【鈴 鹿】 天狗谷~三池岳(972m)~カニグチ谷
【日 時】 9月23日(金)
【地 図】
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 3379755314
【同行者】 山仲間3名
【天 候】 晴れ
【ルート】 P(9:11)~くもゆき橋(9:40)~680m二俣(11:53)~760m二俣(12:03)~雲間の滝(12:11)~稜線(13:23)~768独標南のコル(14:26)~かにくち橋(15:25)~P(15:55)
<天狗谷>
狙っていた上越の沢。どうやら天候には恵まれそうもない。二週続けて袖にされた形だ。暴れん坊の台風15号。幸いにも当地には災禍をもたらすことなく通り過ぎた。だが、現地の天候が問題児で、相当に気むずかしそうに思われた。
片道500kmかけるリスクを避けての鈴鹿の沢だったが、これが大当たりだから、世の中わからないものだ。
今回の目標は宇賀川左俣の南河内谷上流に位置する「天狗谷」。小峠に向かう熊谷と別れて、三池岳に北東から突き上げる有力な沢である。
- F3
石榑トンネル東入口付近から旧石榑峠道に入ると、すぐにゲートが現れる。ここに置き車して三人で歩き始める。
くもゆき橋のたもとに『雲間の滝』の石標がある。今からその謎を解きに行くのだ。橋の左岸の土手に上がると、古ぼけた固定ロープが残置されている。
最初の砂防ダムを越えた所に流れ込む支流に降り立ってから本流川床へ。F1の6mが立ちはだかる。これが微妙にハングして人を寄せ付けない。やむなく左岸のいかにも悪いガレを登るが、ボロボロの壁になっていて簡単に登らせてくれない。
慎重に下流側の枝尾根を利用して登り詰めると立派な杣道に出会う。しっかりした乗り越しまである。こいつを利用して上流側に足を進めると忽然と道が消える。適当な所で沢筋に懸垂下降する。
5mのF2。下段部分は右岸壁を登って滝脇を直登。風邪で不調のI君は、ここは巻き。続いて7mの斜瀑F3。たろーさんのリードで右岸の水流を溯上。
続くF4の10mは天狗谷の核心部とも言えるだろう。深い碧の淵を伴った滝で、ここは左岸から攻略する。
- F4の偵察
たろーさんが滑りやすい左岸壁をへつり、一箇所カムで中間支点を固める。その先は針路が手詰まりで、瀑芯に入るしか手がない。彼は流水の河床を見極め、慎重に左足に荷重を移していく。最初の一歩は相当な思い切りがいったはずだ。
しかし、確信を得た様子。確固たる身のこなしで水流に突っ込み、岩壁の裏手に姿が消えた。しばらくあって確保支点を築き終えてコールが届いた。
I君が念を入れてロープを引いてみると、何とまぁ、中間支点のカムがすぽっと抜けてきた! 水流に思い切って一歩踏み込む決意を支えたかなめの支点だったはずだ。くわばらくわばら。
I君に続き、私がラストでF4を抜ける。滝頭で一息つく。上流で二裂した水流が滝頭のスラブを舐めている。それが落口直前でランデブーして一気に滝下に駆け落ちていく。
- F4の登攀
その先は見事なナメ床の河床が続くはずだったが、残念なことにゴーロに埋まっている。
先を急ぐ。右岸に赤い支流を入れて5mのF5に突っ込む。とは言え、シャワー浴びたのは、『突入マニア』のたろーさんだけであり、ノーマルな私とI君はあっさり右岸の階段状を巻く。
この上は連綿とナメが続くはずであったが、ここもゴーロに呑み込まれている。一帯は崩壊傾向の風化地形なのだ。
小滝を快適に溯行すると、680m二俣に到達。ここは左俣を選ぶ。小気味よい連瀑帯を歩く。ゴーロに水流がほとばしる急登を一歩一歩登り詰めていく。
760mの二俣に達した。小滝の連瀑を擁した右俣に誘い込まれそうになるが、ここは我慢我慢。初志貫徹で左俣を抜けて、町界尾根が県境線から派生するポイントをジャストで狙おう。
派手に崩壊した岩塊を越えると、明るい崩落地に飛び出した。おお!遥か頭上から岩壁を噛んで流下する20m滝。これがまさにあの『雲間の滝』の正体なのだ。
振り返ると旧石榑峠道が見下ろせる。なるほど、雨後に水流が整えば、旧国道からも雄壮な滝見が楽しめるというわけか。
さて、どこから攻略しよう。さすがに直登は恐ろしい。それならばと、右岸側に取り付いて木立に逃げ込んだたろーさんが難儀している。すかさず私は左岸側を探りかけるが、間髪入れずOKコールが届いた。
アンザイレンしてI君を中間に、そして私がしんがりを務める。確保地点に届くが、私はそのままトップを交代してつるべで高度を上げていく。30mのロープ長ぎりぎりで確保支点を得る。
- 雲間の滝
二人を確保で迎え入れて滝頭付近に続く獣道を辿る。雲間の滝の上流部は、ルンゼ内の連瀑帯が綿々と続く出色の出来。途切れることなく小滝が続いてぞくぞくする。
高度を上げるうち、一度はガレに呑み込まれて伏流となる。しかし、再び水流が現れた。細い流れが山肌を削り、四方から流れ込んでは水線を太くしている。源流の匂いがぷんぷん立ちこめてくる。
やがて沢型が消えて灌木と小笹を分ける。すぐに狙った町界尾根に飛び出した。
<カニグチ谷>
山頂に憩う間もなく、県境を北に戻り返してランチ休憩。帰路の案として石榑峠道や町界尾根が上がる。ここは私の希望でカニグチ谷を所望する。
県境線上の900mピークの北エリアに入れば、どこから下ってもカニグチ谷の集水域だ。下降ポイントを探りながら768独標南のコルから下降。大きな滝場もなく淡々と下っていく。下降不能な滝が出てきても、杣道の残骸を拾って滝場を回避できる。
炭窯跡の脇にはY字状の見事な滝があった。沢の合流点に掛かる美しい瀑布だ。滝下から
溯上してみて滝の全貌を確認する。左俣は滝下から4m規模。右俣は7m規模の斜瀑。両者が滝の中段で運命的な出会いを果たしている。
- Y字の滝
ここを通過してしまうと、大柄な滝が一枚のみ。出合付近からも見通せる8m滝だ。これは右岸側から比較的容易に巻き降りる。滝下から観察すると、三本の白布をかけた端正な滝だった。
橋のたもとをかき上がってゴール。橋には見慣れた『かにくちはし(蟹口橋)』の文字。ほっとひと息。
意外や天狗谷の溯行には手間取った感がある。明日の沢に備えてのウォーミングアップのはずが、予想外に本気モード炸裂だった。
それにしても大きな拾い物の沢旅。鈴鹿の沢、侮り難し。
ふ~さん