【 日 付 】2017年10月8日~9日
【 山 域 】乗鞍一帯
【メンバー】単独
【天 候 】晴から曇りのち晴れ
【 ルート 】乗鞍高原鈴蘭橋10:45>スーパー林道>白骨温泉>16:30十石山避難小屋6:00
>乗鞍権現社>硫黄岳>大黒岳>富士見岳>蚕玉岳10:48>位ヶ原>鳥居尾根>鈴蘭橋14:25
10月の三連休は天気も良さそうなので乗鞍岳の位ヶ原を目指すことにしました。今回は以前からプランを温めていた十石山から乗鞍岳へ縦走する一筆書き登山です。
10月8日(日)午前5時40分、鈴鹿を出発。中津川インターを降りて19号線で藪原まで行き堺峠を越えて乗鞍高原へ向かう。一日目の行程は6時間程度なので急ぐ必要はないのだ。
10時半に乗鞍高原の鈴蘭橋に着いた。スキー場の大駐車場には何百台もの車が止まっていた。乗鞍岳へ登る人は大概ここに車を止めてエコーラインのバスに乗るが、私の場合はここを起点にしてスーパー林道で白骨温泉まで歩き十石山に登って避難小屋に泊まり、そこから乗鞍岳を目指すという大胆的かつ野心的なプランである。
手早く荷物をまとめて45分に出発。観光センター前まで歩いて戻りスーパー林道に入った。地形図では平坦なように見えるが、それなりに登り傾斜はあるので平地を歩くようには進まない。
一時間かかってやっと蛭窪トンネルに着いた。トンネルの中は少いながら照明もついていたので歩いて抜けるのに支障はなかったが、時折白骨温泉へ行き来する車が通り抜けるので安全のためヘッドランプを付けて通り抜けた。
トンネルを抜けたところでコンビニ弁当で昼食をとり、緩い坂をダラダラと下っていく。白骨温泉の近くでも紅葉が色づき始めていた。
13時丁度に白骨温泉に着いた。
十石山の登山口は温泉街の中にあるようだが、現在はあまり使われていないようなのでスーパー林道の途中にある登山口へ向かった。スーパー林道を登っていき二つ目のヘアピンカーブが一般的な登山口で6台の車が止まっていた。
十石山までは割合しっかりしたルートが付いている。
最初うちは大小のジグを切りながら唐松の林の中を登っていく。
1800m付近でコバに出ると暫く平坦なルートが続く。
ダケカンバや紅葉も出てきたが、森の主役はシラビソだ。
真っ赤に色づく樹種は少ないので黄葉のほうが多い。
ナナカマドの紅葉も出てきた。途中8組の登山者が下山していった。紅葉真っ盛りでもこの程度しか人がいない静かな山だ。これより人が少ないとクマの方が心配だ。
2400m付近でシラビソの森を抜けるとハイマツと笹だけになって展望が開けてきた。笹は山頂付近まで綺麗に刈ってあって登り易くなっていた。
岩がゴロゴロするところまで来れば小屋はすぐだ。
16時半、小屋に着いた。ほぼ予定どおりのピッタリタイムだ。小屋の中は無人で貸し切りとなりそうだ。小屋の中にはガスバーナーや鍋、シュラフにマットと何でも揃っているから緊急避難する場合でも何とか泊まれるようになっている。
小屋にザックを下ろして裏の展望台に上がってみるが、ガスで四方は殆ど見えない。ハイマツに覆われたなだらかな山頂だけが見えていた。
小屋に戻って酒を飲みながら寛いでいても誰も登ってくる様子はない。そもそもこの小屋は何のためにあるのだろう。十石山は日帰りで登る人ばかりだし乗鞍へ向かう西尾根はヤブ尾根の廃道みたいなところで通過する人はまれである。山上宴会でも開かない限り利用価値の少ないところだが、ボランティアによってしっかり維持管理されているのは御立派としか言いようがない。今回はこの小屋の存在価値を存分に発揮していただくことになる。
ラーメンやおにぎりで夕食を済ませたらすることがない。睡眠導入剤を飲んでシュラフに潜ってもいつものように眠れない。ほとんど眠れないまま夜明けを待つのみだ。
(二日目)
10月9日(月)朝5時を過ぎると外が白んできた。シュラフから抜け出て東の窓を覗くとガスもとれ山並みが見えている。トイレに立って朝食のラーメンを作りおにぎりと一緒に食べていると東の山の端が明るくなった。
しかし、太陽が頭を出した途端ガスがかかってしまった。
6時丁度に荷物をまとめて出発。
5分ほどで十石山三角点(2525m)に着くが、ハイマツに覆われた山頂からは何も見えない。
ここから平湯道の乗鞍権現社につくまでヤブ尾根が続き今回の旅の核心部となる。二年前に初めて十石山に登った時、西尾根を少し偵察してみて山頂付近はハイマツの枝落としがされていたので暫くは問題なく進める。しかし、その先は未知の領域だ。
山頂付近を過ぎるとやはりハイマツの枝は伸び放題だったが、尾根は痩せてハイマツの密度は薄くなった。尾根には比較的明瞭な踏み後がありそこを外さなければ藪漕ぎは殆ど不要だった。ただしハイマツの薄いところは笹が優勢なので笹を分ける必要はある。昨夜からの霧でたっぷり露を含んでいるから上下とも雨具を付けての進行だ。
尾根上に出てきたトンガリ岩はどこを巻こうか慎重に見極める。
ガスでよく見えないが、尾根の北側は急峻な崖になっている。
小屋を出て40分ほどで岩場が見えてきた。もう金山岩に着いたのだろうか。そんな期待を裏切るように岩場に着くとその先にハイマツの斜面がずっと続いていた。
さらに10分ほどハイマツの中を登っていくと今度こそ本当の金山岩(2532m)のようだ。
遮るもののない岩場のピークからは360度の大展望が得られそうだが、ガスって何も見えない。とその時奇跡が起こった。一気にガスが晴れ乗鞍岳が姿を現した。北の笠ヶ岳や槍、穂高も雲海に浮かぶ雄姿を見せた。
岩からの下りはハイマツの中のザレを下る普通の登山道のようだった。
半分ほど下ったところで尾根を外れ北側の谷を下っていく。少し藪っぽくなるが、テープを辿って行けば問題なしだ。尾根の続きには岩峰がニョキニョキ突き出しているのが見える。
7時20分、平湯道に合流する乗鞍権現社に着いた。核心部を通過し終えてほっと胸をなでおろす。上下とも雨具を付けてきたのにズボンの裾や靴下を伝って入り込んだ水で靴の中はずぶ濡れだ。首にぶら下げていたカメラも液晶モニターが白く変色して使い物にならない。今日のお供はニコンのP5000で防水仕様ではないが、朝露くらいは大丈夫だろうというのは甘かった。
小さな社に今日の無事を感謝して先を進む。
平湯道もそれほど登山者が使うとは思えないが、ヤブもなく快適な尾根道が続く。
正面に見えてきた端正なピークが硫黄岳。登山道はピークの少し下をトラバースしていく。
振り返って通過してきた金山岩を望む。その右肩にちょこっと見えているのが十石山だ。
登山道に雷鳥がいて近づくとチョコチョコと逃げていく。100mくらい追いかけっこをしていたが、変態ストーカーに嫌気がさしたのか羽を広げてバタバタとハイマツの上を飛んで行った。
硫黄岳から下っていくと平坦地に草紅葉が出てきた。
鞍部の右下に見える平坦な谷が姫ヶ原だ。旧平湯道はここを通っていたが、登山道の一部が崩壊して現在は廃道になっている。テント場に良さそうなところなので復活すればすればいいと思うが、需要が少なすぎるので叶わないだろう。
姫ヶ原分岐からは四ツ岳の紅葉が良く見える。残念ながら赤い葉は茶色に変色していた。
9時前にスカイラインに出た。一般車規制されている現在はバスが時折通り抜けるだけなので堂々と道路を歩いていく。
右正面に見えてきた岩の城塞は恵比寿岳かな。
乗鞍では剣が峰以外登ったことがないので正面の大黒岳にも登っていこう。
9時27分、強風が吹き抜ける大黒岳(2772m)に到着。
北側の四ツ岳をふり返る。
次は富士見岳を目指す。鞍部でバス道を横断して登り返していく。
9時53分、富士見岳(2817m)に着いた。強風がたまらないので休む間もなく先へ下る。
下ったところにあるのは不消ヶ池かな。
沢山の観光客に混じって物資運搬道路を歩いて行くと肩の小屋に着いた。
剣が峰にはガスがかかっていたが、ザックをデポして空荷で山頂へ向かった。
強風とガスで条件は悪いのに観光客の皆さんも皆山頂を目指している。
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10時48分剣が峰手前の蚕玉岳に着いた。少し下ったところでガスが切れるのを待っていたら一瞬だけ権現池の端が見えた。それだけだった。
ガスは晴れそうにないので肩の小屋にもどったらすっきり晴れて剣が峰も見えた。タイミング悪かったけどまぁいいや。
肩の小屋のテラスでランチ休憩をとったら、乗鞍高原へと下る。肩の小屋口でエコーラインに出会うまで紅葉は殆どないが、草紅葉が目を楽しませてくれる。
肩の小屋口からいよいよお目当ての位ヶ原を下っていく。
でも肝心の紅葉は殆ど終わりナナカマドの赤い実だけが残っていた。
草紅葉だけは残っているからそれで我慢するか。
先週なら見頃だったろうけど雨模様だったし、今年はこんなものか。
ちょっと遅かったな。
黄葉のほうは残っているから移り行く季節感は出ているけどね。
12時半に位ヶ原山荘に着いた。登りのバスが4台連ねてやってきた。午後から大量の下山者を捌くのに大量投入しているようだ。
ここから登山道はつづらに折れ曲がるバス道を櫛差しにするように下っていく。
エコーライン沿いの紅葉は日当たりがいいので色付きも良いはずだが、それも少し遅かったようだ。
ダケカンバの黄葉だけが最後の光を放っていた。
摩利支天のバス停から鳥居尾根に入るとバス道を離れていく。時刻表の下に休暇村までの運賃が1100円と出ている。紅葉見物も終わったことだし、足は棒のようになっていて魅力的な誘惑だ。でもNHKの一筆書き登山だって交通機関を使わないのがルールだったし、もうひと踏ん張り頑張ることにしよう。
鳥居尾根は緩やかで歩きやすく気持ちいところだ。
ゆるゆる下っていくとスキー場のゲレンデに出た。
ゲレンデにはアザミみたいな丸い集合花が咲いていた。
14時25分、すずらん橋に到着。二日間にわたる一筆書き登山もようやくゴールを迎えた。胸のカラータイマーがそろそろ点灯しそうだったが、大きな達成感に足の痛みも和らいだ。
旅の核心部もうまく通過できたと思ったが、本当の核心部はここからだった。158号線に合流すると上高地から帰る大量の車で大渋滞。奈川渡トンネルの中で立ち往生して排気ガスをたっぷり吸わせていただいた。トンネルを抜けたら158号線にお別れして堺峠に向かった。中津川まで順調に走れたが、中央道に乗った途端に、また大渋滞。一区間だけで高速を降りたら恵那市内も大渋滞していた。土岐市で21号線に入ると普段より空いていて楽に走れたが、一般道だけで帰宅するのは大変だった。
紅葉時期の北アルプスなんて行くもんじゃない。特に東の上高地側は鬼門だ。