【 日 付 】2020年4月4日
【 山 域 】京都北山
【メンバー】山猫、家内
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】蓮華寺10:36〜11:15崇道神社〜13:18瓢箪崩山13:28〜13:34寒谷峠〜15:05坂原峠〜15:59箕ノ裏ヶ岳16:01〜17:05叡山電鉄岩倉駅
コロナ禍のせいで人のあまり行かないような近場の低山に足を運ぶ機会が増えたのだが、そのお陰で山の名前すらないような地味な裏山にも意外な魅力があることを思いがけず発見したりすることもある。普段であれば、裏山散歩のようなrepは「投稿自粛」してしまうのところだが、このご時世であればこうしたrepも許容していただけるのではないだろうか。
自宅のある京都の岩倉は東に瓢箪崩山、北に箕裏ヶ岳といった裏山があるが、この時期はコロナに関わらず箕裏ヶ岳を訪れるのを楽しみにしており先週も散策したところである。瓢箪崩山から箕裏ヶ岳にかけてはいくつもの無名の小ピークが連なっているが、これらの山の間を歩いたことがなかったので、周回することを考える。
この瓢箪崩山は登山口の近くに蓮華寺という魅力的な古刹があるというのも嬉しいかぎりだ。最近でこそコロナ禍のせいで京都の名刹を訪れる観光客も疎らになったかもしれないが、あまり人の訪れない静かな名刹という点では八瀬の蓮華寺はその筆頭ともいえる。同じく八瀬の瑠璃光院に至ってはこの蓮華院の10倍もの拝観料であるにも関わらず、ハイシーズンには待ち時間が3時間以上にも及ぶというのは狂気の沙汰に思われる。
山門を潜ると右手の灯篭の前には鮮やかな苔のカーペットが視界に飛び込んでくる。参道の左手には数多くのショウジョウバカマにイカリソウが咲いている。庫裡で拝観料を払い、書院に上がると庭園では色鮮やかな新緑が始まっている。本堂の前では石楠花の花も既に開花している。
蓮華寺を後すると登山口となる崇道神社を一旦通り過ぎて、その東にある栖賢(せいけん)寺を訪ねる。ここは秘寺と呼ぶに相応しい知る人ぞ知る寺である。入り口もその奥に寺があるということを知らなければ容易に見過ごしてしまうところだろう。昭和32年に尼崎からこの地に移転したということなので、京都の寺院の中ではかなり新参ではあるが、山門を潜ると趣きのある静かな境内が広がっている。
栖賢寺に接する崇道神社は藤原種継の暗殺に連座したと疑われ早良親王(崇道天皇)の霊を鎮めるための神社とされる。以前はこの参道は昼でも鬱蒼としており、陰鬱な雰囲気を漂わせていたのだが、栖賢寺の境内の杉の木が間伐されたせいだろうか、参道が明るくなったように思われる。神社の右手に小野毛人の墓への案内標があり、ここから登山路に入る。雑木林の中を登って行くとコバノミツバツツジの鮮やかな赤紫色が目立つ。
尾根に上がると早速にも市街への展望が大きく開ける。ここからは三宅八幡宮八幡宮から続く登山道と合流し、歩きやすいなだらかな道が続く。尾根道の周囲には頻繁に現れるコバノミツバツツジの花が目を楽しませてくれる。
p341の手前で西側に展望が大きく開ける箇所があり、大きなヤマザクラの下でランチ休憩をとる。桜の花に視線を奪われて見過ごしていたが、桜の樹の下ではウグイスカグラの花が多く咲いていることに気づく。
檜の植林帯に入り、p461を越えると、トトギ池からの広い登山道と交差する。登山道は尾根の東側をほぼ水平にトラバースしてゆくのだが、尾根芯上の薄い踏み跡を辿ることにする。尾根上のなだらかなピークca500mの北の端にたどり着くと一気に視界が開け、目の前に瓢箪崩山の山頂部が大きく姿を見せる。ふと見ると足元や北斜面にヒカゲツツジの群落がある。まだ花を咲かせているものはわずかのようだ。
わずかに登り返して瓢箪崩山の三等三角点の柱石がある山頂に到達すると、山頂からは尾根を江文峠に向かって北に進む。尾根を北に辿り、江文峠と坂原峠に向かう尾根の分岐に到着すると、坂原峠の方に続く尾根のから賑やかな人の声がする。まずはp471のピークに立ち寄ってから、再び分岐に戻ると、ここでも多くのヒカゲツツジが咲いている。花をカメラに収めてうちに大人数のパーティーが到着する。「ご年配の女性の方がヒカゲツツジが多く咲いていましたよ」と教えて下さるが、その群生は既に目の前から始まっている。
坂原峠の方に向かうと、尾根の北斜面には数多くのタムシバの花が咲く北斜面の向こうには江文峠を挟んで対峙する金毘羅山、そしてその北側には翆黛山、焼杉山と続いてゆく大原三山の好展望が目の前に広がる。金毘羅山の斜面にもタムシバが白い斑点として見えている。
尾根上のなだらかなピークca450mにかけて、尾根の北斜面にはどこを見てもヒカゲツツジの花が満開だ。間近にこのような大群落を見る機会があるとは嬉しい驚きだ。どこまでも続くかのように思われたヒカゲツツジの群落だが、やがて尾根が下りにさしかかると途端に姿を消す。
PH氏のプレートがあるp410のなだらかなピークを過ぎると、複雑な蛇行を繰り返す尾根には小さいが急峻なアップダウンを繰り返す。一つ目のピークca330mを越えたところで、峠越えの古道と交差する。古道がトラバースしながら降りてゆく先には真っ白な花を数多く咲かせた大きな躑躅の株がある。珍しいシロバナコバノミツバツツジだ。傾いた午後の光を浴びた白い花はすぐ隣のコバノミツバツツジの赤紫と美しいコントラストを見せてくれる。
坂原峠にさしかかると尾根は広い墓地の脇を下ってゆくようになる。いわゆる「静原の墓」と呼ばれるところで、靜原からは舗装路が続いている。墓地の上からは京都市街の展望が広がる。墓地の周囲で満開の花を咲かせる桜の下をくぐって坂原峠に降りる。
坂原峠からは箕裏ヶ岳への登りに入る。途中から尾根を外れて北側の谷に寄り道すると多くのカタクリが花が咲いている。この時期に箕裏ヶ岳を訪れるのを楽しみにしていたのはここは京都でも数少ない、そして知られざるカタクリの群生地があるのだ。
箕裏ヶ岳が近づくと一週間ほど前に訪れた際にはまだほとんど蕾だったミツバツツジが花開いており、季節の進行を感じる。ところで登山道には頻繁に京都市左京区の消防団による道標が現れるのだが、悉く「箕裏ヶ岳→」の裏の字が抜けて「箕 ヶ岳→」となっており、そこを誰かが手書きで「裏」の字を書き足している。道標を作成する際の単なる印字ミスなのだろうか。
山頂が近づくとここでもヒカゲツツジが咲いている。前回訪れた時にはヒカゲツツジを喜んで写真に収めていたのだが、p471の西側の大群落を見た後では何とも寂しく思われる。いつの間にかこの箕裏ヶ岳の東尾根のヒカゲツツジも日陰に入ったようだ。箕裏ヶ岳の山頂では既に16時、意外にも時間が過ぎていることに気がつく。
下山は山頂から南西に伸びる尾根を下る。この尾根を通るのは初めてであったが、意外にm随所に京都市街や比叡山の好展望が開ける。南斜面をトラバースする林道に出ると、林道と平行に走る檜の植林の尾根を辿って岩倉川沿い出る。岩倉の市街地に下ると、最後は岩倉川の川沿いでは桜が満開であった。
多くの春の花々が充足感を感じさせてくれると同時に、家の近くにこうした裏山があることの有難さを感じる一日であった。