
- 地獄谷入り口
奈良県曽爾村から三重県名張市に流れ下る青蓮寺川の中流域は両岸に柱状節理が発達し,巨岩,奇岩が数多くあって香落渓(かおちだに)と呼ばれる峡谷を形成している。峡谷上の頂上台地から流れ落ちる谷には,多くの場合上部に大きな滝があり,一気に青蓮寺川に落ち込んでいる。
何度も書いてきたように,このような地形は今から1500万年前に起こった大規模なカルデラ噴火によって形成されたものである。2022年に,室生山地に存在する大滝を探索してきたが,一つ探索し忘れた滝「夫婦滝」があり,ずっと気になっていた。今回はその宿題を終わらせるために夫婦滝の探索に出かけることにした。
【 日 付 】2025年5月8日(木)
【メンバー】単独
【 天 候 】晴れ
【 ルート】紅葉谷駐車場 7:43 --- 9:07 夫婦滝 9:40 --- 9:54 曽爾古道出会い --- 10:32 落合バス停 --- 11:00 紅葉谷駐車場
香落渓にある紅葉谷の駐車場に車を停め,沢装束に着替える。今回は久しぶりにハーネス,30mロープ,スリング,懸垂器具など一通りの沢装備持参だ。なにせ初見の谷なので何が出てくるかわからない。青蓮寺川に一気に流れ落ちる夫婦川には地獄谷という恐ろしげな名前が付いており,地形図をみてもいかにも恐ろしげなゴルジュの谷なのだ。
紅葉谷駐車場から2,30m歩くと谷の入り口に夫婦滝という大きな看板が立っている。ここが夫婦川(地獄谷)の入り口だ。しかし,ここからどう眺めてもそれらしい滝は見えない。実際の夫婦滝はここから約1キロほど遡った柱状節理の上端にある滝のようなのだ。
谷には初手からそれなりの角度が付いている。わずか1キロほどの間に約250mの標高差がある,全体が一つの滝のような谷なのだ。谷を塞ぐように古いロープが張られている。進入禁止のロープなのか,ルートの誘導用なのかよくわからない。さらにすぐその上に真新しい支柱にロープがつけられている。ルートの案内なのだろうか?まだ新しいところを見ると,夫婦滝を一つの観光名所にするつもりなのだろうか。それにしては,この谷に観光客が入れるとは思えないが。

- 緑の苔の間を水が流れる

- 感じのいい斜滝
ゴーロの谷で,あまり日が当たらないせいかほとんどの岩が緑の苔に覆われて綺麗である。緑の岩間を流れ落ちる白い水流。なかなか絵になる谷である。谷中は意外に広く,想像していたような険悪なゴルジュとは異なる。小さな滝が次々と出てきて,なかなかいい感じである。シャワーでこれらの滝を登るにはまだ抵抗がある時期なので,なるべく濡れないようにして登っていくが,暑い時期だと水と戯れながらの滝登りも楽しいかもしれない。登っているうちに,三峰山のわさび谷を登っているような感覚になってきた。そういえばわさび谷もゴルジュの谷だった。
上部になるにつれてゴーロがだんだんなくなり,末広の滝やら綺麗な斜滝など素敵な滝がいくつも出てくる。そのうち斜滝の向こうの岩壁に幅広のカーテン状に水が落ちる大きな滝が現れた。夫婦滝のようだ。この岩壁で川が二股に分かれ,それぞれから水が落ちているようだ。この形状から夫婦滝と名付けられたのだろう。水量が少ないと貧弱な滝だろうが,幸いに前々日に降った雨で水量が多く,それなりに見られる。

- 夫婦滝

- 斜滝の向こうに夫婦滝
しばらく滝を愛でたのち,右岸の植林から巻き登る。簡単に巻けるかと思ったが,土が湿っていて滑りやすく,思ったよりも苦労した。滝上は平坦な台地状になっており,下のゴルジュとは大きく異なっている。左股をたどる。川床はナメ状でいい感じなのだが,いかんせん間伐材が行く手を遮っていて雰囲気を壊している。自然林であれば気持ちのいい場所なのだろうに。
しばらくで曽爾古道に出,茶屋滝のあるナメの谷の源流部を横切って落合に出る。あとは車道を歩いて駐車地に戻るだけだ。