みなさま、ご機嫌いかがでしょうか。
先週、以前より行きたいと思っていた白倉谷〜金草岳で、久々に僕らしい沢行ができました。これはヤブコギにアップしなければと、これまた久々の投稿です。ご一読を。
2019年10月5日(土)曇り 越美山地 白倉谷〜金草岳 単独
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楢俣川駐車地7:40ー桧尾峠登山口8:00ー白倉谷出合8:40ー
650m二俣11:00ー登山道12:35ー金草岳12:55〜13:40ー
桧尾峠14:15ー添又谷550m二俣16:00ー
桧尾峠登山口16:50ー駐車地17:10
前日の雨の為か道中に見た赤谷(アカンタニ)はかなり増水して濁っていた。そこに竿を出している釣り人がいたが釣果はどうだったろう。
この増水は一昨年の赤谷遡行を思い出す。きつい渡渉を繰り返した遡行で体力を消耗し目指した不動山に届かなかった。これから向かう白倉谷の状況が気になる。
ガスに覆われた冠山峠を過ぎると福井県だ。この道を通るのは何年振りだろう。目的の楢俣川出合までが随分長く感じた。実際、大きく曲がりくねった道は距離が長い。現在工事が行われている冠山トンネルが完成すればかなりの時間短縮となる事だろう。この辺りの登山の様子も変わるかもしれない。
楢俣川沿いには未舗装の林道が入っている。慎重に車を乗り入れる。道路状況がわからないので早いと思ったが適当な駐車地を見つけたところで車を降りた。結果的には桧尾峠登山口まで乗り入れる事ができたのだが不安を抱えて車を入れるより歩く方がずっと気が楽だ。
林道終点から更に対岸にコンクリート製の橋が架かるがその先は廃道。登山道は楢俣川沿いを奥に進んで行く。細くて一般登山者にはちょっとおっかなそうな道だ。辿っていくとすぐに河床に降りる。渡渉して対岸の尾根へ続く登山道と別れて穏やかな流れを遡る。
やや増水しているようだが遡行するのに問題はなさそうだ。濁りもそれほどない。1つ目の堰堤は左岸の明瞭な踏み跡を辿って越える。2つ目も左岸を越えるが堰堤近くを登った結果、沢に降りるのにちょっと手間取った。堰堤とやや離れたところを越えるのが正解だった。
堰堤を越えたところが丁度二俣となっている。左が遡行予定の白倉谷。出合付近はテン泊に向きそうな平が広がっている。だが実際に泊まろうと思うと堰堤を落ちる水の音が気になって眠れないかもしれない。
右はシモットノ谷というらしい。地形図では右が白倉谷であるかのような表記がされているが違うようだ。
シモットノ谷は2011年に遡行。白倉谷はその時以来温めていた沢だ。というか、ほかりっ放しだった、という方が正解かもしれない。数年前に僕の提案でOSKの企画に取り上げられたがその時は参加せずじまいだった。やっと遡行する時がきた。今、遡行しておかないと、体力も技術力も落ちていくばかりだ。
入りはやや流木が多い印象。ダムになったところも幾つかあった。ここのところの荒れた気象によるものだろうか。それでも歩くのに支障を感じる事はなかった。
沢が細くなり左右が立ってきたところに小さな淵。なんでもなさそうだが少し濁った水流で深さがわからないし流速も速い。右手に外傾した細いバンドがありその先にフィックスロープが垂れ下がっているが手の届くところまで行くのが心許ない。無理せずに左岸を巻く。しかし、今度は下降が難しい。
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一旦、樹木を手がかりに下りかけたものの、河床までの間、数メートルの斜度のある壁に樹木がなくフリーで降りるのは困難。懸垂しようと支点を探しに登り返す。その時によく確認せず掴んだ木が倒木だった。体重をかけた瞬間に下にズレ落ちてきて身体を1mほど持っていかれた。反射的に傍らの木を脇で挟み込んで何とか身体を止める事ができたものの危うかった。倒木はそのまま音をたてて河床まで落ちていった。
河床に降り先に進むと今度は5mほどの滝が怒濤のごとく落ちていた。
両岸とも立っていて直近で巻く事はできなさそうだ。懸垂で降りた辺りまで戻って登り返す。すると上部にはうっすらと踏み跡らしきものがあった。辿ってトラバースしていくとまだそれほど古くない鉈目も見られた。先人も同じように巻いたのだろう。
悪場を巻き終わるとホッとするような癒しの渓相が迎えてくれて一息つく事ができた。この谷は基本的にこの繰り返しだった。
2つ目のゴルジュも怒濤の水量。4mほどの滝は淵をへつって取り付いても登れそうな感じがない。左岸ルンゼ右の小尾根から高巻く。ここも踏み跡らしきものがあった。巻きの途中から滝がねじれた2段であるのが見えた。
尾根筋を乗っ越すとブナ林の急斜面を下って落口に至る。落口の間近にまで立派なブナが立ちなかなかの景観。
次に現われたのはやはり淵を持つ3m滝の斜瀑。巻いてばかりになっていたので少し位は登らなければとへつって直登。快適に越えていくと、その先はまたしても癒しの空間。川原も広くザックを下ろして休憩。何時までも休んでいたかったが先の長さを考えれば長居もできない。
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先には枝沢からも何本か立派な滝が落ちていた。本流からはその高さがわからないが巻きの途中から確認するとかなりの高さに達するものもあるようだった。思ったより険しい谷のようだ。
沢が狭まってくると3つ目のゴルジュ。ここも高さはないが水量が多い滝がかかっている。やはり右から巻いていく。次の4m2条もその奥にある滝と一緒に右巻き。これが最後のゴルジュですぐに650mの二俣に出る。
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二俣から先は苔むした岩が目につく。あまり荒れてないようだ。薮っぽいところもあるが概ね歩きやすい。ここまで巻いてばかりだったので出てくる2mそこそこの小滝をここぞとばかり直登して遊ぶ。
斜度を増していくが頭上が開けて気持ちいい谷の先に1168mピークがちょこんと見えた。更に進むと、ジャンダルムのような岩峰が聳えていた。実際には岩峰ではなく尾根の一部なのだが面白い景観だった。
傍らの流木を不図見て、お!っとなる。ここまで苦労して登ったものへのご褒美のような秋の恵み。量は僅かだったが嬉しく頂く。
800m二俣を左に進んだ左岸に滝が架かっていた。岩肌をおちるそれはまさに“そうめん滝”。増水時限定だろうか。
斜度がきつくなってくると薮沢っぽくなり水流も涸れた。このまま涸れ沢を詰めていくのか、と思いきや上部で再び流れが現われ滝も現われた。その沢筋を左へ左へとる。現われた4mほどの黒い滝は今更濡れるのが嫌で巻く。その後の詰めが意外と長く感じられた。最後はズルズルの泥斜面とわずかな笹薮を越えて登山道へ飛び出た。そこは白倉岳東の小鞍部だった。
思ったより時間のかかる遡行だったので、もう何度となく訪れている金草岳はやめようかとも思ったが、わずかばかりの距離、と思い直して登頂する事にした。沢足袋のまま向かうと下山してくる男女のハイカーとすれ違った。出会ったのはそれだけで山頂は貸し切りだった。
荷物を広げて休憩。久しぶりにお湯を沸かしてカップ麺をすする。時間が経つとガスに隠れていた冠山が頭を現した。その他、南に釈迦嶺や千回沢山、不動山、笹ケ峰、烏帽子、蕎麦粒山などが眺められた。福井県側は雲が低い。以前より展望がよくなっているような気がした。
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下降は添又谷の予定。休憩後、高速道路のような登山道を桧尾峠に向かった。1時間くらいかかるか、と思ったが30分そこそこで桧尾峠に到着。以前は祠が建っていたが今は何もない。ここから登山道を冠山峠側へ少し下ったところに水場がある。そこから下降開始。
添又谷については「何もない」と書かれたものを読んだ記憶があった。
だから何もないものと下降を始めたが記憶違いだった事がすぐにわかった。
わずかに降りるとまず3mほどの滝が現われた。それでも「まあ、何もないといってもこれくらいはあるわな」程度に思っていた。ところがその後も現われる滝、滑。次第に「何もない」といえる状態ではない事がわかってきた。
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6mを越えるような滝も現われ、もはや「何もない」なんて言えない沢である事がわかった。どうして何もない、なんて思い込んでいたのだろう。どうか、降りられない滝やゴルジュだけは現われないでくれと祈りながらの下降となった。
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地形図で見ると550mから700mあたりは等高線で示された谷筋が狭くなっていてゴルジュがありそうな雰囲気になっている。素直にとれば「何かある」と思うところなのだが先入観が邪魔をした。
次々と現われる滝と淵。腰まで浸かって越える淵も幾つかあったが寒さは感じなかった。また、一瞬降りるのを躊躇うような滝もあった。それでも大巻きする事もロープを使う事もなかった。逆に、実際に下る事で添又谷の良さを知る事でき先入観を払拭できてた。ここを遡行しても楽しそうだ。
540m二俣は左俣の方が本流のように見える。地形図を見てもそちらの方が水域が広い。が、水線は右俣に書かれている。何故だろう。右俣がこんなにいいのなら左俣も一度見てみたいものだ。
二俣を過ぎてすぐにゴルジュが現われる。これが最後のゴルジュだった。
ここも腰まで浸かって越えると後はゴーロの穏やかな沢筋が続くようになる。
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植林が見えたところでピンクの目印が出てきたので辿った。しかし、植林に上がったり川原に出たりで沢筋を下っても大した差はない。
堰堤が近づくと広々とした川原が続くようになり、その中を踝程の浅い瀬の流れが続く。瀬の中央を歩いていくのが楽しい。堰堤が見えてくると、長かった沢旅の終わりも近い。