- 仙人滝下部
「神様が創った美術館」、「大渓谷がひしめく蓮渓谷にあって最強最美の谷として名を馳せる」、「泳ぎ、へつり、登攀、巻き、そして最高の天場、沢の魅力が全て詰まった最上級の渓」(以上、沢ナビより引用)と絶賛される台高・奥ノ平谷。しかし、その遡行難度は3級+かつ上級。選ばれた人間のみがその美術館への入場券を手に入れることができるのだ。「奥ノ平谷にいきたい」とだれかれなしにつぶやいていたら、たろーさんが声をかけてくれた。「奥ノ平谷にいきましょう」。もちろんいやはない。しかし、梅雨で増水した奥ノ平谷に入ってほんとに生きて帰れるのだろうか。行くと返事をしてしまってから不安感が襲ってきた。
【 日 付 】2015年7月11日(土)〜12日(日)
【 山 域 】台高・蓮川流域
【メンバー】たろー、ふみふみ、じろー、やっさん(以上,鈴ハイメンバー)、michi、えっちゃん、シュークリーム
【 天 候 】11日 曇り;12日 晴れ時々曇り
【 ルート 】
1日目:千石林道車止め 7:30 --- 8:30 深い釜を持った3m滝 --- 8:50 魚止滝 --- 10:10 仙人滝 11:25 --- 11:25 法螺貝の滝 --- 13:50 鎌滝 --- 15:40 サスケ滝 --- 16:30頃 サスケ滝落ち口テン場
2日目:7:10 テン場 --- 8:00 15m滝 --- 8:25 8m滝 --- 8:55 20m滝(中ノ滝) --- 9:25 黒滝谷(ワサビ谷)出会いの2連滝--- 11:15 25m滝 --- 12:40 ゴルジュ上(快適なテン場) --- 14:10 千石山 --- 15:45 喜平小屋谷出会い --- 17:40千石林道車止め
(1日目)
雨で中止になってくれと思ってしまう別の自分がいる。しかし、天気予報は無情にも2、3日前になって土日に晴れマークがつく。行くしかない。スメールに6時半に集合し、車に分乗して千石林道の車止めまで行く。足の揃った4人以内のメンバーであれば、1日で上の廊下まで抜けることは可能だろうが、今日のメンバーは7人、しかもその中には女性2人と私のようにとっくに還暦を過ぎた爺さんが入っているのだ。このメンバーを引き連れてたろーさんはどうやって奥ノ平谷を抜けようとしているのだろうか。しかし、たろーさんは梅雨で増水した仙人滝を全員で強行突破するというすごいコースをとったのだった。その様子はまた動画で。
入渓してしばらくは何の変哲も無い渓が続く。水量はやはり多いようだ。グーさんが泳いで遊んだという深い釜を持った3m滝。ここは当然巻きかと思いきや、全員で釜を泳いで渡る。michiさんが魚止滝を登りたがっているらしい。
- 3m滝の大釜を泳ぐ
3m滝の左を登って、魚止滝を見つめ、「やっぱ無理」。もう一度泳いで引き返す。右岸の残置ロープを使って空身で登り、ザックを引き上げる。右岸巻き。
- 魚止滝
仙人滝手前の2段8m滝は、流れの右側を微妙にへつる。ここは思ったよりも難しくなかった。
臨場感あふれる動画はこちらから
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ついで、仙人滝のゴルジュ。暗いゴルジュの右上から増水した水が流れ込んでいる。ここは当然巻きでしょうと思ったら、たろーさんが様子を見てくると言って泳いでいく。滝左の岩に乗って様子を見ている。そのうち、サブリーダーのmichiさんを手招きして呼び寄せる。二人で何やら相談していると思ったらたろーさんが動き始めた。えっ、進むの?しばらくして、仙人滝の上の方の流れを横切るたろーさんの姿が見えた。「し、進化している」。進化した沢サイボーグ、たろーさんの姿だった。あんな増水した仙人滝を横切るなんて、並の人間にはできない。
- 仙人滝のゴルジュ
michiさんの指示で次々にゴルジュを泳いで仙人滝に取り付こうとするが、増水した仙人滝の下に取り付くのも一苦労だ。なんとか、中段に上がったら、今度は仙人滝の渡渉。こんな増水した仙人滝なんて、流れに触れただけで下まで持っていかれそう。ロープを持って渡ろうとするが、水圧に負けて渡れない。戻ろうとすると、「戻るな!」というたろーさんの指示が。なんとか流れの左側にたどり着き、先に渡っていたやっさんにスリングを出してもらってなんとか上がることができた。たろーさんと黒部川上の廊下を遡行したmichiさんでさえ苦労している。その様子は動画で。
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仙人滝を突破したら、今度は高名な法螺貝の滝。ここは眺めるだけ。「失礼いたしました」とさっさと引き下がる。通常は左岸を巻いて、投げ縄で垂壁をよじ登るのだが、我々はzippさんの言いつけ通り右岸巻きにした。投げ縄なしで、懸垂下降のみで沢に復帰する。下降する場所によっては懸垂も必要ないのかもしれない。
- 法螺貝の滝
鎌滝も巻き道からご挨拶だけして、さっさと引き下がる。この辺りに来ると、渓の上にもう使われていない林業作業用のワイヤーが見られるようになる。昔は左岸の集積場に伐採した材木を運搬したのだろう。りんご畠さんが設置したというロープはもう切れかかっていて、頼る気にはなれない。ロープを渡して通る。
- 鎌滝
ついにサスケ滝まできた。サスケ滝はいつもより水量が多く、素晴らしく壮大で気品にあふれている。やっぱり他の滝とは気品が違うねえ。今日はこのサスケ滝の落ち口で寝ることになるのだろう。右岸から流れ込んでいるわさび谷の左岸を登り、嵓が切れたところから本流に向かってトラバースし、サスケ滝の落ち口にたどり着く。
- サスケ滝
テン場として最高とは言えないが、決して悪くない。食担のふみふみさんの作った鍋を美味しくいただく。今日は自立式ツエルトにシュラフカバーと非常用の簡易寝袋だけだったが、焚き火で服を乾かすことができたので、増水したサスケ滝の水音を子守唄代わりに、寒くもなく快適に眠ることができた。
- テン場(2日目朝)