【京都北山】
「雪の雲取山ワンゲル小屋巡り」花背峠~寺山尾根~雲取山~二ノ谷~花背峠
【山域】京都北山・雲取山周辺
【山行日】2022年2月5日(土)
【天候】曇り時々晴れ時々吹雪
【メンバー】平、青鳩
【ルート】
花背峠7:40、天狗杉、旧花背峠、寺山、寺山峠10:30、凌雪荘、ハタカリ峠、りょうぶの小屋、雲取峠11:45、雲取山北峰、雲取山、二ノ谷、立命館大ワンゲル小屋13:05、一ノ谷出合、寺山峠と寺山の間の稜線に出てランチ14;30~15:00、寺山、旧花背峠、天狗杉、花背峠17:00
お正月に中河内に行って以来、イマイチ満ち足りた山行がなかった。
いちばん乗りはしたけどピークは前日の足跡だらけ(蛇谷ケ峰)とか、
ラッセルが大変過ぎて途中敗退(甲津畑よりイブネ敗退杉峠直下まで)とか、
湖北に行く気満々だったのに大幅寝坊して雪なし半日だけ(堂山アドベンチャー)とか、
早く帰らなければならない日で途中で下山したら当てにしていたバスがなくなっていた(寺山尾根)とか。
なので今週は、満ち足りたい。
しかし、大荒れ模様。
さて、どうするか、もう一回寺山尾根だ!ここしかない。
ここならそんなに吹雪かない、と思う。
寺山尾根を歩いて、ワンゲル小屋を巡って、雲取山から二ノ谷を下ろう!
京都市内は一日晴れ予報。山の上は違うだろうが、湖北やマキノほど荒れることはないだろう。
そしてきっと夜半からの程よい積雪があるだろう、と思う。
今日はドアツードア。すぐにスノーシュー履いてスタート。
斜面から木の枝につかまりもって、国道に分断された尾根の末端に上がると、読みは当たった。
夜半に積もったばかりのフカフカの新雪と雑木の森が待っていた。
さっきまで車の中で行くか行くまいかグズグズしていたのが嘘のようだ。
こんな雪だったらきっと雲取山まで行ってここまで帰って来れる。
少し進むと夏道からのおそらく一週間前と思われる一筋のトレースがあった。
倒木地帯は、このトレースのお陰で楽に通過することができた。
天狗杉近くの開けた丘からは京都の市街がもやもやしながらも明るかった。
旧の花背峠付近は、植林に被い尽くされているが、祠は眺めているだけでも妙にじんわりしてきて、
手を合わせて、寺山への尾根に乗った。(この尾根はたぶん左京区と右京区の境界線)
ん、さっきよりもさらに消えかかったトレースがある。これって、もしかして二週間前の私たちのトレース?まさか?
でもおんなじようにここを乗り越えて、こんな風に歩いて行った。
こんなところに来るのは私たちだけかと何か可笑しくも嬉しくなってきた。
空は、おおむねネズミ色。時おり雲が流れて青空が顔を出したと思ったら、
粒子の小さな粉雪が舞う。寒いと思って、たくさん着込んだけれど、風はそんなに気にはならない。
林道が尾根のすぐ横につけられていて、時々尾根と交差する。「どっち行く?」「尾根に決まってるよ!」
広くて高低差の少ない尾根は、雑木の自然林で、時々ブナの木もいる。
尾根の西側はぜんぜん知らない世界だけど、東側は、時おり枝越しに見え隠れする別所の集落がなかなかすてきな雰囲気だ。
そして、雪は積もったばかりのクリームのような粉雪。
こんなに上等な雪に出会えるなんて、なんてラッキーなんだろう。
西側から上がってくる谷の源流にうっとりしたり、
尾根の広がりに現れたプチ雪原を前に佇んだり、
小さな丘をかけ降りたり、
最後植林の丘だけは、ちゃっかり林道歩いて寺山峠にたどり着いた。
ここからは誰かのトレースがあると思っていた。
いくら頑張っても、花背高原のバス停から上がってくる人たちには勝てない。
でも雲取山から二ノ谷下りは、きっとまたノートレースを楽しめるだろう。
そう思って、ツボ足のトレースを辿って行った。しばらくは左は植林、右は雑木のやや鬱蒼とした樹林帯だ。
ここも倒木地帯があり、先行者のトレースのお陰で右往左往しなくて済んだ。
いつの間にかトレースはワカンに変わっていた。
寺山峠とハタカリ峠のちょうど中間地点くらいのコルで先行者に追いついた。
やはり花背高原バス停から来られたそうだ。帰りはと尋ねると、
「三ノ谷か二ノ谷を下って貴船まで。(花背高原は)2時台のバスがなくなっちゃったからね。」
そうなのだ。知らない間に2時台のバスはなくなっていた。
二週間前、寺山峠から下ってきて時刻表を見たときの衝撃と言ったら。
ラッキーなことにここからは先行させてもらえそうだ。
私たちがいくら遅いと言っても、ワカンよりは多少は早い。
幸運に感謝しつつ、誰も踏んでいないフカフカの雪を蹴って夢中になって進む。
この幸福感、もう言葉には表せない。
ひと登りして左手の谷に目を向けると、粉雪舞う雪景色の中に三角屋根の建物がひっそりと建っていた。
一つ目のこの美しい小屋は、京産大のワンゲル小屋「凌雪荘」。
尾根を外して小屋の建っている谷の源流部に下りていく。洒落た避暑地に建っている別荘のような洗練された雰囲気がある。
谷と向かい合うテラスがなんともすてきだった。ぽかぽか陽気の日は、ここでランチしたらいいだろうなと思いながら、
小屋の横を通ってコルに上がる。小屋のある南の谷の源流部は粉雪が舞いながらも薄日が射していたのに、
コルに上がったとたん北からの風雪が吹きつけてきた。
けれど、たっぷりの雪に埋もれた美しい疎林の北の谷を目にすると疲れも寒さも吹き飛んでしまうのだった。
ハタカリ峠の道標は、すっかり雪に埋もれていて、この風雪では大布施寄りにある展望地からの遠望は望めそうになく、
あきらめて進む。
丘のような平坦なピークに登り返して、再び眼下の美しい疎林の北の谷を見下ろすと、
木立の中にぼおっと建物が見えた。「府立大の小屋だよ!」
尾根通しでなくて、斜面から小屋の横に下りて、それで谷から峠に上がって行こうよ。
「りょうぶの小屋」と名付けられた府立大のワンゲル小屋は、雲取峠の源頭から50mばかり下った場所に、
名前の通りりょうぶの木立に囲まれて佇んでいる。
この空に突き抜けていくような明るい開放感の中に、なんか寂しさがあって、
それが、飾り気のない清々しさを持った小屋の雰囲気と相まって、心を打つのだった。
うっとりと小屋を眺めて峠に上がる。谷をふりかえって写真を撮る。空は鉛色。
空の色を割り引いたとしても、雲取峠と「りょうぶの小屋」はすてきだった。
北峰に上がるかどうか、一瞬迷った。北峰のピークは晴れていればこそすばらしいけれど、
こんな空ではどうだろう。けれどすぐに思い直す。
こんなに雪がたっぷりあるのに北峰から雲取山とのあいだにある美しい谷間に降りなくてどうする。
誰もいない雪の谷間の縁を倒木を避けてカーブを描いて進む。
白っぽくもやもやとした空気の中、自分が物語の中にいるような錯覚にとらわれる。
気がついたら、現実的な山名板だらけの雲取山山頂に着いていた。
現実に戻ったら寒くてじっとしていられない。
ウサギの穴のようなところから、二ノ谷に降りていく。
再び物語の世界。二ノ谷も雪景色が美しい。そして谷間は風がない。
「ねぇねぇ、風ないし、きれいだから休もうよ。ここまで来たら、もう楽勝だよ。」と言うが、信じてもらえない。
「その下、滝があるんじゃないの?」
「へっ?」
人の記憶とは、なんと好都合にできているのだろう。
トラロープの高巻きのことなど、すっかり忘れていた。
雪に埋もれたトラロープを掘り出して、修行の時間に突入する。
過ぎてしまうと、これが楽しかったと記憶されてしまうから不思議だ。
ともあれ、無事に、三つ目の小屋に到着。すっかり雪に埋もれている。
ドラム缶の「二ノ谷湯」も半分雪の中だった。
さて、三つ目のこの小屋は、有名な立命のワンゲル小屋。
ここは、誰もいないのに、何やら賑やかな空気が漂っている。
どの小屋にも、たくさんの物語がぎっしりと詰まっていそうだった。
そして時々小屋から煙のように出て来て、辺りを彷徨っているかのようだった。
話が長くなってきたので、はしょります。
あとは、20回くらいもスノーシューで渡渉して、雪を踏み抜き水の中にはまったり、
登る谷を間違えて植林の急斜面を登ったり、なんとか寺山尾根の途中に合流(本当は861の尾根から合流したかった)。
ブナの木のたもとで遅いランチ休憩して、尾根を行ったり林道で楽したりして、
祠のある旧の花背峠から再び天狗杉に登り返す途中、眩しいくらい青空が広がってきて、
都の景色を眺め、めでたしめでたし、国道の花背峠に帰ってきて、望み通り満ち足りたのだった。
アオバ*ト