【日 時】 4月27日(土)
【地 図】
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 5001187497
【同行者】 単独
【天 候】 曇り
【ルート】 柏木P(6:23)~伊那里(8:56)~松峰(9:45)~松峰小屋分岐(10:42)~地蔵岳(12:05)~丸山谷の頭(13:28)~丸山(14:33)~・2107(15:17)~丸山谷・1148(17:06)~R152(19:30)~柏木P(20:29)
どうにも鹿臭い。大鹿村や長谷村は、いつ訪れても鹿の臭いがする。この周辺は、そもそも動物たちの縄張りにお邪魔する気持ちを忘れてはいけないようだ。そう思う端から、鹿の群れが白い尻を見せて跳ね上がった。
柏木集落の奥の簡易水道へと車を進める。ここには山好きな方が用意して下さった細長い駐車場がある。登山届けのポストに一礼して車を後にすると、松傘の道になった。地蔵尊に頭を下げ、幾百幾千の松ぼっくりを踏みしめると三峰川電力の鉄塔脇に出る。
孝行猿の碑を見るとすぐ林道を横切る。適当に林道を歩いたり山道に入ったりするうち、遙か遠くから「こちらは広報伊那市です。」という広報車のアナウンスが聞こえてきた。耳をそばだてると「高遠の行方不明者は無事発見されました。ご協力ありがとうございました。」と聞こえた。ギョッとする。私も気をつけなきゃ。

- 地蔵岳
林道に蹂躙されて登山道がズタズタである。地図と睨めっこしても埒があかない。林道分岐を左手に取った材木の資材置き場で行き詰まった。ひとしきり悩んでから高度を求めると踏み跡に出てほっとする。戸倉山を背負ってひと登り。
伊那里(1983m)直前では、どこが踏み跡なのか要領を得ない。頓着せず尾根芯を辿ると三角点の白い標石にたどり着いた。まずは最初のゴール!伊那里の東峰をカットして鞍部に降りると、妙に目印がベタ張り状態。誰がどんな主義主張でつけたか理解に苦しむほどである。
幸いにも松峰(2080m)へは地形的に迷うような部分はないので、最短で雪の斜面を詰めてピークを踏む。ここにはKUMOの山名標がかかっている。先を急ごう。一旦高度を下げるが、幸いにも尾勝川側が断崖なので、ルート選びに苦労はない。
荒れ気味の林床を鈍足で歩いて松峰小屋への下降路を見送る。いつもながら荷物が重すぎると思う。それでも過去の苦い経験から、なかなか荷物を削れない自分がいる。息を切らして体を持ち上げるうち、登路が氷の川になった。こりゃたまらん!迷わずアイゼンを履く。
辛抱強く体を持ち上げていくと、地蔵岳北尾根の肩に乗る。そのまま地蔵岳(2371m)の山頂を踏んで万歳だ!これだけのことで結構、難産だったりする。南に寄せて展望を求めると、二児山から南ア主稜上の本谷山に向かう長大な支尾根が手招きしている。主稜線はガスに埋もれて全貌は拝めないものの、その真白き峰々の神々しさはどうだろう。

- 丸山谷の頭
再びエネルギー充填である。樹間から鋸岳が見えると、またも元気百倍だ。地蔵岳東の2400m峰はこの日、一番の大展望である。地蔵岳を至近に臨み、その奥には伊那盆地と霞む中央アルプスの峰々が笑いかけてくれる。
しかし、私は重要な決定を迫られていた。丸山谷の頭を終着点としてピストンするのか、それとも当初の目標通り丸山まで突っ込むのか。丸山を終着駅とすると時間的にアウトだ。かなりの確度で闇中下山と予想される。しかし、手がないわけではない。それは・・・
幸いにも丸山方面の展望がある。地形を子細に観察してみる。丸山の奥の小瀬戸山を目印に、頭の中で丸山谷の流域概念図と重ね合わせてみる。しめたもので、これでルートの再編ができる。だが、行程がヤブに埋もれたりすれば計画破綻である。
その時、あることに気がついた。丸山の裾野の下部が枯れ色になっている。1700mライン以下だろうか。まるで線を引いたかのようにその上部の濃緑と下部の薄茶とが色分けされている。
考え合わせてみるに、下部はカラマツの植林帯と予想された。丸山北沢や南沢に入り込む林道は植林目途であろう。植林帯に、まめに手が入っていさえすれば通過はさほど困難ではないはずだ。だが、逆に放置された植林ほど厄介なものもないのも事実。
最終的な判断は丸山谷の頭に持ち越そう。うだうだせずに先を急ぐぞ。針葉樹をくぐるようにして丸山谷の頭(2460m)に到達。

- 鋸岳
ここで既に13:28。妙に集中して行程を計算し直してみる。朴念仁の私もこんな時はスパコンの「京」並みだ(笑)。丸山を目指せば、再びここに戻ってくる登り返しの体力もないだろう。丸山への行程がヤブまみれなら尚更だ。ルート状況に賭けの要素はあるものの、ここは勝負に出よう。丸山から丸山谷北沢に下降して、桃ノ木集落を経て三峰川沿いを歩くのだ。
単独行での気まま歩きは非常時に危険きわまりないが、この選択肢も自宅の計画書にきちんと残してきている。さればGoサインだ!
丸山谷の頭を味わう間もなく、方向を見定めて下降開始。すぐにシラビソの幼木がうるさくなってくる。ひょっとしたら行き詰まる可能性も否定できない。ここを歩いた記録はネット上にもないから不安だ。幸いにも、うるさい幼木もクリア。振り返るごと丸山谷の頭が高くなり、順調に高度を下げていることがわかる。
そしてようやく丸山(2224m)に立った。朽ち木に「区画班界」の赤プレートが打ち付けられている。一人静かにガッツポーズである。丸山谷の頭から下りで1時間。日没までは、あと4時間。やはり、ここから往路を戻り返すのは現実的な選択とは言えない。わかりきった事を再確認してから、時間に追われるようにしてオプション・ルートを下る。
だが、明るい材料ばかりではない。藪が出たり、やせた岩場が連続する。それをどうにかこなすうち・2107に到達。ここで慎重に西を選ぶ。樹間から2400峰や地蔵岳がほの見える。この周辺の山肌には露岩がいくつも認められるが、それが地蔵岳の名の由来になった可能性もあると踏んだ。

- 丸山の下りの岩場
やがて明るい伐採跡に飛び出した。予想通りカラマツを主体とした樹相の広尾根だ。まるでコバとも形容できるような優しい表情の尾根下り。だが、油断したか、予想針路をはずして急傾斜に飛び込む羽目になる。最後は北沢の左岸支流に食い込む荒廃した林道型に着地した。ほっと胸をなで下ろす瞬間だ。
あとは鼻歌交じりと言いたいところだが、これが長い長い。林道を歩くとカラマツが新緑に芽吹いている事にようやく気づく。・1148地点が丸山橋だ。ここで北沢と南沢の出合を渡ってダムの取水口脇を通り過ぎる。
丸山谷が三峰川に合流したのを見届けてからが飽きるほど長い。当然のごとく誰にも出会わない・・・と思ううち、子供を後ろに乗せた小型バイクが一台上がってきた。ゲート脇からバイクを入れたのだろうか。今宵は父子で楽しい野営だろう。道中、幾度となく単独、そして群れの鹿が音もなく逃げていく。
桃ノ木の集落で家に下山メールを入れる。日の落ち始めた舗装路をぽこぽこ歩くとフクロウのゴロスケホッホが聞こえる。ざんざ亭の前にへたり込み、一口羊羹と甘納豆で元気注入。相変わらず人っ子一人通らない。ヒッチハイクのしようもない。一台の車のヘッドライトが対向してきたが、逆方向ではね^^;。なおも人の気配を感じない薄闇を心を無にして歩いていく。

- 展望地の2400m峰
R152の秋葉街道には、気の里『入野谷』があるのだが、人影と言えば、たばこをくゆらせるバイカーが一人ぽつん。柏木の集落へは、R152を外れてなお、300mほど標高を上げる必要がある。これがつらいところ。驚いて逃げる鹿が蹴落とした岩が地面に落ちると、パチッと火花が散った。わたしゃ、これでも人畜無害だ。脅かすなったら。
下調べでは満月のはず。なのに、どうしてこう暗いのか。後から調べてみると月の出は20:09であった。月齢だけを調べてわかったつもりだなんて、まだまだ私もケツが青い。
手を抜かず、ヘッデンを出そう。明るくなると勇気百倍。旧道を使って林道をショートカットしながら、ようやく柏木の集落である。朝には誰もいなかった駐車地には、他県ナンバーの車が三台。堺に成田に大阪か。皆さん今頃、松峰小屋で宴会中だろうか。
行動14時間、30Km超か。あさっての家族登山はみんなの足を引っ張りそうで恐いなぁ(^_^;)
ふ~さん