雨子庵で大工仕事をしているとオジヤンが訪ねてきてくれた。
お茶を飲みながら、
『オジヤン、イズミ谷とかカクレ谷の尾根から上に登ってる人が最近いるんだけど、昔の道ははっきりしてるの?』
『さぁ、はっきりしとるかどうかは・・。けど、あるよぉ、昔はそれを使って仕事に行ってたから』
『どこ?』
『それはやなぁ・・・』
・・・オジヤンの両手の中に立体地図がSF映画よろしくボワァンと浮かび上がる。ここが不動橋、そこから2枚目の擁壁のここのカーブのところから降りる道がある。こう川を渡って、ココの尾根に乗る・・・
なるほど。ペンキも塗れたし、明日行ってみるか・・・。
【日付】2019年3月29日(金)
【山域】台高(千秋&桧塚奥峰)
【メンバー】あめちゃん(単独)
【天候】晴れ
【ルート】カクレ谷右岸尾根取りつき(8:15)~主稜線(10:30)~千秋峰(桧塚)(12:00)~桧塚奥峰(ランチ)(12:15~13:15)~六工場(15:00)~駐車場(17:15)
カーブから下を見ると、確かに仕事道がある。川に降りて対岸へ。今日登るのはカクレ谷の右岸(本谷の下流側)だ。目の前には、チト本谷下流から明瞭な尾根が上に延びている、なぞると上部で最終的にカクレ谷右岸になる。とりあえずあれに乗ってみるか。尾根に乗って下を見下ろすとありゃりゃ、乾留本工場(一工場)跡じゃないか。なんのことはない本工場から延びる尾根を登るのか・・・だとするときつそう・・・ムカシ、本工場を観た後、少しここは登ったことがあるけれど最初がキツクテやめたことがあったなぁ・・・案の定、キツイ登りだ。2足歩行に時々4足歩行を混じえてユックリ高度を稼いでいく。植林が続く。山仕事おそるべし。もし夕方のミーティングで『あしたはあの尾根の上の枝打ちだ』と言われたら、俺ならとりあえず『スイマセン明日有休でよろしいでしょうか?』となるなぁ、タブン。
- 道ははっきりしています
ただ、見下ろす風景はドンドン広くなっていく。尾根道(杣道)は明瞭で心を無にして歩けば気持ちのいい道だ。
- 途中唯一ガレてたところ。そんなに怖くない
やがて周りの樹木も自然林の様相を呈して心なしか傾斜も緩やかになってきた気がする。
- 大仏殿にも同じようなものが。コチラは入っても抜けられそうにありません・・・
空が広くなってきた。主稜線に合流だ。昔辻堂(入道)から千秋まで歩いた時に通ってるところだ。持ち前の消去能力のおかげで新鮮に歩く。鋸(チェンソー)の跡は感じるものの、歩くのに気持ちのいい自然林が続く。しばらく行くと斧が入っていない原生林の様相を呈してくる。・・・時間的にはこの辺が雨子庵から一番近い昔の風景かもしれないなぁ・・・。
やがてヌタハラ側からの登山道が合流してくる(といってもテープで判別しただけだけど)少し進むと、右から明瞭な尾根が。イズミ谷右岸尾根だ。こんな上で合流するんだ。けれど見える範囲の林相は自然林で、主稜とまた違った楽しみがあるんだろうなぁ、タブン。
ヒト登りで千秋峰だけど、ピークのこっちとあっちでこんなに風景が違うんだ。あっち(桧塚奥峰へ続く尾根)の尾根線は低木草原のイメージだけど、ちょっとこっちへ来るだけで、ブナの森。これは来ないとわからんもんです。
- 空が広く気持ちのいいブナの森
一息で桧塚奥峰。前回来たのは12月か。その時見た白の世界から一転、春の風景が広がる。雪はパッチ状にアクセント。新緑はまだ早いものの、風をよけて昼飯(カレーうどん)を食べると暑いくらいだ。
- ヒキウス平は雪がアクセントに
帰路は芽吹く前のお気に入りのブナ林を歩こう。判官平から奥山谷支流の斜面をプラプラ歩き下り、せっかくなんでもう一回登り返してもう一本上流の奥山谷の支流(これが本流か?)へ。この辺はいつ来ても気持ちがいい風景。原生林の源流を訪ねながら歩ける、ゼイタクとはこういうことを言うのかな。
- いつ来ても気持ちがいいんだ
六工場(明神平からの登山道が川筋に降りてくるところ)からは杣道をなぞって三工場(万歳橋)まで。
ムカシ誰かに言われたっけ?
『あめちゃん、特定の季節以外も“あめちゃん山”歩いたほうがいいんじゃない?』
その忠告、素直に受け止めて、もっとイロイロ歩かないと・・・反省。
確かにその季節その時その天気。
山は手を変え品を変え俺を迎えてくれるんだなぁ。
今日もあんがとね。
※追記・・・降りてきたらオジヤンがいたので
『オジヤン、行ってきたけど、ケッコウきつい尾根でした。あんなもん?』
『さぁ、ワシも40年前に行ったかどうかくらいやからなあ』
エッ、40年前の記憶をあんな鮮明な地図で説明してたの!相変わらずの記憶力。
あめちゃん