- 大平池
【 日 付 】2023年9月14日(木)
【メンバー】単独
【 天 候 】晴れ
【 ルート】田代池 8:39 --- 8:56 大阪市立伊賀青少年の家跡 --- 9:35 霊山 10:50 --- 11:27 大平池 --- 12:21 駐車地
斎藤さんと私は同い年である。海外遠征経験もあるクライマーで,沢ではいつもリードで皆を引き上げてくれた。山に関してはストイックで,特に安全面では人一倍厳しかった。山に関してそれほどの訓練も受けていない私は,斎藤さんに叱られながら沢の登攀技術を習っていたのだった。斎藤さんが沢登り中に事故で亡くなったという知らせを受けたのは6年前だった。翌週に近くの沢へ一緒に行く約束をしていたので,もしかしたら下見のつもりだったのかもしれない。「あの斎藤さんでも死ぬんだ〜」と思い,ショックだった。
それから2,3年のうちにひぐらしさんやゆるやまさんなど,沢を一緒に登ったことのある仲間が山の事故で次々と亡くなった。いずれも,経験値や技術面で私などよりはるかに優れた人たちだった。私自身も,一つ間違えば間違いなく死んでいたと思うような事故にあったが,不思議にいずれもかすり傷程度で済んでいる。自分は山の女神様に愛されているのだと信じ,FBなどにもそのように書いたりした。
文楽人形のかしらに「角出しのガブ」というかしらがあり,美しい娘の顔が耳まで口が裂けた恐ろしい夜叉の顔に一瞬のうちに変貌する。山の女神様も私にとっての印象はそのようなもので,ついさっきまで優しく微笑んでいたのが,一瞬のうちに夜叉に変貌するのだ。夜叉に変貌される前に危険な場所から遠ざかろうと思い,最近は沢歩き程度の安全な沢ばかり歩いている。
沢は歩いているだけでそれなりに楽しいのだが,同じ沢に3回も4回も行っているとだんだんワクワク感が薄れてくる。かと言って,S氏のように遠くの沢まで遠征する気もないし,今更雑踏のアルプスに行く気にもならない。いろいろ考えた末,地元の低山の一般道歩きをやってみることにした。地元の低山の一般道はここ10年以上ほとんど歩いたことがなかったが,かえって新鮮かもしれない。
田代池の手前に車を止め,東海自然歩道の案内に沿って歩く。10分ほどで大阪市伊賀青少年の家という看板のある廃墟に出た。昔は大規模なキャンプ場だったようで,管理棟やバンガローなどが何棟も散在している。現在のキャンプブームであればきっとたくさんのキャンパーで賑わっただろうに。アクセス道路も閉鎖されており,人の姿はない。ここら辺一帯は大阪市の土地で,地元の伊賀市には手が出せないようだ。
管理棟跡の脇から登山道に入る。コンクリート丸太で作られた階段でできた道を緩やかに登っていく。周囲は植林だが,そのうち広葉樹林に変わる。ところどころ水流を横切るが,水の流れを見ると心が和む。沢屋の習性だろうか。霊山寺からの道に合流し,頂上近くに来ると妙齢の女性3人組に出会った。霊山寺から登ってきたようだ。地元の方たちで,しょっちゅう霊山に登っているらしい。
歩き始めてまだ1時間。お昼の時間でもないが頂上でのんびりしていくことにする。まだ残暑の時期だが,標高766mの頂上は気持ちの良い風が通り抜け,こんなところでのんびり昼寝をするのも悪くないと思う。現役を退いてもう5年。身体のあちこちにガタは来ているが,山歩きやテニスなどを楽しむだけの体力が残っているのはありがたいことだ。
1時間半ほどのんびりして頂上を辞する。電波塔の横の舗装路を下っていく。途中,登ってくる車とすれ違う。電波塔の管理をしている業者のようだが,下から車で登ってくることが可能なようだ。途中から山道に入り,地形図の破線道に従って大平池に降りる。地図に破線道はあるが実際には道が消えているのは地形図あるあるだった。
- 霊山からの眺め
田代池の湖畔でのんびり助六寿司を食べ,駐車地に戻る。帰りはさるびの温泉に浸かってのんびりする。さるびの温泉は榊原温泉と同じアルカリ泉で,浸かっているとお肌がツルツルしてきて好きな温泉だ。榊原温泉の共同浴場「湯の瀬」よりも混んでいないのがいい。
久しぶりに地元の低山歩きでのんびりすることができた。沢登りだと,ハーネスやロープを持たなくてもそれなりの装備が必要で,下山後の後始末も大変だが,こんな山歩きなら思い立った時にザックを担いで気楽に出かけられるのがいい。しばらくこんなスタイルの低山歩きをして,自分なりの歩き方を見つけていければいいと思っている。