【日付】2020年10月14日(水)
【山域】大峰/釈迦ヶ岳
【天候】晴れ
【メンバー】単独
【ルート】旭ダム太尾登山口-赤井谷-蘇莫岳-大日岳-釈迦ヶ岳-古田の森-登山口
奈良県は大きい。南北に長く、その距離は100kmを超える。釈迦ヶ岳はその奈良県の南部で、滋賀県の我が家からは片道200km近くの道程となる。しかも高速道路がないため、飛騨や信州までと同じくらい時間がかかる。
釈迦ヶ岳へは東側の前鬼から登る人が多かったようだが、西側の旭ダムからの太尾登山道が整備された近年は西側からのハイカーが増えたようだ。
しかし、この尾根登山路から右の赤井谷(滝川)へ下ると、観光ハイカーは入らないワンダーランドが待っている。ブナやクヌギ、リョウブやカエデなどの紅葉黄葉に彩られた、たおやかな河岸段丘を、大峰奥駈道が延びる稜線に向かって散策するひととき…。
一度は必ず…と頭にあった、10年来の目的地。いつ行くの?今でしょっ!(もう、古っ!)
県央の大峰山脈の西側を南下する唯一の国道がR168。吉野を越え十津川村に入り、田長瀬トンネルを出た「旭口」から旭貯水池方面へ入る。奥吉野発電所からさらに舗装林道を進む。一昨年夏は、土砂崩壊による通行止めで引き返したが、さすがにもう直っているようだ。「旭口」から登山口まで約20Km、落石や倒木を避けながらなので1時間はかかる。
トイレのある登山口に16時半。なんとか日没までに到着できた。1,2,3…、平日なのに車が7,8台も停まっている。なんとか端っこにスペースがあり駐車。隣りの隙間にテントを張る。あ~、車中泊できる車が羨ましい(゜o゜)
と思っていたら、ワゴン車から男性が出てきて会話。浜松からの人で、もうすぐ80歳だって!車中泊して、明日は尾根の登山道で釈迦ヶ岳をピストンされる。お元気が何よりだ。私もそのお歳まで山歩きが出来るだろうか?はなはだ疑わしい。
今日は運転しかしていないからか食欲もわかず、あまりに冷えるのでアワワの味もイマイチである。日没を過ぎると一気に闇が迫ってくる。秋の陽はつるべ落としと言うが、井戸はないので西の山陰に滑落と言う感じ。早々に食卓を片づけ就寝の用意。
上空の月は三日月と言うより鎌のように細くとがっている。近くにいくつかの星も見え始めた。SHIGEKIさんならこれから撮影準備なんだろう。寒くってとてもスターウオッチングしている場合じゃない。
銀マットの上にエアマット、シュラフを毛布でくるんだミノ虫ベッドへ潜り込んでなんとか寒さは凌げそうだ。
夜中や朝方にやってくる車もある。林道が延びてこの登山口が整備されたのだろうが、釈迦ヶ岳へはここからが最短ルートだろう。人気が出るのは当然で、マイクロバスでのツアー客もやってくるそうだ。大峰奥駈道の聖地も今や奥様も駈けっこされるフィットネスランドに衣替えしたのか?
それでも、奥駈道を縦走する健脚組は暗いうちに出発される。登山口駐車場は誰もいなくなった6:30、やっと腰を上げる。
釈迦ヶ岳の南西尾根分岐の案内板には×印が付いている南方向へ下る。尾根が少し右寄りに曲がるところから南東の枝尾根へ。目印とかはないが、踏み跡は尾根芯についている。平坦になったco1200m付近、左の谷筋はなだらかで気持ちのいい疎林だ。と思ったら、足元にケルンが! そうか、ここから下って行けば滝川の段丘へ出られそうだ。
枯れ沢の右岸を下っていくとco1000mの二股。水量豊富な左からの谷と合流し、本物の沢になる。渡渉して左岸出て少し下ると、滝川の流れが目に入る。
滝川の川面から2,3m上の右岸段丘はゆっくりとした登り。黄葉までちょっと早めのブナやリョウブなどの疎林をのんびりと散策。知らない野鳥の鳴き声と川のせせらぎだけを耳に、ワンダーランドを独り占め。初めてのエリアで、時間が気にならないわけではないが、こんな時間を急いでムダ遣いしたくは無い。
焚き火の跡、椅子のような切株…、ここらへんでテントを張ればよかった!
ちょっと後悔もするが、この先もテント担いで登れるか?と思うと、自信がない。
左手から尾根が張り出した急傾斜をトラバース気味に通過し、枝沢のお合流点で左岸へ。ネットレポでは橋があるように書かれていたが、気が付かなかった。両岸から橋桁のような大きな石が張り出しており、簡単に渡れた。
地形図にある・1184標高点の手前から、谷筋の左岸を適当に登っていく。木の幹の青ペンキの目印が案内してくれる。このあたりまで来ると、黄葉紅葉がはっきり目に映る。
なんとも広い谷すぎて、どこを歩けばいいのか迷ってしまうほどだ。正面に聳えるピークは大日岳? と思ったがどうやら違うみたい。その南の・1621ピークだろう。
谷筋を詰めれば・1472mとのコルに出るが、直接・1621mピークへ出たほうが早いぞ! と左寄りに谷と別れ急斜面に取り付く。この辺り、まったくヤブというものがない。御池のゴロ谷からテーブルランドへの苔石ゴロゴロ斜面と似た感じ。
枝尾根に出て少し進むとピークへ飛び出した。プレートに「蘇莫岳」とある。ここからは大峰奥駈道だ。北方面に黄葉の大日岳、その奥に紅葉の釈迦ヶ岳が一列縦隊で突っ立っている。なんだか、アップダウンに悩まされそう…?と不安になる。
時計を見れば11時半を回っている。まあまあ、慌てても仕方ない。まずは腹ごしらえしてからだ。とはいえ、アワワは車に置いてきた。忘れたのではない。寒すぎたのと、軽量化のためにやむなく置き去りにしたのだ。で、助六寿司もちょっと味気なくはなってしまった。
標識に「太古の辻へ10分」とある。ウソつけ!そんなんで行けるかいな…? と思ったが、トロトロと下ると本当に10分きっかりで鞍部へ。左側の谷斜面の雰囲気もいい! 蘇莫岳をパスするならこの谷を登ったっほうがいいかもしれない。
前鬼への下山路と別れ大日岳へ向かう。目の前に大日岳のトンガリピークが立ちはだかる。あれに登るの? ご心配なく。登山路は西側を巻いている。大日の行場には北西側に分岐があるが、当然パス。
小さなアップダウンで深仙の宿のある鞍部にでる。3人ほど休んでいる。あいさつだけして、水場へ行ってみよう。小屋のところから右(東)寄りに進入路がある。数分で行者さん用に整備された水場。でも、落ちている水は閉め忘れた水道の蛇口程度のポタポタチョロチョロ状態。アベノミクスのトリクルダウン並み?で、500mlペットボトルを満タンにするのが苦痛になるほど。
ここから釈迦ヶ岳へは標高差で300mもある。もう13時を回っているのでのんびりはしておれない。足元ばかり見てガマンの苦登。14時半、こんな時刻に誰もいない…と思ったら、なんと10人ほどの登山者で賑やかな山頂だ。
大きな釈迦像は健在。以前来た時は、再建されたばかりだったが、10年以上たって風格を感じさせる。
北の八経ヶ岳付近に雲がかかり始めている。東に台高の山々。紀伊半島の山を一望できる。とても同定はできないのが残念だが…。
先客がほとんどいなくなってから下山に掛かる。しっかり整備された緩やかな尾根の登山路を下っていく。池のある千丈平は前にシカの大集団に出会った。テント泊した古田の森、不動木屋林道への旧登山路分岐、そして朝通った旭登山口への分岐。西日に黄葉が映える大峰奥駈道の尾根を、ずっと左に眺めながらの下りだ。
登山口駐車場に16時45分。なんだか、結果論ではあるが、ドンピシャのコースタイムではないか!
同じ山域でも赤井谷と尾根登山路は雲泥の差…、銀座の目抜き通りと人知れぬ裏通りの差というか…。次は尾根道は省き、赤井谷から深仙の宿~大古の宿の周回がいいかも?などと、不埒なことを考えている。
ちなみに、赤井谷は私有地のため入山連絡(ほんみち教)が必要。
~びわ爺