【奥美濃】行けども行けども金ヶ丸 ~ 深い森の闇を背に揺らぐ炎を見つめる ~
【日時】2019/9/25~27
【天 候】晴れ時々曇り
【コース】9/25 P 7:10-1100コル9:55-根洞谷出合11:10/:25-ランチ11:45/12:50-
テン場15:25
9/26 テン場8:50-金ヶ丸谷合流広場11:30/12/10-励谷出合13:45-テン場16:40
9/27 テン場8:40-トラロープのゴルジュ12:00-ランチ12:45/13:10-
Ca980合流点17:07-稜線19:10-夜叉が池21:06/:20-P23:50
『われ渓にありて 今宵酒あれば今宵酔い 明日愁い来たれば明日愁う』 T.S氏
10数年前、行きたくても行けなかった金ヶ丸谷
今更ながら、その長い行程を長い時間を掛けてめぐってみよう。
前泊地の夜叉が池登山口駐車場は霧雨が舞っていた。
星を眺めながら呑むはずの大吟醸 たまたま選曲した「ハマショウ」がいい感じで付き合ってくれた。
沢泊装備を準備中、単独男性が到着、直ぐに登山道へと消えた。
入念に?忘れ物チェックして歩き出した。
最近、日帰りでも忘れ物連続記録を更新中なのだ。
登山道から沢に入り、Ca1100のコルを目指す。
小さなアクシデントもあり時間はかかったが、ヤブっぽいコルに辿り着いた。
この稜線を東へ向かえば直ぐそこに半年前の3月20日雪山の絶景を独り占めしたあの 「高丸」がある。
真北へ向かう小尾根それほどのヤブではないが、重荷を背負っているのでなかなか鬱陶しい。
- ヤブ小尾根からの三周
根洞の源流でホッと一息、少し降ってのんびりランチタイムとした。
巨木を縫う穏やかな流れに体も心も安らいでゆく。
高丸に源を発する大きな支流の手前で左岸の小広場を今宵の酒場とする。
ツェルトを張って焚火に癒やされていると何やらいい香りがしてきた。
香ばしい、キノコを焼いたような・・・・そうだ!舞茸を焼いた匂いだ。
何と薪木の足しにと火床にしていた大木の切り株の様な倒木の幹にへばり付いていたキノコがちょうど
いい具合に焼けていたのだ。
果たして本当に舞茸なのかは不確定ではあるが、今宵の酒の友となった。
巨木の葉で覆いきれない夜空に目の前の根洞の流れを写したように天の川がのたっていた。
その、「てんのかわ」のど真ん中に北へ飛翔する「白鳥」、両岸に「鷲」と「こと」
デネブ、アルタイル、ベガ 夏の大三角形が煌めいていた。
渓泊の朝は早いが焚火、朝飯、寝床の撤収など時間がかかる。
逆流するかのような右岸からの大きな支流が合流してしばらく行くと、小滝の大きな釜
ズリ降りた後はほんの三かきだが泳がざるを得なかった。
やさしい流れの金ヶ丸谷、やっと来ましたよ。変わらずいてくれてありがとう。
そんな思いでゆっくりと歩を進める。
励谷を過ぎた辺りで、ブルーシートと空き缶、ひしゃげた鍋・・・神経を疑う。
せめて、生き物の乱獲はやめてもらいたい。
大ヤブレが近づくと素晴らしい山毛欅の森が迎えてくれた。
この森に包まれて今宵の酒に酔おう。
今回の溯行、夜の友はニッカウヰスキー『フロムザバレル』 イとヰ 違いの分かる男はこれを沢泊の友とする。
六右衛門さんのようにボトルごと持ち上げるこだわりも体力もない。
呑んだ後もずっしりボトルの重みを感じてこその本物の味が分かる・・・とか
深い森に谺する流れの音を聞きながら、炎の揺らめきを前にすれば不肖Sにはペットボトルの中身だけでも十分だ。
早朝の山毛欅の森は、薄ぼんやりしたモノクロの世界。
そこに焚火の煙がたなびく。そして、巨木を縫う谷間にいつまでも漂う。
そんな光景を目の当たりにして、そそくさとは旅立てない。
湯で戻すだけのアルファ米をしっかり炊き込むと蟹の穴ができる。
おいしいご飯は半分を元の袋に戻してお好みの味を付ければお昼の弁当の出来上がりだ。
語り尽くされたようで語り尽くせない金ヶ丸谷の美しさは、永遠に続いてゆくようだ。
やっと出てきた小滝を難儀して越えるとまた、ほんの少しだけ川幅を狭めて穏やかな流れが続くのだ。
そんなことを繰り返し、過去の溯行者が「カンタン」と言う小滝とお釜に難儀しているうちに日が暮れた。
稜線手前のスラブの枯れ滝とヤブにいじめられ辿り着いた登山道は、これまた笹ヤブだった。
初めての夜叉が池で、星空を写す水面・・どころかガスと強風で全く池らしいものは見当たらず、夜叉そのものだった。
ロープを使って枯れ滝を降るような登山道から延々トラバースして、ヘッデンに感謝しつつ4日目突入10分前に車に辿り着いた。
また来るぜ 金ヶ丸 (同じことを言ってた美濃俣丸も再訪できていないが・・)
では また 炎揺らめく巨木の森で
SHIGEKI