【 日 付 】2018年12月2日(日)
【 山 域 】 鈴鹿中部
【メンバー】+家内
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】武平トンネル西登山口6:05~7:07御在所岳7:21~7:32ハンバーガー岩7:34~7:59地獄谷出合8:04~8:47上水晶谷出合8:50~9:01小峠9:11~9:52高昌山9:56~10:05イブネ北端~10:14クラシ~10:23鞍部(昼食)10:52~11:02イブネ~11:32杉峠~12:02雨乞岳12:07~12:17東雨乞岳~13:24沢谷峠~13:55武平トンネル西登山口14:03~14:51鎌ヶ岳15:02~15:42武平トンネル西登山口
いつも山行の前には天気予報から山行先をある程度、絞り込み、さらには長時間、地図と睨めっこをしてコースを様々に思案するのだが、今回に限り全くコースを思案する必要がなかった。前回、霧氷を纏った樹々を期待して甲津畑から雨乞岳・イブネに次男を伴って訪れたのは9日前(11/24)のことであったが、その後、山日和さんからのコメントで、武平峠から周回するのでればイブネ~小峠、雨乞岳~郡界尾根~武平峠というコース取りがあることを教えて頂く(山日和さんのタイジョウから銚子・イブネ経由でバリ下山のレポ参照)。いずれも山と高原地図には記載されていないルートではあるが、鈴鹿によく行く人の間ではよく知られたメジャー・ルートのようだ。
この日は晴天が期待されるようでもあり、鈴鹿スカイラインが冬季閉鎖される前にこのコースを歩いておこうと、このルートを辿るのに躊躇する余地はなかった。時間的には余裕がありそうなので、御在所岳をコースに追加するが、このことで必然的に反時計回りの周回コースが決まる・・・というのも御在所岳への登りでご来迎が期待できるのと、御在所岳の山頂に立つのであればロープウェイで登ってくる大観光客がいない早朝の時間帯が望ましいからだ。
早朝、武平トンネル西側の駐車場に車を停めて、歩き始めたのは6時を過ぎてしまっていた。空は東の方から明るくなり始めており、既にヘッデンの明かりを必要としない。武平峠に辿り着くと、ここからの尾根道は好展望が約束されている。すぐ南には鎌ヶ岳のシルエットが美しい。東の山麓では目覚めつつある四日市の街の明かりが終盤のプラネタリウムのように急速に消えてゆく。
東の伊勢湾の方向にのみ薄く雲がかかっている他には空には雲が見当たらない。やがて東の空の一角が明るく輝きはじめる。どうやら日の出の時間までに山頂までは辿り着けないなさそうだ。展望の良い岩場で日の出を待つ。駐車場で隣に車を停めておられたソロの男性の方が通り過ぎて行かれる。日の出までわずか数分・・・しかし、いつもこの時間は長く感じられる。やがて伊勢湾にかかる雲の上から太陽が顔を出す。
御在所岳の山頂へはわずかばかりの距離であった。山頂直下では3張りのテントが張られており、3人の男性の方々が撤収の準備をされているところであった。頂上に辿り着くと先程のソロの男性がおられる。我々のすぐ上のあたりでご来迎を迎えておられたようだ。滋賀から来られた方で、やはり鈴鹿スカイラインが冬期閉鎖になってしまう前に山頂からのご来迎を楽しみにこられたたらしい。
国見峠からハンバーガー岩を通り過ぎて谷に入ると家内が足を滑らせて腰を強打する。どうやら打ち身をこしらえてしまったようだ。途端にスローペースとなるが、何とか歩行は出来そうだ。上水晶谷に入ると青い岩が多数見られる。白と青の岩が独特のコントラストを織りなす渓相が美しい。
地獄谷の出合いを過ぎると谷に右岸のなだらかな林の中を歩く。谷の下部では3名のパーティーと出遭う。この時間にどこから来られたのだろうかと思って、お伺いすると、前夜はイブネでテン泊だったとのこと。それは素敵な夜を過ごされたことだろう。
やがてコクイ谷出合い方面への分岐に至るが、すぐに水晶谷出合いに向かう踏み跡を辿る。山と高原地図では破線となっているところだが、踏み跡はかなり明瞭であり、赤テープも頻繁に現れる。一般登山道としても何ら支障ないように思われる。苔むした大きな岩が散在する林の中は広々として、歩きやすい。
まもなく愛知川源流の神崎川の畔に辿り着く。稜線の上から陽射しが差し込んでくるが、谷はまだ薄暗い。ここからは小峠まで直接、谷を上がる。地図には載っていないヴァリエーション・ルートであり、さすがに踏み跡は薄いものルート・ファインディングに苦慮するようなコースではない。
沢には水は流れていない。谷の上部では藍鼠色と表現されようか、独特の青みを帯びた灰色の岩に刻み込まれたV字の凹みがルートを提供してくれる。しかし、注意深くホールドを選ばないと、剥離する岩がある。一種の凝灰岩のようだ。ところどころ谷の上部では岩は濡れているものの登るのに難儀することはない。谷の上部ではトラロープがあるが、ロープのある斜面はどうも足場が悪そうで、谷筋から反対側の斜面のほうが登りやすいように思われる。ふと、人の声が聞こえるので見上げると、丁度、小峠から上に4名ほどのパーティーが登っていくところであった。
小峠かららは樹々の切れ目から東雨乞岳が目の前に大きく見える。斜面にはところどころに立ち枯れのナラの樹がよく目立つ。標高1100mあたりからはは尾根の傾斜が緩やかになり、尾根上には急にブナの樹が目立つようになる。明るいブナの林を辿り高昌山へと寄り道する。
北斜面ではブナの樹々が足元に広がる苔の上に長い影を落としている。高昌山のピークからは東から南にかけて期待通りの展望が開ける。東雨乞岳の右手には雨乞岳本峰を姿を見せる。
高昌山からは緩やかに尾根を辿り、間もなくイブネ北端に出る。当然であるが、前回の山行時にあたり一面を覆っていた雪は跡形もなく消失しており、モフモフの苔が出迎えてくれる。苔が広がる広い尾根を辿って、まずはクラシへと往復する。霜柱が溶けたせいだろう、苔の間につけられた道は泥濘んでいて滑りやすい。
イブネとクラシの間の鞍部の林の中で早めのランチ休憩とする。この日は湯を沸かし、ラーメンにメンマとチャーシューを載せるだけの調理とは言えない簡単なランチだ。山の上での食事を楽しみにしている次男がいないと途端にランチは簡単なものになる。(10:26から10:53)。先程までは稜線上は強い風が吹いていたが、いつしか風も弱まり、穏やかな陽射しが苔の上に降り注ぐ。
イブネの山頂に辿り着くと、その周辺はかなりの人で賑わっている。杉峠からも続々、登山客が到着する。あたり一面の雪と霧氷の世界であった先日の山行の情景は木枯らしがみせた一瞬の幻影だったようだ。タイジョウへの分岐は、先日はトレースのついていない林は濃い霧と相俟って幻想的であると同時に陰鬱にも思われたが、ふんだんに陽光が射し込む晩秋のブナ林はどこまでも明るい。
杉峠から雨乞岳への登山路では樹林帯を抜けるとまずはススキの草原が出迎える。数日前には霧氷に凍りついていたススキの穂はすっかり解凍され、何事もなかったかのように風にそよいでいる。この好展望の登山路でも多くの人が登山路で休憩し、多くの方はランチを楽しんでおられる。
隣の東雨乞岳の北斜面では冬枯れのブナの樹林が壁紙のような規則的な模様を呈している。斜面の起伏がモノクロームの模様に与える陰影が美しい。目を斜面の上の方に転じると笹原の中で孤立する立ち枯れの樹にも雲の合間から光があたって、葉を落とした灰色の樹幹が存在感を主張する。
雨乞岳の山頂に達すると西の綿向山をはじめ、先日は霧で完全に遮られていた眺望を存分に愉しむことが出来る。雨乞岳からは東雨乞岳にかけては笹原のなだらかな稜線が続き、笹原に刻み込まれた一条の登山路が緩やかな弧を描いている。広い山頂には常に数人のシルエットが見えている。この山に特有とも云える強風が吹かない限り、雨乞岳よりも東雨乞岳の方が休憩するには気持ちがいいところだ。
東雨乞岳からはいよいよ郡界尾根に入る。最初は正面に鎌ヶ岳を望みながら笹原の中を下る。やがて樹林帯の下りになる。落葉した広葉樹の林には時折、雲から陽がさしては落葉のカーペットの上に規則的な線状のシルエットを落とす。ところでこの郡界尾根、この尾根がかつては滋賀県の神崎郡と甲賀郡の境界をなしていたのでそう呼ばれるのだが、現在はそれぞれ東近江市と甲賀市となっている。しかし市界尾根と呼ばれるようになるのだろうか・・・とついつい下らぬことを考えてしまう。
クラシから東雨乞岳にかけて稜線上ですれ違った数多くの登山客が嘘のように静かなコースである。三人山からの下りで一組のご夫婦に追い越した他には全く登山客に出遭わなかった。三人山を下ると尾根上には小さなアップダウンが続くようになる。ところどころで展望が開けるが、その度に鎌ヶ岳が近づいてくる。この郡界尾根を東に辿るにつれて鈴鹿スカイラインを走る車のエンジン音がよく聞こえるようになる。問題は車のマフラーを外して、エンジンの爆音を楽しみながら走っている輩なのだが。
武平峠が近づくと杉の植林地の脇に美しいススキの原が広がる。武平トンネル西側のトンネルに帰り着くと、どこから現れたのだろうか、やはり数組の方たちが下山して帰り支度を整えておられる。今回のコース取りのお陰なのだが、イブネから東雨乞岳の山の上では実に多くの人と会ったのだが、それ以外の登山道を歩いている間はほとんど人と出遭わない静かな山歩きを愉しむことが出来た山行であった。
まだ時間は14時前だ。家内ももう少し歩けそうである。再び武平峠へと登り今度は、鎌ヶ岳を目指す。こちらの登山路では、鎌ヶ岳から下りて来られる登山客と次々と擦れ違う。地図上の距離は近いのだが、正面に見える鎌ヶ岳の鋭鋒は意外なほど遠くに見える。しかし、花崗岩質のやせ尾根は意外にも登りやすい。しかし、その山頂は近づくにつれ、ますます峻険に見える。
後ろを振り返ると、ロープウェイが玩具のように御在所岳の山頂との間を往来している。ロープウェイの鉄塔を取り巻くようにわずかに雲がかかり始めたと思うと、瞬く間に山頂に雲がかかってゆく。だが、こちらの鎌ヶ岳は頂上に至るまですっきりと見えている。
山頂が近づくと登山路は正面から登る登山路が通行止めとなっており、西側から大きく回り込む迂回路がつけられている。頂上直下で稜線から南鈴鹿の山々の展望が広がる・・・しかし、わずかに雲がかかり始めたと思うとあたかも私の到来を待ってカーテンを曳いたかのように雲がかかる。一瞬の出来事であった。
すぐ上の方からは賑やかな人の声が聞こえる。山頂までは1分とかからない距離であった。山頂では女性を多く含む10人程のパーティーが寛いでおられるところであった。同情して下さる方もいらっしゃる。「一瞬で曇ってしまったわね~」「折角、ここまで苦労して登ってこられたのに~」「私は山頂でいい景色が見られてよかったわ~」。一人の女性の胸に抱えられた縫いぐるみのようなトイプードルも頑張って登ってきたのだろうか。
どうやらこの山頂に長居は無用である。山頂を辞して下山路につくと案の定、すぐに雲の下に出る。西の空には急速に傾いてゆく陽が雲の向こうで淡い光を放つ。先程まですっぽりと雲に覆われていた御在所岳はいつしか雲がすっかりとれている。武平峠の手前で、道標の裏に薄い踏み跡を見つける。どうやら駐車場のあたりにおりていく尾根道のようだ。細いやせ尾根の上につけられた明瞭な踏み跡を辿ると駐車場のすぐ上に出た。
車に乗り込んで鈴鹿スカイラインを下ると、電光掲示板の気温は12℃と表示されている。警告灯のランプがついた車のガソリンがなくなってしまうことを心配しながらガソリン・スタンドを探すが、新名神高速道路の土山ICの近くでガソリン・スタンドを見つけるまでかなりの時間が経ってしまい、新名神にのったのは既に陽が沈んだところであった。
明日の天気は雨の予報だが、気温はさらに上がるようだ。京都では未だゆりかもめの便りを聞かない。鈴鹿に再び雪が降るのはいつだろうか。
※上記レポは以下のヤマレコの記事をやぶこぎネットに投稿するために大幅に加筆・改訂したものです。
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