【頸城山地】妙高山から火打山・焼山へ
Posted: 2012年10月10日(水) 22:28
【日 付】2012年10月5日(金)~6日(土)
【山 域】頸城山地 妙高山(2554m)・火打山(2461m)・焼山(2400m)
【天 候】晴れのち曇り
【コース】10/5 笹ヶ峰7:00---10:30黒沢池ヒュッテ10:45---12:40妙高山13:25---14:55黒沢池ヒュッテ15:05
---16:10高谷池
10/6 高谷池6:35---8:05火打山8:30—9:55胴抜切戸10:10---11:20焼山11:45---12:40富士見峠13:00
---13:50水場14:15---16:15杉野沢橋---17:10笹ヶ峰
笹ヶ峰の登山口駐車場は、連休前の平日とあってガラガラだった。それでもマイクロバスで団体が乗り付けたりし
てメジャーな山だということを思い知らされる。今日の行程は時間的に余裕があるのでゆっくりと出発した。
余談だが、駐車場のトイレより少し下側にあるキャンプ場のビジターセンターの方が広くてキレイで、落ち着いて朝の
お勤めをこなすことができる。
いきなりの木道でスタートする登山道は、どこまで行っても延々と木道が続く。まわりはいい雰囲気のブナ林だが、
この標高ではまだ色付いてはいない。
水場である黒沢橋を渡ると、これまでの緩やかな木道から今度は階段の急登に変わった。木の上を歩くことには変わ
りなく、今日はなかなか土の上を歩けない。
十二曲と呼ばれる急坂は12/1から順番に標識があり、その間隔が短いのですぐに登り切った。
富士山が見えることもあるのだろう富士見平で、高谷池~火打山への道と別れて黒沢池へと進む。緩やかに下って
行くと黒沢の流れに出合い、その上流には見事な草原が広がっていた。そして頭上には真っ青な空が広がる。
実際には湿原である黒沢池一帯の広大な草原地帯は、美しく色付いた両岸斜面の黄紅葉に囲まれて、さながら天
上の別天地の趣きがある。
橋を渡って左岸へ移るとまた木道が続く。こういう景色の中では歩みも自ずと遅くなるというものだ。
ここまでは途中で数人に出会った程度の静かな百名山である。久しぶりに休みを取って遠征してきた甲斐があった
というものだ。ちなみに私は百名山には興味はない。登りたい山がたまたま百名山に選ばれていたというだけである。
[attachment=5]パノラマ 5_2_1.JPG[/attachment]
黒沢池ヒュッテでザックをデポし、これも久しぶりに使うポケッタブルザックに必要なものを放り込んで妙高山頂へ向
かった。小屋脇には登山者のザックがズラッと並べられており、同じ考えの人が多いことがわかる。
大倉乗越まで上がると初めて火打山の姿が見えた。この乗越は妙高山の外輪山を形成する尾根の一部となっていて、
内堀とも言える谷を挟んで妙高本峰の怪異な山容が凄い迫力である。外輪山と言うからには、一旦下らないと本峰に
は取り付けない。せっかく稼いだ高度を全部吐き出して谷に下った。この水場の水は冷たくて美味い。
下りの途中で谷底に小さな池塘群が見えた。長助池だ。高谷池や黒沢池もそうだが、このあたりの池はひとつの池
だけを指すのではなく、数ある池群の総称のようである。
この長助池は周りの黄紅葉と草紅葉に彩られて、上から見下ろすと宝石のように煌めいていた。
おいしい水で喉を潤すと、400mの登りが待っている。ここからの登りは足場もあまり良くなく展望も少ない。しかし満
艦色の黄紅葉に飾られた木々のトンネルを潜って歩くのは悪くはない。テント泊の重荷を担いでいればそんな余裕は
ないかもしれないが。
やたら急な登りを1時間ばかり我慢すると妙高山の頂上だ。山頂の手前から祠やお札のようなものが目立ち、信仰
の山であることを感じる。
妙高山の最高点は三角点ではなく、少し南側の妙高大神である。巨岩がゴロゴロと転がる山上台地を進むと最高点
に到達する。赤倉温泉の方から登山者が上がって来るのが見えた。その名の通りここにも祠がある。
三角点まで戻って、裏手の岩の上でランチとする。火打山から焼山、金山と続く稜線の眺めが素晴らしい。ただそれ
以外の方向は雲が多く、360度の大観といかないのが残念だ。
[attachment=4]パノラマ 6_1.JPG[/attachment]
黒沢池ヒュッテまで戻ると朝の団体と思しき人達がベンチで寛いでいた。火打山から周回してきたようだ。
再び重いザックを担いで高谷池へ向かう。茶臼山越えの大したこともない登りで足が止まるのは疲れのせいだけでは
なかった。登りで振り返った黒沢池方面の眺めが見事だった。
残照を受けたヒュッテの向こう側の斜面の色付きはひと際鮮やかで目を奪われる。山小屋としては奇異と思える形の
ヒュッテも景色の中に溶け込んでいるようだ。妙高の山頂はすでに雲の中。茶臼山でひと息入れたら高谷池へ急ごう。
[attachment=3]パノラマ 7_1.JPG[/attachment]
高谷池ヒュッテは平日にも関わらず満員のようだった。ここも黒沢池ヒュッテも完全予約制で、予約客以外は泊めな
いらしい。それはそれでいいと思うのだが、夕方遅く闖入してきた登山者を断れるのだろうか。
スイスアルプスなどでは小屋の予約をしている者以外は入山させないところもあると聞く。登山文化の違いがこういう
ところにも出るのかもしれない。
翻ってキャンプサイトの方は10張り以下しか埋まっておらず余裕があった。小屋で400円也の幕営料を払い500円の
ビールを買った。
ここの水場は高谷池の水を利用しているため生では飲めない。必ず煮沸して飲んで下さいとあった。それでも水を現
地調達できるのはありがたいもので、重い目をして水を担ぐ必要がないのはうれしい限りである。
2年前に新調したテントがやっとデビューする時が来た。ダンロッププロモンテの2人用だ。
このテントを選んだ最大の理由はその軽さと、長辺に設置された出入り口である。短辺側に出入り口があるとフライの
先端まで遠く、ファスナーの開閉がしずらい。そのファスナーもタテとヨコの2アクション方式で、一般的な半円型ファス
ナーのように、どこに引き手があるか探す必要もなく単純な操作が可能だ。
それから最近ずっと使っていたモンベルのシェルターと比べて、本体の結露がまったくないので快適である。
軽さ第一で選んだモンベルだったが、600グラムの重量差だけでは代えがたい居住性がこのテントにはある。
以前、モンベルを10月の白山で使った時は寒くてなかなか寝られなかったが、今回はサーモリアクターというインナー
シーツのおかげもあって、少々暑いくらいだった。
[attachment=2]P1090270_1.JPG[/attachment]
高谷池を眺めながら缶詰の焼き鳥とメザシをアテてにビールを飲んでいるうちに日も落ちてきた。テントへ戻って夕食
の準備にかかる。準備と言ってもレトルトのカレーとご飯を温めるだけだから簡単なものだ。周りのテントはもう食事を
済ませたようで、自分のガスストーブだけが轟々と音を立てている。
7時を過ぎるとテントサイトは静寂に包まれた。みんな寝るのが早い。仕方なくシュラフに潜り込んで目を瞑るがいつ
ものごとく寝付けない。
結局朝まで寝たのか寝てないのかハッキリしない程度の睡眠しか取れなかった。隣のパーティーは雨飾まで縦走す
るそうで、2時頃から起き出してごそごそしていた。水場がないのでひとり5リットルの水を担ぐというから大したものだ。
フリーズドライの雑炊で簡単な朝食を済ませて出発。予想に反してあたりはガスに包まれている。時間が経てば晴
れてくれるだろうか。
池から一段上がったところが天狗の庭と呼ばれる広大な湿原地帯だ。池塘が点々と散在するここは黒沢池以上に素
晴らしい。晴れていれば天狗の庭を前景に火打山が実に絵になるところだと思うが、今日は頭の中で想像するしかな
い。
火打の山頂に着いてもガスは晴れなかった。一瞬空が明るくなったように感じたり、焼山の山腹がチラッと見えたり
するものの、結局は標識がなければどこにいるのかわからないような状況は変わらなかった。
テント泊で火打往復の登山者が数人来た程度の、今日も静かな百名山である。
焼山へ向けて踏み出した。ここまでの整備され過ぎた登山道から一転、人ひとり歩ける程度の普通の山道に変わっ
た。これくらいの方が気持ちのすわりがいい。影火打はどこかわからない内に通過。結構アップダウンがあって疲れる
道だ。最終的には400m以上下って、焼山の山頂へ400m近く登り返さねばならない。
展望もなく花もない、湿原のような見どころもない道を、優勝が決まった後の消化試合のように坦々と歩く。
急にガスが切れ、焼山の斜面が姿を現した。右上に見える噴気孔から勢いよく水蒸気が噴出している。ここは現役
の火山である。
やせ尾根がしばらく続いて左に回りこむように下りた最低鞍部が胴抜切戸と呼ばれる場所のはずだが、その名前の
割には平凡な草原で険悪さはまったくなかった。
ここから焼山への登りは一段と悪い道となる。軽装の登山者が下りてきた。日帰り周回組だろう。
傾斜が緩むと樹林も切れて高山らしい雰囲気になった。シロマメノキの群落が続く。リンドウ以外の花が期待できな
い今の時期には、目を慰めてくれる数少ない植物である。
いかにも火山らしいゴツゴツとした岩が転がる斜面を上がると不意に平坦になった。
焼山の外輪山の一角に乗り、2400mの山頂は目の前だ。下方にはまだ雪を残した火口湖跡が見える。
思っていた以上にいい山頂だった。昨日から妙高山・火打山と素晴らしい景観の中を歩いていながら、何か物足り
ないものがあった。それが何であるかこの焼山に来てわかった。
木道と階段と立入禁止のロープ。植生保護のためには仕方のないことではあるが、管理された自然の中を歩かされ
ているフラストレーションが澱のように溜まっていたのだろう。それらが何もない焼山で初めて魂が開放されたような思
いがしたのだ。
この3つの山の中で百名山に入っていない焼山が、自分にとっては一番いい山頂に感じたのである。本来なら大展望
の広がるはずだった火打山の不運を割り引いたとしてもだ。
[attachment=0]P1090385_1.JPG[/attachment]
かなり年配の夫婦が登ってきた。70は超えているように見える。その奥さんの方から「前川清かと思った。」と言われ
た。前川清に似ていると言われたのは生まれて初めてである。喜んでいいのか悪いのか複雑な心境だ。
笹倉温泉から上がってきたという二人連れは、本当に山が好きだという思いとお互いを気遣う雰囲気が感じられて好ま
しく思った。
笹ヶ峰の湖が見える以外は2~300mしか利かない視界だったが、これで十分に思えたのは山の佇まいのせいだけで
はなかったようだ。
焼山からの登山道はよく整備されている。山頂直下はちょっとした岩場もあり楽しめた。
先に下りて小さなコルで休憩していた老夫婦に挨拶をして、広い斜面を下って行く。
写真を撮ろうと振り返ると、老夫婦が立ち上がって手を振ってくれた。こちらも思わず手を振り返す。なんとも心温まる
瞬間だった。
[attachment=1]P1090401_1.JPG[/attachment]
泊岩という、大岩の下に設えられた避難小屋は扉が開かなかった。その下で笹倉温泉からの道を分ける。
こちらの登山道は悪いところもなく、林道ゲートがどこまで開かれているかどうかがポイントのようだ。
裏金山との鞍部である富士見峠までくればメドが立つ。休んでいるとテント泊のパーティーがやってきた。
真川の登山道の状況を尋ねると、まったく問題になるところはないとのこと。草も刈られて普通の登山道になったよう
だ。
笹ヶ峰の駐車場は予想通り既に満車だということだった。今日の妙高・火打は凄いことになっているのだろう。逆回り
にしなくて正解だったと思う。彼らも今から高谷池まで行ってもテントが張れないだろうから、ここで泊まるつもりだと言
っていた。高谷池で張れたとしてもちょっと厳しい時間ではあるが。
真川へ下りる道は予想以上に歩きやすい登山道だった。尾根を下り切ったところの沢で、ここまで秘蔵していたビー
ルを開けて、カップ麺のランチタイムとする。
焼山山頂直下の下りですれ違った年配の単独女性が通り過ぎて行った。このコースを単独で来ようというだけでもか
なりのものだと思うが、年齢を感じさせない速いペースに驚かされた。
地獄谷、裏金山谷、金山谷と沢を渡りながら徐々に高度を下げる。しかし金山谷からは下りのはずなのに登りの方
が多く、精神的に疲れてしまった。それでも周りの素晴らしいブナ林のおかげで慰められる。まだ黄葉には早く、青々
としているものの、やはりブナ林は自分のパワーの源だと思う。
滝沢の先の渡渉点が最後のポイントだ。ネット上でもよく紹介されているここは、手前にある鎖とロープを辿って直上
するとえらい目に遭うらしい。水の中を進んで岩壁を斜上するのが正しいルートだが、増水していればちょっと苦労する
だろう。
これを過ぎれば平坦な河原歩きしばしで林道に到着する。後は駐車場までのんびり林道を行くだけだ。と思っていた
ら、とんでもないことに気が付いた。上流側から下流へ戻るのだから当然下りだと思い込んでいた。ところがここより駐
車場のある笹ヶ峰の方が少しではあるが標高が高いのだ。
緩いとはいえずっと登りが続くと足を投げ出すだけでは前には進まない。久々のテン泊山行で疲労が蓄積した足には
辛い林道歩きだった。
後から車が来るたびに「止まれっ!!」と念じたが、願いも空しくみんな止まる素振りも見せず通り過ぎてしまう。
逆ギレして「パンクしろっ!!」と念を送るも、当然何事も起こらず悠然と走り去ってしまった。
仕方ない。自分の足で最後まで歩いてこそ山行が完成するのだと思い直して、暮れなずむ笹ヶ峰への道を足を引き
摺るように歩いた。
山日和
【山 域】頸城山地 妙高山(2554m)・火打山(2461m)・焼山(2400m)
【天 候】晴れのち曇り
【コース】10/5 笹ヶ峰7:00---10:30黒沢池ヒュッテ10:45---12:40妙高山13:25---14:55黒沢池ヒュッテ15:05
---16:10高谷池
10/6 高谷池6:35---8:05火打山8:30—9:55胴抜切戸10:10---11:20焼山11:45---12:40富士見峠13:00
---13:50水場14:15---16:15杉野沢橋---17:10笹ヶ峰
笹ヶ峰の登山口駐車場は、連休前の平日とあってガラガラだった。それでもマイクロバスで団体が乗り付けたりし
てメジャーな山だということを思い知らされる。今日の行程は時間的に余裕があるのでゆっくりと出発した。
余談だが、駐車場のトイレより少し下側にあるキャンプ場のビジターセンターの方が広くてキレイで、落ち着いて朝の
お勤めをこなすことができる。
いきなりの木道でスタートする登山道は、どこまで行っても延々と木道が続く。まわりはいい雰囲気のブナ林だが、
この標高ではまだ色付いてはいない。
水場である黒沢橋を渡ると、これまでの緩やかな木道から今度は階段の急登に変わった。木の上を歩くことには変わ
りなく、今日はなかなか土の上を歩けない。
十二曲と呼ばれる急坂は12/1から順番に標識があり、その間隔が短いのですぐに登り切った。
富士山が見えることもあるのだろう富士見平で、高谷池~火打山への道と別れて黒沢池へと進む。緩やかに下って
行くと黒沢の流れに出合い、その上流には見事な草原が広がっていた。そして頭上には真っ青な空が広がる。
実際には湿原である黒沢池一帯の広大な草原地帯は、美しく色付いた両岸斜面の黄紅葉に囲まれて、さながら天
上の別天地の趣きがある。
橋を渡って左岸へ移るとまた木道が続く。こういう景色の中では歩みも自ずと遅くなるというものだ。
ここまでは途中で数人に出会った程度の静かな百名山である。久しぶりに休みを取って遠征してきた甲斐があった
というものだ。ちなみに私は百名山には興味はない。登りたい山がたまたま百名山に選ばれていたというだけである。
[attachment=5]パノラマ 5_2_1.JPG[/attachment]
黒沢池ヒュッテでザックをデポし、これも久しぶりに使うポケッタブルザックに必要なものを放り込んで妙高山頂へ向
かった。小屋脇には登山者のザックがズラッと並べられており、同じ考えの人が多いことがわかる。
大倉乗越まで上がると初めて火打山の姿が見えた。この乗越は妙高山の外輪山を形成する尾根の一部となっていて、
内堀とも言える谷を挟んで妙高本峰の怪異な山容が凄い迫力である。外輪山と言うからには、一旦下らないと本峰に
は取り付けない。せっかく稼いだ高度を全部吐き出して谷に下った。この水場の水は冷たくて美味い。
下りの途中で谷底に小さな池塘群が見えた。長助池だ。高谷池や黒沢池もそうだが、このあたりの池はひとつの池
だけを指すのではなく、数ある池群の総称のようである。
この長助池は周りの黄紅葉と草紅葉に彩られて、上から見下ろすと宝石のように煌めいていた。
おいしい水で喉を潤すと、400mの登りが待っている。ここからの登りは足場もあまり良くなく展望も少ない。しかし満
艦色の黄紅葉に飾られた木々のトンネルを潜って歩くのは悪くはない。テント泊の重荷を担いでいればそんな余裕は
ないかもしれないが。
やたら急な登りを1時間ばかり我慢すると妙高山の頂上だ。山頂の手前から祠やお札のようなものが目立ち、信仰
の山であることを感じる。
妙高山の最高点は三角点ではなく、少し南側の妙高大神である。巨岩がゴロゴロと転がる山上台地を進むと最高点
に到達する。赤倉温泉の方から登山者が上がって来るのが見えた。その名の通りここにも祠がある。
三角点まで戻って、裏手の岩の上でランチとする。火打山から焼山、金山と続く稜線の眺めが素晴らしい。ただそれ
以外の方向は雲が多く、360度の大観といかないのが残念だ。
[attachment=4]パノラマ 6_1.JPG[/attachment]
黒沢池ヒュッテまで戻ると朝の団体と思しき人達がベンチで寛いでいた。火打山から周回してきたようだ。
再び重いザックを担いで高谷池へ向かう。茶臼山越えの大したこともない登りで足が止まるのは疲れのせいだけでは
なかった。登りで振り返った黒沢池方面の眺めが見事だった。
残照を受けたヒュッテの向こう側の斜面の色付きはひと際鮮やかで目を奪われる。山小屋としては奇異と思える形の
ヒュッテも景色の中に溶け込んでいるようだ。妙高の山頂はすでに雲の中。茶臼山でひと息入れたら高谷池へ急ごう。
[attachment=3]パノラマ 7_1.JPG[/attachment]
高谷池ヒュッテは平日にも関わらず満員のようだった。ここも黒沢池ヒュッテも完全予約制で、予約客以外は泊めな
いらしい。それはそれでいいと思うのだが、夕方遅く闖入してきた登山者を断れるのだろうか。
スイスアルプスなどでは小屋の予約をしている者以外は入山させないところもあると聞く。登山文化の違いがこういう
ところにも出るのかもしれない。
翻ってキャンプサイトの方は10張り以下しか埋まっておらず余裕があった。小屋で400円也の幕営料を払い500円の
ビールを買った。
ここの水場は高谷池の水を利用しているため生では飲めない。必ず煮沸して飲んで下さいとあった。それでも水を現
地調達できるのはありがたいもので、重い目をして水を担ぐ必要がないのはうれしい限りである。
2年前に新調したテントがやっとデビューする時が来た。ダンロッププロモンテの2人用だ。
このテントを選んだ最大の理由はその軽さと、長辺に設置された出入り口である。短辺側に出入り口があるとフライの
先端まで遠く、ファスナーの開閉がしずらい。そのファスナーもタテとヨコの2アクション方式で、一般的な半円型ファス
ナーのように、どこに引き手があるか探す必要もなく単純な操作が可能だ。
それから最近ずっと使っていたモンベルのシェルターと比べて、本体の結露がまったくないので快適である。
軽さ第一で選んだモンベルだったが、600グラムの重量差だけでは代えがたい居住性がこのテントにはある。
以前、モンベルを10月の白山で使った時は寒くてなかなか寝られなかったが、今回はサーモリアクターというインナー
シーツのおかげもあって、少々暑いくらいだった。
[attachment=2]P1090270_1.JPG[/attachment]
高谷池を眺めながら缶詰の焼き鳥とメザシをアテてにビールを飲んでいるうちに日も落ちてきた。テントへ戻って夕食
の準備にかかる。準備と言ってもレトルトのカレーとご飯を温めるだけだから簡単なものだ。周りのテントはもう食事を
済ませたようで、自分のガスストーブだけが轟々と音を立てている。
7時を過ぎるとテントサイトは静寂に包まれた。みんな寝るのが早い。仕方なくシュラフに潜り込んで目を瞑るがいつ
ものごとく寝付けない。
結局朝まで寝たのか寝てないのかハッキリしない程度の睡眠しか取れなかった。隣のパーティーは雨飾まで縦走す
るそうで、2時頃から起き出してごそごそしていた。水場がないのでひとり5リットルの水を担ぐというから大したものだ。
フリーズドライの雑炊で簡単な朝食を済ませて出発。予想に反してあたりはガスに包まれている。時間が経てば晴
れてくれるだろうか。
池から一段上がったところが天狗の庭と呼ばれる広大な湿原地帯だ。池塘が点々と散在するここは黒沢池以上に素
晴らしい。晴れていれば天狗の庭を前景に火打山が実に絵になるところだと思うが、今日は頭の中で想像するしかな
い。
火打の山頂に着いてもガスは晴れなかった。一瞬空が明るくなったように感じたり、焼山の山腹がチラッと見えたり
するものの、結局は標識がなければどこにいるのかわからないような状況は変わらなかった。
テント泊で火打往復の登山者が数人来た程度の、今日も静かな百名山である。
焼山へ向けて踏み出した。ここまでの整備され過ぎた登山道から一転、人ひとり歩ける程度の普通の山道に変わっ
た。これくらいの方が気持ちのすわりがいい。影火打はどこかわからない内に通過。結構アップダウンがあって疲れる
道だ。最終的には400m以上下って、焼山の山頂へ400m近く登り返さねばならない。
展望もなく花もない、湿原のような見どころもない道を、優勝が決まった後の消化試合のように坦々と歩く。
急にガスが切れ、焼山の斜面が姿を現した。右上に見える噴気孔から勢いよく水蒸気が噴出している。ここは現役
の火山である。
やせ尾根がしばらく続いて左に回りこむように下りた最低鞍部が胴抜切戸と呼ばれる場所のはずだが、その名前の
割には平凡な草原で険悪さはまったくなかった。
ここから焼山への登りは一段と悪い道となる。軽装の登山者が下りてきた。日帰り周回組だろう。
傾斜が緩むと樹林も切れて高山らしい雰囲気になった。シロマメノキの群落が続く。リンドウ以外の花が期待できな
い今の時期には、目を慰めてくれる数少ない植物である。
いかにも火山らしいゴツゴツとした岩が転がる斜面を上がると不意に平坦になった。
焼山の外輪山の一角に乗り、2400mの山頂は目の前だ。下方にはまだ雪を残した火口湖跡が見える。
思っていた以上にいい山頂だった。昨日から妙高山・火打山と素晴らしい景観の中を歩いていながら、何か物足り
ないものがあった。それが何であるかこの焼山に来てわかった。
木道と階段と立入禁止のロープ。植生保護のためには仕方のないことではあるが、管理された自然の中を歩かされ
ているフラストレーションが澱のように溜まっていたのだろう。それらが何もない焼山で初めて魂が開放されたような思
いがしたのだ。
この3つの山の中で百名山に入っていない焼山が、自分にとっては一番いい山頂に感じたのである。本来なら大展望
の広がるはずだった火打山の不運を割り引いたとしてもだ。
[attachment=0]P1090385_1.JPG[/attachment]
かなり年配の夫婦が登ってきた。70は超えているように見える。その奥さんの方から「前川清かと思った。」と言われ
た。前川清に似ていると言われたのは生まれて初めてである。喜んでいいのか悪いのか複雑な心境だ。
笹倉温泉から上がってきたという二人連れは、本当に山が好きだという思いとお互いを気遣う雰囲気が感じられて好ま
しく思った。
笹ヶ峰の湖が見える以外は2~300mしか利かない視界だったが、これで十分に思えたのは山の佇まいのせいだけで
はなかったようだ。
焼山からの登山道はよく整備されている。山頂直下はちょっとした岩場もあり楽しめた。
先に下りて小さなコルで休憩していた老夫婦に挨拶をして、広い斜面を下って行く。
写真を撮ろうと振り返ると、老夫婦が立ち上がって手を振ってくれた。こちらも思わず手を振り返す。なんとも心温まる
瞬間だった。
[attachment=1]P1090401_1.JPG[/attachment]
泊岩という、大岩の下に設えられた避難小屋は扉が開かなかった。その下で笹倉温泉からの道を分ける。
こちらの登山道は悪いところもなく、林道ゲートがどこまで開かれているかどうかがポイントのようだ。
裏金山との鞍部である富士見峠までくればメドが立つ。休んでいるとテント泊のパーティーがやってきた。
真川の登山道の状況を尋ねると、まったく問題になるところはないとのこと。草も刈られて普通の登山道になったよう
だ。
笹ヶ峰の駐車場は予想通り既に満車だということだった。今日の妙高・火打は凄いことになっているのだろう。逆回り
にしなくて正解だったと思う。彼らも今から高谷池まで行ってもテントが張れないだろうから、ここで泊まるつもりだと言
っていた。高谷池で張れたとしてもちょっと厳しい時間ではあるが。
真川へ下りる道は予想以上に歩きやすい登山道だった。尾根を下り切ったところの沢で、ここまで秘蔵していたビー
ルを開けて、カップ麺のランチタイムとする。
焼山山頂直下の下りですれ違った年配の単独女性が通り過ぎて行った。このコースを単独で来ようというだけでもか
なりのものだと思うが、年齢を感じさせない速いペースに驚かされた。
地獄谷、裏金山谷、金山谷と沢を渡りながら徐々に高度を下げる。しかし金山谷からは下りのはずなのに登りの方
が多く、精神的に疲れてしまった。それでも周りの素晴らしいブナ林のおかげで慰められる。まだ黄葉には早く、青々
としているものの、やはりブナ林は自分のパワーの源だと思う。
滝沢の先の渡渉点が最後のポイントだ。ネット上でもよく紹介されているここは、手前にある鎖とロープを辿って直上
するとえらい目に遭うらしい。水の中を進んで岩壁を斜上するのが正しいルートだが、増水していればちょっと苦労する
だろう。
これを過ぎれば平坦な河原歩きしばしで林道に到着する。後は駐車場までのんびり林道を行くだけだ。と思っていた
ら、とんでもないことに気が付いた。上流側から下流へ戻るのだから当然下りだと思い込んでいた。ところがここより駐
車場のある笹ヶ峰の方が少しではあるが標高が高いのだ。
緩いとはいえずっと登りが続くと足を投げ出すだけでは前には進まない。久々のテン泊山行で疲労が蓄積した足には
辛い林道歩きだった。
後から車が来るたびに「止まれっ!!」と念じたが、願いも空しくみんな止まる素振りも見せず通り過ぎてしまう。
逆ギレして「パンクしろっ!!」と念を送るも、当然何事も起こらず悠然と走り去ってしまった。
仕方ない。自分の足で最後まで歩いてこそ山行が完成するのだと思い直して、暮れなずむ笹ヶ峰への道を足を引き
摺るように歩いた。
山日和
【日 付】2012年10月5日(金)~6日(土)