【日付】2021年2月10日(水)
【山域】湖北/己高山
【天候】時雨のち晴れ
【メンバー】単独
【コースタイム】古橋己高庵P8:00-中ノ谷登山口8:25-12:40己高山14:05-北尾根co920P15:15-△522.4P17:05-林道18:20-19:05己高庵P
己高山△922.5は湖北・長浜市の北、金糞岳の手前にある。役行者が活躍した昔から道教・仏教の聖地として賑わった山らしいが、詳しくは不勉強な私の守備範囲ではない。
この山には8年前に来たことがある。余呉の山のつもりが、林道で車のタイヤがパンクしてしまい、スペアタイヤに付け替えたものの、目標を己高山に変更したのだ。雪の無い時期でもあり、9時過ぎにスタートし、通常の登山道を周回し石道寺へ下ってきたのだが、午後3時ごろには降り立ったように記憶している。
今回は山頂から逆に北尾根を進み、jctピークから反時計回りに長く延びる尾根を下るルート設定。体力の衰えに加え、雪の状態によってはややハード過ぎる気もするが、とにかく行ってみよう。
己高庵などの観光施設がある古橋の登山者駐車場。コロナのせいで温泉や仏像展示施設などは休みだそうで、朝早いこともあって駐車場には1台の車も無く、静まりかえっている。
なにかともたついて出発は8時になってしまった。細かいアラレのような時雨模様の曇天だが、晴れ予報なのでそのうちお日様が顔を出すだろう…と、登山口に続く林道を歩き始める。
林道にはほとんど雪はない。20分余で大きな標柱が立つ登山口。ここから左に入るのだが、登山道は30cmほどの雪で覆われている。背中のスノーシューを降ろし装着。
橋を渡り回り込むと、尾根道と谷道の分岐。尾根への登山路へ入る。途端に積雪がなくなる。代わりに現れたのは大小の倒木だ。掘割のようにえぐられた登山路に覆いかぶさるバリケードを、跨いだり、回り込んだり、潜り抜けたり…。これ、結構疲れる。
こりゃ、たまらん!とスノーシューを脱ぎ背中に。ところが今度は背中のシューに木の枝が引っ掛かって進路妨害してくれる。踏んだり蹴ったりというが、まさにそんな苛立ち気分になってしまう。
なんでこんなに苛ついてるんだ?立ち止まって心を落ち着かせる。そうだ、急ぐ必要はないんだ。行きつけるところまででエエやないか…。雑木の枝に積もった雪が首筋に潜り込んで「冷たっ!」と苛つくなかれ。マツの葉先から滴る水滴が陽光に輝く。迷路パズルを解くように倒木の隙間を通り抜ける知恵比べ。……
時間など気にせず、そんなシチュエーションを楽しもう。
1本目の送電線鉄塔を見上げながら一服。山頂までやっと4分の1だ。さすがに積雪も多くなり、シューを履く。
平坦地に登りつき「六地蔵」だ。石仏は雪の下でお休み中。尾根の向きが北東に変わって、緩斜面になると2本目の送電鉄塔へ。
ここからは北側の眺望が開ける。谷の向こうに見えていたのは横山岳など余呉の山々だったんだろう。右前方にはめざす己高山らしい山塊。もう11時前。あと1時間あれば…?と勝手に推測して見たのだが…。割り切ったはずなのに時間が気になる。
残雪の上に10cmほどの新雪。高度とともにそれが増えていく。踏み抜きを避けて下地が硬そうなところを探しながら進む。
地図では夏道は西尾根の右下をトラバースしているが、どうせどこが夏道かわからない。尾根芯まで進んでみると、白い雪原に陽射しを受けたブナが黒い影を伸ばすモノクロームの世界。見上げるサングラス越しに陽光がまぶしい。
喘ぎながら斜面を登り広い台地へ。小さな山名プレートを発見するまで、ここが山頂とはとても思えなかった。東側の景色が一気に目に飛び込む。対岸の尾根の盟主は金糞岳だ。しかし、間近に白く大きく輝き存在感をアピールしているのは隣りの白倉岳だろう。標高では勝る金糞岳はその右後ろに霞んでいる。
時計は12時40分。まあ、よく歩けたもんだ。とにかくランチにしよう。風はほとんどないので嬉しい。金糞岳方面が良く見える斜面に食卓を設置。今日は珍しくガスを使い温か煮込みラーメンだ!
ゆっくりしすぎたかもしれない。14時を回ってしまった。食事しながらこれからの行程を考えていた。時間が心配なら8年前の登山道を下る選択肢もある。しかし、選んだのは北尾根からの周回。始めから決めていたように足が向く。
未踏のルートだが、尾根がはっきりしているので迷うことはないだろう。山頂付近の尾根筋には、植林の杉の中にブナの巨樹も混じる。右手に金糞岳を眺めながらのシューハイクだ。jctピークまで大きなアップダウンも無い。
左前方に、下りに予定している尾根が視野に入ってくるとjctピークは近い。最後の登りをco920へ。己高山山頂から1時間10分。ほぼ想定通りだ。
ピークからは西側の展望が開け、琵琶湖が輝いている。ゆっくり眺望を楽しみたいのだがさすがに時間が許さない。地図では少し下った地点に・880の標高点が打ってあるのはなぜだろう?
景色にに見とれたためか、アタマの疲れのせいか、広い雪尾根を下りながら何となく違和感を覚え、念のためGPSで確認。あ~あ、やはり違う尾根を進んでいる。引き返して正しい尾根に戻ろう。
この尾根はヤブも無く(埋まっている?)、どこでも自由に進めるのに、想定外に苦労させられる。右側の植林に沿って林道跡のような道型が見え隠れし、それを確認しながら下るのだが、いつの間にか見失って枝尾根に入りそうになっている。
さらに、雪が少なくなったco600辺りでスノーシューからチェーンスパイクに履き換えたのが間違いだった。足が軽くなったのはいいが、気まぐれな積雪は増えたり減ったり。何度も踏み抜きを繰り返して時間はかかるし体力は消耗。履き換えが早すぎたのだ。もう一度シューを履けばいいのに、億劫がってそのまま進んでしまうからド壺が待っている。
(日暮れまでには登山口付近まで下れるやろ…)などと、なんの根拠も無く考えていたのはどうしてだろう? この長い長い尾根、順調でも3時間は必要だろう。ルートロスに足許の判断ミスが重なり、三角点「川合」522.4の手前で17時を回る。そろそろ日没時刻やないか!
これ以上惰性で進むわけにはいかない。左の斜面を下れば中ノ谷沿いの林道に降り立てるはずだ。地図とGPSで確認してから、ヘッデンの明かりを頼りに枝尾根や谷筋を彷徨いながら1時間かけて林道へ到着。辺りはすっかり闇の中だが、ヤレヤレである。
林道は雪で埋まっている。ここでシューを履けばよかったのに、またもスパイクのまま進んでしまう。当然、踏み抜きとの格闘がまた続く。
もうたまらん!と履き換えて、やっとペースが戻ってきた。一応無事に、真っ暗な駐車場に19時05分。
翌日、スノーシューを確認すると、バインディングの樹脂部分が断裂している。先日、後部のストラップ(ベルト)を交換したばかりなのに。経年劣化による寿命なんだろう。そろそろ雪山遊びを諦めるか、それともバインディング交換の大手術をするか…、選択を迫られている。
~びわ爺