【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

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kitayama-walk
記事: 719
登録日時: 2011年6月06日(月) 01:33
お住まい: 京都市中京区
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【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

投稿記事 by kitayama-walk »

【日 付】 2012年9月16日(日曜)
【天 候】 晴れ
【山 域】 北アルプス/北部
【メンバー】 N野氏、M氏、T氏、kitayama-walk
【コース】 池の平小屋-小窓-三の窓-池の谷乗越-長次郎のコル-剣岳-平蔵のコル-前剱-一服剣-剣山荘-剣沢野営場

http://kitayamawa.exblog.jp/18923057/

 「剱岳北方稜線」-この言葉には憧れをかき立てる独特の響きがある。2007年7月別山尾根から初めて剱岳に登頂したとき、山頂には
金属プレートがあったが、「◯北方稜線:この先キケン 一般登山者は入らないでください(環境庁・富山県)」と書かれていた。北方を見る
と、長次郎の頭や八ッ峰などの岩峰群が立ちはだかっている。いつかはここを歩いてみたいという願望が生まれた。2011年9月早月尾根
から再び剱岳に登ったが、次は北方稜線だと心に決めた。
北方稜線:この先キケン
北方稜線:この先キケン
 「剱岳北方稜線」とは、剱岳本峰から北へ、広義では毛勝三山から僧ヶ岳までの黒部川左岸に連なる山々の総称と言われているが、
狭義では三の窓から小窓に至る部分を呼称している。今回は、登りで時間がかかるが、迷いにくいと言われる、池ノ平小屋⇒剱岳本峰と
いうコース設定にした。もちろん、一般登山道ではなくバリエーションルートであり、標識、クサリ、ハシゴのような人為的な補助手段はほ
とんどなく、途中に避難小屋もない。不安定な岩場の登下降、急峻な雪渓の通過技術、的確なルートファインディングなど、すべて各自の
判断能力と体力に委ねられると言われている。装備もピッケル、アイゼン、補助ロープも必携とされている。そのため、単独では不安なた
め、登山経験の豊かなN野氏(京都比良山岳会)に同行を求め、同会の例会として企画してもらい、結局4名で望むこととなった。

 
 今回はテント泊山行としたため、アプローチに時間をかけて、入山することにし3泊4日の行程にした。
9/14(初日)晴れ時々曇り後雨
9:00烏丸御池発→(車)→2:00立山駅(仮眠)7:00→(ケーブルカー)→7:07美女平7:35発(高原バス)→8:25室堂着
8:30室堂⇒9:10雷鳥平⇒10:25別山乗越⇒11:00剣沢小屋11:40⇒12:30長次郎谷出合⇒13:00真砂沢ロッジ(幕営)
9/15(2日目)晴れ後雨
6:50真砂沢ロッジ⇒7:30二股吊橋7:45⇒9:30仙人峠⇒9:50仙人池10:20⇒10:35仙人峠⇒10:55池ノ平小屋11:20⇒12:10池ノ
平山12:30⇒13:10池ノ平小屋(幕営)
9/16(3日目)晴れ
3:40池ノ平小屋-4:10雪渓下降点-5:25小窓-7:30三ノ窓7:40-8:20池ノ谷乗越8:35-8:50池ノ谷ノ頭9:00-10:10長次郎
ノコル-10:30剱岳山頂11:00-11:10カニのヨコバイ(渋滞)-12:10平蔵ノコル-13:00前剱-13:50一服剣-14:10剣山荘-
14:35剣沢野営場(幕営)

9/17(4日目)晴れ
5:30剣沢野営場⇒6:00別山乗越6:10⇒6:45雷鳥平7:00⇒7:40室堂
剱岳北方稜線のGPS軌跡
剱岳北方稜線のGPS軌跡
 前日の雨も夜半には上がり、空にはオリオン星座を始めとする星がちりばめられて輝いている。今日は晴天に恵まれるとの期待
でワクワクする。このところ、北方稜線を歩く登山者が増えてきており、剱岳本峰からやってくる登山者とすれ違う前に池ノ谷ガリー
を越えようと2時半に起床して朝食を摂り、テントを撤収して3時40分にスタートした。もちろん、周囲はまだ真っ暗でヘッドランプを点
けて歩き出した。小屋の裏手(テント場)にある細い道に入り、すぐに池ノ平山への登山道を右に分けて進む。この道は旧鉱山道と
呼ばれる。それは池ノ平山を中心にモリブデンを含有する輝水鉛鉱が発見された小黒部鉱山があったが、戦後鉱山は閉山となった。
この旧鉱山道はアップダウンのあまりない水平道に近いが、実際にはへつり状の溝道になっている。左側が切れ落ちているのだが、
実際にはどのようになっているのか暗くてわからない。2008年9月にはこの鉱山道から70m余り転落して死亡するという事故が起き
ている。池の平小屋の管理人の菊池今朝和氏は、北方稜線の山行で最も危険なのは鉱山道であると警告している。

 やがて滝の音が聞こえてきた。小窓雪渓に流れ落ちている滝であるが、この滝の少し上部で小窓雪渓に下降することになる。もう
そろそろ下降点ではないかと思っていると、岩に記されたペンキで丸印が見つかったので、ここが小窓雪渓への下降点であると確信
した。雪渓に降りると、アイゼン(6本爪)を装着したが、このときピッケルを持参するのを忘れたことに気づいた。でも、小窓雪渓の傾
斜を見ると、ストックでも対応できると思い、アイゼン・ストックで雪渓を登って行くことになった。気温が低いので雪渓が凍っているが、
フラット・フィッティングを決めながら、どんどんと登っていく。雪渓歩きを1時間ほど続けると、小窓雪渓を詰めてしまい、草付きの斜面
に到達した(5:25)。ここが小窓である。因みに、剱岳北方稜線には、大窓、小窓、三ノ窓の3つの窓があるが、この「窓」とは長野側
からの呼称である「キレット(切戸)」の富山側からの呼称である。小窓の上部の草付きにある踏み跡を小窓の頭に向かって登ってい
く。最初はお花畑のようなところだが、やがてルンゼ状の急登になり、ハイマツ帯の尾根に出てきた。次第に明るくなってきた東の空
に-ちょうど五竜岳と鹿島槍の間に太陽が昇ってきた。振り返ると、昨日登った池ノ平山南峰と北峰が見え、その左には猫又山、釜
谷山、毛勝山の毛勝三山も見えている。

 小窓の頭に向かって登っていくが、その手前からトラバースして小窓ノ王に向かうことになる。小窓から小窓ノ王までには2箇所雪渓
のあるルンゼを横断するところがあるということであったが、最初のルンゼは残雪がなく、単なるガレ場のようなところであった。次のル
ンゼには雪渓が残っていた。この雪渓は10mほどの短いトラバースになるが、かなりの傾斜で、もし滑落すれば致命的なので、ここは
アイゼン&ピッケルで慎重に渡るところである。先頭のN野氏は、ピッケルだけのノーアイゼンでサッサと横断してしまったが、私はピッ
ケルがない。アイゼンを装着し、ストックを雪面に突き立てながら、慎重に一歩ずつ足を進めた。滑落するのではないかという恐怖感と
緊張感で足が思うように進まない。しかし、時間をかけて何とか無事トラバースを終えた。ちゃんとピッケルを持参していれば、こんな怖
い思いをすることはなかったのである。
雪渓のトラバース(滑落は致命的だ!)
雪渓のトラバース(滑落は致命的だ!)
 雪渓を渡りきると、岩壁のトラバースが続き、やがて小窓ノ王の岩壁が圧倒的な迫力をもって立
ちはだかる。ここから草付き斜面を100mほど登っていくと、ようやく小窓ノ王の基部(肩)にやってきた。ここでようやく池ノ谷側が望める
ようになる。池ノ谷左俣から突き上げる剱尾根はギザギザになっていて荒々しさを強調している。小窓ノ王の西壁に回り込むと、前方に
はジャンダルム、チンネ、池ノ谷ノ頭、そしてガレたルンゼの池ノ谷ガリーが待ち受けているのが目に入ってくる。この小窓ノ王の基部か
らは池ノ谷側に移り、小窓ノ王の西側を巻いて下っていくことになる。この下りは岩ガレの細いバンド(帯状に延びる岩棚)になっていて、
浮き石で転倒しないように注意が必要なところである。この斜形バンドを反対方向(三ノ窓)から登るときには「発射台」と呼ばれている。
バンドを下りきったところから少し登ったところに三ノ窓があった(7:30)。

 「三ノ窓」は、小窓ノ王と八ツ峰ノ頭とに挟まれた狭い「窓」である。三ノ窓からは、東側に後立山の峰々を見渡すことができるが、特に
鹿島槍の端正な姿と五竜岳が印象的である。巨大なチンネの岩壁が聳え立っていて、その左稜線にはクライマーの姿が見える。西側
は池ノ谷左俣で剱尾根と小窓尾根に挟まれたルンゼが印象的である。先が長いので小休止の後、出発した。三ノ窓からは池ノ谷ガリー
の急登である。小窓ノ王の基部から眺めると、かなりの急傾斜でガレた岩の詰まったルンゼが池ノ谷に落ち込んでいるのがわかってい
た。足元が不安定でガレた石がズルズルと崩れて、まるで蟻地獄のようになかなか進まないところだ。さらに前方から登山者が下って
くると落石に危険も大きい。高々150mあまりの登りに1時間もかかってしまう所以だ。前方からの登山者が来る前にここを通過しようと
早朝の出発であったが、早くもガリーの下部で女性単独者と出会ってしまった。聞くと上部に3人いるという。落石の危険を少しでも避け
るため、ガリー左端に沿って登っていくと、岩の崩れるのが少なく比較的登りやすい。ジャンダルムの下を巻いてどんどん登っていく。途
中で男性3人とすれ違ったが、落石の難に遭うこともなく、ガリーを登り終えたところが池ノ谷乗越である(8:20)。ここは八ツ峰ノ頭と池ノ
谷ノ頭の間の狭いコルである。ここも「窓」になっていて、東には針ノ木岳や蓮華岳が見えている。ここから池ノ谷ノ頭へは50mの岩壁の
直登になっている。見た目には垂直に近いが、ザイルまでは要らない登りになっている。上から続々と登山者がクライムダウンしてくるの
で、しばらく通過待ちとなった。左側のルンゼを登るようであったが、右側の壁もホールドが結構あるので、そう苦労することはなかった。
登り着いたところが池ノ谷ノ頭で、展望は抜群である(8:50)。まず目につくのは、そそり立つ尖塔のような八ツ峰とチンネである。こんな
に間近に見えるので迫力がある。次には、これから辿る長次郎ノ頭とその向こうに剱岳本峰が屹立している。まるで早く登って来いと言
われているようだ。振り返ると、北に延びる北方稜線の、池ノ平山南峰・北峰、白ハゲ、赤ハゲ、赤谷山、毛勝三山と並んでいるのが印
象的だ。
小窓ノ王基部からチンネ、池ノ谷ガリーを眺望する
小窓ノ王基部からチンネ、池ノ谷ガリーを眺望する
チンネ、三ノ窓ノ頭、八ツ峰ノ頭(池ノ谷ノ頭から)
チンネ、三ノ窓ノ頭、八ツ峰ノ頭(池ノ谷ノ頭から)
 池ノ谷ノ頭でほっと一息ついたが、これからまだ岩稜は続く。長次郎ノ頭を越えて行かなければならない。長次郎ノ頭をそのままトップ
から越えると、20~30mほどの懸垂下降をしなければならないと聞いており、懸垂下降をしないならば、長次郎谷側を巻いて進むことに
なる。まずは、長次郎谷源頭部は、大きく巻くようにして通過するが、高度感のある岩壁帯のトラバースがある。狭い岩棚を辿っていくが、
小さなルンゼがあり、これを跨いで越えなければならない。思い切ってルンゼを跨ぎ、次に小さなバンドを乗り越える。左側がスッパリと
切れ落ちているにもかかわらず、足場が不安定なので緊張感が走る。古い残置ハーケンに架けられているお助け紐(補助ロープ)が1本
あったので、これを利用すると無事通過することができた。この先の巻き道で少し迷い下りすぎてしまったが、登り返すと正規ルートと思
われる踏み跡が見つかり、長次郎ノ頭を巻いて、コルに降下して行くことができた。うまくルートファインディングすると、ザイルを使って懸
垂下降をしなくても無事通過することができたのだ。長次郎ノコルまで辿り着くと、「命のキケン」のある難所は通過し終えたようである
(10:10)。コルからはザレた岩場を登り、ピークをひとつ越えると、たくさんの登山者がいる剱岳本峰に着いた(10:30)。

 池ノ平小屋を出発してから約7時間かかったが、ともかくも剱岳北方稜線を無事縦走することができたことを仲間とともに喜び合った。
これまで別山尾根、早月尾根と2つの方向から登った剱岳であるが、北方稜線から登ってくると、何だか違った場所のように思えるのは
不思議である。
最後に編集したユーザー kitayama-walk [ 2012年10月01日(月) 19:38 ], 累計 1 回
written by kitayama-walk
六右衛門(YaS)
記事: 159
登録日時: 2011年5月11日(水) 20:34
お住まい: 大阪府三島郡島本町山崎
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Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

投稿記事 by 六右衛門(YaS) »

kitayama-walkさん はじめましてです。(多分) 
kitayama-walk さんが書きました:  「剱岳北方稜線」-この言葉には憧れをかき立てる独特の響きがある。2007年7月別山尾根から初めて剱岳に登頂したとき、山頂には
金属プレートがあったが、「◯北方稜線:この先キケン 一般登山者は入らないでください(環境庁・富山県)」と書かれていた。北方を見る
と、長次郎の頭や八ッ峰などの岩峰群が立ちはだかっている。いつかはここを歩いてみたいという願望が生まれた。2011年9月早月尾根
から再び剱岳に登ったが、次は北方稜線だと心に決めた。
私の場合、まず早月尾根からの往復、次に長次郎谷から別山尾根下山でしたが、「剱岳北方稜線」は憧れのままで、実力的に行けそうもないところです。
kitayama-walk さんが書きました: 今回はテント泊山行としたため、アプローチに時間をかけて、入山することにし3泊4日の行程にした。
9/14(初日)晴れ時々曇り後雨
9:00烏丸御池発→(車)→2:00立山駅(仮眠)7:00→(ケーブルカー)→7:07美女平7:35発(高原バス)→8:25室堂着
8:30室堂⇒9:10雷鳥平⇒10:25別山乗越⇒11:00剣沢小屋11:40⇒12:30長次郎谷出合⇒13:00真砂沢ロッジ(幕営)
9/15(2日目)晴れ後雨
6:50真砂沢ロッジ⇒7:30二股吊橋7:45⇒9:30仙人峠⇒9:50仙人池10:20⇒10:35仙人峠⇒10:55池ノ平小屋11:20⇒12:10池ノ
平山12:30⇒13:10池ノ平小屋(幕営)
9/16(3日目)晴れ
3:40池ノ平小屋-4:10雪渓下降点-5:25小窓-7:30三ノ窓7:40-8:20池ノ谷乗越8:35-8:50池ノ谷ノ頭9:00-10:10長次郎
ノコル-10:30剱岳山頂11:00-11:10カニのヨコバイ(渋滞)-12:10平蔵ノコル-13:00前剱-13:50一服剣-14:10剣山荘-
14:35剣沢野営場(幕営)

9/17(4日目)晴れ
5:30剣沢野営場⇒6:00別山乗越6:10⇒6:45雷鳥平7:00⇒7:40室堂
余裕のある工程でいいですね〜。私めも池ノ平山にちょっと上がって雰囲気を感じたいと考えておるところです。カニの横ばいはやっぱり30〜40分くらい渋滞しましたか。
kitayama-walk さんが書きました:  小窓の頭に向かって登っていくが、その手前からトラバースして小窓ノ王に向かうことになる。小窓から小窓ノ王までには2箇所雪渓
のあるルンゼを横断するところがあるということであったが、最初のルンゼは残雪がなく、単なるガレ場のようなところであった。次のル
ンゼには雪渓が残っていた。この雪渓は10mほどの短いトラバースになるが、かなりの傾斜で、もし滑落すれば致命的なので、ここは
アイゼン&ピッケルで慎重に渡るところである。
ここがまず問題です。
kitayama-walk さんが書きました:三ノ窓からは池ノ谷ガリーの急登である。小窓ノ王の基部から眺めると、かなりの急傾斜でガレた岩の詰まったルンゼが池ノ谷に落ち込んでいるのがわかっていた。足元が不安定でガレた石がズルズルと崩れて、まるで蟻地獄のようになかなか進まないところだ。さらに前方から登山者が下って
くると落石に危険も大きい。高々150mあまりの登りに1時間もかかってしまう所以だ。前方からの登山者が来る前にここを通過しようと早朝の出発であったが、早くもガリーの下部で女性単独者と出会ってしまった。聞くと上部に3人いるという。落石の危険を少しでも避けるため、ガリー左端に沿って登っていくと、岩の崩れるのが少なく比較的登りやすい。ジャンダルムの下を巻いてどんどん登っていく。途中で男性3人とすれ違ったが、落石の難に遭うこともなく、ガリーを登り終えたところが池ノ谷乗越である(8:20)。
それでもってここが次なる問題。斜度がありそう。
kitayama-walk さんが書きました: 登り着いたところが池ノ谷ノ頭で、展望は抜群である(8:50)。まず目につくのは、そそり立つ尖塔のような八ツ峰とチンネである。こんな
に間近に見えるので迫力がある。次には、これから辿る長次郎ノ頭とその向こうに剱岳本峰が屹立している。まるで早く登って来いと言
われているようだ。振り返ると、北に延びる北方稜線の、池ノ平山南峰・北峰、白ハゲ、赤ハゲ、赤谷山、毛勝三山と並んでいるのが印
象的だ。
このあたりの眺望は素晴らしいですよね。鹿島槍がとてもすっきりと形ですし、針ノ木とスバリが並んで見えます。毛勝三山がぽっかり浮かんでいる感じです。
kitayama-walk さんが書きました:池ノ谷ノ頭でほっと一息ついたが、これからまだ岩稜は続く。長次郎ノ頭を越えて行かなければならない。長次郎ノ頭をそのままトップ
から越えると、20~30mほどの懸垂下降をしなければならないと聞いており、懸垂下降をしないならば、長次郎谷側を巻いて進むことに
なる。まずは、長次郎谷源頭部は、大きく巻くようにして通過するが、高度感のある岩壁帯のトラバースがある。狭い岩棚を辿っていくが、
小さなルンゼがあり、これを跨いで越えなければならない。思い切ってルンゼを跨ぎ、次に小さなバンドを乗り越える。左側がスッパリと
切れ落ちているにもかかわらず、足場が不安定なので緊張感が走る。古い残置ハーケンに架けられているお助け紐(補助ロープ)が1本
あったので、これを利用すると無事通過することができた。この先の巻き道で少し迷い下りすぎてしまったが、登り返すと正規ルートと思
われる踏み跡が見つかり、長次郎ノ頭を巻いて、コルに降下して行くことができた。
それでもってここがまたまた問題。思い切ってルンゼをまたぐのが無理!
長次郎のコル(手前)と長次郎ノ頭 どこを巻く?
長次郎のコル(手前)と長次郎ノ頭 どこを巻く?
kitayama-walk さんが書きました:コルからはザレた岩場を登り、ピークをひとつ越えると、たくさんの登山者がいる剱岳本峰に着いた(10:30)。

 池ノ平小屋を出発してから約7時間かかったが、ともかくも剱岳北方稜線を無事縦走することができたことを仲間とともに喜び合った。
これまで別山尾根、早月尾根と2つの方向から登った剱岳であるが、北方稜線から登ってくると、何だか違った場所のように思えるのは
不思議である。
やりましたね。長次郎谷からの登りで登頂した時にも、違った場所のような感じがしました。北方領線からだともっと違うかな?人がいっぱいいる山頂なのに別の山頂にいるような感があるというか。
このレポートは詳細で、しかも雰囲気が出ていて、気合の入り具合が伝わってくるようです。とてもいいレポートありがとうございました。

       六右衛門(YaS)
越前
記事: 217
登録日時: 2012年5月16日(水) 15:43

Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

投稿記事 by 越前 »

kitayama-walkさん、こんにちは。
バリエーションルートととして槍ヶ岳北鎌尾根と並んで、最難関と分類されるあの有名な「剱岳北方稜線」とは、やりましたね~。無事の帰還おめでとうございます。
いつかはここを歩いてみたいという願望が生まれた。2011年9月早月尾根から再び剱岳に登ったが、次は北方稜線だと心に決めた。
「この先キケン 一般登山者は入らないでください」このプレートに書かれた文字を、私もまじまじとながめたものです。おそらくやぶこぎに顔を出される方ならば、皆ここを歩いてみたいと思われるでしょうね。
単独では不安なため、登山経験の豊かなN野氏(京都比良山岳会)に同行を求め、同会の例会として企画してもらい、結局4名で望むこととなった
場所が場所なだけに自分の力量を過大評価せず、できる手はうつ。こんなkitayama-walkさんの姿勢に好感を覚えます。
このところ、北方稜線を歩く登山者が増えてきており、剱岳本峰からやってくる登山者とすれ違う前に池ノ谷ガリーを越えようと2時半に起床して朝食を摂り、テントを撤収して3時40分にスタートした
へ~、そうなんですか。インターネットで情報量が増えると、行く人もまた増えるということなんでしょうね。
アプローチにも時間をかけたその上で、回避できる危険ならばと早朝出発で対応したわけですね。
池の平小屋の管理人の菊池今朝和氏は、北方稜線の山行で最も危険なのは鉱山道であると警告している。
このルートでの危険は、雪渓トラバースや落石、ルーファイ゙ミスでの行き詰まりなんかを目にしますが、こんな指摘ははじめて見ました。ありがとうございます。
ピッケルを持参するのを忘れたことに気づいた
家に?クルマへ?三泊四日もの行程でも本当に必要となるのはほんの一瞬、しかしその一瞬が致命傷もしくは撤退へとつながりかねないんですよね。でもよかったですね。
この雪渓は10mほどの短いトラバースになるが、かなりの傾斜で、もし滑落すれば致命的なので、ここは
アイゼン&ピッケルで慎重に渡るところである。先頭のN野氏は、ピッケルだけのノーアイゼンでサッサと横断してしまったが、私はピッケルがない。
安全に渡るために、先に渡った人のピッケルをロープで結んで投げてもらうという手がありましたね。
足がすくんで歩きにくくなるコワい感覚は私にもよくわかります。
雪渓を渡りきると、岩壁のトラバースが続き、やがて小窓ノ王の岩壁が圧倒的な迫力をもって立ちはだかる。
ほっとして萎えた足には少々つらいものがありそうですね。
小窓ノ王の西壁に回り込むと、前方にはジャンダルム、チンネ、池ノ谷ノ頭、そしてガレたルンゼの池ノ谷ガリーが待ち受けているのが目に入ってくる。
これでもか~の波状攻撃が待ち受けているわけですね。
私ならここらで泣きがはいるかもしれません。
足元が不安定でガレた石がズルズルと崩れて、まるで蟻地獄のようになかなか進まないところだ
北アには一般登山道でもこんなところがあります。しかし「道」のないルートだと私の思っている以上に大変なのでしょうね。
ガリー左端に沿って登っていくと、岩の崩れるのが少なく比較的登りやすい
ふむふむ、参考になります。
見た目には垂直に近いが、ザイルまでは要らない登りになっている。上から続々と登山者がクライムダウンしてくるので、しばらく通過待ちとなった
大キレットの下降くらいのイメージでしょうか?
登り着いたところが池ノ谷ノ頭で、展望は抜群である(8:50)。まず目につくのは、そそり立つ尖塔のような八ツ峰とチンネである。こんなに間近に見えるので迫力がある。次には、これから辿る長次郎ノ頭とその向こうに剱岳本峰が屹立している。まるで早く登って来いと言われているようだ。振り返ると、北に延びる北方稜線の、池ノ平山南峰・北峰、白ハゲ、赤ハゲ、赤谷山、毛勝三山と並んでいるのが印象的だ。
ためいきが・・・・。
うまくルートファインディングすると、ザイルを使って懸垂下降をしなくても無事通過することができたのだ。
なるほど!! 長次郎ノ頭を越えるのに懸垂下降は行わなくてもよかったのですね。
あの、今後の参考にしたいので、ここのGPS軌跡拡大図載せてもらえないでしょうか?できればお願いしたいのですが・・・。
池ノ平小屋を出発してから約7時間かかったが、ともかくも剱岳北方稜線を無事縦走することができたことを仲間とともに喜び合った。これまで別山尾根、早月尾根と2つの方向から登った剱岳であるが、北方稜線から登ってくると、何だか違った場所のように思えるのは不思議である。
お疲れ様でした。
感激のあまり、何度も訪れたはずの場所が違って見えた・・・・この感覚もよくわかります。
いいレポを読ませていただきました。ありがとうございます。
今年は、私がこのルートを歩くのに不足していたモノが埋まりつつあるようです。
よし、来年こそはkitayama-walkさんに続けるよう頑張るかな。

越前
越前
たんぽぽ
記事: 709
登録日時: 2011年2月20日(日) 11:54

Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

投稿記事 by たんぽぽ »

kitaさん、こんばんは。

【コース】 池の平小屋-小窓-三の窓-池の谷乗越-長次郎のコル-剣岳-平蔵のコル-前剱-一服剣-剣山荘-剣沢野営場
北方稜線いいですね~
たんぽぽは二十歳の頃に一度だけ剣に登ったことがあるんですよ。
単独で前剣の辺りの石室に泊まり、翌日に三ノ窓を経て剣沢への周回ルートでした。
いい道はついてるものの穂高とは違い、えらく岩の脆い山だなあという印象だけが残ってます。

このところ、北方稜線を歩く登山者が増えてきており、剱岳本峰からやってくる登山者とすれ違う前に池ノ谷ガリー
を越えようと2時半に起床して朝食を摂り、テントを撤収して3時40分にスタートした。

近年の北方稜線は中高年登山者に大人気のようです、それにともない事故も増大とか。

池の平小屋の管理人の菊池今朝和氏は、北方稜線の山行で最も危険なのは鉱山道であると警告している。
緊張感のない鉱山道がキケンってことでしょうか。

雪渓に降りると、アイゼン(6本爪)を装着したが、このときピッケルを持参するのを忘れたことに気づいた。
ヤバイですよ~

振り返ると、昨日登った池ノ平山南峰と北峰が見え、その左には猫又山、釜谷山、毛勝山の毛勝三山も見えている。
30年前に剣から眺めた毛勝三山には惚れましたわ。
おかげで毛勝三山にはもう5回登頂、剣は1度きりなのに・・・

しかし、時間をかけて何とか無事トラバースを終えた。ちゃんとピッケルを持参していれば、こんな怖い思いをすることはなかったのである。
ハラハラ、ドキドキ、剣は年中ピッケル必携の山ですよ。
アイゼンも前爪あった方がベター。

足元が不安定でガレた石がズルズルと崩れて、まるで蟻地獄のようになかなか進まないところだ。さらに前方から登山者が下って
くると落石に危険も大きい。高々150mあまりの登りに1時間もかかってしまう所以だ。前方からの登山者が来る前にここを通過しようと
早朝の出発であったが、早くもガリーの下部で女性単独者と出会ってしまった。聞くと上部に3人いるという。

たんぽぽは下りに使ったのでガラガラを楽チン楽チン。
当時は剣沢まで誰にも出会うことがない静かなルートでした。

 池ノ平小屋を出発してから約7時間かかったが、ともかくも剱岳北方稜線を無事縦走することができたことを仲間とともに喜び合った。
お疲れさまでした!
たんぽぽは死ぬまでに二度目の剣を踏むことがあるかなあ~
すっかり眺める山になってしまった剣
すっかり眺める山になってしまった剣
宮指路
記事: 1008
登録日時: 2011年2月27日(日) 21:13

Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

投稿記事 by 宮指路 »

kitayama-walkさん、こんばんは

「剱岳北方稜線」-この言葉には憧れをかき立てる独特の響きがある。2007年7月別山尾根から初めて剱岳に登頂したとき、山頂には
金属プレートがあったが、「◯北方稜線:この先キケン 一般登山者は入らないでください(環境庁・富山県)」と書かれていた。


剣岳は5年前に一般ルート(別山乗越~剣山荘宿泊)から登っていますが、その時は登っただけで精一杯でした。しかし最近はこの北方稜線が気になっています。
特に昨夜のテレビで世界の果てまでイッテQのイモトの挑戦を見るとますます行きたくなります。
 
 剱岳本峰からやってくる登山者とすれ違う前に池ノ谷ガリーを越えようと2時半に起床して朝食を摂り、テントを撤収して3時40分にスタートした。もちろん、周囲はまだ真っ暗でヘッドランプを点けて歩き出した。小屋の裏手(テント場)にある細い道に入り、すぐに池ノ平山への登山道を右に分けて進む。この道は旧鉱山道と
呼ばれる。


途中でビバークできないのでこのくらい早く出発するんですね。

 小窓の頭に向かって登っていくが、その手前からトラバースして小窓ノ王に向かうことになる。小窓から小窓ノ王までには2箇所雪渓
のあるルンゼを横断するところがあるということであったが、最初のルンゼは残雪がなく、単なるガレ場のようなところであった。次のル
ンゼには雪渓が残っていた。この雪渓は10mほどの短いトラバースになるが、かなりの傾斜で、もし滑落すれば致命的なので、ここはアイゼン&ピッケルで慎重に渡るところである。


写真で見るとかなりの傾斜で相当怖そうですね。

先頭のN野氏は、ピッケルだけのノーアイゼンでサッサと横断してしまったが、私はピッケルがない。アイゼンを装着し、ストックを雪面に突き立てながら、慎重に一歩ずつ足を進めた。滑落するのではないかという恐怖感と緊張感で足が思うように進まない。

ピッケルを忘れたらしいですがご無事で何よりです。ザイル確保まではしないんですね。
一つ間違えばアウトという場所では慎重にならざるをえませんね

しかし、時間をかけて何とか無事トラバースを終えた。

良かった。良かった。

 
バンドを下りきったところから少し登ったところに三ノ窓があった(7:30)。
「三ノ窓」は、小窓ノ王と八ツ峰ノ頭とに挟まれた狭い「窓」である。三ノ窓からは、東側に後立山の峰々を見渡すことができるが、特に


7年前の秋に裏剣の仙人峠から見たチンネや三ノ窓の紅葉は実に素晴らしかったです。


鹿島槍の端正な姿と五竜岳が印象的である。巨大なチンネの岩壁が聳え立っていて、その左稜線にはクライマーの姿が見える。

Cフェースと呼ばれる岸壁でしょうか?この夏に私の知人が行ったらしいです。

三ノ窓からは池ノ谷ガリーの急登である。小窓ノ王の基部から眺めると、かなりの急傾斜でガレた岩の詰まったルンゼが池ノ谷に落ち込んでいるのがわかっていた。足元が不安定でガレた石がズルズルと崩れて、まるで蟻地獄のようになかなか進まないところだ。さらに前方から登山者が下ってくると落石に危険も大きい

足がズルッと行くと怖いですね。

 池ノ谷ノ頭でほっと一息ついたが、これからまだ岩稜は続く。長次郎ノ頭を越えて行かなければならない。長次郎ノ頭をそのままトップから越えると、20~30mほどの懸垂下降をしなければならないと聞いており、

この懸垂下降は先週、イモトのイッテQでやっていましたね。

懸垂下降をしないならば、長次郎谷側を巻いて進むことになる。

一応巻き道があるんだ

まずは、長次郎谷源頭部は、大きく巻くようにして通過するが、高度感のある岩壁帯のトラバースがある。狭い岩棚を辿っていくが、小さなルンゼがあり、これを跨いで越えなければならない。思い切ってルンゼを跨ぎ、次に小さなバンドを乗り越える。左側がスッパリと切れ落ちているにもかかわらず、足場が不安定なので緊張感が走る。古い残置ハーケンに架けられているお助け紐(補助ロープ)が1本あったので、これを利用すると無事通過することができた。[/color

]この巻き道が意外に強敵でしたね

この先の巻き道で少し迷い下りすぎてしまったが、登り返すと正規ルートと思
われる踏み跡が見つかり、長次郎ノ頭を巻いて、コルに降下して行くことができた。うまくルートファインディングすると、ザイルを使って懸垂下降をしなくても無事通過することができたのだ。長次郎ノコルまで辿り着くと、「命のキケン」のある難所は通過し終えたようである


長い行程お疲れ様でした。またかなり詳細なレポで読み応えがありました。
ここに行くにはテントを担げる体力と危険な岩場を通過する技術が必要なことも良く分かりました。
昔、ヤマケイでこの稜線の特集を読んで行きたいと思っていましたがまだまだ私には無理なようです。
でも体力のある内に良い仲間を見つけて行きたいなぁ~

                                                           宮指路
biwaco
記事: 1423
登録日時: 2011年2月22日(火) 16:56
お住まい: 滋賀県近江八幡市

Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

投稿記事 by biwaco »

kitayamaさん、お疲れさま~
よくも生きて帰れましたね。なにはともあれ、北方稜線制覇、おめでとうございます。

山頂には金属プレートがあったが、「◯北方稜線:この先キケン 一般登山者は入らないでください(環境庁・富山県)」と書かれていた。


「この先キケン」とあらば、当然のこと棄権するのが品行方正なイッパン登山者でしょうね。
入り込むのは後先考えないイッペン登山者くらいかな?

そのため、単独では不安なため、登山経験の豊かなN野氏(京都比良山岳会)に同行を求め、同会の例会として企画してもらい、結局4名で望むこととなった。


おお、熱意(熱病?)で山岳会まで動かしましたか~(@_@;)
 
 前日の雨も夜半には上がり、空にはオリオン星座を始めとする星がちりばめられて輝いている。今日は晴天に恵まれるとの期待でワクワクする。このところ、北方稜線を歩く登山者が増えてきており、剱岳本峰からやってくる登山者とすれ違う前に池ノ谷ガリー
を越えようと2時半に起床して朝食を摂り、テントを撤収して3時40分にスタートした。もちろん、周囲はまだ真っ暗でヘッドランプを点けて歩き出した。


さすがに構えから違いますね。2時半に朝食って…、それ夜食でしょう?

この旧鉱山道はアップダウンのあまりない水平道に近いが、実際にはへつり状の溝道になっている。左側が切れ落ちているのだが、実際にはどのようになっているのか暗くてわからない。2008年9月にはこの鉱山道から70m余り転落して死亡するという事故が起きている。池の平小屋の管理人の菊池今朝和氏は、北方稜線の山行で最も危険なのは鉱山道であると警告している。


暗い夜道は気をつけましょう。でも、下が見えてたらもっと怖いかも?

雪渓に降りると、アイゼン(6本爪)を装着したが、このときピッケルを持参するのを忘れたことに気づいた。でも、小窓雪渓の傾斜を見ると、ストックでも対応できると思い、アイゼン・ストックで雪渓を登って行くことになった。


6本歯でピッケル無しって、ヤバいんやないの?
小窓雪渓の斜度ってそんなにきつくないんかなあ…。

振り返ると、昨日登った池ノ平山南峰と北峰が見え、その左には猫又山、釜谷山、毛勝山の毛勝三山も見えている。


猫又、大猫、いつか行きましょうね。

次のルンゼには雪渓が残っていた。この雪渓は10mほどの短いトラバースになるが、かなりの傾斜で、もし滑落すれば致命的なので、ここはアイゼン&ピッケルで慎重に渡るところである。先頭のN野氏は、ピッケルだけのノーアイゼンでサッサと横断してしまったが、私はピッケルがない。アイゼンを装着し、ストックを雪面に突き立てながら、慎重に一歩ずつ足を進めた。滑落するのではないかという恐怖感と緊張感で足が思うように進まない。しかし、時間をかけて何とか無事トラバースを終えた。ちゃんとピッケルを持参していれば、こんな怖い思いをすることはなかったのである。


ほらね、「弁当忘れてもアイ・ピケ忘れるな」って言うでしょう(^_-)
わざとヤバイ環境に自分を置いてヒヤヒヤ感を楽しむって、M趣味?

 雪渓を渡りきると、岩壁のトラバースが続き、やがて小窓ノ王の岩壁が圧倒的な迫力をもって立
ちはだかる。ここから草付き斜面を100mほど登っていくと、ようやく小窓ノ王の基部(肩)にやってきた。ここでようやく池ノ谷側が望める
ようになる。池ノ谷左俣から突き上げる剱尾根はギザギザになっていて荒々しさを強調している。小窓ノ王の西壁に回り込むと、前方に
はジャンダルム、チンネ、池ノ谷ノ頭、そしてガレたルンゼの池ノ谷ガリーが待ち受けているのが目に入ってくる。この小窓ノ王の基部か
らは池ノ谷側に移り、小窓ノ王の西側を巻いて下っていくことになる。この下りは岩ガレの細いバンド(帯状に延びる岩棚)になっていて、
浮き石で転倒しないように注意が必要なところである。この斜形バンドを反対方向(三ノ窓)から登るときには「発射台」と呼ばれている。
バンドを下りきったところから少し登ったところに三ノ窓があった(7:30)。


この後の記述も含め、後からとはいえ、こういう冷静な描写ができる神経のズ太さが何ともうらやましい限りです。

 長次郎ノ頭をそのままトップ
から越えると、20~30mほどの懸垂下降をしなければならないと聞いており、懸垂下降をしないならば、長次郎谷側を巻いて進むことに
なる。まずは、長次郎谷源頭部は、大きく巻くようにして通過するが、高度感のある岩壁帯のトラバースがある。狭い岩棚を辿っていくが、小さなルンゼがあり、これを跨いで越えなければならない。思い切ってルンゼを跨ぎ、次に小さなバンドを乗り越える。左側がスッパリと
切れ落ちているにもかかわらず、足場が不安定なので緊張感が走る。古い残置ハーケンに架けられているお助け紐(補助ロープ)が1本
あったので、これを利用すると無事通過することができた。この先の巻き道で少し迷い下りすぎてしまったが、登り返すと正規ルートと思
われる踏み跡が見つかり、長次郎ノ頭を巻いて、コルに降下して行くことができた。


前に長次郎谷を登った時、右の八ツ峰側へ進んでしまい、上部の岩場をトラバースしてコルへ出ました。
その時は必死だったからか、なぜかそんなに恐怖感はなかったのですが、どう進んだのか記憶がありません。(>_<)
やはりkitayamaさんは冷静沈着、虚心坦懐、勇猛果敢の士です。
長次郎谷上部から八ッ峰
長次郎谷上部から八ッ峰
 池ノ平小屋を出発してから約7時間かかったが、ともかくも剱岳北方稜線を無事縦走することができたことを仲間とともに喜び合った。
これまで別山尾根、早月尾根と2つの方向から登った剱岳であるが、北方稜線から登ってくると、何だか違った場所のように思えるのは
不思議である。


重い荷物を担いでの縦走、お疲れさまでした。
これで別山尾根、早月尾根、北方稜線とクリアして、残るは源次郎尾根の登ハンですか?

                      ~biwaco
kitayama-walk
記事: 719
登録日時: 2011年6月06日(月) 01:33
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Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

投稿記事 by kitayama-walk »

 六右衛門さん、こんにちは(初めまして)。

> 私の場合、まず早月尾根からの往復、次に長次郎谷から別山尾根下山でしたが、「剱岳北方稜線」は憧れのままで、実力的に
> 行けそうもないところです。


 私の場合も同じで、別山尾根、次いで早月尾根とレベルアップしていくと、次は北方稜線となってしまします。もちろん、下調べは十分し
なければなりません。ガイドブックやネットで情報をたくさん集めました。でも、単独ではちょっと不安がいっぱいでしたので、一緒に行って
もらえる人を探しました。やはり最初は複数で行くべきです。さらに経験者がいるとベターです。実際に歩いてみると、怖かったところが何
か所かあったものの、想像したほどではなかったように思います。

> 余裕のある行程でいいですね。私めも池ノ平山にちょっと上がって雰囲気を感じたいと考えておるところです。カニの横ばいはやっぱり
> 30〜40分くらい渋滞しましたか。


 やはり最初なので、しかも池ノ平→剱本峰という登りコースの設定で、テント泊という条件だったので、行程に余裕をもたせることにしま
した。初日、2日目は余裕のよっちゃんでしたが、やはり3日目は11時間行動できつかったです。年齢と体力を考えると、小屋泊まりにし
た方がいいですね。その分、荷物が軽くなりますから。

 池ノ平小屋から池ノ平山南峰までの往復には2時間見ておけばいいでしょう。登山道はしっかりとついていて、途中にはお花畑もありま
す。少しだけハイマツをかき分けるようなところもありますが、問題ありません。山頂からは、八ツ峰、チンネ、小窓ノ王などの尖塔群が大
迫力ですね。

 カニのヨコバイには参りました。通過するのに1時間もかかりました。これは登ってくる登山者との交互通行のために余計に渋滞してい
るのですね。もちろん、ヨコバイの最初の一歩を踏み出すのに怖いので時間がかかっているのですが。
カニのヨコバイの渋滞状況
カニのヨコバイの渋滞状況
> ここがまず問題です。それでもってここが次なる問題。斜度がありそう。

 そうですね。収集した情報では、2箇所雪渓のトラバースがあると書かれていましたが、その年の雪の量と時期によるのでしょう。2箇所
とも雪渓がなく単なるガレ場になっていたときもあるようです。今回は1箇所のみ雪渓になっていました。ピッケルをちゃんともっていれば、
そう難儀することもなったのです。

 池ノ谷ガリーは思ったよりは苦労しませんでしたよ。左端を登るのが極意です。そうすれば、ズルズルと崩れることもないし、落石の心配
もほとんどないと思います。傾斜はある程度ありますが、見た目ほど登れないようなところではありません。
池ノ谷ガリーの登り-左端を歩いている
池ノ谷ガリーの登り-左端を歩いている
> このあたりの眺望は素晴らしいですよね。鹿島槍がとてもすっきりと形ですし、針ノ木とスバリが並んで見えます。毛勝三山がぽっかり浮
> かんでいる感じです。


 北方稜線からの眺望は素晴らしいものがあります。でも、ゆっくりと楽しむだけの余裕がなかったですね。いつもの山行はガンデジを持参
するのですが、今回は荷物の軽量化のため、コンデジだけにしました。要所要所では写真も撮ったつもりです。
北方稜線の北方の眺望
北方稜線の北方の眺望
> それでもってここがまたまた問題。思い切ってルンゼをまたぐのが無理!

 ヤマケイの2011年7月号80頁に「剱岳北方稜線」の特集が載っていて、最初の写真が源次郎谷源頭部のトラバースの写真でした。
「長次郎谷源頭部は、長次郎谷側を大きく巻くようにして通過する。この写真の次の一歩が怖いところ。思い切って足を出して小ルン
ゼを越えよう。」と書かれています。
次の一歩が怖い、長次郎谷源頭部のトラバース
次の一歩が怖い、長次郎谷源頭部のトラバース
> 長次郎谷からの登りで登頂した時にも、違った場所のような感じがしました。北方領線からだともっと違うかな?人がいっぱいいる
> 山頂なのに別の山頂にいるような感があるというか。


 やっぱりそうなんですね。そんな思いは僕だけはなかったのですね。剱岳本峰にはたくさんの登山者がいますが、ほとんどが別山尾根か早月尾根
から登ってきた登山者です。そんな中で、源次郎尾根や八ツ峰、そして北方稜線からやってくると、ちょっと違った感覚になってしまいますね。
無事登頂後の記念写真
無事登頂後の記念写真
written by kitayama-walk
kitayama-walk
記事: 719
登録日時: 2011年6月06日(月) 01:33
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Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

投稿記事 by kitayama-walk »

 越前さん、とっても遅いレスになってしまいましたm(_ _)m

> 最難関と分類されるあの有名な「剱岳北方稜線」とは、やりましたね~。無事の帰還おめでとうございます。

 ありがとうございます。何とか無事に生還することができました(ほっとしています)。「剱岳北方稜線」という言葉は、「北鎌尾根」と同じ
ような響きがあるんですよね。ザイルまではいらない(ルートファインディングを間違えなければ)バリルートとしては、この2つかなと思い
ます。

> 「この先キケン 一般登山者は入らないでください」 このプレートに書かれた文字を私もまじまじと眺めたものです。おそらくやぶこぎに
> 顔を出される方ならば、皆ここを歩いてみたいと思われるでしょうね。


 越前さんもそうでしたか。このプレートを見て、「やめておこう」と考えるのか、いや「歩いてみたい」と思うのか、ここが分かれ目なんでし
ょうね。ヤブこぎメンバーは後者なんでしょうけれど、あとはそのチャンスが巡ってくるかどうかなんでしょうね。

> 場所が場所なだけに自分の力量を過大評価せず、できる手はうつ。こんなkitayama-walkさんの姿勢に好感を覚えます。

 お褒めの言葉、ありがとうございます。でも、自分の力量は大したことがないので、やはり命が惜しいですから、誰かにアシストしてもら
いたいと思っただけです。そう、臆病なんですよね。でも、それも大事なことだと思います。

> インターネットで情報量が増えると、行く人もまた増えるということなんでしょうね。アプローチにも時間をかけたその上で、回避できる危
> 険ならばと早朝出発で対応したわけですね。


 そうなんですよね。このところ、北方稜線を歩く登山者が増えたということをよく聞きます。今回も、すれ違った登山者の中にも、中高年
の女性が結構いました。よくここに来るなと思いましたが、ガイドさんと思われる方に引率されていう感じでした。

> 家に?クルマへ? 3泊4日もの行程でも本当に必要となるのはほんの一瞬、しかしその一瞬が致命傷もしくは撤退へとつながりかね
> ないんですよね。安全に渡るために、先に渡った人のピッケルをロープで結んで投げてもらうという手がありましたね。


 家に忘れてきました。アイゼンは持ってきたんですがね。まあ、ピッケルまでは要らないだろうという慢心があったわけです。先行者にピ
ッケルを借りるということですね。あのときは怖かったけれど、アイゼンがあったし、ストックで突けたから、何とか行けると思いました。もう
どうにもならないと思ったら先行者のピッケルを借りたでしょうね。

> これでもか~の波状攻撃が待ち受けているわけですね。私ならここらで泣きがはいるかもしれません。

 そう、そんな感じですね。次々とやってくる試練に立ち向かうという感じです。でも、泣きを入れている余裕はありませんでした。おそらく
越前さんだって、同じことでしょうと思いますよ。

> 大キレットの下降くらいのイメージでしょうか?

 そうですね。そんなもんでしょうか。思ったほどには怖くありませんでした。

> なるほど!! 長次郎ノ頭を越えるのに懸垂下降は行わなくてもよかったのですね。
> あの、今後の参考にしたいので、ここのGPS軌跡拡大図載せてもらえないでしょうか?できればお願いしたいのですが・・・。


 懸垂下降に備えてはいましたが、今回は回避することができました。あまり上部に行かないことです。下の方に行けば道が開けます。
GPS軌跡図を載せておきます。
GPS軌跡図
GPS軌跡図
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記事: 719
登録日時: 2011年6月06日(月) 01:33
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Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

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 たんぽぽさん、遅いレスでごめんなさいね。

> 北方稜線いいですね。20歳の頃に一度だけ剣に登ったことがあるんですよ。単独で前剣の辺りの石室に泊まり、翌日に三ノ窓
> を経て剣沢への周回ルートでした。いい道はついてるものの、穂高とは違いえらく岩の脆い山だなあという印象だけが残ってます。


 ほえー、そうなんですか。単独での北方稜線とは驚きです。でも、最近は結構単独行者がいるみたいです。前剱付近に石室がありまし
たか。今はないでしょう? 三ノ窓にはテント適地があります。確かに、穂高とはちょっと違った危険な雰囲気がありますね。

> 近年の北方稜線は中高年登山者に大人気のようです、それにともない事故も増大とか。
> 緊張感のない鉱山道がキケンってことでしょうか。


 そうなんですよね。難度の高い北方稜線をめざす人が増えていて、事故や遭難になって、問題になっているようです。
 鉱山道は暗くてよくわからなかったのですが、足を踏み外すと、かなりの高度で転落してしまうので、危険とされているようです。普通に
歩いていれば大丈夫みたいですけれど。

> 30年前に剣から眺めた毛勝三山には惚れました。おかげで毛勝三山にはもう5回登頂、剣は1度きりなのに・・

 毛勝三山にあこがれた理由は何でしょうか? 登頂は残雪期なんでしょうね。私は、ひとつだけ猫又山に昨年10月初旬に登ったことが
あります。最近、無雪期でも馬場島から大猫山を経て猫又山まで登れるようになっていますよ。

> ハラハラ、ドキドキ、剣は年中ピッケル必携の山ですよ。アイゼンも前爪あった方がベター。

 そうなんですねぇ。私はまだ駆け出しのようです。

> たんぽぽは下りに使ったのでガラガラを楽チン楽チン。当時は剣沢まで誰にも出会うことがない静かなルートでした。

 池ノ谷ガリーを下ったのですね。でも、最近は登山者が多いので落石を起こすことに要注意です。当時は登山者が少なかったのでそうで
もなかったのでしょうか。
P1070556.JPG
written by kitayama-walk
kitayama-walk
記事: 719
登録日時: 2011年6月06日(月) 01:33
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Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

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 宮指路さん、遅いレスでごめんなさい。

> 剣岳は5年前に一般ルート(別山尾根)から登っていますが、その時は登っただけで精一杯でした。しかし最近はこの北方稜線が
> 気になっています。テレビでイッテQのイモトの挑戦を見るとますます行きたくなります。


 宮指路さんも、北方稜線が気になりますか。まあ、ヤブこぎメンなんだから当然でしょうけれど。テレビのイモトの挑戦は知りませんが、
やはり歩いてみたくなるコースですね。8月か9月の天気のよい日を狙って行くことですね。できれば複数で。単独ならば本峰から池ノ平
に向かうコースをお勧めします。

> 途中でビバークできないのでこのくらい早く出発するんですね。

 そんなこともないですよ。テント張るならば、三ノ窓のところです。水場はないですが、ビバークするには適地ですね。早く出たのは、池
ノ谷ガリーでの落石を怖れたからですね。

> 写真で見るとかなりの傾斜で相当怖そうですね。ザイル確保まではしないんですね。

 実際にもそうでしたよ。落ちたらどこまでも滑落していき致命的。ここはピッケル&アイゼンは年中必携のようです。本当はザイルで確保
してもらった方がよかったと思います。でも、あのときは確保なしで行ってしまいました(反省)。

> 7年前の秋に裏剣の仙人峠から見たチンネや三ノ窓の紅葉は実に素晴らしかったです。

 そうでしょうね。裏剱の景色は息を呑むようです。
三ノ窓雪渓
三ノ窓雪渓
> この懸垂下降は先週イモトのイッテQでやっていましたね。一応巻き道があるんだ。

 イモトって、マジックで眉を描いた芸人でしょう(ほとんどテレビ見ないので)。まあ、私も懸垂下降くらいは練習してできるのですが、今回
は回避できるルートがあるのはわかっていたので、それを探しました。下の方にあります。

> ここに行くにはテントを担げる体力と危険な岩場を通過する技術が必要なことも良く分かりました。
> 昔、ヤマケイでこの稜線の特集を読んで行きたいと思っていましたがまだまだ私には無理なようです。


 今回はテント泊だったので、ザックが重かったです。しかし、若者ならいざしらず、そうでない私たちにはやはり小屋泊まりで行きたいです
ね。テント泊でも、剣沢にテント張って、池ノ平小屋に泊まるという方法がいいでしょう。ヤマケイの特集とは、2011年7月号80~87頁でしょう
か。私もこれを参考にしました。
written by kitayama-walk
kitayama-walk
記事: 719
登録日時: 2011年6月06日(月) 01:33
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Re: 【北ア/剱岳】剱岳北方稜線-「この先キケン」な剱岳

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 biwacoさん、とってもとっても遅いレス。次から次へと山に登ってばかりいて、山レポもおっつかず、レスもできず、ごめんなさい!

> よくも生きて帰れましたね。なにはともあれ、北方稜線制覇、おめでとうございます。

 ありがとさんです。ちゃんと生きて帰ってきました=生還です。危険な匂いに誘われて行ってしまいました。次は、北鎌尾根だと息巻いて
いますよ。

> 「この先キケン」とあらば、当然のこと棄権するのが品行方正なイッパン登山者でしょうね。入り込むのは後先考えないイッペン登山者
> くらいかな?


 いやいや、ヤブこぎメンならが、「キケン」と書いてあっても、棄権せず投票するのが筋というものです。もちろん無防(無謀)備ではなく、ち
ゃんと装備を整えてのことですから、後先を考えていますよ。

> おお、熱意(熱病?)で山岳会まで動かしましたか~(@_@;)

 そうっす。単独行では不安でしょう。biwacoさんならば単独でも行っちゃうでしょうけれど、私は根が臆病なもんで。

> 暗い夜道は気をつけましょう。でも、下が見えてたらもっと怖いかも?

 そのとおりかも。下が見えたら、縮み上がる何とかですねぇ。ぶるっと!

> 6本歯でピッケル無しって、ヤバいんやないの?小窓雪渓の斜度ってそんなにきつくないんかなあ…。

 はっきり言ってヤバかったですね。落ちたらと考えると、チビリそうですね。でも、何とかなりました(チビリませんでした)!

> 猫又、大猫、いつか行きましょうね。

 そう、馬場島からのルートですね。大猫、小猫に、猫又でにゃんにゃんにゃんです。

> 重い荷物を担いでの縦走、お疲れさまでした。これで別山尾根、早月尾根、北方稜線とクリアして、残るは源次郎尾根の登ハンですか。

 ちょっと疲れましたよ。やはりここは小屋泊まりがいいですね。次は、反対ルートで行ってみたいですね。ご一緒にしましょうか。
written by kitayama-walk
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