【日 時】 6月2日(土)
【地 図】
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 7835203777
【同行者】 たんぽぽ
【天 候】 曇り
【ルート】 大白川(5:30)~箱谷出合(9:44)~二俣(10:06)~南白山(12:25/13:17)~焼滑(15:13)~湯谷(17:08)~大白川(18:44)
<事件その1>
どうにも車の車輪がシャリシャリする。ブレーキパッドの摩耗と見当はついた。気にはなっても仕事が終わる時刻には、車屋さんは店じまい。山行の前日になって、ようやくディーラーに駆け込みセーフ。案の定「すぐにパッド交換してくださいね」ときた。ところが部品は在庫なし。最悪なことにだ、私の心を見透かしたかのように「長距離運転は駄目ですからね」と死刑宣告。アイタタタ・・・
しかし、ここで引き下がるわけにゃいかない。「困るんです。明日は大事な用事で長距離なんです」捨てる神あれば拾う神。偶然残っていた一台の代車を都合してくれる。営業担当がパッド交換の見積もりを持ってきた。なななんと、15,015円なり。アイタタタ・・・

- 白山御前峰
<事件その2>
密使、大白川に飛ぶの巻。高速道路の入口が近づいて、はたとひらめいた。ETCカードはどこに挿入すんの? 暗い中、車内をくまなく探すが見つからない。そういうわけね。車載器がないってか? ってことは、これから3つ高速を乗り継ぐけど、一切の割引は受けられないってわけね~。トホホ・・・
憮然たる表情で料金所のおっちゃんにカードを差し出すと、何故か律儀に「車載器は積んでませんか?」って聞いてくれたりする。そのたびごと、お金が財布からこぼれ落ちる音がする。アイタタタ・・・
<事件その3>
たんぽぽ氏は当然のように沢靴を履いたりするのだが、ここではたと思い当たった。しもた~っ!アルツ症で忘れたのならまだしも。そもそも沢靴という発想がなかったから呆れる。ゾロ谷だって同時期に歩いてるってのに、馬鹿じゃん。頭大丈夫?
ちゃんと山日和氏やたんぽぽ氏のレポ読んでれば、こんなミスは起こりえない。完全なる予習不足。山行を頭で組み立ててなかったし、そもそも山がわかってなかったのだ。忙しさなど理由にならん。「くっそ~!」私に似合わぬ、お下劣な言葉が頭の中で響き渡った。

- 登路に取った雪渓
<事件その4>
最初の関門は地獄谷の渡渉だ。ここは軽業師の風格でクリア。えへん。
白水湖をへつって湖水端へ。焼滑への登路に取った沢を見送って進むうち、飛び石もテクニカルな技を要求されるようになってくる。両ストックを軸に空中技さえ繰り出していく。しかし、それも限界。靴を脱いでの渡渉二度。そのたびごと、たんぽぽ氏を待たせてしまう。
それにしても、雪解け水が異様に冷たい。裸足で渡渉するため、どこでも渡れるというわけじゃない。河床の痛くなさそうなルートを選ぶから、いきおい亀なみの渡渉となる。おまけに水温の低さに足がじんじんしびれてくる。
生足で渡渉するうち、あろう事か、攣ってしまったわい。ふ~さんファンのために詳しく説明すると、左足の中指と薬指が攣ってしまったのだ。アイタタタ・・・これは大ピーンチ!

- 奥が焼滑
<事件その5>
曲り谷の出合を過ぎると川幅も狭くなる。時折雪渓も現れる。できるだけ雪渓を使って渡渉を避ける作戦に出る。無理して渡るからシュルンドの踏み抜きと背中合わせだ。
それでも、他に手がなく渡渉を迫られることもある。靴を着脱する時間も惜しいため、曲芸を駆使して渡渉しようとした矢先、いきなりつんのめって転倒!両膝の皿を強打した!アイタタタ・・・
おまけにだ。あれよあれよという間に片方のストックが急流にもまれて流されて行くではないか!十年以上も連れ添ったストックともおさらばか。マンマ・ミーアである。
それにしても、お皿が傷む。激しく傷む。だが、たんぽぽ氏を必要以上に心配させてはなるまい。気を取り直して前進。
一旦、靴が浸水すると後は恐いものなしだ。だが、靴の中がタポタポして金魚でも飼えそう。結局、靴を脱いでは靴下を絞る。
タロタキ谷の出合を過ぎ、箱谷出合でひと息つく。お皿がヤバイが、そんなことおくびに出さず進撃する。そしていよいよ別山谷二俣だ。
ここを左に取る。斜度を増す快適でスリリングな雪渓に高度を求める。途中で複雑なクランク状の枝沢を選ぶ。振り返ると白山御前峰がご立派。いよいよ稜線に登りつく。
ここから南白山の山頂を目指すと快哉を叫びたくなるような好展望。曇ってはいても、見えるべき山はすべて見えるから嬉しくもなる。
三角点は何故か雪の消えたヤブにある。挨拶を済ませたら山頂直下の展望地で大休止。三ノ峰、別山から御前峰、さらに北弥陀ヶ原へと連なる山巓のスケール感は圧倒的だ。間名古の頭に奥三方、三方崩までもろ見えである。

- 南白山方向を振り返る
<事件その6>
南白山の東端からは焼滑もよく見える。焼滑を目指そう。雪稜漫遊とは言えないまでも、稜線の南北の雪を拾って歩ける。時に灌木や笹ヤブに突入するが、おおむね快適な歩き。ホシガラスに食われたシラビソの松ぼっくりがユニークだ。2080標高点のある稜線の屈曲点からは白水湖も一望のもと。
そうこうするうち、先行する私めがけて何やらバコバコ駆けてくる灰色の塊!その正体が瞬時には理解できずに心拍数が一気に上がった。そいつは私の5m前でようやく私に気づいて急ブレーキで停止した。
一瞬、時間が凍結した。ここに至ってようやく落ち着いて相手を観察する。驚かすなよ、カモシカじゃん。しかし、この至近だ。こちら同様、あちらさんも突然現れた侵入者にパニクったらしい。次の瞬間、飛び上がって身を翻した。
だが、10m走っていつもの自分を取り戻したらしい。振り返ってこちらを観察している。しかしだ、こちらが一歩踏み出した途端に再び走り去る。やがて稜線の向こうに跳躍して視界から消えた。後追いしてみる。稜線南の3m下の雪稜に飛び降りたらしい。雪を踏み抜きながらも谷底へと一目散に駆け下りたイメージ。
再び静かな稜線歩きになる。たんぽぽ氏は白山の主峰を巡るエリアに釘付けだ。何度も何度もアングルを選びながらカメラのファインダーが恋人。まるで白山を作り上げた神々の設計図を手に入れんとするかのよう。
レオナルド・ダ・ヴィンチは当時にして既に、遠い未来のヘリコプターや潜水艦の構想を設計図に表していたと聞く。たんぽぽ氏の頭の中にも、まだ見ぬ将来の野心的な山行の設計図が引かれているのだろうか。
雪の上には枯れた樹の不思議なオブジェが覗く。それを称して、たんぽぽ氏は『熟女の香り』みたいなタイトルを付けた。見方によってはまるでエゴン・シーレの表現主義を彫刻にしたかのようで、私にとっては単なるグロでも彼には窮極のエロスと映るらしい。さすが、天才は違う。
稜線の南側には大日岳から芦倉、丸山、銚子ヶ峰、野伏、小白の英傑行列だ。我々は固唾を飲んで見守るばかり。
笹ヤブの急降下から一旦鞍部へ降り、再び登り返すと焼滑の地味で渋い山頂だ。ツーショットの後、雪渓のチャンピオンコースを駆け下りて湯谷を目指した。

- 別山
<事件その7>
二人の足回りが違う関係で、たんぽぽ氏が湯谷の河原の左岸側、私が右岸を歩く。我々の距離は直線で50mほど離れていた。
私が振り返ると黒い物体が視野に入った。そいつは、かなりのスピードで移動している。しかも、明らかにたんぽぽ氏に向かって突進していく。何だ、一体あれは!?
よく見ればそいつはクマだった!マズイよ、たんぽぽ氏は全く気づいていない。クマが走る音も沢音にかき消されて聞こえないのだ!
一刻の猶予もない。沢音をついて大声で叫ぶ。「たんぽぽさん!クマ~!!」私の叫び声が彼に届いた。だが、何を勘違いしたか、彼はにこやかな表情で私に手を振ってくる。
クマはますます彼に接近する。もう一度叫ぼうとしたその時、ようやく彼は「クマ」という言葉が何を指し示すかを理解した。同時に、突進してくるクマを肉眼で捉えたようだ。彼は「ウォー」という雄叫びを上げた。そして、走る速度を緩めないクマと対峙して睨みつけた。
すると、クマは勢いに負けたか、方向を修正して走り去っていく・・・やがて左岸側の土手ヤブにがさがさ消えていく。二人の緊張が解け、微笑みが戻る。
肝を冷やしたぜ~。山は何が起こるかわからんな。私としてもだ、普段はうざい相棒でも、目の前でクマの餌になるのは耐えられんわけだ。ま、食われたら喰われたで、彼にダマされる女子が減るので天下太平なのだが。
それにしても、登った山並みを見つめながら入る露天風呂は最高だよ。
ふ~さん