
- 手前:清水の頭 奥:綿向山
雨乞岳と綿向山を結ぶ稜線の南側一帯は,白倉谷林道の入り口に厳重な車止めゲートが設置されていることもあって登山者の空白地帯になっている。とはいえ,こういうところを好んで歩く人もいて(ヤブメンがそのうちの何割かを占めているが),時折山ブログで登山記録を見かける。
以前,自転車で白倉谷・清水が平谷分岐まで行き,そこを起点に雨乞岳南尾根から清水の頭南尾根を周回したことがある。記録を調べてみると,5年前(2017年)のちょうど同じ3月4日だった。冬期は東雨乞岳から清水の頭は一面の雪原となり,実際の標高以上のアルペンチックな情景を味わうことができる私好みの場所だ。久しぶりにこの山域を味わいたくて出かけることにした。
【 日 付 】2022年3月4日(金)
【メンバー】単独
【 天 候 】快晴
【 ルート】深山橋 7:15 --- 7:23 尾根取り付き --- 8:35 P743 --- 8:56 P825 --- 10:18 P966 --- 11:32 南雨乞岳 --- 11:46 雨乞岳 --- 12:00 南雨乞岳 12:46 --- 13:16 清水の頭 --- 14:55 白倉谷・清水が平谷分岐 --- 白倉谷林道 --- 15:54 深山橋
鈴鹿スカイラインの半開きの冬期ゲートを越えると,路面の雪が所々硬いアイスバーンになっている。二日前にやってきた新しい相棒はそのアイスバーンも安定して越えていく。雪上を走るのは初めてだが,これならなんとかなりそうだ。
深山橋を越えたところの白倉谷林道の分岐に車を止め,スノーシューを背負って歩き出す。スカイラインを武平峠方向に少し歩き,適当なところで左に入る。がけ崩れ防止のコンクリートの法面上は,転ぶとそのまま下まで落ちていきそうな急斜面だ。それでも植林なので歩くことはできる。雪が付いているととても登ることはできなかっただろう。
標高600mを越えるとようやく斜面は緩やかになり,雪が現れる。そこからすぐに地形図上のP635。このあとP743までは痩せ尾根となる。なかなか楽しませてくれるルートではあるが,もう一度歩こうとは思わない。P743の手前で雪が繋がったのでスノーシューを履くことにする。P743以降は5年前に歩いたことがある。
P743には紫頭巾の紫色のひもがあった。この先,このルート上にはずっとこの紫頭巾がある。まあ,いかにも紫頭巾が好みそうなルートではある。このあたりから左側の樹間に綿向山の白い頂が見える。P825から約50mほど標高を下げ,P966まで約200mを登り返す。登山道はあるし,テープもあるが,雪をかぶった馬酔木が所々道を塞いでいるので,鬱陶しくないこともない。
P966まで登ると一挙に展望が開け,前方に雨乞岳が雄大に,そして右側に鎌が岳の鋭い岩峰が見えている。その昔,びわ爺がここで昼飯を食べて撤退したところだ。たしかにここで休憩すると気持ちがいいだろう。

- 南尾根上部から見る南雨乞岳と雨乞岳
20mほど降りて,南雨乞岳に向けて最後の登りに取り掛かる。あれほどうるさかった潅木は影を潜め,周りはブナの疎林にかわっている。この辺りのブナは大木はないが,それでもブナはブナで雰囲気がいい。山日和さんがブナ林を好む理由もわかるような気がする。
早春の陽が降り注ぐブナの疎林と一面の雪景色の中を歩くのは気持ちがいい。この辺りまで来ると雪が締まって歩きやすくなるかと期待していたのだが,それよりも気温の上昇の方が上回っているようだ。雪が腐ってきてスノーシューの沈み込みが深くなってきている。それとともにスノーシューをあげるときに雪が乗って足が重くなる。

- 気持ちの良いブナ林
標高1100mを越えるとブナ林も終わり,周りは一面の雪原になる。目の前には南雨乞岳が指呼の間にあり,その右には雨乞岳がのっぺりとした姿を見せている。さらにその右には鎌が岳。上空は雲ひとつない青空。ここまで来るとあとはビクトリーロードだ。雪も締まってきて足が軽くなる。「チョー気持ちええ」と奇声をあげながら登っていく。

- 南雨乞岳と南尾根
南雨乞山頂。昨日のものと思われるトレースはあるが,見渡す限り人影はない。さあ,雨乞岳はすぐそこだ。雨乞岳に着くと,その向こうに釈迦ケ岳,竜ヶ岳,藤原岳,御池岳など鈴鹿北部の山々が一望だ。

- 清水の頭南尾根
霧氷にもなんとか間に合ったようだ。

- 霧氷
トレースは杉峠の方に続いている。おそらく,甲津畑の林道が通れるようになっているのだろう。頂上で写真を撮ったら南雨乞に戻ることにする。雪庇に割れ目が走り,クレバスができている。もうすぐでこれらの雪も嘘のようになくなるのだろう。

- 南雨乞岳から見る雨乞岳
西風を避けるため,クレバスの中に入り込んで昼食にする。クレバスの中は嘘のように風がなくなり,ぽかぽかする。こんな日はのんびりするに限る・・・と思っていたら,30分ほどして気がつくと上空に薄雲がかかり,冷たい西風が吹き始めている。そういえば,午後から天気は下り坂になるんだった。
「清水の頭まで降りて,暖かいところでティーブレークにしよう」と,出発することにする。綿向山を正面に見ながら清水の頭へ降りていく。ここも素敵なところだ。木が生えていないので冬期には一面ののっぺりした雪原になる。西に綿向山,東に今降りてきた雨乞岳が綺麗に見えている。

- イブネと鈴鹿北部の山々
南には南尾根が緩やかに下り,白い雪の帯になっている。誘い込まれるように南尾根に下りていく。標高1000mあたりまで下ると風もやんだので一休みすることにする。こんな春の1日を焦って降りる理由はどこにもない。
白い雪の帯が尽きると,あとは植林の中だ。標高850m付近で雪が途切れたのでスノーシューを外すことにする。これが失敗だった。しばらく行くとまた雪が現れ,腐った雪の踏み抜き地獄になる。スノーシューの有り難みを再認識する。一旦外したスノーシューをまた履きなおす気にもならず,そのまま歩いていく。下半身がずぼっとはまり込んで抜けるのに苦労したりする。
標高600mあたりで左の小尾根を降りる。主尾根の末端まで行くと岩嵓があって降りられないのだ。無事に林道に着地。あとは林道をテクテク歩いて帰るだけだ。
林道を歩きながら,朝苦労した南尾根へのベストの取り付き点を探す。見つかった!作業道が尾根に向かって伸びている。地形図を確認しても,ここしかないという地点だ。距離は少し長くなるが,体力的にはずっと楽になるだろう。雪が溶けたら一度歩いてみることにしよう。
右に野洲川ダムを見ながら歩く。白倉谷・清水が平谷分岐地点から深山橋の駐車地までちょうど1時間だった。最近2回はいずれも途中撤退の山行が続いていたが,条件さえ整えばちゃんと歩けることが分かった。今シーズン初めてのピーカンの雪山を満喫した1日だった。鈴鹿はもう春山シーズンである。