- 福寿草
鈴鹿の花をめぐる第二弾は孫太尾根に行くことにする。SNSで情報を集めてみると出るわ出るわ。平日でも登山口の駐車場が満杯になるほどの人が押しかけているらしい。そんなところに行っていいものか一瞬迷ったが,まあ行ってみることにしよう。
ちなみに最初に孫太尾根に行ったのは2011年の12月10日で,それ以来2回目である。その時は孫太尾根から藤原岳,治田峠への周回だった。時期外れだったので,週末でも人に会うことのない静かな山旅を楽しんだが,今回はどうなることやら。
【 日 付 】2021年3月11日(木)
【 山 域 】鈴鹿
【メンバー】単独
【 天 候 】快晴
【 ルート】 三岐鉄道伊勢治田駅 8:00 --- 8:55 孫太尾根登山口 --- 10:03 丸山 10:30 --- 11:23 草木 --- 11:59 多志田山 --- 12:44 昼食 13:45 --- 13:50藤原岳 --- 14:06 避難小屋 --- 15:29 大貝戸登山口 --- 15:40 三岐鉄道西藤原駅
三岐鉄道三岐線は鈴鹿山脈の展望電車だった。天気予報通りの雲ひとつない晴天で,朝日を浴びて鈴鹿の稜線がくっきりと浮かび上がっている。朝の通勤時間帯だが,暁学園前で高校生たちが降りると車内は急にがらんとした。伊勢治田駅までの30分少々の時間は,お馴染みの鈴鹿の展望と自分にとって新鮮な田園風景のおかげで飽きることがなかった。伊勢治田駅で降りると改札口の真ん中に猫が毛布の上で寝そべっている。この駅のマスコット猫なのだろう。
孫太尾根登山口近くに来ると登山口手前の道に車が路上駐車してある。駐車場に入りきらなかったらしい。登山口の駐車場には30台ほどだろうか。ほぼ満車である。県外ナンバーが多い。愛知,大阪,奈良,滋賀など。一番遠いところで神戸ナンバー。SNSで見た通り,スプリング・エフェメラルが見られる尾根として広く知れ渡っているようだ。
もうほとんどの人たちは出発した後のようで,1組のみが準備中だった。登山道は最近整備されたようで,真新しい木の階段が作られている。ちょっと前まではバリルートだったと思うが,今ではすっかりメインルートになっているようだ。これもSNSの影響なのだろう。
- 孫田尾根
1時間ほどで丸山。ここはセツブンソウと少々の福寿草。先行者たちが思い思いに写真を撮っている。言われてみないと見過ごしてしまいそうな可憐な白い花。これまでは雪山を追い続け,雪山が終わるとすぐに沢登りに移行していたので,花を追いかけるようなことはほとんどしてこなかった。セツブンソウをようやく覚えた。このあたりのセツブンソウはもう花期の終盤のようだ。
- ミスミソウ
- セツブンソウ
- セリバオウレン
丸山からあとはミスミソウやセリバオウレンがぽちぽちとみられる程度。多志田山を越え,藤原岳頂上直下に来ると大勢の人がたむろしている。カレンフェルトの岩の間に福寿草が咲き,皆さんが写真を撮っているのだった。私も写真を撮らせてもらう。先週の鍋尻山ではまだ蕾が多かったが,1週間の間にほぼ満開になったようだ。陽光を浴びて花びらが金色に光っている。
- 福寿草
このあたり登山道がはっきりしていなくて,写真を撮るために人々があちこちに入り込んでいる。昨今の登山者は環境保護意識が高いので,花を踏むようなことはしないと思うが,花期が終わると気がつかずに踏みつけてしまうことも度々だろう。ロープを張るなどして登山道を明確にしたほうが良いように思った。
- 藤原岳頂上付近のカルスト台地
藤原岳山頂直下のカレンフェルト地帯で昼食休憩。眼下には伊勢平野と伊勢湾。天気も良くいい気持ちである。ただ,すぐ近くに太平洋セメントの石灰岩採掘場が広がり,作業の音がここまで響いてくるのが興ざめである。気がつくと孫田尾根の北面も採掘がはじまっている。一体,花の孫太尾根はどうなってしまうのだろうか。
- 福寿草
帰りは頂上にちょっと寄って,大貝戸道経由で帰ることにする。頂上から9合目にかけての斜面にも福寿草が咲いている。こちらは日当たりが悪いせいかまだ蕾がほとんどのようだ。このコースは登山道がはっきりしているせいか孫太尾根よりは荒らされていないようだ。
大貝戸道を通るのは10年ぶりくらいだろうか。学生時代に研究材料の採集のためにこの道を通った記憶があったので,帰宅してから記録を見てみると1975年から1976年にかけての約1年間で6回行っていた。ずいぶん気に入っていた場所なのだろう。その頃はまだ植生が豊かで,下草なども豊富に生えており,芳醇な森だったような記憶がある。登山者も今ほど多くはなかった。今では毒草以外の下草はシカに全て食べ尽くされ,登山道は地滑りで崩壊し,お世辞にも芳醇とは言えない。そんなことを思いながら登山道を下った。
大貝戸登山口からは三岐鉄道西藤原駅まですぐである。ちょうど駅に次発の電車が待っていたので飛び乗る。花を愛でる山旅も悪くないと思った1日だった。