段下がった斜面に陣取ってランチタイムとする。
「リアル日照岳」から「ニセ日照岳」を見下ろすようにして乾杯。ぽかぽか陽気に包まれて、贅沢
な展望を肴に飲むビールは格別の味わいだ。
ここから1751mの日照岳まで2時間と見積もっていたが、これは大甘の見積りだった。
東側に雪庇の残骸の雪堤を抱えた稜線を進む。細かいアップダウンがあり体力を消耗する。
複雑な尾根の分岐が続くが、視界が利いているので進路を間違うことがない。これがガスの中なら
神経を使うだろう。途中の展望地からは間名古谷、ワリ谷の広い切れ込みの向こうに三方崩から間
名古の頭、さらには白山本峰への稜線が美しく尾を引いていた。
見事な雪堤の連続が見えると市村界尾根JPも近い。雪堤の下へ回り込んで観察。わずかに残った
雪庇からつららが垂れ下がっていて面白い。
JPからはまた違った展望が開けた。市村界尾根の延長線上に聳えるのは焼滑と南白山、そしてその
奥に頭を出している三角錐は別山だ。
[attachment=2]P1120480_1.JPG[/attachment]
ここから見る1751mの日照岳はやけに遠い。まずは眼下の鞍部へ120mの下降である。
ここで必殺のヒップソリを取り出す。完璧に締まった雪面は抵抗もなく、爽快なスピードで滑って
行く。その爽快さと引き換えにお尻はびしょびしょである。
ふ~さんはスキースタイルで滑り下りて来た。下りるのは気持ちいいが、登り返しが辛い。なるべ
く登りのないラインを探って前進する。
いよいよ1754m日照岳最高点の登りに掛った。これを登り切ればメドが付く。
立ち木のない広大な雪面を、足元だけを見つめて登って行く。振り返ればふ~さんが逆光に黒いシ
ルエットとなって、背後の雄大な風景に溶け込んでいた。山肌も白と黒にはっきりと分かれたコン
トラストが美しい。この時間に山にいなければ見ることのできない光と影の芸術に酔う。
足が上がらなくなってきたので小さいステップを刻んで一歩、また一歩。ついに最高点に立った。
三角点まではまだ少しあるが、緩やかな登りを残すのみだ。実感として本日の登りが終わった気分
である。今日何度も味わっている大パノラマだが、少しずつ角度が変わる度に見え方も変わり、実
に新鮮で飽きることがない。
ひとしきり楽しんだらいよいよ最後のピーク、「ニセ日照岳」へ向かおう。広大な雪原が広がる
尾根。これで最後だと思うと足取りも軽い。
そして1751.3mの三角点に到達した。本日3度目のハイタッチ。やった。
東面からのスキーヤーのトレースがあったが時間はもう4時。誰もいるはずはない。今日辿って来た
ルートを眺めて反芻する。充実感が胸に溢れ出していたのはふ~さんも同じだろう。
[attachment=1]P1120557_1.JPG[/attachment][attachment=0]P1120559_1.JPG[/attachment]
4時になってまだ山頂にいるというのはまったく登山のセオリーに反しているが、下山は1時間半
あれば十分だと読んだ。
山頂直下の印象的なダケカンバに挨拶をして、北東への尾根を辿る。1645mピークへの吊尾根には、
かつて遭難事故が起きた雪庇の残骸が続いていた。
1534mの先でもうそろそろと思ってGPSを確認すると、ちょうど尾根の分岐点だった。福島保木
トンネル南口の手前に下りる尾根である。
ここまでの尾根もブナ林が続いていいのだが、前半の余韻が大き過ぎて物足りなく感じてしまう。
途中で急降下に備えてスノーシューを脱いだがこれが大失敗。時々股までズボッとはまり込んでし
まい、身動きが取れなくなることもしばしば。耐えきれずに再度スノーシューを装着した。
送電鉄塔が現われると巡視路登場である。雪がなさそうなのでスノーシューを脱いだ。ふ~さんは
そのまま行くと左手の雪の詰まった急傾斜の谷を進んだ。結局巡視路はすぐにその谷に合流してし
まった。
やたらバランスがとりにくいなと思ったらストックを持っていない。あちゃー、鉄塔のところに置
き忘れてしまった。重い足を引きずってストックを回収。でもあそこで気が付いてよかった。
国道脇の壁のないところへ無事着地。そこはふ~さん号の30mほど後ろだった。
「もうひとつの日照岳」をめぐる山旅。最高の一日が終わった。
山日和
見つけた。そこでは地図に名前のないこのピークを「御母衣山」と名付けていた。
気になって国土地理院の基準点成果等閲覧サービスを見てみると、驚くべき事実を目にした。
1869.5mピークの点名はなんと「日照岳」。ならば地図上の日照岳はと調べれば「尾神岳」とい
う名前だった。
これはどういうことだ。自分が踏んだ日照岳は日照岳ではないのか。それとも国土地理院の間違
いか。いずれにせよ、もうひとつの日照岳を知ってしまった以上行くしかあるまい。
【日 付】2013年3月23日(土)
【山 域】飛騨 白山東方 日照岳
【天 候】晴れ
【メンバー】ふ~さん、山日和
【コース】福島第3トンネル6:35---10:07 P1746.1m 10:25---11:50 三角点日照岳13:10---
14:06 JP 14:20---16:00日照岳16:15---17:40福島保木トンネル
荘川の道の駅でふ~さんと待ち合わせ、下山地の福島保木トンネル南口にふ~さん号をデポして
福島第3トンネルへ向かう。このあたりの国道158号はトンネルとスノーシェッドだらけだ。
うまい具合にトンネル脇の林道入口が除雪されていて車を止めた。
林道を上がって右手へトラバース、牧谷の右岸尾根に乗った。小広い台地でスノーシューを履く。
夜明けから曇りがちだった空に少しずつ青みが差してきた。予報ではピーカンのはずだ。
植林を予想していた尾根の下部も自然林が続き、なかなかいい尾根だと喜ぶ。
気温は低いが汗だくになりながら順調に高度を稼いだ。
ヤセ尾根の部分では雪が切れ、ヒノキが尾根芯で通せんぼしている。それをかわしながら登ると
急な雪壁が現われた。10mほどの高さだが、少し奈良岳東尾根の仙人岩のようなイメージだ。
本来ならピッケルにアイゼンというところだろうが、委細構わずスノーシューとストックで這い上
がった。
ヤセ尾根をキレット状のところへ下ると目の前にパラダイスの入口が広がった。地形図で見ると、
1520m標高点手前の斜面の広がりにブナの森が予想された。
現われたのは想像通りのブナ林の広がり。思わず顔がほころぶ。これまでの尾根にもポツポツとブ
ナがあったのだが、この森は巨木も多く、実に素晴らしい。右手には三方崩山と奥三方岳の迫力満
点の姿が望まれた。
[attachment=4]P1120355_1_1.JPG[/attachment]
尾根上はずっとブナ林が続いた。すっきり感に欠けていた空はいつしか真っ青に変わっている。
下から白く見えていたのは小さな霧氷だった。枝の先にわずかにこびりついた水滴がプチ霧氷とな
って光っていた。
標高が上がるとブナに代わってダケカンバとオオシラビソが優勢となる。これはこの山域の特徴
的な林相である。
本日最初のピークである1746.1m峰は、山スキーヤーの間では「がおろピーク」と呼ばれている。
これは有名な「がおろ亭」というブログの主から来ているのだが、我々はスキーヤーではない。
ここは三角点名「福島」と呼ばせてもらおう。
山頂に到達してまずはふ~さんと本日1回目のハイタッチ。まあまあ予定通りの時間だ。
1869.5mピークへ向かう。ふ~さんとの間では、このピークを「リアル日照岳」と呼んでいた。
別に地図上の日照岳がニセモノというわけではないのだが、そう呼びたい気分だったのだ。
この尾根は痩せたところもありそうで、ヤブの処理も危惧していたのだがまったくの杞憂だった。
概ね広い尾根が続き、オオシラビソの森を進む。取り立てて面白い尾根というわけではないが、目
的地へのアプローチとしては悪くない。
[attachment=3]P1120468_1.JPG[/attachment]
着いた。1869.5m。三角点名「日照岳」。恐らくほとんどの人が知らないもうひとつの「日照岳」
だ。本日2回目のハイタッチとがっちり握手。
下から見ると樹林に覆われもっさりした山頂の印象だったがなかなかどうして。三角点の付近はち
ょうど樹林が切れ、素晴らしい展望が開けていた。
西面には真正面に白山の剣ヶ峰と御前峰が肩を並べ、その手前には東面台地が。東を見ると本来
の日照岳(ふ~さんとの間では「ニセ日照岳」になっていた。)に続く長い尾根と、御母衣湖の向こ
うに猿ヶ馬場山、御前岳の山塊がどっしりと横たわっている。
白山の文字通り「真っ白」な姿は神々しいと言うより他ない。
言葉にならない喜びを無理やり言葉にして笑顔がはじけた。まったく言うことなしのシチュエー
ションである。東側の一段下がった斜面に陣取ってランチタイムとする。
「リアル日照岳」から「ニセ日照岳」を見下ろすようにして乾杯。ぽかぽか陽気に包まれて、贅沢
な展望を肴に飲むビールは格別の味わいだ。
ここから1751mの日照岳まで2時間と見積もっていたが、これは大甘の見積りだった。
東側に雪庇の残骸の雪堤を抱えた稜線を進む。細かいアップダウンがあり体力を消耗する。
複雑な尾根の分岐が続くが、視界が利いているので進路を間違うことがない。これがガスの中なら
神経を使うだろう。途中の展望地からは間名古谷、ワリ谷の広い切れ込みの向こうに三方崩から間
名古の頭、さらには白山本峰への稜線が美しく尾を引いていた。
見事な雪堤の連続が見えると市村界尾根JPも近い。雪堤の下へ回り込んで観察。わずかに残った
雪庇からつららが垂れ下がっていて面白い。
JPからはまた違った展望が開けた。市村界尾根の延長線上に聳えるのは焼滑と南白山、そしてその
奥に頭を出している三角錐は別山だ。
[attachment=2]P1120480_1.JPG[/attachment]
ここから見る1751mの日照岳はやけに遠い。まずは眼下の鞍部へ120mの下降である。
ここで必殺のヒップソリを取り出す。完璧に締まった雪面は抵抗もなく、爽快なスピードで滑って
行く。その爽快さと引き換えにお尻はびしょびしょである。
ふ~さんはスキースタイルで滑り下りて来た。下りるのは気持ちいいが、登り返しが辛い。なるべ
く登りのないラインを探って前進する。
いよいよ1754m日照岳最高点の登りに掛った。これを登り切ればメドが付く。
立ち木のない広大な雪面を、足元だけを見つめて登って行く。振り返ればふ~さんが逆光に黒いシ
ルエットとなって、背後の雄大な風景に溶け込んでいた。山肌も白と黒にはっきりと分かれたコン
トラストが美しい。この時間に山にいなければ見ることのできない光と影の芸術に酔う。
足が上がらなくなってきたので小さいステップを刻んで一歩、また一歩。ついに最高点に立った。
三角点まではまだ少しあるが、緩やかな登りを残すのみだ。実感として本日の登りが終わった気分
である。今日何度も味わっている大パノラマだが、少しずつ角度が変わる度に見え方も変わり、実
に新鮮で飽きることがない。
ひとしきり楽しんだらいよいよ最後のピーク、「ニセ日照岳」へ向かおう。広大な雪原が広がる
尾根。これで最後だと思うと足取りも軽い。
そして1751.3mの三角点に到達した。本日3度目のハイタッチ。やった。
東面からのスキーヤーのトレースがあったが時間はもう4時。誰もいるはずはない。今日辿って来た
ルートを眺めて反芻する。充実感が胸に溢れ出していたのはふ~さんも同じだろう。
[attachment=1]P1120557_1.JPG[/attachment][attachment=0]P1120559_1.JPG[/attachment]
4時になってまだ山頂にいるというのはまったく登山のセオリーに反しているが、下山は1時間半
あれば十分だと読んだ。
山頂直下の印象的なダケカンバに挨拶をして、北東への尾根を辿る。1645mピークへの吊尾根には、
かつて遭難事故が起きた雪庇の残骸が続いていた。
1534mの先でもうそろそろと思ってGPSを確認すると、ちょうど尾根の分岐点だった。福島保木
トンネル南口の手前に下りる尾根である。
ここまでの尾根もブナ林が続いていいのだが、前半の余韻が大き過ぎて物足りなく感じてしまう。
途中で急降下に備えてスノーシューを脱いだがこれが大失敗。時々股までズボッとはまり込んでし
まい、身動きが取れなくなることもしばしば。耐えきれずに再度スノーシューを装着した。
送電鉄塔が現われると巡視路登場である。雪がなさそうなのでスノーシューを脱いだ。ふ~さんは
そのまま行くと左手の雪の詰まった急傾斜の谷を進んだ。結局巡視路はすぐにその谷に合流してし
まった。
やたらバランスがとりにくいなと思ったらストックを持っていない。あちゃー、鉄塔のところに置
き忘れてしまった。重い足を引きずってストックを回収。でもあそこで気が付いてよかった。
国道脇の壁のないところへ無事着地。そこはふ~さん号の30mほど後ろだった。
「もうひとつの日照岳」をめぐる山旅。最高の一日が終わった。
山日和
1645mピークの点名はなんと「日照岳」。ならば地図上の日照岳はと調べれば「尾神岳」とい