【日 時】 2月10日(日)
【地 図】
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 2407027333
【同行者】 山日和
【天 候】 曇り~晴れ
【ルート】 P(7:49)~林道詰め(8:12)~レンゲ辻(9:55/10:18)~山上ヶ岳(11:08/12:31)~西ノ覗岩(12:49)~鐘掛岩(13:05)~洞辻茶屋(13:40/55)~一本松茶屋(14:46)~P(15:14)
誰もいない洞川(どろがわ)温泉街を静かに抜けて車を停める。表参道からではなく、裏から攻めようと言うところが山日和流。裏街道を歩み続けた彼の人生遍歴を暗示するような登山哲学である。
林道詰めには『登山者にお願い』の告知板。一際、目にとまるのが「女人禁制」の文字。「千三百年の歴史の中で保たれてきた女人禁制を維持するためご協力を賜りますようお願い致します」とある。

- 山頂へ
凍りついた沢沿いの道。途中でアイゼンを履く。「昔はこんなところでアイゼンなど使わなかったのに」とため息を漏らす相棒。何をおっしゃるウサギさんである。今を盛りと咲く山日和花。彼を擁護するならば、せいぜい山人生が豊富になったことの裏返しであろう。大きな栃の木に見守られて歩く。
いつものように下世話な話を交わしつつ、やんややんやと登っていく。相変わらず生産性のない会話のオンパレードであるが、図らずも伏せ字まみれの会話に落ちぶれる。まさに六根清浄とは縁遠い登山である。登山口の告知坂には「下品な会話はおやめ下さい」とは書いてなかったのが救いである。神仏の逆鱗に触れる粗相のなかったことを祈ろう。

- 三角点へ
遥か上に見えていた樹氷に届く高度になった。青空が覗き始める。レンゲ辻だ。女人結界の山門が凍りついている。掲示坂のNo Woman Admitted. の"No"が何者かによってかき消されていた。日本語による告知部分への悪戯はなかったので、ひょっとしたら外国の方の仕業だろうか。大峯山寺はユネスコの世界遺産に登録されたがゆえに国際的な認知も進んだ。従前にまして議論百出というのも致し方ないことだろう。
神童子谷側に風を避けて憩う。冷たさを通り越して指先がしびれてくる。面倒がらず、まめに手袋を重ね着せねば。凍った階段を登る。雪が少なく、融けた雪が再結氷して、氷の廊下になっている。振り返ると稲村ヶ岳が大日山をおんぶしている。大普賢・弥山・八経方面にも眺望が開けてきた。空は青に支配されて心も浮き立つ。
大展望の中、西ノ覗への分岐を経てお花畑に向かう。とは言っても、この時期、満開なのは真っ白な雪の花だ。三人の先客の姿があった。山日和ガイドに三角点のある湧出岩に案内してもらう。皇太子殿下の「御登山祈念碑」の側を通って本堂に下る。

- 女人結界門
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本堂脇の「眼洗い行者尊」の前に腰を下ろしてランチタイムだ。相棒はぐつぐつ鍋を煮立て始め、夢見心地な至福の表情。私は荷物からバーナーを間引いてきたので、テルモスのお湯を沸かし直しもせずに横着にカップラーメンに注ぐ。外気温が低いせいで保温はそれなりだが、出来具合もそれなりだ。それでも行動中の暖かい食事はありがたい。山日和商店の珈琲で締めくくった。
近くに陣取った方が、我々の装備を見てスノーシューは効用ありやと尋ねてくる。今日は出番はなかったが、我が相棒は先週、八経ヶ岳の衛星峰である頂仙岳で悪戦苦闘の末に登頂をもぎ取った。歓喜のあまり、陶酔感に身を任せて「天女の舞」を踊ったと聞く。さすがライトニングアッセント。四大陸フィギュアの浅田真央もびっくり。急斜面やトラバースをものともしない天女の舞だったと聞く。
この日、すれ違った数人は年齢問わず、ことごとく山ボーイであった。開山期間と違って誰にも「ようお参り」とは声がかからない。それが雪と氷の山上ヶ岳なのだろう。

- 稲村ヶ岳と大日山(山日和さん提供)
参道を下っていく。雪をかぶった灯籠。雪に埋もれた宿坊群。修験の聖地、大峯山寺。この標高に忽然と現われた壮大な伽藍はやはり驚きの一言。不思議感覚で妙覚門をくぐる。
西ノ覗岩からスリリングな眺望を楽しむ。凍てついた鎖を見ていると、行を積もうなんて気にはなれない。「健康に自信のない方、高所恐怖症の方は行をご遠慮ください」とあるが、私の場合は「脳みそに自信のない方、女性恐怖症の方は行をご遠慮ください」と改めるべきであろう。
鐘掛岩へ。こちらも大展望。役行者の像が凍った雪に埋もれている。優しい相棒が雪を削ぎ落としてあげている。断崖にぶら下げられて行を積めば、日陰者の彼にもきっと大きな御利益がもたされる事であろう。
凍った木の階段を下降する。老朽化した木桁の下りは慎重さが要求される。ひと気のない陀羅尼助茶屋を通り抜け、洞辻茶屋で休憩だ。身体がほてる。タケノコの皮をはぐように服を脱ぐ。だが、この時間になっても樹氷が落ちないところを見るとまだまだ気温は低いのだ。植林の中を淡々と降りる。お助け水を経て一本松茶屋へ。最後は『従是女人結界』をくぐって朱塗りされた清浄大橋に飛び出した。

- 伽藍を後にする(山日和さん提供)
屋根のある駐車地には有料の望遠鏡がある。それを使わなくても、カメラの望遠で今日辿った行場のルートがよく見えて楽しい。
洞川の温泉街を車で抜けていくと、観光客が凍った路面にあちらこちらでツルリとやっている。洞川温泉に時間をかけて浸かって身体をほぐしていると、山頂で出会ったおじさんが露天に入ってきた。「昔はここまで来るのが大変で・・・」と歓談しているうち、時間を忘れてしまう。
そろそろ帰ろう。明日は息子と二人きりの登山を楽しむのだ。
ふ~さん