【 日 付 】2019年11月17日
【 山 域 】若狭(野坂山地)
【メンバー】山猫、家内、KYさん
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】 国境9:06〜10:07乗鞍岳〜11:05p786.8〜12:34p736.9〜13:31インディアン平原13:38〜13:54岩籠山14:00〜15:21市橋コース登山口〜16:00新疋田駅
高島トレイルの東端の山、乗鞍岳へとたどり着き、山頂より少し北側の送電線鉄塔のピークからはうねうねと蛇行しながら岩籠山へと続く尾根が目に入る。果たしてこの尾根を辿って岩籠山にたどり着くことは出来ないだろうかと魅惑的な山行計画に胸を踊らせることになる。ヤマレコにおいて、唯一、山行記録を上げているのが山日和さんやsatoさんもご存知のflatwellさんである。
岩籠山を訪れた時も再び乗鞍岳にかけての尾根を眺め、ますますこの尾根を辿ってみたい欲求に駆られる。岩籠山に登ったのは単独行だったのだが、インディアン平原の雰囲気に家内が惹かれ、是非、ここを訪れてみたいと云う。それならばこの乗鞍岳からの稜線を辿ることにしよう。出来れば岩籠山からの市橋への沢沿いのルートの紅葉が美しい時期に。
しかし例年のことであるが、8月から12月にかけてはほとんどの週末が出張で埋め尽くされ、自由に行動できる週末は滅多にない。前日の土曜日の夜は東京で予定があったのだが、会を途中で抜け出し、最終に近い新幹線に乗り深夜0時近くに自宅に戻る。
この縦走の問題は登山口となる国境へのバスの便が非常に限られることである。京都からJR湖西線に乗り近江今津で福井行きに乗り換えるとマキノ駅には8時22分に到着する。マキノ駅からは8時46分に出発するバスに乗って国境に向かうことにする。しかし、JR湖西線の車内ではなんと直前を走る特急サンダーバードが近江中庄のあたりで異音がして、緊急停止して車両点検をするとのアナウンスが流れる。近江今津からの電車は20分以上遅れて出発することになった。近江中庄のあたりをかなり徐行運転したので、予定のバスに間に合わないかと思ったが、マキノ駅にはバスの出発時間の直前に到着してくれた。
バスに乗り込んだのは我々のほかに明らかに登山者と思しき若い男性の二人組である。スキー場のゲレンデを登り、江若国境を辿る登山道に入ると鮮やかな黄葉を示すのはシロモジの三裂葉である。普段は地味な樹であるが、紅葉の時期はこの鮮やかな黄色が存在感を主張する。標高が700mのあたりになると山毛欅の樹が目立つようになる。稜線に出るとまずは江若国境尾根を南に辿り乗鞍岳のピークを踏むことにする。稜線の分岐から山頂は意外と距離がある。
まずは最初は送電線鉄塔のあるピークだ。送電線鉄塔から振り返るとこれから辿る尾根の先に岩籠山が目に入る。
- 中央に岩籠山
このピークから先は尾根を緩やかに辿って乗鞍岳の山頂へと辿り着く。稜線上の紅葉はすでに終盤に差し掛かっている。山頂の手前の小ピークからは伊吹山からブンゲン、金糞岳、横山岳と行った湖北の山々が目に入る。しかし乗鞍岳山頂は関電のものと思われるコンクリートの小屋が光景を殺風景なものとしており、眺望も遮っている。
山頂を早々に辞して、分岐に戻るといよいよ岩籠山への長い尾根へと入る。広々とした尾根には早速にも山毛欅の林が広がる。明瞭な踏み跡は送電線鉄塔にたどり着くとここで終わっているのだった。しかし、褐色のカーペットの上には下生はほとんど見当たらず、なだらかで歩きやすい尾根が続いている。
このまま岩籠山までこのような尾根が続いてくれたらいいのだが、現実はそう都合よくいくものではない。最初の三角点ピーク、786.8m峰が近づくと尾根筋には低木のブッシュが現れる。最初は尾根芯を避けて尾根の西側をトラバースすることで藪を避けて進むことが出来るが、786.8m峰の山頂部が近づくにつれ、尾根上に藪が広がり、ついには藪の中を進まざるを得なくなった。flatwellさんの記録でも「ひどい藪」と記されている箇所だ。ピークを越える必要があるので山頂部を目指して藪の突破を目指すが、かなりの濃密な藪である。KYさんも「こんな濃厚な藪は久しぶりだ」と仰る。
ピークを越えたところで藪の中に帯状に繁茂する蕨がある。蕨の草叢の中には鹿のものと思われる一条の踏み跡が続いている。その踏み跡の周囲だけは低木の藪を免れている。しめたとばかりにこの鹿の踏み跡を辿るとそれまでが嘘のように藪のない山毛欅の樹林が現れる。しかし、ここで改めてGPSを確認すると目指す尾根はもう一筋東側の尾根であった。
気を取り直すと尾根を乗り換えるべく山頂部を目指して再び藪の中に突入する。やがて徐々に藪は薄くなり、100mほど藪を漕いで小さな鞍部に達すると、鬱陶しい藪漕ぎからようやく解放されるのだった。左手には先ほど迷い込んだ藪のない尾根に山毛欅の樹林が広がっているのが目に入る。山頂に引き返さずに西隣の尾根から谷の源頭を渡って東に進む方むべきであったかと後悔する。
ここからは再び山毛欅の快適な尾根となるのだった。広い尾根上には小さな池も現れる。
やがて尾根上の山毛欅は樹高が高くなり、壮麗な樹林が続くようになる。いくつかの小さなアップダウンを繰り返し、なだらかな台地状の山頂部を有する三角点ピーク、739.6m峰のあたりに来ると、東側は低木の藪の向こうに大きく展望が開ける。三角点の石標は見当たらなかったが、ピークと思しきあたりで行動食のランチをとる。
- p739からの東の湖北の山々の展望
ここからは駄口から登ってくる岩籠山への登山道との合流地点まではわずかだ。壮麗な山毛欅の樹林を辿るうちに見覚えのある分岐に辿り着いた。岩籠山への登りに入ると山毛欅の林床に丈の低い笹原が広がるようになり、林の雰囲気が変わる。
このあたりは標高が少し低いせいか山毛欅の紅葉が残っており、紅葉が賑やかな色彩を呈する。樹林を抜けると忽然と広いススキの原に飛び出す。インディアン平原だ。高校生と思しき若い男女と引率の先生がいらしたが、丁度我々と入れ替わりでインディアン平原の展望地を離れるところだった。展望地にたどり着くと目の前に大きく敦賀湾が広がる。
岩籠山の山頂も展望は悪くないが、敦賀湾の展望はインディアン平原の方がはるかに優れる。山頂を後にするとトレランの五人のパーティーが登ってくるところだった。紅葉の美しい自然林を辿って夕暮山との分岐に至ると市橋への谷を下降する。
谷は期待通り紅葉の盛りではあるが、紅く色づいた楓の木が少ないので紅葉は地味な印象だ。下るにつれて水量が増してくると沢から滝音が聞こえてくる。滝音に惹かれて沢に降りてみると谷の奥から三筋の滝が現れる。しばしば沢に降りては小瀧を愛でることを繰り返し、紅葉の渓相を楽しみながら下山する。
最後は紅葉のトンネルの中の林道歩きとなる。国道の手前を右折すると敦賀港から物資を運ぶ目的が作られたという舟川に沿って疋田の集落を歩く。まもなく岩籠山の山頂直下です入れ違ったトレランの集団と擦れ違う。新疋田の駅にたどり着く鉄道ファンの聖地の一つとして名をはせる駅だけあって、やはり数人の鉄道ファンがいるのだった。
藪漕ぎに難渋する箇所はあったものの壮麗な山毛欅の林や紅葉、好展望の平原、沢沿いの登山道と魅力が満載の山行であった。