2013年3月16日(土) 晴れ後曇り 奥美濃 能郷白山~磯倉 単独
5:45 能郷谷駐車地 → 7:15 能郷白山登山口 → 9:50 前山 → 11:05 能郷白山山頂 → 12:00~20 磯倉 → 13:10 能郷白山 → 14:10 前山 → 15:10 登山口 → 16:20 駐車地
日に日に消えゆく伊吹山の白い肌。それは春の訪れを告げてくれるが同時に山間部の雪どけを示してもいる。今シーズン雪の少なかった奥美濃。果して山スキーができるだけの雪が残っているのか、一抹の不安を感じながら能郷谷に向かった。
前泊予定で訪れた能郷谷は昨年よりも奥まで林道を進む事ができた。しかし途中に残雪がありそれを乗り越えて後戻りできなくなる事を危惧して、道が右岸に渡ったところに戻り一夜を過ごした。天には無数の星が散らばり落ちてこんばかりに輝いていた。
早朝、放射冷却のためか車に霜が付いていた。その中で準備をするが身体が思うように動かず出発予定の5時半に遅れた。
昨年、能郷白山を訪れた時は出発地点からシール歩行だったが今日はそういうわけにはいかない。残雪はありつつも切れぎれでスキーを担いで足早に歩いていく。こういう状況を想定して荷物がなるべく軽くなるように何時もより小さいザックにした。それは正解だった。
奥に進むにつれ紺碧の空の下に白い稜線が見えてくる。どうやら上部ではまだまだ雪が豊富のようだ。
林道が左岸に渡る手前から雪が繋がりシール歩行に切り替える。肩がグッと軽くなる。
雪どけで水量が増えているかと思っていた登山口の渡渉点は多少バランスに気を使いながらも問題なく渡れた。しかしそこからの登山道尾根に雪が少なくスキーを担いで登った。下りの事が思いやられる。
尾根が穏やかになったところで雪が繋がりシール歩行。林道から上の急斜面は雪が繋がっているもののシール歩行する事のメリットを感じられず再びスキーを担いだ。
左手の沢を覗き込んでみると大きな雪割れはあるものの上手く避けていけば下降する事が可能のようだ。下山のルートとして頭に入れておこう。
主稜線にあがってわずかに進んだところの痩せ尾根は尾根筋の雪が消え右手の雪庇は崩壊寸前。ここを乗り越えてやっと快適なシール歩行となった。
前山の斜面は広々としていていかにも滑降向きだが中腹部に雪割れが認められる。しかしそれも遠目に見た程難しくなくクトーを利かせながら急斜面を登っていき前山の雪原に出る。

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ここから能郷白山手前の鞍部まで緩やかな下りが続く。シールを剥がして滑り降りていく。正面には真っ白な能郷白山と今日の目標、磯倉。あそこまで届くだろうか。吹き抜ける強風の中でそんな弱気が顔をもたげる。

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尾根は徐々に細くなっていき鞍部手前では結構な痩せ尾根となる。そこも問題なく越えてシール歩行に切り替え。左右の斜面にはブナ林が続いている。
能郷白山山頂に向かって大斜面を登っていると単独登山者が下りてきた。随分早い。すれ違いざまに言葉を交わすとなんと二時半に出発、前山で陽の出を見たそうだ。磯倉まで行ってきたとニコニコ顔で語るその青年は一眼レフを首から下げての歩行だった。

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振り返れば単独登山者がいつの間にか後にいた。山頂で一緒になり早いですねと聞くと林道分が早いですねとの返事。どうやらスキーを担いで歩く事で僕が遅くなっていると理解しているようだ。そうじゃないと思うけどなあ。
強く吹く風の中でシールを剥がしいよいよ磯倉までの滑降に移る。できれば能郷白山に10時半に着いていたかったがまだまだ時間的な余裕はある。
なだらかな尾根を下って最初のピークは左手から巻き気味に越えた。ピークの反対側はブッシュが出ていてそれを踏みつけて進む。その先にすばらしい斜面が待っていた。気を良くして一気に滑り下りる。雪面のゆるみ加減も絶妙だ。時間があれば何度も登り返して滑りたくなるような斜面だった。
そこから先は尾根筋のブッシュをかき分けながら進んでいく。後から思えばここは左手の雪斜面を巻いていけば良かった。
磯倉手前の鞍部に出て斜面を見上げれば遠目に見ていたよりも登りやすくて滑りやすそうな斜面だ。ここはスキーを担いでキックステップで一気に直登していく事にした。アイゼンはこの雪では必要ないだろう。
雪がいい感じで緩んでいてスキーブーツでのキックステップが気持ちいいくらいに利く。背なのスキーは重いが登っていく事に何の不安もない。後はピークに出るだけだ。
いつの間にか空を覆った雲に山頂部分の輪郭がぼやけている。しかしあの憧れ続けた端正な三角錐の頂点にもうすぐ立てるのだという思いに全身が震える。そしていよいよ山頂のブッシュが見えた瞬間、自分でも思いもしなかった雄叫びをあげていた。何度も、何度も。

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傍目には大した山行ではないかもしれない。しかし自分には無理かもしれないと思っていた山行だった。実際今日登ってくる途中にも何度か折れかけた。ただ登るだけならできる。しかしスキーを持っては難しい。そう思う中で何度も何度も磯倉の登頂をシミュレーションしていた。それが叶った。しかしこれほど興奮するとは思ってもみなかった。
一つの課題の克服は次への挑戦へ繋がっていく。今回の磯倉への登頂で新たな明日が広がったようなそんな爽快な気分が全身を覆う。ニヤニヤした顔つきが自分でも分かる。
空を覆う雲に見える風景は少ない。先ほどまでは伊吹も白山も見えたが今は近くの若丸、杉倉っていうところがせいぜい。だがそれでも十分。磯倉に立っている事に違いはない。
強い風と灰色の空が長居を許さない。登頂への乾杯と少しの休憩。その後、いよいよ滑降。
地形図では磯倉北東斜面は滑降向きに見える。しかし前山辺りから見るとかなりの急斜面であんなところは滑れないと思えた。今足下にみる斜面は滑り頃。雪質も良さそうだ。GO!
気持ちよくターンを切って滑っていく。磯倉を滑っているなんてまるで夢のようだと思いながら落ちていく。中腹部よりややブッシュがでて下部ではちょっとあれ気味な斜面になったがそれでも最後まで楽しかった。ついに念願が叶ったのだ。
能郷白山まではブッシュを避けながら問題なく登り返した。雪の状態が滑りにも登りにも幸いしている。3月の中旬という計画は大正解だった。
能郷白山からは大斜面を滑降。ここもいい感じだ。登り返しただけいい斜面を滑れるのがここの良さなのかもしれない。

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前山まで登り返しそこからの斜面も気持ちよく滑降。登り返しの多い山行だがその分滑りを楽しめるのだから文句はない。
最後は登りでチェックしていた沢を滑り降りていく。恐ろしげな雪割れが口を広げているが下部にデブリが認められないから崩れる事はなさそうだ。それでも直下は避けて下っていく。雪質は重いながらも楽しく滑れた。
最後のわずかな急斜面をスキーを担いで下りて渡渉。林道を右岸に渡るまでスキーで下っていき、後は板を担いでひたすら歩いていく。荷物は重いが念願の登頂達成で心はうきうきしていた。