朽木の道の駅で目をさますと車外は静かになっていた。前日の晩は雨が車を叩く音がうるさかったのだが。雨が降り止んだのだろうと思い、トイレに行くために車のドアを開けると、雪が車内になだれ込んできた。雪がしんしんと降り積もっていたのだった。積雪5センチほどか。
この道の駅は車中泊に最適な環境をそなえている。トイレは近くにあり、高速道路のサービスエリアのような騒々しさはなく、目の前には24時間営業のコンビニもある。照明は眠りを妨げるほどには明るくない。
コンビニで朝食用のおにぎりとコーヒーを買い、食べているうちに頭がスッキリしてきた。「さあ、どうしようか」。雪はいつ止むかわからない。「明日の朝は雪だから遅く登った方がいいよ」という山日和さんの助言でのんびりしていたのだが。雪とガスの中の山登りは苦行でしかない。「やっぱ転進しよう」。予定外の山に行くには、地図を持たなくても生還できる山に限られ、そんな山の選択肢は私にとって限られている。自分の選択肢の中から適当な山を選ぶと「綿向山」という答えが出た。冬山としては人気の山で、トレースは必ずあるし、何と言ってもこの山に冬に登ったことがないのだ。
【 日 付 】2017年2月19日(日)
【 山 域 】鈴鹿
【メンバー】単独
【 天 候 】曇りのち晴れ
【 ルート 】西明寺口バス停近く駐車地 9:16 --- 10:20 3合目避難小屋 --- 10:36 5合目避難小屋 10:48 --- 11:30 綿向山 12:38 --- 12:58 竜王ヶ岳分岐付近 --- 13:41 5合目避難小屋 --- 13:54 3合目避難小屋 --- 14:40 駐車地
国道367号を琵琶湖大橋のあたりまで南下すると雪は全くなくなり、青空になった。朽木も雪はやんだのだろうかと若干後ろ髪を引かれる思いはあるが、こんな時に後悔するのは御法度というものだ。目の前には三上山の綺麗な円錐形が見えている。国道1号線から日野町に入り、約2時間で綿向山の麓についた。
西明寺口バス停のところを右折して登山者用駐車場への枝道を入ろうとすると、トイレ横の駐車スペースがほぼ満車になっている。奥の駐車場はもう満車だろうと判断し、1台だけなんとか入れそうなスペースを見つけて駐車する。ほんの少しお尻が車道にはみ出しているが、通行に支障はないだろう。
テルモスに入れるお湯を沸かしていると次々と車がやってきて、奥の駐車場は満車なのかと聞かれる。「私は奥まで行っていないのでわからないけど、入っていった車が戻ってきているので、きっと満車なんでしょうね」と答えると、それでも入って行く人や、引き返す人など様々である。そのうち登山者を乗せた観光バスなどもやってくる。人気の山なのだ。
- 御幸橋駐車場
準備を整え奥の駐車場まで歩いて行くと、案の定、駐車場に入りきれない車が列を作り、方向転換もままならない状況のようだ。堰堤を越え、最初の避難小屋でチェーンスパイクをつけることにする。登山道に入ると植林地のつづら折れになる。駐車場で想像したほどの人影はなく、ほっとする。昔からの作業道を利用しているのだろう、道は一定勾配で緩やかに登っている。昨日、スノーシューを履いたままで10時間歩いていて、スノーシューの重さに慣れてしまったせいか、チューンスパイクを履いた足は軽く感じ、軽快に登っていける。
- 5合目の小屋
- 感じのいいブナ林
5合目の小屋で一休み。朝は快晴で、このまま晴れるのかと思いきや、空は再び雲に覆われている。7合目から冬道に入り、斜面を直登して行く。周りはブナ林に変わり霧氷がついていい感じだ。頂上はガスがかかり周りが全く見えない。風はそれほど吹いていないので、頂上で昼食にする。昨日ザックに入れ忘れて食べ損ねた食料だ。昼食の準備を始めると急にガスが晴れ、目の前に鎌ヶ岳のピークが現れた。南には伊勢湾も見えるようになり、日差しも出てきた。超晴れ男の面目躍如といったところである。
- 鎌ヶ岳
もつ煮込みに牛スジをトッピングする。メインの後は甘酒で締める。右のほうには野洲川ダムから上がってくる稜線が綺麗に見えている。機会があればこの稜線を登って見たいものだ。左側には雨乞岳に続く稜線が。以前、無雪期にこの稜線を縦走したことがある。積雪期に一度縦走して見たいものだが、1日で縦走できるだろうか。
- 野洲川ダム方面からの稜線
きっかり1時間で昼食休憩を終了。まだ時間も早いので、イハイガ岳方向へちょっと散歩してこよう。イハイガ岳方向に右折すると途端に人影を見なくなる。竜王ヶ岳の分岐の向こうはのっぺりとした雪原が広がり、如何にも気持ち良さそう。展望も良く、天気が良ければここでのんびりしたいところだ。こんないいところがあるのになんで皆来ないのだろうか。暫く佇んだり、樹氷の写真を撮っている間にまたガスが出てきた。私の晴れ男の神通力もこの辺りで尽きたか。
- 竜王山分岐近くの雪原
- 樹氷
さあ、あとは一目散に下山するだけ。いつものように、休憩なしで一挙に下まで降りた。あれほど混雑していた御幸橋駐車場にはもう4台の車が残っているだけで、閑散としている。「下山すると晴れるの法則」通り、空は真っ青に晴れ上がり、綿向山の頂上もくっきりと見えている。よく遊ばせてもらった二日間だった。さて、次の週末はどこを歩こうかな?
- 下山したら晴れるの法則
朽木の道の駅で目をさますと車外は静かになっていた。前日の晩は雨が車を叩く音がうるさかったのだが。雨が降り止んだのだろうと思い、トイレに行くために車のドアを開けると、雪が車内になだれ込んできた。雪がしんしんと降り積もっていたのだった。積雪5センチほどか。
この道の駅は車中泊に最適な環境をそなえている。トイレは近くにあり、高速道路のサービスエリアのような騒々しさはなく、目の前には24時間営業のコンビニもある。照明は眠りを妨げるほどには明るくない。
コンビニで朝食用のおにぎりとコーヒーを買い、食べているうちに頭がスッキリしてきた。「さあ、どうしようか」。雪はいつ止むかわからない。「明日の朝は雪だから遅く登った方がいいよ」という山日和さんの助言でのんびりしていたのだが。雪とガスの中の山登りは苦行でしかない。「やっぱ転進しよう」。予定外の山に行くには、地図を持たなくても生還できる山に限られ、そんな山の選択肢は私にとって限られている。自分の選択肢の中から適当な山を選ぶと「綿向山」という答えが出た。冬山としては人気の山で、トレースは必ずあるし、何と言ってもこの山に冬に登ったことがないのだ。
【 日 付 】2017年2月19日(日)
【 山 域 】鈴鹿
【メンバー】単独
【 天 候 】曇りのち晴れ
【 ルート 】西明寺口バス停近く駐車地 9:16 --- 10:20 3合目避難小屋 --- 10:36 5合目避難小屋 10:48 --- 11:30 綿向山 12:38 --- 12:58 竜王ヶ岳分岐付近 --- 13:41 5合目避難小屋 --- 13:54 3合目避難小屋 --- 14:40 駐車地
国道367号を琵琶湖大橋のあたりまで南下すると雪は全くなくなり、青空になった。朽木も雪はやんだのだろうかと若干後ろ髪を引かれる思いはあるが、こんな時に後悔するのは御法度というものだ。目の前には三上山の綺麗な円錐形が見えている。国道1号線から日野町に入り、約2時間で綿向山の麓についた。
西明寺口バス停のところを右折して登山者用駐車場への枝道を入ろうとすると、トイレ横の駐車スペースがほぼ満車になっている。奥の駐車場はもう満車だろうと判断し、1台だけなんとか入れそうなスペースを見つけて駐車する。ほんの少しお尻が車道にはみ出しているが、通行に支障はないだろう。
テルモスに入れるお湯を沸かしていると次々と車がやってきて、奥の駐車場は満車なのかと聞かれる。「私は奥まで行っていないのでわからないけど、入っていった車が戻ってきているので、きっと満車なんでしょうね」と答えると、それでも入って行く人や、引き返す人など様々である。そのうち登山者を乗せた観光バスなどもやってくる。人気の山なのだ。
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準備を整え奥の駐車場まで歩いて行くと、案の定、駐車場に入りきれない車が列を作り、方向転換もままならない状況のようだ。堰堤を越え、最初の避難小屋でチェーンスパイクをつけることにする。登山道に入ると植林地のつづら折れになる。駐車場で想像したほどの人影はなく、ほっとする。昔からの作業道を利用しているのだろう、道は一定勾配で緩やかに登っている。昨日、スノーシューを履いたままで10時間歩いていて、スノーシューの重さに慣れてしまったせいか、チューンスパイクを履いた足は軽く感じ、軽快に登っていける。
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5合目の小屋で一休み。朝は快晴で、このまま晴れるのかと思いきや、空は再び雲に覆われている。7合目から冬道に入り、斜面を直登して行く。周りはブナ林に変わり霧氷がついていい感じだ。頂上はガスがかかり周りが全く見えない。風はそれほど吹いていないので、頂上で昼食にする。昨日ザックに入れ忘れて食べ損ねた食料だ。昼食の準備を始めると急にガスが晴れ、目の前に鎌ヶ岳のピークが現れた。南には伊勢湾も見えるようになり、日差しも出てきた。超晴れ男の面目躍如といったところである。
[attachment=3]P2190133.jpg[/attachment]
もつ煮込みに牛スジをトッピングする。メインの後は甘酒で締める。右のほうには野洲川ダムから上がってくる稜線が綺麗に見えている。機会があればこの稜線を登って見たいものだ。左側には雨乞岳に続く稜線が。以前、無雪期にこの稜線を縦走したことがある。積雪期に一度縦走して見たいものだが、1日で縦走できるだろうか。
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きっかり1時間で昼食休憩を終了。まだ時間も早いので、イハイガ岳方向へちょっと散歩してこよう。イハイガ岳方向に右折すると途端に人影を見なくなる。竜王ヶ岳の分岐の向こうはのっぺりとした雪原が広がり、如何にも気持ち良さそう。展望も良く、天気が良ければここでのんびりしたいところだ。こんないいところがあるのになんで皆来ないのだろうか。暫く佇んだり、樹氷の写真を撮っている間にまたガスが出てきた。私の晴れ男の神通力もこの辺りで尽きたか。
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さあ、あとは一目散に下山するだけ。いつものように、休憩なしで一挙に下まで降りた。あれほど混雑していた御幸橋駐車場にはもう4台の車が残っているだけで、閑散としている。「下山すると晴れるの法則」通り、空は真っ青に晴れ上がり、綿向山の頂上もくっきりと見えている。よく遊ばせてもらった二日間だった。さて、次の週末はどこを歩こうかな?
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