【日 付】 2012年8月30-31日(木・金曜)
【天 候】 30・31日とも晴れ時々曇り
【山 域】 奥秩父/山梨
【メンバー】 単独行
【コース】 30日 瑞牆山荘-富士見平小屋-小川山分岐-天鳥川出合-黒森分岐(弘法岩)-瑞牆山山頂-天鳥川出合-富士見平小屋
31日 富士見平小屋-大日小屋-大日岩-砂払ノ頭-千代ノ吹上-金峰山小屋分岐-金峰山山頂-金峰山小屋-金峰山小屋分岐
-砂払ノ頭-大日岩-大日小屋-富士見平小屋-瑞牆山荘
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瑞牆山(みずがきやま)という難しい漢字を読める人はそういないだろう。百名山になっていることから覚えている人がほとんどであろう。かくいう私もそうである。
瑞牆山の特徴は、何と言っても、山頂部に林立する花崗岩で形成された巨岩・奇岩の峰である。その特異の風貌とそそり立つ岩峰群が登山者の登行意欲を刺激
してくれる。麓の村では、昔、瑞牆山のことを「瘤岩」と呼んでいたそうである。
金峰山(きんぷさん)と正確に漢字を読める人も少ないだろう。しかし、これは山梨県側からの呼び名であり、長野県側からは「きんぽうさん」と呼んでいるそうであ
る。金峰山は、北奥仙丈岳(2601m)よりわずか2m低いが、奥秩父第2の高峰であり、その山容の秀麗高雅な点では秩父山群の王者であると深田久弥は絶賛し
ている。それに山頂にある高さ15mほどの五丈石(岩)が絶妙のシンボルとなっていて、甲府盆地からもよく識別できると言われている。もともと金峰山は、大峰の
金峰山(吉野山から山上ヶ岳までの連峰の総称)が本家で、修験道の総本山である。そのため全国各地に金峰山の名のつく山がいくつかあるが、いずれも大峰の
金峰山の蔵王権現を勧請したことに因むそうである。
8/29に東京出張があるので、奥秩父の百名山2座(瑞牆山・金峰山)に登る計画を立てた。この2座は近接しているので、富士見平小屋を起点にすれば、日帰り
登山(ピストン山行)も可能であるが、そのためには瑞牆山荘を早朝に出発しなければならない。車で行くのであれば可能であろうが、バス利用となると前夜泊とな
らざるを得ない。そこで立てた計画は、前夜は韮崎のビジネスホテルに宿泊し、朝一番のバス(とは言っても韮崎駅8:50発-瑞牆山荘10:05着)を利用し、初日に
金峰山をピストンし、富士見平小屋に泊まり、2日目に瑞牆山に登り、不動滝に下り、周回して瑞牆山荘に戻るというコース設定である。
前夜(8/29)、東京での会議を終えて、東京駅から中央線に乗り、新宿から特急「あずさ」に乗り込み韮崎に向かう。韮崎に到着すると午後7時を過ぎており、辺り
はもう暗い。予約していたビジネスホテルに入り、簡単な夕食を摂った。ビールを飲みながら明日の天気予報を見ると、2、3日前の予報が変わっていて、山梨県西
部の予報は曇り後雨になっているではないか。今日(8/29)までは晴れていたのに、明日(8/30)は雲が広がり午後からは雨となり山沿いでは雷があると言う。翌
日(8/31)も似たような天気だと言う。一気にテンションが低下してしまい、出直そうかとも思ってしまう。
翌朝、目が覚めると、窓の外は太陽が輝いているではないか。今日は曇り後雨の予報であるが、このところ予報は外れることが多いので、今日も予報が外れるの
だと思い込んで山に登ることにした。ただ、午後から雨という予報もあるので、当初の予定を変更し、初日(8/30)に瑞牆山にピストン登山し、2日目(8/31)に金峰山
に登ることにした。韮崎駅前バス停に定刻どおり8:50に山梨峡北交通の瑞牆山荘行きのバスがやってきた。乗車したのは私の他には20代の男性一人だけであった。
バスは、観光地であるミサワワイナリー、明野温泉太陽館、ハイジの村、明野つみとり園などを回り、茅ヶ岳登山口で男性を降ろした。茅ヶ岳と言えば、深田久弥の終
焉の地(彼は1971年3月21日茅ヶ岳直下で脳卒中のため急逝した)ある。長閑な田園風景の中を私一人乗せてバスは走る。やがて人工湖のみずがき湖を過ぎ、塩川
トンネルを越えると、日向、日影の集落を抜けて、増富ラジウム鉱泉峡に入ってきた。ここには数軒の老舗旅館が営業しているが、日帰り温泉「増富の湯」があり、下山
後に入浴を予定している。バスは渓谷美が美しい本谷川に沿って、狭いながらも舗装された道路を曲りながら進み、武田信玄が金山を発掘したという金山平を過ぎると
間もなく終点の瑞牆山荘に到着した(10:05)。
空はまだまだ青空が広がっているではないか。天気予報が大外れだとテンションが一気に上がってくる。早速身支度を整えて出発することにした(10:15)。瑞牆山荘
の向かいの樹林の中に登山口がある。まずは富士見平小屋をめざしてスタートである。歩き始めは足慣らしのような緩やかな傾斜になっている宮里坂を登る。カラマツ
やシラカバの樹林の中を登っていくと、時折大きなミズナラの木に遭遇する。間もなく富士見林道を横切ると、斜度がきつくなってきて、少々息が切れるようになる。やが
て左手に林道分岐を分けると、小屋の水場があり、すぐに富士見平小屋の前に出てきた(10:50)。この小屋の前は樹林の中にテント指定地になっていて気持ちのよい
ところである。富士見平小屋で登山道は二分していて、右に行くと大日小屋、大日岩、砂払ノ頭を経て金峰山に至るコース、左が瑞牆山に至るコースになっている。
まだ晴れているので、今のうちに瑞牆山に登ってこようと思い、休憩もせず、そのまま瑞牆山に向かうことにした。鬱蒼とした針葉樹の樹林帯の中にしっかりと整備され
た登山道が続いている。登山道が緩やかに下っていくが、やがて登り返すことになる。途中で樹間から瑞牆山の岩峰を垣間見ることができるポイントがあった。やがて小
川山(2418m)に向かう道の分岐点を通過するが、登山地図でも破線になっているように、見たところあまり歩かれていないようである。小川山分岐点から急降下すると、
すぐに天鳥川の源頭に出合う(11:10)。きれいな清水のようであるが、飲み水には適さないという。天鳥川を渡ったところには広場とベンチがあり、最初の休憩にはもって
こいの場所である。
天鳥川出合の広場を過ぎると、大きな岩があった。この巨岩は真ん中から真っ二つに割れており、「桃太郎岩」と呼ばれている。まさにその名のとおりの岩である。桃太
郎岩の右手に木の階段があり、これを登ると、ここから本格的な岩の山道の登りとなっている。所々に巨岩があり、これを縫うように登っていくことになる。その割には、ハ
シゴやロープが少なく、手がかり足がかりが多いせいであろう。私はこういう岩のゴロゴロした登りを得意としているので、比較的スムーズに登ることができた。
やがて、天を突くような巨大な岩塔の基部にやってきた。これが「大ヤスリ岩」と呼ばれる岩峰である。下から見上げるとかなり迫力がある。この岩はロッククライミングの
対象となっているそうである。大ヤスリ岩の右を登っていき、しばらく行くと、不動沢から上がってくる黒森コースとの分岐点にやってきた。ここから山頂とは反対方向に行け
ば「弘法岩」に行けたことを後で知った。分岐からは北側に回り込むように進み、固定ロープとハシゴがあるが、大したことはなく、すぐに山頂の岩上に到達した(12:10)。

- 瑞牆山の岩峰-砂払ノ頭から
瑞牆山山頂に到達したとき、まだまだ青空が広がっていた。実にうれしい。すでに正午を過ぎていたので、富士山や南アルプス、八ヶ岳の山並みは雲に隠れて見えなか
ったものの、金峰山はよく見えた。小川山もガスが取れて見ることができた。眼下に目をやると、大ヤスリ岩が天を突き上げているのが印象的であった。ギザギザした鋸岩
も目立った存在であった。山頂は岩の積み重なっており、結構広く、大理石で作られた方位盤もおかれていた。すでに登山者が山頂から降りていたことから私一人が山頂
を独占し、天気もまだまだ持ちそうなので1時間余りゆっくりとランチタイムを楽しむことができた。

- 瑞牆山山頂にて

- 大ヤスリ石-瑞牆山山頂から
帰りは登ってきたルートのそのまま下って、富士見平小屋まで戻った(14:20)。まだ時間が早いが、今日はこの小屋に泊めてもらうことにした。小屋は自然に溶け込むよう
な感じで、周囲にはマルバタケブキ(丸葉竹蕗)の黄色い花が咲き、その蜜を求めてアサギマダラが舞っていた。小屋の前にあるテント場はカラマツ、シラカンバ、ミズナラな
どの樹木の中にあり、新緑と紅葉は見事なものだろうと想像できる。少し下ったところに(徒歩1分)水場があり、この周辺もきれいに整備されていて気持ちがよい。もちろん、
水は冷たくておいしく涸れることはないという。
前夜たくさんビールを飲んだが、早く寝たため、睡眠は十分取ったはずであり、4時起床、5時出発という予定にしていた。ところが、目が覚めてみたら、何とすでに5時をか
なり回っているではないか。しまった!やばい。この時期、気温が高いので朝早い時間から雲が上がってくることから、富士山、南アルプス、八ヶ岳の眺望が見られなくなっ
てしまうという思いが頭をもたげた。朝食を簡単に済ませ、身支度をして、必要なものだけサブザックに詰め込んで、富士見平小屋を出発したのはもう6:10になっていた。コー
スタイムでは、金峰山山頂まで3時間30分となっていたが、できるだけ急いで登ることにした。果たして間に合うだろうかという焦りがあった。
小屋の前から石が敷き詰められたように整備された登山道を緩やかに登っていくと、すぐに広い尾根筋に出てきた。この尾根を登っていくのかと思いきや、違っていた。登山
道は飯森山の南側山腹をトラバースするように進んでいた。途中で鷹見岩(2092m)との分岐を右に見送り、苔むした原生林のような樹林の中を、木の根の張り出した道を進
む。登山道は次第に下っていく単調な道である。やがて小さな岩を乗り越えると、右手下に大日小屋があった(6:35)。少し下り小屋の中を覗いて見ると、素泊まりだけの小屋
で布団がいくつか用意されていた。
大日小屋からは傾斜が急になってきて、縦八丁と呼ばれる急坂で、シャクナゲの群生する中を岩場も踏み越えてひたすら登り続けていくと、やがて大日岩(2201m)の基部
に出てきた。見上げるとかなり大きな岩が重なり合っている。少し登ると、分岐点の標識があり、ここから北に辿ると八丁平を経て小川山に行く道となっている(7:10)。大日岩
の直下に立ち寄ってみると、比較的簡単に登れそうであったが、今日は時間がないので先を急ぐことにした。ここからは甲信県境尾根を辿ることになる。再び樹林帯の中に入っ
ていくことになる。傾斜は比較的緩やかではあるが、眺望がないだけに単調である。
樹林の中の単調な登りに飽き飽きしてきたとき、前方から登山者が二人下ってきた。彼らの話では今朝は眺望が抜群であったとのこと。1時間の寝坊のため間に合うかどうか
焦りが出てきた。そして急に傾斜がきつくなったかと思うと、突然目の前がぱっと明るくなって視界が開けた。森林限界を越えた砂払ノ頭(2317m)である(7:50)。遠望に目を凝
らすと、何とか富士山の頭が見えた。南アルプスも、北岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒の頭が何とか見える。さらに八ヶ岳の赤岳もかろうじて姿を見せている。寝坊したものの、何とか見
えたのでほっとしたが、寝坊しなかったならばもっと素晴らしい眺望が得られたのだと思うと口惜しい。そしてよく見ると、眼下に瑞牆山があった。ここからだと瑞牆山は小さな岩
山に過ぎないから不思議だ。
砂払ノ頭からは岩稜帯の尾根歩きになる。ヤセ尾根と岩場の連続になっているが、山梨側がガレて切れ落ちているが、長野側はハイマツに覆われたなだらかな傾斜になって
いる。眼前には千代の吹上と呼ばれる断崖絶壁が聳え立っているが、それに向かって稜線に登山道が続いている。2、3のピークを越えたり、左を巻いたりしながら、登っていく
と、次第に五丈石が近くなってくる。やがて左に金峰山小屋に下る巻き道を分けて、さらに岩場を急登していくと、五丈石がさらに巨大に迫ってくる。北側を回り込むように登って
行くと、五丈石の前の広場に出てきた。この広場から見ると、石の積み木を重ねたように見える。これも自然の摂理のいたずらとも言えよう。この頃からガスがかかり始めてきた
ので、そうのんびりもしていられない。五丈石のてっぺんにも登ってみたかったが、もう少し先にある金峰山の頂上の三角点に急いだ。山頂の標識と三等三角点(2595m)があっ
たが、本当の頂部は三角点の後ろに積み上げられた岩の堆積の上である(2599m)。ここに駆け上がって頂上ゲットである(8:40)。

- 金峰山山頂の五丈石

- 三角点より4m高い金峰山山頂
しばらく金峰山の山頂でくつろいだが、次第にガスもかかってきたため、下山することにした。山頂直下に金峰山小屋があるので、ここに立ち寄ってみることにしした。15分ほど
下ると、大きな岩峰の横に小さな小屋がぽつんとあり、黒い大きな犬が寝そべっていた。小屋からは再び甲信県境尾根に戻るべく、山腹をトラバースする道を進み、先ほどの分
岐点に出た。少しガスは取れてきたものの、やはり今日はこれ以上晴れてこないだろうと思い、来た道を富士見平小屋まで戻った(11:10)。
帰りのバスは、瑞牆山荘12:55発なので、まだ十分時間がある。山小屋で缶ビールを飲み干して疲れを癒した。管理人さんの話では、下りの林道を回ると、瑞牆山がよく見え
るポイントがあるというので、それに従って林道分岐から林道に入った。しばらくいくと、林道の路肩が少し崩壊しているところがあり、そこから瑞牆山がよく見えた。さらに林道を
進むと、昨日横切った場所に戻ってきたため、ここからは再び登山道に入り、瑞牆山荘に到着した(12:20)。瑞牆山荘のカフェテラスでビールと枝豆を注文し、2日間の山行を振
り返りながら無事下山したことを喜んだ。12:55発のバスに乗り、途中下車して「増富の湯」に立ち寄り汗を流し、14:47発のバスに乗って韮崎駅に向かった。