- 満開のミツバツツジ
毎年恒例になりつつある大型連休のテン泊縦走.さて今年はどこへ行こうか.昨年は鈴鹿を縦走し,それが3回目の鈴鹿縦走だった.4回目となると首をかしげてしまう.大峰奥駆は数年前に2区間に分けてそれぞれ4日間ずつで縦走した.今回やるとなると吉野から本宮まで一挙に行く手だろうが,行動日数で6日,それに湯の峰温泉に1泊して完走祝いをするとなると都合7日間の休暇を取る必要がある.現役のうちはちょっと無理かな.とすると残るは台高縦走だ.これも4年前に高見山から大台ケ原まで縦走したことがあるので,今回は逆コースで大台ケ原から迷岳まで縦走してみよう.と決めてバス時刻を調べてみると大台ケ原線は4月27日開通となっている.4月30日は仕事の都合でどうしても出勤しなければならないので,行くとなると出発は4月26日しかない.それなら逆コースの迷岳~大台ケ原だな.ということで,今回のコースが決まった.
迷岳~池小屋山間は2年前,池木屋山~大台ケ原間は4年前にそれぞれテン泊装備で歩いているので,すべてその時の自分のコースタイムで設定し,地図のコースタイムはあてにしない.ある意味,これは過去の自分とのタイムトライアルなのだ.過去の自分と比べてどの程度体力が落ちているのか(体力が増しているとは考えられないので)知るいい機会になるだろう.
【 日 付 】2013年4月26日(金)~29日(月)
【 山 域 】台高・迷岳~池木屋山~大台ケ原
【メンバー】単独
【 天 候 】1日目 晴れのち曇り一時吹雪;2日目 曇りのち晴れ;3日目 晴れ;4日目 晴れ
【 ルート 】
(1日目)スメール前バス停 9:05 --- 10:15 唐谷林道終点 --- 11:30 唐谷渡渉点 --- 12:30 迷岳北尾根 --- 13:15 迷岳 13:35 --- 14:35 大熊谷の頭 --- 15:50 白倉山 --- 17:25 野江股の頭 --- 18:00 水越(行動時間 9時間;実行動時間 8時間40分)
(2日目)水越 5:15 --- 5:55 池小屋山東尾根 --- 6:40 P1232 --- 7:35 池木屋山 7:45 --- 10:00 弥次平峰 10:20 --- 11:25 霧の平 12:15 --- 13:20 馬ノ鞍峰 --- 13:50 P1164 --- 15:10 地池越(行動時間 10時間;実行動時間 8時間40分)
(3日目)地池越 5:15 --- 6:00 山ノ神ノ頭 --- 6:30 湯谷ノ頭 --- 7:40 ブナノ平--- 8:25 父ヶ谷の高 --- 10:00 杉又高 10:20 --- 10:50 振子辻 --- 12:15 引水サコ 12:45 --- 13:15 御座くら --- 13:50 添谷山 --- 14:15 テン泊地(行動時間 9時間;実行動時間 8時間10分)
(4日目)テン泊地 9:00 --- 9:45 大台辻 --- 10:35 金明水 --- 11:50 川上辻 --- 12:10 大台ケ原(行動時間 3時間10分;実行動時間 3時間10分)
1日目の記録:
出発前の計測ではザックの重量は18.5キロ.ストックも入れてなので,まあこの日程での標準の重さだろう.松阪駅前7時21分発のスメール行バスを待っていると私と同じグレゴリーのザックを担いだ若者がやってくる.聞いてみると大台ケ原へ行くという.同じ日に同じ行程で台高を縦走する人がいるとは思わなかった.岐阜の人で3日で縦走するという.私では3日での縦走はとても無理だ.やっぱり若者は違うなあと思う.しかし,話をしているとどうもつじつまが合わない.よくよく聞いてみると彼はタクシーで宮ノ谷林道の終点まで行って,そこから出発なのだという.な~んだ,だから3日なんだ.それだったら楽勝だねえ.でも「若いんだからスメールから歩けよなあ」と思ってしまう.
9時にスメール着.前回は6時40分に出発して15時30分に水越に着いているので,9時出発だと水越到着は17時を過ぎることになる.ある意味,初日のこの計画の成否が今回の核心なのだと思う.テン泊装備をしょって飯盛山を登る勇気はないので唐谷コースを行く予定なのだが,実はここ2回唐谷コースで迷岳へ行こうとしてなぜか口迷岳に登ってしまっているのだ.今回こそ道を間違えないようにしなければと思う.道を間違えている時間的余裕がないのだ.
唐谷林道終点を過ぎて歩いていくと,唐谷の本谷と左俣の分岐に出る.唐谷道を行くためにはどうしても本谷の方へ行く必要があるので,道を探すが登山道は左俣の方に進み,本谷には道がない.それでも本谷へ行かねばならないと思いこみ,沢登りの要領で谷を歩いていくと唐谷三の滝に出る.数十メートルの巨大な滝だ.いや~,これはとても越えられないし,登山靴では巻くこともできない.やっぱりここは道ではないと悟り,引き返すことにする.岩がぬるぬるして滑りそうだなあと思っていたら案の定すべってズボンをぬらしてしまう.幸い,一部がぬれただけで済んだが,ドボンだったら即撤退だなと思う.
もとの登山道に戻る.この時点ですでに30分以上の遅れだ.仕様がないので左俣の登山道を進むと渡渉点があり,ここを越えたところで道が二股に分かれていた.ここを右折すると小尾根を越えて本谷の方へ道が向かっていた.そうか,ここが唐谷道だったんだ.歩きやすい道をたどると簡単に三の滝の上に出た.
ここを渡渉して迷岳の北尾根に出るのだが,私の知識ではこの先水越まで水場はないはず.ここで水を補給していくが,荷物を軽くするために行動中の飲み水しか持参しないので,どうしても今日中に水越まで行かねばならない.この時点ですでに1リットルの水を消費している.日頃,水消費量の少ない自分にしては珍しいことだ.体調がいまいちなのだろうか.
迷岳北尾根への登り.ペースが上がらない.息が上がり,休み休み登っていく.迷岳に着いたのが午後1時過ぎ.12時に到着予定だったので,予定より1時間以上遅れている.道に迷って30分以上ロスしたとはいえ,これは通常の自分のペースじゃない.でも,まあこの先の難所は大熊谷の頭から白倉山へのアップダウンだけで,あとは厳しい登りはない.足を前に出していればいつかは着くだろう.
- 迷岳
白倉山の手前で雨粒が当たってきた.今日は晴れの予報じゃなかったの?野江股の頭への途中で雨粒があられに変わる.水越へ降りる途中で風がさらに強くなり,あられが横から吹き付ける.これは完全に吹雪だ.水越峠では風が強くてとてもテントが張れない.風が弱い場所を探して水越谷方向に降りることにする.6時に水越着.予定より1時間遅れだ.
- 野江股ノ頭
しかし,風は水越谷方向から吹いてきているのだ.下へ降りたって風が弱くなるはずがない.しばらく歩いていくと大岩があり,その風下側なら風がよけられそうだ.斜めだし,石も出ているが今はそんな贅沢は言っていられない.いいところは水場がすぐ近くだということだ.気温はもう0℃近くまで下がっている.かじかんだ手でテントを張る.
テントを張ったら次は夕食の準備だ.今日の夕食はいつものように煮込みうどんに牛肉のコマ切れをトッピングしたものだ.疲れた時はこのような汁ものがありがたい.楽に胃袋に入っていく.きっとご飯だと食べる気にならなかっただろう.牛肉の保冷剤代わりに持ってきたビールを飲みながら夕食を終える.
夕食後はすぐに就寝.3季用シュラフにシュラフカバー,上下ともダウンを着,テントシューズを履いて寝袋に入ると寒さ対策は完ぺきだった.地面が斜めなので,身体は自然にテントの隅に転がってしまうが,寝袋の中はぽかぽかで天国だった.身体は正直なもので,疲れとビールの酔いで知らないうちに意識を失ってしまった.7時半就寝.
2日目の記録:
朝3時に目が覚める.完全装備のおかげで安らかに眠ることができ,昨日の疲れもすっかりとれたようだ.朝食はいつものようにハムエッグとトースト.飲み物は紅茶オレだ.あとはミニトマト.こんな時はトマトがおいしい.
5時過ぎ出発.相変わらず強風が吹いているが昨日のような吹雪になるようなことはなさそうだ.気温は5℃を下回っている.防寒のため上下雨具をつけて出発.
最初の池木屋山東尾根への登り.相変わらずペースが上がらず,すぐ息が切れてしまう.休み休み登る.東尾根は比較的歩きやすい道だ.左手には去年登った大杉国見山がどっしりした姿を見せている.台高縦走路はこの国見山を巻くようにして走っているので,これからしばらくは国見山を常に左手に見ながら歩くことになる.
- 大杉国見山
池小屋山で10分ほど休憩し,先を急ぐ.弥次平峰で休憩していると一人の若者が登ってきた.浜松から来た人で,昨日大又から入り大台ケ原へ縦走するという.とすると以後は同じコースだ.今日は地池越でテン泊するという.同じところに泊ることになりそうだ.若者が先に出発し,私もしばらくして歩き始める.
- 池木屋山
霧の平で昼食をとっていると逆方向から二人の男性がくる.奈良県側から馬の鞍峰を登って来たという.今日の昼食はにゅうめん.好日山荘で期限切れ寸前のものを安く買ってきたのだが,結構美味しかった.
滑落!!
それはあっという間だった.気がついたときは天地が逆さまになり,横向きに回転しながら斜面を転がり落ちていた.すぐに止まるだろうというお気楽な考えは瞬時に消え,止めなければと思った.朽木の株もとが目についたので,とっさに手を伸ばしてつかもうと思ったが,ちゃんとつかむ前に手から離れてしまう.しかし,これがブレーキとして効いたようで,さらに2,3回転して止まった.
幸いなことにどこも怪我をしていなかった.そのかわりストックがぐにゃりと折れ曲がっていた.これが岩場だったらと思うとぞっとする.ストックを元に戻し,なぜ滑落したのだろうかと滑落地点をチェックする.滑落した距離は3,4mくらいだった.岩場ではなく,落ち葉の堆積した斜面だったので,何の怪我もなかったのだ.ふと見ると,滑落したあたりに黄緑色の物体が.何だろうと見に行くとザックの外側につけていたテントポールをいれた袋だった.危ない危ない.もし気がつかなかったら今日はテントの布にくるまって寝て,明日は国見山経由で下山せざるを得ないところだった.
気を取り直して歩き始める.3時過ぎ,地池越着.ほぼ予定通りの時間だが,予定では朝6時出発だったので,やはりコースタイムよりも遅いペースだ.先の若者は2時頃に着いたという.ということは,私が5時間で歩いた距離をこの若者は4時間で歩いたことになる.やっぱり若者の足は違うねえ.
夕食を終え,持って来たブランデーを少し飲むとそのまま寝てしまった.相変わらず寝袋の中は暖かく,天国だ.翌朝までぐっすり寝てしまう.