山日和さま
こんばんは。
射能山またはブンゲンという不思議な山名に導かれて、甲津原を訪れて以来、姉川上流東草野の山と村に
尽きない興趣を覚えています。
山日和さんとは、甲津原から姉川源流、矢谷大長谷、曲谷から起し又川と江美国境稜線の沢山旅を味わっ
てきました。
今回の、夜叉ヶ妹池と向山谷をぐるりと囲む尾根を辿る山旅も、しみじみと味わい深い山旅でした。
ありがとうございます。
池を訪れるにはどの尾根がいいかな、と、選んだ尾根は、肥料袋のゴミ捨て場?から始まり、えっ?とい
う感じでしたが、植林を抜けると、叢生の潅木が続く面白い尾根でした。
あぁ、わたしは、今、山に分け入っている!、とわくわくしながら、くねくねした枝の間をすり抜けてい
ました。
970mピークに登り着いた時は、ぽかんとしてしまいました。
雪の季節に、鳥越林道から一つ南の980mピークに登り鳥越峠まで北上して中津尾を下ったのですが、
初めて訪れた場所のように感じました。
・941との鞍部にあった小池も記憶にありませんでした。雪に埋もれていたのですね。
山中の池、池のありそうな地形にこころ惹かれます。
夜叉ヶ妹池の姿はこころに刻まれています。でも、はっきりとした場所は覚えていませんでした。
そして、地図を見て、ここだと思った二重山稜の中に、全く違う姿で佇んでいました。
灰色の空の下の雪で覆われた池は、すべての感情を内に閉じ込め、沈黙を守り、そのしんとした静けさに、
近寄るのを躊躇ってしまいましたが、小春日和の冬枯れの風景の中に佇む夜叉ヶ妹池は、ふわりと柔らか
で、水面に遠い夢を描き、鼻歌を歌っているようでした。
次に訪れた時は、また違った表情を見せてくれるのでしょうね。
そう、この池の水は高山の白竜神社に繋がっているという伝承があります。
稜線は、・1057の先までクリの木が多かったですね。少し前は動物の楽園だったのでしょうね。
この日も、何度も動物の気配を感じました。一回はクマだったような。二か所で糞も見ましたし。
風格のあるクリの木は、山の昔話を語っているようでした。甲津原は縄文時代から人の営みがあったそう
です。とおいとおい昔から、生き物たちは、山からいのちの恵みをいただいてきたのですね。
お昼の休憩はどこでするのかなと思っていたら、ここしかないでしょう、という場所が目の前に現れました。
すっくと立ち並ぶブナの中の、ちいさなまあるい空間。木立の向こうには、でんとした金糞岳。
葉っぱの落ちきった冬枯れの、この時期だけ感じる、きゅんとなる情景。
ここからは、稜線から次々と左右に延びる柔らかな小尾根と、その間の緩やかな弧を描く谷、そしてブナ林
が創りだす自然の造形美に、ため息をつきっぱなしでした。ふいに駆けだしたくなったり(笑)。
江美国境稜線に入り、奥美濃の山やま、そして白く輝く白山を望んだ時、わたしの思い焦がれる白い世界を、
すぐそばに感じ、どきどきしました。
向山谷左岸尾根は、新雪の中、ラッセルしながら登った思い出深い尾根です。雪のない季節はどんな姿なの
だろうと楽しみでした。ちょっとヤブっぽくなるとシカのトレースがあり「シカさん、ありがとう」でした。
甲津原に着き、訪れる度に手を合わせるお地蔵さまにごあいさつしました。
今日辿った稜線、かつて辿った稜線を目で追いながら、足を踏み入れるごとに、この地を増々好きになり、
もっともっと分け入りたい、いろんなことを知りたいと思う自分に、なんだかうれしくなりました。
sato