【日 付】2011年11月20日(日)
【山 域】鈴鹿北部霊仙山(地形図、「彦根東部」「霊仙山」)
【メンバー】めずらしく単独
【天 候】曇り後一瞬晴れ後雨と濃霧のち雨時々曇り
【コース】上丹生-昼坂峠-お虎ヶ池-井戸谷源頭-お虎ヶ池-八坂神社-昼坂峠-上丹生
土曜日に会社のイベントがあると伝えたら嫁さんは子供共にさっさと実家に帰ってしまった。
それではと久しぶり(ほぼ1年半ぶり)に一人で出かけることとした。
ということで、今回は地形図2枚(2.5万図)、エアリア(5万図)とコンパスに、保険と高度計代わりのGPS(ただし、地図は表示されないタイプ)を頼りに山中を彷徨するつもり。ただし、西尾本1巻のP110,130の地図のコピペを持ってき忘れたのが悔やまれるところであった。
前日に木津まで出るのでそのまま地道を走って彦根に向かう。彦根市内で買出しをし、上丹生を抜けて榑ヶ畑へ、しかし真っ暗な林道はなんとも心もとない。ということで林道を途中ですごすごと引き返し、上丹生のこぶとり地蔵前公園の大銀杏下の駐車場に車を止めた。
ここは、屋根つきのベンチに電灯と水洗トイレまであり便利な場所である。鍋とビールとボージョレヌーボーの夕食を採り、車中の宿とする。この日はシュラフに入らずとも寒くない快適な夜であったが、夜中の1時ごろに目が覚めると雨が激しく車の屋根をたたいている。
天気予報では雨は上がるはずであるがどうであろうか、はるばるここまで来てそのまま帰るわけには行かないがと心配していると、ザックカバーを忘れてきたことにふと気がついた。なにせ、合羽とザックカバーを準備するような登山はひさしぶりである。最悪雨が上がらなければ傘を差して廃村めぐりも悪くないかと思う。
翌朝雨は上がっていた。傘を持っていくか悩むが、急斜面のトラバには傘は邪魔であろう。上着は合羽と冬山で使うオーバー(いずれもゴア)と2着あることに気がついた。雨が降ればザックには合羽を着てもらえばよいことに気がついた。
7時丁度。駐車地を出発。丹生川には沢山の橋がかかっているが昼坂峠へはどの橋を渡ればよいのか。道標は出ていないがコンクリートで出来た他よりやや立派な15番の橋を渡り、迷路のような路地を進むと「昼坂峠至る」の道標が現れた。
そのまま谷の左岸沿いに進み堰堤を巻くと植林の中真っ直ぐ続く道が現れた。Co235付近に二俣に出てここから左俣の右岸を戻るような方向に斜面を上がる道が続く、すぐに峠が見えてきたがなにやら雰囲気がおかしい。
7時45分。峠に上がるとなんと、林道(しかも舗装路)が峠をぶち抜いていた。こんな話は聞いていなかったのでかなり驚いた。このあたりの林道の造成はよくもまあ予算がつくなあとあきれるばかりであるが、峠以外の旧道が無事であるのがせめてもの救いであった。
- ビン坂峠を突き抜ける林道
霊仙方面への道は林道をわずかに南に下りた地点に階段が設置されていた。遠く南の方角から乾いた銃声が2発、その後比較的近くでコーンコーンと斧を振るう音が響く。
道はしっかりしたよい道が続く、昔は榑ヶ畑の子供たちが上丹生の学校へ通っていたであろう、軽車両くらいは走れたのかもしれない。そんなことを考えながら進む。
8時20分榑ヶ畑分岐。ここには「鳥獣保護区滋賀県」の看板が立つ。ここへは一昨年の7月に来ている。そのときは霊仙より下山してここから榑ヶ畑に向かったのであった。この先(屏風岩対岸辺り)地形図では大きく北斜面を巻くように描かれているが実際の道は地形図よりもだいぶ南側を通っている。道は溝型で時折倒木が進路を塞ぐが溝から出れば難なく避けることが出来る。
遠くから汽笛が何度も聞こえてくる。この時期、米原-木之本間にはSL琵琶湖号としてC56が運行されているのだ。古道にSLの汽笛。なんだかタイムスリップした感覚。
8時40分巻道分岐。本日のメインテーマは西尾本P129にある「(12)ビン坂峠巻道」を辿ることであった。ここの分岐は地形図破線道のco500付近にある。二年前にこの分岐を確認して依頼、何時か歩こうと決めていたのだ。
- 巻き道分岐
分岐から暫くは良い道が続いたが、やがて踏み跡は怪しくなり獣道となる。小谷を一つ渡り、屏風岩対岸から出ている大きな谷までやってきたが踏み跡は全く判らなくなった。
このままトラバを続けるか、それともこの谷を登って頂上台地に出るかと思案したが、古道を辿らなければ今回の山行の意味が無い。では地形図に破線が残る逆側から辿ろうと潔く諦め往路を分岐まで引き返した。
帰って地形図をよく見ると反対側から延びている破線の標高がco650で踏み跡を失った地点の標高がco500と標高差150mであるので道は踏み跡が怪しくなった辺りから上部に続いていた可能性が高いことに気がついた。ブランクでだいぶ勘が鈍っているようだ。まあ、おかげで金色に輝く木を見つけられたことだし好しとしよう。
さて、戻った分岐からはお虎ヶ池方向を目指して登って行く。それにしても、目ぼしい太さのミズナラは全部枯れてしまっている。このあたりのキクイムシの被害は相当酷い状態のようだ。
稜線に出たところでこの日初めて青空がのぞいた、南西尾根には登山者が一人見える。掻き分けるほどもない笹原を踏み分けお虎ヶ池に向う。
11時35分。お虎ヶ池。青空は一瞬だけで雲が降り、風が舞いだした。何処でお昼にしようかと物色しながらすすむ。
以前に遠望で見つけていた池の脇をとおり風が当らず、適当に座れるカレンフェルトでもないかと探すが、なかなか良い位置にめぐり合えない。適当なところで妥協してビールを開ける。うどん鍋にさっき取ったナメコとエノキを少々放り込む。
しかし、ここで雨が降り出した。避難小屋まで行くべきだったかと後悔するも、ぐつぐつ煮えている鍋は今更どうすることも出来ない。当初の予定どおり人間がオーバーを着て、ザックに合羽を着てもらう。そんなことで慌しく食事を済ます。
12時20分。出発。さっきまで見えていた青空は何処へ行ったのか、ガスも出てきてあっという間に視界は50m程になってしまった。それでも、適当に方向に当りをつけて進む。踏み跡はわりかししっかりしているが、人の道なのか鹿の道なのか、どこに向うのかも定かでない。そのうち徐々に西に向っているようで地形図とコンパスをにらむ。
- あっという間に真っ白
何かおかしいなあ???GPSを取り出し経度を確認すると思っているのよりだいぶ西の位置が掲示されている。???ここでやや混乱する。ガスは更に濃くなり視界は30m程度まで落ちている。(帰ってログを見るとそんなおかしな場所ではなかった。経度の位置を読み違えてた?キツネに化かされたか?)
ヤーメタ!こんなんじゃ古道探索は無理だよとまたまたあっさりと諦め来た道を戻る。途中から往路の跡も判らなくなったのでとりあえずコンパスを頼りに南進して登山道に向かう。
登山道に出ると雨は更に激しくなり眼鏡に水滴が付く。視界は更に悪くなる。こりゃあかんわと登山道を汗拭峠方向に降りることにした。再度お虎ヶ池前を通り、頂上台地から降りて標高を下げていくと雲の下に出たのか視界は開けた。ヤレヤレである。
この辺り紅葉の盛りでまずまずの雰囲気、目立つ黄色はだいたいウリハダカエデのようで、時折目立つ赤色は近付いてみるとこれはイロハモミジのようであった。ケヤキのオレンジもけっこう多い。
天気もすこし落ち着いたみたいである。このままでは今日の収穫が少なすぎると思い西尾本にあった八坂神社裏道を歩いてみることにする。確か・729から北西に降りる尾根だったはずと登山道を外しそちらへ向う。
この尾根はco640付近までは尾根幅も広く何処でも歩ける感じで道跡も判らないが、傾斜がきつくなるその先はしっかりした道跡が残っている。一部北側に回り込む箇所でやらしいトラバがあるものの概ね歩きやすい。踏み跡はCo540から南側の巻き込んで植林の中でやがて消えるが、あとは小谷を降りると榑ヶ畑の一つ北東側の谷に降り立つ。
(帰って西尾本を確認するとco540から下も真直ぐ北西に道が書いてあるのでそちらにも踏み跡があったのかもしれない。)
ここでザックに着せてあった合羽の上着がなくなっているのに気がついた。「うげっ」もう結構使っている合羽だけど、一応ゴアだしあっさり諦めるにはかなり高価なものだ。途中何度かは背中を確認していたのでそんなに遠くではないだろうと、降りてきたルートをGPSのトラックバックを頼りに引き返す。150mほど登り返した地点で落とした合羽を発見する。本日二回目の青空が無事の再会を祝福してくれた。
- 祝福の青空
15時50分。八坂神社の参道下。あたりはかなり暗くなってきた。上丹生まで林道を行くか山道を行くか少し考えるも結局山道を選ぶ。
この先、旧道を辿り、朝通った“鳥獣保護区”の看板がある分岐を目指したが、夕闇と時間を気にする焦りから、殆ど道型を辿ることが出来ない。ずるずるすべる斜面をどろどろになりながら何とか朝通った道まで出るが左の谷に降りたくない心理が働くからであろう。“鳥獣保護区”の分岐よりもだいぶ上部に出てしまったがここまで来たら後は朝歩いている道なので一安心である。
- 八坂神社北東の谷の橋台跡 ちょっとした車両は通れたのだと思う
16時55分昼坂峠。夕闇が更に降りていた。この先の植林の中は真っ暗である。ここでヘッデンを取り出し、闇下体制を整える。
登山道の闇下は経験があるが、廃道の闇下は初体験であった。ここまで降りてくれば、集落は目と鼻の先ではあるが、闇中の植林で一度道を見失うとおそらくは簡単には見つけることは出来ないだろう。ジグザグ道の折り返し地点は見落とさないように最新の注意を払う。
なんとか集落に降りるとサイレンを鳴らし消防車に迎えられた。集落全体が騒がしい。火事かと思ったが、どうやら防災訓練をしているようだった。
17時20分駐車地着。久しぶりの一人歩きだったが、地球の重力がいつもより15%ほど減るとまだまだ歩けることが確認できた一日でした。
あきたぬき