【 日 付 】2012年8月21日(火)~23日(木)
【 山 域 】南アルプス/小渋川~荒川岳
【メンバー】ひとり
【 天 候 】晴れ(3日間とも)
【 ルート 】湯折~広河原~ちょっと福川~広河原~大聖寺平~荒川小屋~中岳(ピストン)
夏が終わってしまわんうちに行っておきたい山がある。忘れもしない、昨年のタンポポレポ。大鹿村騒動記ではないが、小渋川から福川を徘徊してカメラやら何ヤラを紛失、ほうほうの態でなんとか赤石岳を越え、命からがらドンブリコと逃げ帰って来たという武勇伝である。
役場に電話で聞けば、ここんところ大雨は降ってないので川は落ち着いてるらしい。どこまで行けるか分からないがツアコンポポンタさんの後を追ってみるのも意味のないことではないだろう。
山レコの投稿レポを読み返すが、福川周りの記録はレアものだ。ポポンタちゃんですらアクシデント続きとはいえ広河原から稜線間近のビバーク地点まで8時間以上も掛かっている。駐車地の湯折から11時間以上の超ロングルートをテント泊装備担いで行けるはずがない…のが常識。なのに、いつの間にかプランニングしてしまっている自分が怖い。(@_@;)
第1日目(8月21日) 湯折5:50‐七釜滝6:30‐榛沢出合6:55-高山ノ滝7:55‐キタ沢出合8:45‐9:40広河原小屋‐(この間いろいろ)‐15:10co2230m(野営)←大聖寺平まで2.5km~3kmの中間あたり
大鹿村の小渋ダムを経て闇の中、分かりにくい道をクネクネと走り、なんとか湯折のゲートへ到着した。明るくなるまで寝るか…とウトウトしたと思った、もうら空が明るくなってきた。広河原までは沢靴で行く。ボロ山靴はザックの中へ。やっぱり重いなあ…。水は川にたっぷりあるので500mlのペットボトルだけ。カラの2Lポリタンは取り敢えずは浮き袋替わりだ。
ゲートから左の林道を登って行く。真っ暗のトンネルをくぐり、下りになって川に降りて行くと前方に橋が見える。七釜橋だ。渡った先にまたトンネル。確か山レコのレポではこのトンネルを抜けたところから左岸の河原に下りることになっていたなあ…と思ったが、「←登山道」の看板がある。左岸はしっかり護岸工事され、上流に向け立派なジャリ道が延びている。どうやらトンネルは通行止みたい。

- 七釜橋からの小渋川は穏やかだが…
- P8210019.jpg (54.7 KiB) 閲覧された回数 8125 回
小渋川の水量は、そんなに多くはないようには見える。が、通常時の水位を知らないので比べようがない。とにかく、ここまで来たら進むしかないのだ。幸い空は快晴。おまけに西側のため暑い陽射しは届かないので歩いていても汗もかかない。
整備された護岸は榛沢出合近くまで続く。切れたところで河原に降りて、いきなり1回目の渡渉。なんでも13回とか21回とか、渡渉回数が言われているのだが、どれがホンマかなんて問うのはナンセンス。水量やコース取りなどで変わってくるのだから。
左手に滝が見えた。高山ノ滝だ! まだ8時前。まずまずのペースだゾ。ちょっと休憩。滝の写真も撮っておく。
榛沢出合の先から高山ノ滝を過ぎてキタ山沢あたりは、比較的川幅が狭く渡渉に要注意。川幅が広いところは水流が分散しているのでコース取りに思案が要る。赤い矢印や○印が岩や岩壁に書いてあるのだが、アテになるようで、ならないようで…。左岸の岩にに矢印があるかと思ったら、同じ場所の右岸壁に○印が打ってある。
迷路かなんかのパズルを解きながら進んで行くみたいで、結構面白い。いいぞいいぞ…と思っていたら、深い急流に阻まれて進めず、少し下って進路を微調整する。

- 赤ペンキの矢印もあちこちに
- P8210027.jpg (64.66 KiB) 閲覧された回数 8125 回
石ころの河原を進むと、ようやく陽射しが届く。前方にとうせんぼするような稜線が。あそこが広河原の分岐かな? 大きな二股。思ったより早よ到着できたな。(^^)/ とはぬか喜びでした。ここはキタ沢出合。地形図には太い水線が書いてあるが、石ころばかりの伏流だ。
広河原はもうちょっと先。いったん緩んだ気力を再稼働させるのは原発ならずとも大変だ。トボトボと河原の石を乗り越えて進む。
倒木を跨いで左岸の日陰を行くと…、またもや二股だ。今度こそ本物やろ! 段丘の上の木に白いプレート。何やら書いてあるぞ。近づくと「広河原小屋 赤石・荒川岳方面➔」とある。そうか、このまま本流を左へ進めば荒川崩壊地へ突入だもんなあ…。段丘へ上がり表示に従って樹林の中のヤブっぽい道を進むと広河原小屋が目に入る。

- 広河原小屋
- P8210060.jpg (75.94 KiB) 閲覧された回数 8125 回
ここからは右手の本岳沢から福川に入り稜線の百間平をめざすことになる。小屋に入り沢装束を解いて登山靴に履き替える。もう渡渉もないだろうし…。(という、なんの根拠もない安易な判断がこのプランの破たんを呼ぶのだが…)
30分ほどの大休止。気合を入れ直して「水場」の表示に従って河原に降りる。ありゃりゃ、これ、どうやって渡ろう…。いきなり本岳沢の渡渉だ。ウロウロ…探して、なんとか跳び渡れそうな場所を見つける。対岸の岩にしがみつくようにしてクリア。ここで、頭が正常に回転しだすと不安がよぎる。「これからもやっぱり、渡渉あるわなあ…」(@_@;)
すぐに二股で右の福川へ。左岸を登り始めるが、狭い谷幅に勢いよい流れ。倒木だらけで大変そうだ。不安は恐怖に変わり、少し進んだところで足が竦む。ダメダメ! 無理は禁物。こりゃ断念だんねん。道は他にもあるよー。
広河原小屋近くの例の渡渉地点まで引き返す。さっきの決死の渡渉はなんだったんや(>_<) まだ靴を濡らすわけにはいかんのに、こちら側からの渡渉地点が見つからない。ええい、ままよ!と川の真ん中の岩に跳び移ったのはいいが、この後どうするの? 岩にしがみつきながらしばし考える。こんなスタイル、まるで岩の上のカメかカエルだ。
背中の荷物だけでも対岸にほおり投げようかとも思ったが、届きそうもない。こうなったら開き直るしかないがな。そのまんま、流れに足を突っ込み、ストックを突っ張ってザブンザブンと渡りきる。さすがに靴の中にジュワーと浸水してくるのが分かる。まあ、濡れるくらい流されるよりマシやろ。
もう11時をとっくに回っている。結局、1時間のロスだ。福川は諦めるとしても、このまま帰る手はない。地図には真ん中の尾根に荒川岳への登山路が引いてある。コースタイムを見ると大聖寺平まで4時間余、荒川小屋まででも5時間くらいだ。これなら十分に間に合いそうだ。
で、小屋の前の表示に従って登山路へ入る。シラビソかコメツガのような針葉樹の樹林帯の中の苔むした石のゴロゴロ道を少し行くと、金属板に大聖寺平まで「6km」の表示。ここからいきなり急斜面直登と倒木だらけのトラバースの繰り返しが始まる。午前中の渡渉に体力の大半を使い果たしたのか、息は上がるが足が上がらない。「水場」(川)でポリタンとペットボトルを満タンにしたのを後悔したくなるが、捨てるわけにもいかないし…。(>_<)
0.5kmごとの金属板表示に励まされながら、とにかく前に進む。地図にも「2000mより下部は急坂の連続」と記述があるがその通り。「標高2000m」の表示を過ぎると、やや傾斜がやわらぎ、登山路らしくなる。
「3km」表示に15時前。野営は大聖寺平で…と思っていたが、もう稜線まで到達するのは無理だろう。テントを張れる場所を探しながら進むが急斜面ばかり。やっと九十九折れのコーナーに、踊り場みたいな広場を発見。平らで十分なスペースだ。ここで決まり!
まだ15時過ぎだというのに樹林帯のせいか薄暗い。水だけ飲んでテントの中で一眠り。気がつくと18時を過ぎている。外に出ると、樹間から夕陽が覗く。間もなく沈むところだ。夕陽を眺めながら夕食にする。
まずは持ち上げたアワワ(350ml)で水分補給?しながら湯を沸かす。α米にお湯を入れ、余った湯でレトルトカレーを温める。しじみパワーの味噌汁も作る。食欲はあまりないが食べんと明日が歩けない。白飯の半分を小鍋に移しカレーを掛ける。エイっ!と無理やり飲み込んだら、なんとか食べられた。
夕陽が沈むのを待ってシュラフに潜り込む。
第2日目(8月22日) 野営地6:45‐船窪(大聖寺平まで1.5km)7:30‐大聖寺平9:10-9:50荒川小屋10:30‐12:15中岳~避難小屋13:30‐前岳13:50‐14:50荒川小屋(テント泊)
樹林帯のせいか、それほど冷え込みもなく、結露でビショ濡れにもなっていない。今回の核心部は1日目で終わっている。あとはプラン崩壊後の余談みたいなもんなので簡潔に済まそう。
6時には…と思っていたが、やはり出発は7時前になってしまった。今日は荒川小屋のテント場泊まり。できれば空身で悪沢岳まで往復出来たらいいな…。
40分ほどで船窪(二重山稜になっている)。ウェストンがランチを食べたところらしいが、あいにくまだ早すぎる。やがて樹間から朝陽が差し込んでくる。左手に荒川崩壊地が覗く。樹木の背が低くなって、ハイマツとナナカマド中心になると森林限界。いきなりガレ場に出て、これ登るの?と思ったら左のハイマツ帯に道が切ってある。10分ほどで再びガレに出て「500m」金属板。ここを登りきると赤石~荒川岳の稜線に出る。大聖寺平だ。出発から約2時間。

- 大聖寺平から荒川岳(前岳~悪沢岳)
- P8220129.jpg (59.81 KiB) 閲覧された回数 8125 回
目の前の小赤石岳の肩が大きい。北側には荒川岳の山容がデーン! 小屋はここから30分ほど下って行く。稜線東側のトラバース道は花がいっぱいだ。ここまで来ると次々に登山者と出会う。この時刻の通過者は、千枚小屋泊まりで百間洞山の家か聖平小屋まで行く人がほとんどのようだ。聞けば平日なのに千枚小屋はいっぱいだったという。
荒川小屋で受付を済ませてからテント場に移動。水場が近い広いテント場からはMt.fujiが一望だ。小屋前で登山者と話し込んでいたせいで遅くなってしまった。今からだと悪沢岳までピストンは微妙だなあ…。
張ったテントにザックをデポして、水だけ持って中岳へ向かう。上から次々に登山者が降りてくる。大半が中高年。10人くらいのツアー客ともすれ違う。もうここは静かな南アルプスとは言えないよなあ…(@_@;)
お花畑には金網が張られ、登山路に扉が設けてある。開けたり閉めたりしながら通過。前岳とのコルに12時過ぎ。右へ5分で中岳山頂。朝方はスッキリ晴れていたのに、もう眺望は効かない。かろうじて富士山、八ヶ岳は見えるが南ア北部の山はガスの中だ。まだ昼過ぎで時間はあるが、これでは悪沢岳まで行っても無駄やな…。
中岳避難小屋は目の前。せっかくだから、ちょっと小屋くらいは寄ってみましょう。
相変わらず悪沢岳は見えたり隠れたり。行こうか行くまいかと揺れる自分の心みたいだ。(@_@;)
小屋前で常連客の男性と山談義。話好きでしゃべっていたら終わらない。気がつけば13時半。そろそろ下らないと。
帰りに前岳に寄ってみる。コルから5分足らずで山頂。西側は見事に崩れ落ちている。崩壊した谷はそのまま荒川となって、広河原で本岳沢と合流して小渋川となる。西北に続く稜線は三伏峠への縦走路だ。
テント場を見下ろすと、新しいテントが2、3張。どうやら学生グループのようだ。懸念は的中。張られた大型テント内ではトランプ遊びかなんかの大騒ぎの真っ最中。まだ15時前だからいいけれど…。(夜になったらd静かになるとは限らんしなあ…)
思い切って転居することにする。サイトはいくらでも空いている。小屋の近くの樹林帯のスペースに張り直しだ。なんやらかやで、ここでも1時間のロスだが、他にすることもないのだから構わない。
夕食前に小屋へ冷えたアワワを買いに行く。S社プレミアムのロング缶800円也!の大奮発だ。日頃は第3類のビール紛いしか飲めない身分だから、こんなときくらいは贅沢もいいやろ。(^.^)/~~~
小屋の前からMt.fujiの夕景を眺める。昼間はガスに隠れていた姿を夕刻になって現わしたのだが、なかなか赤富士にはなってくれない。日没間際まで粘ったが断念。
テントに戻っての夕食。今日はα米のドライカレー。サンマの味噌煮もあるのだが、やはり胃が委縮しているのか、手が伸びない。
昨夜とはエライ違いの賑やかなテント場で、焼酎のお湯割りをグビグビやりながら2日目の夜は更けていったのでした。
第3日目
23日(木) 荒川小屋テント場6:50‐大聖寺平7:45‐10:55広河原小屋12:05‐高山ノ滝13:45‐七釜橋14:55-15:35湯折

- 夜明け前のMt.FUJI
- P8230229.jpg (8.96 KiB) 閲覧された回数 8125 回
いやあ、さすがに寒かった。ここは標高2500m。前夜の野営地は2100m付近で、しかも樹林帯だったから冷え込みもなかったんだろう。
夜明け前のMt.fujiのシルエットが鮮やかだ。富士の少し左から朝陽が昇るようだ。カメラをセットして待つが、もう少し時間がかかるみたい。諦めてテントに戻る。
荷物を外に出し、テントを日向に移して結露を乾かす。その間に朝食とコーヒータイム。乾ききらない部分はタオルで拭いてテント収納。やはり今日も出発は7時前になった。
朝の荒川岳や雲海を従えた富士などを振り返りながら、小赤石岳の肩に向かって続くトラバース道を緩やかに登ると大聖寺平。ここから右へ広河原への下山路に入る。
ここの分岐は踏み跡がはっきりしていないのでガスなど出たら間違えそうだ。そう言えば今月初め、遭難者が出た。荒川崩壊地側の滝の下で見つかったそうだ。道迷いによる滑落か、他の理由なのかは分からない。事故せいか、新しいピンクのテープなどの目印が目立つ。樹木には赤い小さな木札も所々掛けられていた。
今回はピストンなので、往路を思い出しながら登山路を間違えないよう下る。大聖寺平からガレ場を超えて船窪の手前までくれば、もう間違うことはない。登山路ははっきりしている。右手に時々現れる中央アルプスの山並みを眺めながら下る。
標高2000mからの急斜面は下りでも辛い。壊れかけたハシゴや最後の倒木帯を乗り越え、苔の樹林帯を抜けて広河原小屋に11時前。やれやれ、一休みしましょう。最後のキュウリを齧り、カップ麺でランチ。
いつの間にか12時だ。もう1時間以上の休憩だ。デポしておいた沢靴に履き替え、登山靴はザックに収納。水はもう500mlペットボトルだけでいい。しかし、軽くなったのか重くなったのか…?
いつか来た道(河原)、様子はよくわかる…つもりが、なかなかそうでもない。広い河原、しかも逆向き…。どこ通ってきたかなあ…? と言っても正解の道があるわけではないので前方の様子を見極めながらルート取りして行く。
キタ沢出合の下流あたりで下から登ってくる若者に出遭う。声をかけると広河原小屋に忘れものを取りに行くらしい。地元・飯田の人で足元はスニーカー。湯折~広河原は2時間だという。まあ、なんとも若いって羨ましい。「帰りには赤石荘で温泉ですか?」というので、下ったら一緒に行こうと約束。湯折に着くまでに追い抜かれるかもしれないけれど。
高山ノ滝で一服。日陰の左岸に移動して、対岸の滝を見ていて気が付いた。見えている滝の上に、もう一本滝が掛かっている。上の滝は樹木に隠れているが実は2段の滝だったのだ。往路の時は気がつかなかったが…。
七釜橋からの林道登りが結構こたえる。もう余力はないのにこの20分ほどの最後の苦行。暗いトンネルを抜けて下って行くと、やっとこさで車が見えてきた。
靴を履き換え身支度を終えても飯田の若者はやってこない。車の隣りに停めてあるバイクが彼のものだろう。「赤石温泉へ行ってます」とメモを残し、先に出発。赤石荘の駐車場に車を停め着替えを手にいざ風呂へ~! と思ったら、入り口に「準備中」の看板。ん? まだ4時だよ? よく見ると「木曜日定休」だって。あちゃー(@_@;)
しかし…、奥を覗くと調理場にはスタッフの姿があり、お客さん(泊り)らしい姿も。営業はしてるんや。なら、風呂だけでも入れてくれてもいいのになあ…。と愚痴りながら車に戻ったのだった。
結局その後も、飯田の彼のバイクはやってこなかった。
ついでながら、その後も立寄り温泉は発見できず、いつの間にか松川ICに着いてしまい、アワワさえ購入できずじまい。仕方なく、またも阿智のPAでカラ揚げとゼロフリー缶で一休み。自宅まで風呂もアワワもガマンの帰路でありました。(完)
~biwaco