- 林道横のイロハモミジ
zippさん 「摂津道使ってサスケ滝経由が一番高低差なく使いやすいと思います。」
私 「確かにそうなんですけどねえ。
単独で上の廊下を突破するのはちょっと敷居が高くて・・・
でも、まあ、案ずるより産むがやすしですからねえ・・・」
正直言って私は単独で上の廊下に入るのは怖いのである。でも、案ずるより産むがやすしだしねえ。まあ、行ってみようか。
【 日 付 】2015年11月7日(土)
【 山 域 】台高 櫛田川水系蓮川 奥ノ平谷
【メンバー】単独
【 天 候 】曇り
【 ルート 】千石林道駐車地 8:05 --- 8:15 奥ノ平谷出会い --- 8:25山の神 --- 9:10 カツラ大木 --- 10:10 サスケ滝下 --- 10:43 サスケ滝落ち口 11:03 --- 11:23 15m滝 --- 12:00 中ノ滝 --- 12:23 黒滝谷出会い 12:48 --- 13:33 サスケ滝 --- 摂津道 --- 15:00奥ノ平谷出会い --- 15:07千石林道駐車地
8㎜、40mと7mm、15mロープ、カム、ハーケン、ハンマー等登攀道具一式、軽アイゼン、ピッケル等を持つと結構な重さになった。こんな重装備は必要ないと思うのだが、まあ、次回から必要ないものを削除していけばいい。今回はとりあえずどんな事態にも対応できるようにしておこう。
宮ノ谷林道への分岐を過ぎると前の方を四駆がゆっくりと走っている。すぐに追いつく。四駆なのだからもっと速く走ればいいのにと思うが、こういうところに慣れていないのだろうか。ヌタハラ橋を千石林道方向に左折する。橋を渡り切ったあたりで四駆が停まり、男性が降りてくる。
男性 「ヌタハラ方面はあっちですよ」。
ヌタハラの方に行くと思われたらしい。
私 「どこへ行くんですか?」
男性 「シャッポ尾根に行きます」
私 「??? 急斜面だから気を付けてくださいね」
四駆は林道の途中で停車するようなので、脇をすり抜けて車止めゲート前のスペースに止める。準備をしていると男性がやってきた。
私 「ここらへんはよく歩かれるんですか?」
男性 「いや、初めてです。桧塚の方ばかりです。」
私 「どこから降りますか?」
男性 「シャッポ尾根をピストンするつもりです」
下降は特に危険であること説明し、再度注意していくようにいう。男性は奥ノ平谷出会いに降りずに、千石林道を真っ直ぐに進んで行った。目的地を変更したのだろうか?
それにしても、シャッポ尾根ってやぶメンくらいしか行かないと思っていたのだが、結構使われているのだろうか。あるいは,やぶレポを読んで行こうと思ったのだろうか。
奥ノ平谷出会いに降り、摂津道を進む。実は摂津道を歩くのはこれで2回目だ。ほんとはもっと歩いていてもいいルートなのだが、いまいち足が向かなかった。自然石でできた山の神に今日の安全をお祈りしていく。ビイちゃんが新調したという赤い前掛けも随分古くなってきた。
- 山の神様
摂津道にはピンクのテープが増えてコースの間違えようがなくなっている。zippさんがつけたのかな?嵓をうまくすり抜けるようにしてつけられているこの道。なかなか絶妙なコース取りだ。途中、カツラの大木。前回歩いた時は気がつかなかった。コースを間違えていたのだろうか。
- カツラ大木と紅葉
植林地に着く。間伐、枝うちなど手入れが行き届いた成木林だ。ここまで来るだけでも大変だろうに。飯場跡から見える奥ノ平谷右岸、左岸の紅葉は今が盛りだ。いい日に来たと思った。飯場跡で軽アイゼンを装着する。この後も踏み跡や古いテープは続いているのだが、滑落すると下まで落ちるので、対策をとるにこしたことはない。手にはピッケル。
「サスケ滝までこんなに遠かったっけ」と思いながらいくつかの小谷と小尾根を過ぎると見覚えのあるリンゴ畑さんのロープが張ってあるトラバースに出た。ロープはもう切れかけていて、使う気にはなれない。今日はアイゼンとピッケルのおかげでそのまま歩いていくことができる。
サスケ滝下。紅葉の真っ盛りだ。24日にzippさんが来たときはまだ早かっただろう。サスケ滝にちょっと触らせてもらう。思っていたほどぬめってはいなくて、流芯には豊富なホールドがあるので少なくとも下半分は快適に登れそうだ。上はわからない。それでも流芯の直登になるので、フルシャワーでの登攀は免れない。真夏の遊びだろう。
「サスケ滝ちゃん、今度は遊んでね」
- 紅葉とサスケ滝
駐車地からサスケ滝まで約2時間。下りも同じ時間がかかるとして、遅くとも2時にはサスケ滝を出発したい。そうすると退却の期限は1時と見ていいだろう。今日は黒滝谷出会いが最終目的地で、そこからピストンで下山するつもりなのだ。1時までに黒滝谷出会いに着かなければその時点で退却すると決める。
右岸から流れ込む支谷の右岸リッジを登り、適当なところで支谷に降りて、左岸の壁の弱点をついて左岸を登る。前回たろーチームで来た時は支谷の左岸岩場を登ったのだが、単独ではこのルートは危険だ。急斜面をトラバースして落ち口に至るのだが、このトラバースがいやらしい。滑落すると下まで落ちていくので、慎重に慎重に。なんとか落ち口に至る。7月にテントを張った想い出のテン泊地だ。そのあとも何組かがテン泊地として使ったらしく、焚火の跡が残っている。
- サスケ滝滝口からの紅葉
落ち口で紅葉を愛でながら昼食休憩。紅葉は今が盛りだ。落ち口の岩が額縁になって、絵に描いたようだ。今日は出がけにあまり気が進まなかったのだが、こんなきれいな紅葉に出会えるなんて、来てよかったと思った。軽アイゼンを再び装着する。
落ち口すぐ上の3m、5m連滝は右岸から高巻きする。前回は左岸をロープを出して小さく巻いたのだが、単独では危険すぎる。といっても、右岸巻きもいやらしい。アイゼンを履いていても落ち葉でずるずるで、気が抜けない。やはりここの巻きが上の廊下の核心部のようだ。はらはらの高巻きの末、なんとか15m滝の下に降りる。この15m滝も直登は無理なので、また同じ道を登り返し、高巻きを続けることになる。こんなことなら降りなければよかった。結局、その上の4m滝も一緒に巻いてしまう。やれやれこれでドキドキのいやらしい巻きもおしまいだ。すぐその上に8m滝。ここも右岸巻き。基本的に上の廊下の下部はすべて右岸巻きだ。それにしても、前回はたろーさん主導で気がつかなかったが、上の廊下は滝が意外に近接しているのである。すべて巻きになるので、渓に降りている区間は短い。
- 15m滝
8m滝の上は中滝20m。ここも右岸の嵓の下を通って巻いていく。これまでの巻きと比べると危険は少なく、ホッとするような巻きだ。
- 中滝20m
大岩を縫いながらしばらく歩くと今日の目的地,黒滝谷出会いだ.撤退予定の30分前に着くことができた.二つ平行に落ちる滝の手前が黒滝谷からの滝,奥が本谷の滝だ.ここに来るのは7月以来2回目だが,何度見ても不思議な光景だ.
- 黒滝谷出会いの2連滝
前回は本谷側の深い釜を胸まで水に浸かって突破し,正面の支谷を登り,さらに渋いリッジを登って巻いた.支谷の登攀での荷揚げやロープでの確保にかなり時間がかかったが,単独ではこのようなことは困難だろう.zippさんの話では左岸の草付きを登ると簡単に巻けるということなので,そのルートを検討する.左岸の嵓の右側が草付きになっているのでここを登ると,嵓の隙間からうまく上に上がることができる.あとはやや渋目の斜面をトラバースすると支谷に降りるルートがあった.前回登ったリッジは少し上部で終わっていて,その終了点に至る草付きが見える.おそらく,そのルートを使って簡単に巻くことができるだろう.そこまで行ってみようかと思ったが,時間のこともあり,今回はここで終了.楽しみは後に残しておこう.ここさえ巻いて仕舞えば上の廊下を抜けることになるのだ.廊下を抜けてからの3つの滝の巻きルートはもうわかっているので,上の廊下突破の戦略は完成だ.
今日のミッションはもう終了.1時前なのでそろそろ帰ろうか.来た巻道をそのまま辿ってサスケ滝に降りることにする.8m滝以降はもう谷に降りることもなく,そのまま巻道を辿った.45分でサスケ滝に到着.上の廊下自体は比較的短いのだ.途中で道草さえしなければ1時間程度で抜けることができるだろう.
サスケ滝前で一休み.神の廊下突破の目処が立ち,有意義な1日だった.来春はテン泊荷物を背負ってくることになるだろう.サスケ滝も登ってみたいし.飯場跡まではまだ気が抜けないので簡易アイゼンを履いたまま歩き始める.山の神に無事に下山できたお礼を言ったあと,奥の平谷出会いに降りたつ.サスケ滝から1時間30分.4時下山予定だったので1時間も早く下山できた.摂津道ルートもほぼ覚えたので,次回からはもっとスムーズに歩くことができるだろう.繰り返しになるが,いろいろなことがうまく回転した密度の濃い,良い1日を過ごすことができて感謝.
帰りの林道沿いのイロハモミジは4日間でさらに紅葉が進み,素晴らしい色彩を放っていた.思わず車を止め,カメラのシャッターを押す.帰りがけの駄賃だった.