【山行日】2020年10月25日(日)
【山域】台高山脈・千石谷支流喜平小屋谷右俣~瀬戸越~千石山北東尾根
【メンバー】Tさん、アオバ*ト
【天候】快晴
【ルート】ヌタハラ橋7:00、林道終点8:35~8:50、喜平小屋谷出合9:15、
喜平小屋谷二股10:00、遡行終了高巻地点11:30、瀬戸越12:30、
ランチ場12:40~13:30、千石山14:00、喜平小屋谷出合16:30、林道終点17:00、
ヌタハラ橋18:20
やっと、晴れた。
夏休みに運を使い果たしてしまったのかと思うほど、ずっと冴えない週末だった。
山に行くたび雨に降られて、たまにお天気良かったら用事があったり。
だから今日は貴重な一日。
出かける場所は、台高山脈、千石谷の支流、喜平小屋谷の右俣。
すいぶん前に、やぶネットで喜平小屋谷の源流部がすばらしいとのレポをチラリと目にした。
源流フェチのわたしは、そこに行きたくてたまらなくなった。でも、「喜平小屋谷」っていうのが、いったいどこにあるのかわからなかった。
昨年、赤グラ滝谷に行くときに、色々調べていたら、ヤマレコで、赤グラ滝谷を登り喜平小屋谷を下ってきた沢登りの人たちの記録があった。
「喜平小屋谷」ってのはここかぁ。源流部のすてきな場所はここのことだな。瀬戸越の東の源流部に等高線が広くなっているところがある。
五段の滝上の出合から、地形図を辿ってみた。けっこう等高線が混んでいる。これじゃあわたしには登れないかもしれない。そう思って、
上から下ってみた。昨年の11月頃だ。
瀬戸越のピークから小尾根を下ると、下り初めはとても美しいブナ林なのに、下るにつれてなんだか冴えない。
辺り一帯植林地帯ではないか。おかしいな。すばらしい源流部っていったいどこにあるのだろう。
腑に落ちないまま斜面を登って笹ヶ峰へ戻った。
そして冬になって、この源流部のことは頭の隅っこに追いやられた。
先月、たて続けに木屋谷川界隈に行こうとしたら、Tさんが、今日は千石林道にしない?と言ってきた。
じゃ行けるとこまでねということで喜平小屋谷に行ってみることになった。
昨年上から下ってきた源流部は植林だったし、はっきり言ってもうどうでも良かったのだけど、堰堤越えたとたん、夢中になった。
次から次と現れる滝の一つ一つが超絶美しいのだった。結局この日は雨が降ってきて、途中で引き返したのだが、
こんど晴れたらゼッタイもういっぺん行こうねと約束して、そして、やっと晴れた。
千石林道は、長いけど、そんなに嫌いじゃない。
こんな風に朝の木漏れ日の射す、すてきな風景にも出会える。
井戸谷の崩落地は、きれいに修復されてあった。林道終点から出合に下るのは4回目。
今まで気が付かなかったけれど、くすんだ青と緑のテープを小さく切って、切り株や伐採された枝に張り付けたマーキングがあった。
こんな控えめなマーキングは初めて見た。
出合の川床は、不思議な形状をしている。大きな赤みを帯びた平らな石を組み合わせて敷き詰めたかのように見える。
これって自然にできたものなのか。堰堤の工事の関係などで人の手が加えられたものなのか。もしかして一枚の大きな石なのか。
いずれにしても、なかなか気持ちの良いところだ。
冷たいだろうかと思って足を浸すと、そうでもない。よおし、いけるぞ。
水の中に足を浸して水の中をジャブジャブ歩くことがどうしてこんなに楽しいのだろう。
右岸の第二工場跡から堰堤を越えて川床に降り立つと、ここも広くて優しい浅瀬になっている。
浅瀬に葉を落とす楓の木の奥から別世界が始まる。無数の水の精が飛び交い、すぐに近づいてきて遊ぼうよ遊ぼうよと誘う。
次から次と現れる小滝が本当に形が美しい。そしてどの滝もすぐそばに近づける。
初めての沢登りでこんなところに連れてきてもらったら、きっと沢登りが大好きになっていただろうな。
そんなことを思いつつ、夢中になって二股に着いた。
左俣の先に大滝があること、すてきな源流部というのも、その先にあること、いろいろ調べてやっとわかった。
大滝を見てみたい気もするし、その源流部にも行ってみたいとは思う。
でもその行為は自分の身の丈を越えると思う。でも、だから右俣ってわけではなくて、
ただただ、右俣から溢れてくる緑の光と水のきらめきに心を奪われた。
出合いの滝のすぐそばに行ってみる。水の粒子がきらめきながら降ってくる。
滝身を見ながら左岸の緩い斜面を巻いて緑のカーテンを抜けると、いくつも美しい小滝が現れるのだった。
登れる滝は登ってみる。ナメ滝は意外と難しかった。
最後はかなり大きく巻いてしまったので、いちばん上の滝は見ることができなかった。
Tさんは残念そうに滝口を覗きにいっていた。杣道で植林地帯を抜けて、瀬戸越直下の小尾根に乗る。
大きな常緑の木があって、その先からは、得も言われぬ美しいブナの森が稜線へ上がっていく。
ブナの森をけものみたいに斜めに横切って次のピークへ向かう。
この瀬戸越のすぐ南のピークが、わたしは大好きだ。このピークから下った先に大滝があって、
すてきな源流部は瀬戸越寄りではなくて、このピーク寄りにあったのだと、一年前腑に落ちなかったことが、やっとわかったと同時に、
自分がいちばん好きなピークの下にすばらしい場所が広がっているのだと思うと、なんか嬉しくなった。
小尾根を少し下ったところで風を避けてお昼にする。あとは千石山まで行って、尾根通しに下るだけと、
のんきに店開きしてお湯を沸かして小一時間もくつろいだ。
ここから千石山までの縦走路は、何度歩いてもすばらしい。大きなブナの疎林の稜線と幾重にも重なる遠くの山並み。
そんなすてきな縦走路が今日も貸し切りだった。こんな時間にここを通る人はいないだろうけど。
しかしだ、本当に毎度情けないことだが、この日も下りでさんざんな目に会うことを、この時は全然思いもしていなかった。
東峰のさらに東のピークから下ろうとTさんが言う。
しかしここから下ると、途中で左の尾根に乗り換えなければいけない。そのまま下ると谷に降りてしまう。
標高差50ちょっと下った辺りで乗り換えることを目標に下っていくが、とんでもなく急で、踏み跡も薄い。目印もない。
こりゃいかんと思って、狭いところでハーネスを付けてロープに繋がれる。
沢登りの人たちの下山ルートだというが、こんなところみんな下っているのか。
やっと乗り換えられるようなポイントを見つけてトラバースする。
ヒメシャラの若木を掴んで斜面から尾根芯に這い上がる。こんなの道じゃない。
でももう時間が押してきてもっと安全なルートとか探している時間が無い。とにかく、・1096まで辿り着かなければ。
広く緩い尾根に乗ったかと思うと、すぐに急なほうへ尾根分かれしていかなければならない。
コンパス合わせて何度もGPSで確かめる。
標高差50激下りしたら緩くなって、自然と1096に向かう、はずだ、と、思っっていたら、
尾根がなくなった。続いていない。尾根が続いているべきところに細い沢が流れている!なんで?
向こうの尾根はいったいいつの間にどこから来たのか。
等高線では表しきれない地形なのか。
とにかくこの細い沢を渡って、隣の尾根に乗った先が1096のようだった。
1096からは急坂ながらも踏み跡は明瞭になり、やがて沢音が聞こえてきた。何かが頬に触れる。「あ、コウヤマキ。」
いく本もの深い緑色の細く美しい葉が、まるで魔物のような尾根と格闘して高ぶった気持ちを浄化してくれるかのように風に揺らいでいた。
追記:帰ってから、こんな記述をみつけました。
行く前に、これを見ていればよかった~。
このあたりは地形図では実に複雑な等高線の入り方をしている。
ここの地形図は間違った等高線の引き方をしていますね。
・1096から50mほど登ると右の尾根に収斂していくように描かれていますが、
実際は尾根が切れて谷が描かれているところには尾根が続いていますよね。
最後まで右の尾根とは合流せずに、間に谷が流れています。
グーも初めてこの尾根を登った時は地形図を信じて無理やり右の谷を渡りました。
国土地理院の職員はダレ一人ヤブネットを見ていないのだろうか?
アオバ*ト